アジャイル・ライターの長沢智治です。前回の記事「あなたの組織はどっち?〜統制型と自律型を解説〜」に続いて、今回も統制型と自律型の組織について考えるきっかけとなるネタをご提供します。
目次
SNSでは「統制型」という反響が多め
前回、現場のタイプには、「統制型」と「自律型」があることを解説しました。あなたの現場はどちらなのか、それは現場のマネージャーとメンバーで、またはメンバー同士の間で認識があっているのかを確かめてくれたと思います。
SNS上でのフィードバックで多かったのは「統制型」でした。もちろん、「自律型」がまったくいなかったわけではありません。また、どちらかに関わらず、現場内で認識が異なっている傾向も見受けられました。これらのフィードバックは私が10年以上に渡り現場訪問をさせていただいた際と大きく変わるものではありませんでした。
※余談ですが、Backlogを使っている現場とまだ使っていない現場で、統制型と自律型どちらのタイプの現場が多いのか、相関関係がわかるととても興味深いですね。
完全なる統制型も完全なる自律型もしんどい
前回の記事で、マネジメントのタイプを紹介しておきながら、ちゃぶ台をひっくり返すようですが、完全な統制型も自律型も実はとてもしんどいのではないでしょうか。
完全なる統制型とは、マイクロマネジメントと言えるでしょう。ひとり一人の行動や進ちょくまでマネージャーが把握することになります。まさに完全な統制型ですね。規模が大きくなるとリーダーやサブリーダーのような立場が間に入ってくることが多いですが、それも階層によって細部まで統制されることになります。
一方で、完全なる自律型は、すべての意思決定や説明責任を現場メンバー(チームとよく呼びます)で負います。統制型のようにマネージャーに頼っていたことも大部分はやります。
※この辺りは前回の記事「あなたの組織はどっち?〜統制型と自律型を解説〜」の統制型と自律型の図解をもう一度ご確認ください。
ここでは、両者の概要のみ挙げてみましたが、これだけでも「しんどそう」だということは現場経験のあるあなたなら想像したり、直感が働いたりすることでしょう。
統制型マネジメントで、メンバーの細部まで管理することは、優秀で経験豊富なマネージャーにとっては容易いことかもしれません。しかし、その域に達するマネジャーを育成するには時間もかかります。現場メンバーにはある意味、自発的な行動や意思を抑制してもらわなければなりません。個人の能力よりも全体としての均質的なわかりやすさが求められます。
自律型マネジメントで、チームが自律するには時間がかかります。口で「私たちはチーム」と言うだけで、自律的に動けるわけではありません。個人の経験や能力も活かしつつ、チームとしての意思と行動力が伴うには、そのチームで過ごした経験が重要になり、時間がどうしてもかかります。また、チームを取り巻く関係者にも、チームの意思と説明責任を示さねばならないため、チーム内が平和ならそれで良いとは限りません。
完全なものを追い求めるとしんどくなるので、ここからは完全なものを一旦諦めてみましょうと提案したいのです。
統制型と自律型は混在して良いという仮説
現場訪問や前回記事に対するフィードバックで、実際の組織のタイプに対する認識が一致しないことがあることがわかりました。その理由は2つあります。1つ目に、純粋にマネージャーとメンバー、メンバー間でコンセンサスが取れていないために起こります。2つ目に、実は統制型と自律型は現場で混在しており、立場や状況により統制型にも自律型にも見えてしまうということです。
今回は、後者にあたる統制型と自律型の現場内での混在について考察してみたいと思います。
「うちは統制型なんだけれど、マネージャーは現場のことはよく知らないと思う。現場は自分たちでなんとか仕事を回している」
こうした発言が生まれる背景として、マネージャーは現場メンバーから日次や週次のレポートが届いているため、それに基づいて統制できていると思っていることでしょう。現場メンバーは、現場メンバーでしかわからない、報告に至るほどのことではない、報告すると対応が間に合わないもしくは、余計な負荷がかかる、と思っているのかもしれません。
これを統制型と自律型とどちらだと言うべきかというと、私の個人的な意見としては「どちらでもない」が正直なところです。先程、完全な統制型も自律型もしんどいと書きましたが、不完全なものはもっとしんどいはずです。
では、この状況をどうしたら良いのでしょうか?統制型と自律型が混在している組織と考えて、整理してみることをお勧めします。
統制型アプローチ
「統制する対象は、メンバーではなく、チーム」
統制型でメンバー各位までマネジメントするのではなく、マネージャーが把握できる粒度や数を統制します。
例えば、20名のプロジェクトならば、5名のチームが4つ構成できるので、この4つのチームへの割り振りなどを管理します。その代わり、チームには、チーム内での意思決定や説明責任を持てるようにします。
マネージャーは、チームごとに計画と進捗を委ねることで全体の統制に注力できます。チームは自律して判断できるようになるため、問題に対して即対応できます。
こうした体制を作るためには、マネージャーに報告する義務を明確にすると良いでしょう。例えば、チームから見積もりと計画を提示する。実施中は、中間進ちょく報告と、リスクの報告を義務化するなどです。細かく見るのではなく、チームでマネジメントできることを明確にすることで、うまく進められるのではないでしょうか。
自律型アプローチ
「チーム内に専念する。チーム間やチーム外は、マネージャーに任せる」
自律型は、チームに一体感がでるので、成熟したチームは変化への対応も強くなる傾向があります。
しかし、変化をもたらすチーム外からの要請や圧力には比較的弱い傾向があります。例えば、チーム内では相対的な見積もりを採用していたとすると、それででてくる数値はチーム内でのみ通用する意味のある数値であり、チームの外や客観的な絶対値としては意味をなさないものとなりがちです。
チームには、チームでの仕事に注力してもらいたいので、チーム間の調整やチーム外の交渉は負担になります。そこをマネージャーが調整してくれるとチームは心理的な安全を得やすくなることでしょう。
統制型と自律型の度合い
どこまでを統制型、自律型でマネジメントするべきかは度合いの問題です。先に挙げた2つは、あくまで例ではありますが、度合いを考えるときの判断材料にはなると思います。
もしあなたの組織で統制型と自律型の度合いを議論したり、見極めたい場合は、2つの例を挙げながら、マネージャー、現場メンバー(チーム)にとって「不安」が少なくなる粒度について話し合ってみてください。
今回「チーム」という言葉を何箇所かで使っていますが、チームという言葉は気をつけた方が良いです。次回はこの「チーム」について考察していきたいと思います。
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