新しい取り組みを失敗させない「小さく計画を繰り返す方法」とは?

アジャイル☆ライダーの長沢です。新しい取り組みをする上で、計画をいかに考えるかは重要なポイントです。前回の記事では、大きな計画ではなく最小限な計画にすることで効果が出るまでの期間の短縮、リスクの低減に繋がることをお伝えしました。

本連載では、この最小限な計画の繰り返しを持続可能なものにして、組織に定着させるために、4つの段階に分けて意義を設定するステップをご紹介します。

※ちなみに、筆者は昨年プレゼンテーションの書籍を上梓したことがあり、企業研修などでプレゼンテーションの講師を務めることもありますが、この計画と進め方の発想はプレゼンテーションの作成にも役立ちます。

最小限の計画の繰り返し

前回の記事では大きな計画ではなく、できるだけ最小限な計画を繰り返す方がリスクも小さく、効果がでるまでの期間も短くなるため、失敗も少なくなる、というお話しをしました。

しかし、最小限の計画を繰り返したいと言ったところで「効果がいつでるのかわからないのは困る」という声も出てきそうです。

計画を闇雲に繰り返したり、見通しが立たないままでいたりすると、残念ながら周囲からの理解が得られないだけでなく、途中で中止の判断をされてしまう事態も起きかねません。できるかもわからない大きな計画は、呪いを生んでしまいかねないことは前回の記事で考察しました。

繰り返しに4つの段階を設ける

こうした負のループをどう打開するかというと「闇雲に繰り返し計画しているわけでも、実施しているわけでもない」と自覚して、周囲に理解してもらえば良いわけです。

この発想は、これまでの「新しい取り組みを成功させる!導入計画の考え方」と「新しい取り組みを正しく評価する!段階に応じた評価の仕方」で言及してきたことと似ています。もしくは、それらのハイブリッドと捉えても良いかもしれません。

具体的には、以下のような段階を設けて、順を追って最小限の取り組み計画を実行し続けるようにしていきます。

  • 方向付け
  • 推敲
  • 作成
  • 移行

元々は、反復型開発のフェーズから来ている考え方になります。反復型開発やラショナル統一プロセス (RUP) に触れたことがある読者は、ピンとくることでしょう。

これらの4つの段階を設定して、繰り返しの計画と実行に意味を持たせることで、関係者に小さく実行していく意義を理解してもらう働きかけができます。

方向付け

方向付けの段階では、取り組みの全体像やそれによる効果がはっきり見えていないことを前提に、その見通しを立てるための段階を理解してもらいましょう。

具体的には、1回から3回に分けて、最小限かつ一番最初に行うと成果が見えやすいものを実施します。新たな取り組みの仮説を立てるだけでも良いですし、あらかじめ立てた仮説の第1段階での検証と見ても良いでしょう。

まずは現状を把握する

多くの組織では「なんとなく問題や課題があることを認識しているが、正確に現状を把握できていない」というケースが多いです。そのため、まずは現状を把握することを新たな取り組みとするのが良いでしょう。

たとえば、現状が把握できるようにするために会議体を見直してみる、ツールを導入してデータを収集して傾向を知る、といったアクションが考えられます。

関係者からの理解を促すには「新たな取り組みをする上で方向性を決めたい」と説明することが良いでしょう。反対する人は少なくなります。一発勝負ではなく地に足つけて遂行する決意を示せるようにしましょう

推敲

推敲の段階では、方向づけの結果を踏まえて、現場にあった推進の仕方を定着させたり、効果の測り方を決めたりして、それらを検証します。

何回か繰り返すことで、測り方が見えてきたり、関係者への働きかけの仕方が見えてきたりします。

作成

作成という表現は元の反復型開発からそのまま持ってきていますが、要するにガンガン計画を遂行していく段階です。言い換えると、最小限の取り組みを何回も実施して結果を出し続ける段階でもあります。

方向付けで現状把握とやるべきことの全体感をつかみ、推敲でやり方が見出せれば、作成段階でどんどん結果を積み重ねることができるはずです。

移行

移行の段階では、これまでの方法を形式知にしたり、実施した取り組みを横展開したりすることを考えます。ここまでできれば理想ですが、移行についてはオプションとしても良いでしょう。

繰り返す意義を共有

新しい取り組みを成功させる!導入計画の考え方」でも述べたように、計画ではリスクや期間を提示する必要があります。つまり、繰り返し計画して遂行する場合には、繰り返す意義を周囲に提示する必要があるわけです。

以下のチャートの考え方を参考にしましょう。

段階 目的 回数の目安
方向付け 現状把握や全体計画の仮説と検証 1〜3回
推敲 繰り返す計画の設定や検証方法の定着 1〜3回
作成 ガンガン実施 1〜n回
移行 次への準備、横展開 1〜3回

今回は反復型開発にならった4つの段階をご紹介しましたが、これでないといけないわけではありません。

また、各段階の呼び名は自分たちが理解しやすい表現に変えることも可能です。ぜひチームで検討してみてください。

まとめ

最小限な計画を繰り返すために、4つの段階に分けて意義を設定すること、周囲からの理解を得るためのステップをご紹介しました。

一発勝負の大きな計画はリスクも高くなりがちです。小さな計画を繰り返すことで、新たな取り組みを推進できれば、リスクも低減でき、結果がでる期間も短くできます。

一方で、計画が複雑になっているように見えがちなので、関係者の理解を得にくくなることもあります。そんなときは、小さな計画を繰り返す意義を4つの段階に分けて、着実に推進するためだと据えて、周囲から理解を得る努力をしてみてください。

▼チームや組織の新しい取り組みに関する記事はこちら

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