迷ったら「成果」をコントロール?プロジェクト管理の3要素

ヌーラボのアジャイル・ライダーの長沢です。本記事では、プロジェクトを構成する3つの要素「人」「行動」「成果」のうちどれをコントロールすることで、プロジェクト管理を“よりシンプルにできる”のか考察します。

前回までのおさらい

アジャイル・ライダーとして、毎回記事のどこかにライダーネタを盛り込まなければ!と使命感に燃えております。なぜそう思うのか?なんかいけそうな気がする(仮面ライダージオウ/常盤ソウゴ風に)からです。

さて、前々回の記事では、プロジェクトを構成する要素は「人」「行動」「成果」の3つあるとお話ししました。

前回の記事では、プロジェクト管理を円滑に進めるために、3要素のなかでどれをコントロールするべきか?という問いに対して「正解はない」と結論づけました。

その一方で、要素の混在に対する注意喚起と、すべてをコントロールする場合は気をつけてほしいと述べました。理由は、現場でのコンセンサスが何よりも大切だからと伝えたかったからです。

プロジェクト管理をシンプルにするコツは「成果」にあり 

あなたの組織が3要素のうちのどれをコントロールすべきか迷っていたり、新しいプロジェクトでこれから計画を立ててシンプルにコントロールしたりする段階でしたら、私は「成果(物)」のコントロールから検討することをおすすめします。

なぜ、「成果」からかというと、業務や作業の最終的なアウトプット(というよりアウトカム)が「成果」だからです。

「成果」を作り出すには「行動」が伴うのは当然です。なので、「行動」でプロジェクト管理を構成したくなる気持ちはわかります。でも目的は「成果」を作り出すことの方が多いはずです。

であれば、シンプルに「成果」で計画をして、「成果」で進行をコントロールした方がわかりやすいはずです。

成果と行動の関係性「大事なことは目的の共有」

「成果」とは「目的」そのものであったり「目的」を具現化したものであったりします。

例えば、目的が「革新的なプロダクトをユーザーに提供する」であれば、そのものである革新的なプロダクトが成果です。

目的が「今までにないユーザー体験で価値観を根本的に変革する」であれば、その目的を果たす具現化したものがプロダクトであり成果です。

行動は目的に直結しづらい?

このように考えると「行動」は目的に直結しづらい性質があるので、プロジェクトをコントロールする要素としては、いささか複雑になる傾向があります。

プロジェクトは、迷ったら「目的」に立ち帰り、軌道修正するために成果を見直し、その上で「行動」を検討し直します。

「目的」を起点にアクションをするため、コントロールする要素はできるだけ目的に近いものを選択しておくと良さそうです。

WhatとHowを成果と行動に置き換える

「成果」はWhatで、「行動」はHowなので、Whatが達成できればHowはいくつかの方法から選択できるはずです。

そのHowを固定してしまうことで Whatを導き出せなくなったら損失になってしまいますよね。

成果と行動の関係性「引き継ぐ目的を考える」

次に作業の引き継ぎを例に考えてみましょう。

あなたが設計工程から実装工程を引き継ぐことになった場面をイメージしてみてください。

この時、自分が引き継ぎを受ける側になったとして、相手に引き継いでほしいものは何ですか?「行動」ですか?「成果」ですか?

成果と行動をレシピに置き換える

もっとわかりやすいように、料理を例にします。

レシピに材料がリストアップされています。当然、それを揃えるところから料理がスタートしますね。

次に作り方にしたがって材料を調理していきます。作り方自体は「行動」のように記述されていますが、作り方を1つずつこなすと必ず材料が変化した「成果」ができるはずです。

例えば、とんかつを作るならば、豚肉の筋を切り、塩コショウを少々ふる、という作り方にしたがうと、豚肉の下ごしらえという「成果」ができます。

次の作り方では、この下ごしらえした豚肉に小麦粉、溶き卵、パン粉をつけていく……という「行動」が発生します。

もし、調達した豚肉がとんかつ用として販売されていたもので、筋も切れていて、塩コショウも振ってあったら、この工程自体がいらないことになりますね。

なので、引き継ぐ対象は「成果」だと言えそうです(あらかじめ衣がついているとんかつ用豚肉も売っていますね)。

目的を第一優先で考える

この調理例は、下ごしらえのために店側が豚肉に施した下処理は「(自分が)とんかつを食べる」という目的に対しては必須ではないので、私たちは下処理をした豚肉という「成果」だけを受け取った(引き継いだ)、ことを意味しています。

