チームで同じ景色を見続けるためのプロジェクト管理ツールの使い方

アジャイルらしくない、アジャイルライダーな長沢智治です。前回の連載では、チームビルディングを成功させるための方法として「チームで同じ景色を見続けること」「そのために必要な2つの視点」をご紹介しました。

本記事では、チームで同じ景色を見続けるためのより具体的な取り組みとして、プロジェクト管理ツールをチームビルディングで有効活用する方法をご紹介します。

課題管理型のプロジェクト管理ツールとは

前回の記事で、チームで同じ景色を見続けるための2つの方法についてお話ししました。それを受けて、本記事では、同じ景色を見続けるためにプロジェクト管理ツールをどのように活用するのか、その方法をご紹介します。

本記事で指しているツールは、課題管理型のプロジェクト管理ツールです。代表格としてBacklogがあります。ここからはそれらを総称して「ツール」と表現します。

ツールは、プロジェクトの計画、実行だけでなく、課題やタスクの追加や意思決定でも活用できます。

課題やタスク単位で関係者を結束して、計画、実行、そして完了までを追跡可能にするため、多くのプロジェクトでほぼ必須なツールとして活用されています。

また、すべての関心ごとが課題やタスクとして集約されているため、プロジェクトの「情報ハブ」としての役目を果たします。情報ハブとは「そこを見れば欲しい最新の情報が手に入る」場所を指します。

情報ハブとしてプロジェクト管理ツールを活用する

プロジェクト管理ツールはこう使う!成果物を上手に管理するコツで紹介しているように、情報ハブは、Gitなどのバージョン管理ツールで管理しているソースコードの成果物に関連づけできます。なので、情報をたどることで成果物を確認できます。

逆に、ツールにある機能で「課題キー」と呼ばれる課題ごとに割り振られている番号を活用することで、成果物から情報ハブにたどりつけるというメリットもあります。言い換えると、情報ハブとは、双方向に追跡可能な状態を指します。

同じ景色を見続けるためにツールを活用する

さて、本題の同じ景色を見続けるためのツールの活用のお話です。その前にまず揃えておきたいのが「視点」です。

先述のようにツールを導入することで、課題やタスクの進捗を知ることができ、チームが結束し、関係者とのコラボレーションも促進できます。

しかし、チームが同じ景色を見続けるためには、課題やタスク単位で見ていてもあまり効果がありません。同じ景色を見続けるためには、プロジェクトの現状を知る必要があります。つまり、全体像がわかる必要があります。

ツールでプロジェクトの全体像を掴むには?

ツールはプロジェクトの現状や全体像の把握にも役立ちます。

ツールの特性として、全体から特定の状態のものだけを抽出できます。そこから、全体のボリューム感や進捗傾向などを知ることができます。

そこでチームが同じ景色を見続けるために重要な指標となるのが「傾向」です。

ツールは時系列に従い、一つひとつの課題の情報が履歴として残っていきます。これらを集計することで、時系列での情報の傾向を見ることができるようになります。

では、チームやプロジェクトの傾向を把握するためにどのような要素を見ておくと良いのでしょうか?例えば、以下の項目が挙げられます。

項目  説明
 見積 / 実績 チームメンバーの負荷状況(ワークロード)。
 課題の状態 作業の進捗度合い。未対応・処理中・処理済み・完了の4つに分けられる。
 バーンダウンチャート 作業の進捗を右肩下がりのグラフで示したもの。実績線、計画線、理想線の3つの線にもとづく。

以上に挙げた3つの項目は、同じ景色を見るための重要な要素となり得ます。

ツールで全体の「傾向」を見ることのメリット

ツールを活用することで、チームの傾向を見ることができ、プロジェクトの現在の状態を知ることができます。

他にも、ツールで確認できる作業の進捗レポートなどをチームで見ることは「同じ景色を見ている」という連帯感を生み出します。例えば、特定の人を責めにくくなるという効果があります。

逆に、課題やタスク単位で切り取って見ると、担当者がいるので、結果として担当者を責めてしまうことがあります。全体の傾向を見ている限りでは、各課題や担当者にフォーカスが当たることは少なくなります。

人ではなくチームに、人ではなく問題にフォーカスする意味でも、全体の傾向を見る癖をつけておくと良いでしょう。そうした癖をつけるという意味でも、ツールを使うのは最適なのです。

ツールでチームの健康状態をチェックする

ツールを使って、チームの健康状態をチェックするのもオススメです。ツールには、チームの状態が時系列で蓄積されるという特徴があるので、チームの傾向はもちろん、チームがうまく機能しているのかという健康状態を知ることができるのです。

チームの不調サインをツールで早期発見

例えば、最初はぎこちなかったチームが次第に円滑に活動できるようになってきた様や、円滑だったチームがある日を境にぎこちなくなっていった様などが見て取れるわけです。

ツール上で、チームメンバーの日々の行動に以下のような傾向が見られたら要注意です。

 要注意な傾向
1. 以前よりも、課題の進捗が著しく遅くなった
2. 以前よりも、ツールに課題が登録されなくなった
3. 以前よりも、ツール上でのコミュニケーションが減った

こうした些細な変化から得る情報は、時にチームにとって有益になる場合があります。チームに異変がないか、早期発見することがチームビルディングでは重要です。

ツールでチームの共通認識を作る

それぞれの傾向の変化は決してネガティブものばかりではなく、ポジティブなものも当然あります。それらをどう判断するかはまさしく「チームとして共通認識を持てるか」にかかってきます。

この時に気にしておきたいのも、個別の課題の傾向ではなく、全体としての課題の傾向です。傾向に対してチームとして「妥当」と思えるならばよし、個別に不満や問題意識を持ち、見解が異なるならばその要因を追求してみましょう。バーンダウンチャートはそれらを見る上で良いチャートのひとつです。

人それぞれの感情を伴うこともあるため、朝会などの定例ミーティングや日々のフィードバックではなかなか顕在化されないものもあります。ツールは今のチームの健康状態をある側面から映し出してくれる映し鏡にもなるので活用しましょう。

ツール導入時にハマるワナ

特にツール導入時には、資料などでみるように綺麗なプロジェクト管理ができていないとか、バーンダウンチャートが綺麗に落ちていかないなどレポートが美しくなくて、がっかりすることがあります。

でもこれも「同じ景色を見ている」と思えば大した問題ではありません(大雑把)。最初からうまく言っていることは稀ですので「現状が見えた、そしてそれをチームで認識できた。よっしゃラッキー!」と思えば良いのです。

問題の本質にフォーカスする

実は、ツール導入時にご相談でもっとも多いのが期待値と現実のギャップです。

理想と現実のギャップが原因で、モチベーションが下がってしまったり、ツールが良くなかったとツールを変えてしまったりすることがあります(ツールの問題ではないことが多いのでツールを変えても同じことが起こります)。

現状を知って、そこから課題を見つけることはとても健全なことです。ツールが映し鏡として見せてくれた現実を受け止められさえすれば、あとは段階的に改善していけば良いだけです。

その改善の模様はツールによって映し出されますので、モチベーションを保つことに役立つはずです。

まとめ

ツールを活用することでチームが同じ景色を見続けることができることをお伝えしてきましたが、もちろん、それだけで同じ景色が見えているとも限りません。

ツールが見せてくれる側面ではツールを活用し、それ以外のチームビルディングやスキルや経験の伝承などはプラクティスや集合知で同じ景色を見続けてみてください。

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