業務を進める上で、優先度の低いちょっとしたタスクが発生することは多くあると思います。そんなとき、あなたはその問題にどのように対処しますか?アジャイル・ライダーの長沢智治です。
本記事では、日々の業務で起こりがちな、本筋の業務から派生した“ちょっとしたタスク”を「パーキングロット」というアジャイル手法で、上手に先延ばしして対処する方法をご紹介します。マルチタスクになりがちな方もぜひご覧ください。
目次
優先度の低いタスクとは
本筋である業務に邁進したいときに「ちょっとした問題」の扱い方が気になることがあります。
しかし、あまりにも引きずられてしまうと、本来邁進すべき業務が進まなかったり、本筋である業務の質やスピードに影響がでたりします。
「邁進すべき仕事に集中でき、それ以外は気にしなくても良い」というのが最善な環境ですが、物事はそんなに綺麗には進みません。また、「ちょっとした問題」は邁進すべき仕事にも関連していることが多いです。
優先度の低いタスクの扱い方
例えば、プロダクトコードの開発に注力すべきでも、開発プロセスの「ちょっとした問題」として《コードレビューをもっと効果的に実施すべき》という意見が出てきたとしましょう。もちろん、大事なことなので、この問題にも取り組みたいのは山々です。
でもいま対応すると、本来のプロダクトコードの開発が予定通り進まなくなり、結果として間に合わせるために質を低下させる恐れがあることも考えられます。とはいえ、コードレビューの改善によって、より開発に注力できて、課題も解決できそうなのも事実です。どちらをとるかとても悩ましい選択ですね。
このときの解決策として、「ちょっとした問題」は、《いまは忘れましょう》とできれば良いかもしれません。ここでの《いまは忘れましょう》とは、以下の要件を満たしていると仮定します。
- その問題が解決しなくても先に進められること
- その問題については適切なタイミングで議論や改善について検討すること
- その問題がある(あった)ことを覚えておくこと
要するに、本来やるべきことと「ちょっとした問題」を天秤にかけて、いまやらなくても良いと判断したら、積極的に《いまは忘れてみよう》ということです。これで本来やるべきことに集中しましょう、という意思表示がチーム内でできることになります。
パーキングロット(Parking-lot)とは
上述のように「ちょっとした問題」は、業務を遂行していると必ずといって良いほどでてくるものです。
その大半は、業務本筋よりも、業務プロセス(開発プロセス)の問題だったり、連絡やレポート作成の問題だったり、人の問題だったりします。もちろん、本筋である業務や成果物(例えば、ソースコードの質や可読性、テストのカバレッジなど)の問題であることもあります。
このようなちょっとした問題は、すぐに議論せずにあとで議論するものとして《いまは忘れる》ことが大切です。そのためには、どこかに蓄積しておくことが有効でしょう。
このように、目の前の問題を一時的に退避させることを『Parking-lot(パーキングロット)』と呼びます。直訳すると「駐車場」です。
パーキングロット(Parking-lot)のやり方
パーキングロットは特別な道具を必要としない点も楽です。例えば、ホワイトボードに書いておくでも良いでしょう。スプレッドシートを共有してそこに書き込んでおくでも良いです。もちろん、Backlog のような課題管理ツールに別途記録しておくのも良いです。
私がコンサルティングをしている現場では、パーキングロットを現場の目安箱として使用しています。そこでは、記名式にせずに情報置き場として「ちょっとした問題」を蓄積しています。
蓄積した情報は、定期的に中身をみて、チームメンバーでその内容のコンセンサス(同意)を作り、いつ取り組むかを決めます。
無記名だと心理的障壁が減るので、気を遣わず問題の本筋を書けるので好まれます。もちろん、記名式でも何ら気を遣わずにできるくらいの信頼貯金ができていることが望ましいですが、そうなるための通過点として匿名性があることも必要かもしれません(日本の大きい組織では匿名性が好まれる傾向にあります)。
パーキングロット(Parking-lot)の効果
「ちょっとした問題」をパーキングロットに一時的に退避することで、うやむやにされてしまったものを明確にできたり、喉元過ぎたら忘れ去られてしまったことを対策できたりします。
また、蓄積できる場所があることで、些細なことでも残すモチベーションにもつながり、潜在的な問題がチームメンバーの目に触れやすくなるきっかけ作りになります。また、「ちょっとした問題」に引きずられることなく、本筋に集中できるということは、時間の効率的な活用につながります。
パーキングロット(Parking-lot)を会議で活用する
時間の効率的な活用の例としては、パーキングロットを使うことで会議の時間が短くなる可能性があります。会議では本筋から脱線することがよくあります。必要な脱線もありますが、「ちょっとした問題」についてダラダラと説明されたり、ダラダラと結論の出ない議論をしてしまったりすると、それだけ会議は長くなります。
そんなときは
「その問題はパーキングロットに入れておきましょう」
の一言で済むかもしれません。
本筋からズレている問題は、パーキングロットに入れて先送りして、会議後に関係者を別途集めて話し合うでも良いわけです。
また、パーキングロットを定期的に覗いてくれる人も現れるはずです。日々の業務の中で自然と改善してくれることも期待できます。
また、その当時は問題と感じていても、時とともに業務プロセスが改善され、問題自体が些細なことになったり、解消されていたりすることもあります。書いた本人すら思い出せないといった場合は、その問題はスッパリと忘れてしまっても良いでしょう。重要だったらきっと誰かが覚えているはずです。
パーキングロット(Parking-lot)の注意点
パーキングロットは問題の先送りができるよい仕組みですが、グチの掃き溜めではありません。改善しないことを書いても遠い将来まで残る負の遺産となるだけです。
ひとつの例ですが「いつかの明日のために蓄積しておこう」という意識を持つと良いでしょう。すると自ずと単に問題を書くのではなく、問題と提案だったり、問題と解決策の案を記すようになっていくはずです。また、気がついた人が提案や解決策の案を自由に追記できるようにするのも良いでしょう。
パーキングロットを定期的に棚卸しする
パーキングロットは、放置しすぎずに定期的に棚卸ししましょう。例えば、タイムボックスを設定して定期的に棚卸しすると習慣化しやすいです。スクラムで開発をしているならば、ふりかえりのときに棚卸しをすると良いでしょう。
パーキングロットでチームを知る
また「パーキングロットが荒れたらどうしよう」と思うかもしれません。安心してください。荒れることはきっとないでしょう。チームを信じてみましょう。荒れてしまったら?それも安心してください。チームが荒れる体質であることがわかったと思いましょう。現状がわかれば改善できますよね。
パーキングロット(Parking-lot)まとめ
本筋の業務から派生した“ちょっとした問題”を「パーキングロット」という手法で保留にする方法をご紹介しました。みなさんのチームワークをより良くするためにぜひ明日から試してみてください。
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