つまり、前の工程の行動は特筆すべき点ではないことを意味しています。私たちが必要としているのはとんかつを食べるという「目的」を達成することなので、お店で下ごしらえしてある場合は、その方法を敢えて知る必要はないのです。

成果と行動の関係性「手戻りから考える」

プロジェクトには手戻りは避けては通れません。

手戻りの原因は、成果(物)の不正確さによるものが多いです。それらは行動に問題があることも多いです。

ここで、手戻りだから「行動」を巻き戻そうとすると、同じ過ちを繰り返してしまう危険性がでてきます。

「行動」が適切でなかったり、不足していたり、不必要な行動が多かったりする場合には、行動自体に問題があったことに気づきにくいため、手戻りが起こらないように軌道修正することが難しくなります。

先の料理の例えだと、調理に失敗したからもう一度やり直すのも正しいアプローチではあります。

しかし、苦手な作業であれば、市販の下ごしらえ済みのとんかつ用豚肉を調達するというアプローチを選択しても良いのではないでしょうか?

つまり、私が言いたいのは、作業を「下ごしらえをする」から「調達する」に変更するということです。その方が安全に仕上げたりコストを削減したりできるかもしれません。

成果と行動の関係性「人の批判に繋がらないことから考える」

前々回で解説したように「人」→「行動」→「成果」とした場合、「成果」をコントロールすることで「行動」の良し悪しや「行動」の見直し、他の選択肢(他のやり方)を見つけるなど振り返れます。

しかし「行動」をコントロールしてしまうと、「人」の良し悪しに繋がってしまいがちです。隣り合わせの要素が目についてしまうためです。

「このやり方をやったらバグが再発した」というケースでは、「誰が」に焦点が向いてしまうと個人攻撃になってしまいかねません。

そう思っていなかったとしても実際にその作業を行った本人は個人攻撃と捉えてしまうこともあります。

「成果」に対して振り返りができれば、「行動」は「成果」へのアプローチの検討になり「人」と直結しずらいため、個人攻撃になりにくくなります。

「成果」から考えて「行動」を検討する

このように、まずは「成果」で考えてみて、それでも「行動」で補完しないといけないと思うならば、「行動」でのコントロールを検討するとよいでしょう。

行動によるコントロールが向いている業務

行動によるコントロールが向いている業務は、ルーチンワークなど作業が明確であり、その作業の質の向上が成果(の質)に直結するものです。

または、成熟した業界でベストプラクティスが成立しているものです。

いずれにせよ「そのやり方をすれば確実」だとわかっているものは「行動」の方が、「行動」→「成果」の流れからも直感的に取り扱えることになるでしょう。

逆に言うと安定した「成果」をうむ「行動」が確立していないと、「人」によって「成果」が安定しなくなりがちだということです。

行動と成果の混在を許容できる組織例

前回の記事ではコントロールする要素が混在していると良くないと述べましたが「良いとこ取り!統制型と自律型をグラデーションしたハイブリッドな組織とは?」で述べたように、全体は統制型だけれど、各チームにやり方や権限を移譲している組織の場合はどうでしょうか。

この場合もやはり、「成果」でコントロールした方がシンプルで良いでしょう。

ただし、チームについては「成果」をコミットする代わりに、チーム内のやり方に任せるという選択もできるため、あるチームは成果で、あるチームは行動でコントロールするという混在例を許容できます。

最終的な報告やコミットは「成果」であるべきですが、途中経過はチーム内に閉じるために「行動」でも「成果」でも良しとするというアプローチです。

現場でなかなかコンセンサスが取れない場合はこう行ったメリハリを伴う混在も検討してみても良いかもしれません(お勧めはしていませんが)。

次回予告

プロジェクト管理をよりシンプルにするためには「成果」をコントロールするべきという考察をお届けしました。次回は「行動」と「成果」をそれぞれどう管理したら良いのか。具体的にどんなツールを使うと良いのかを考察します。

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