Backlogをボードゲームにしたら「プロジェクトテーマパーク」が生まれた話

Backlog開発チームの砂川です。この記事はBacklog Advent Calendarの12日目の記事です。本記事は、プロジェクト管理を題材とした記事ではなく、Backlogから着想を得て作られた「ボードゲーム」のメイキングについて書いた記事です。

2019年にヌーラボはプロジェクトテーマパークというプロジェクト管理を学べるボードゲームをリリースしました。一般販売はありがたいことに毎度完売しています(一方で、気軽にプレイできない状況になってしまい申し訳ないです…)。

そこで本記事では、この大人気のプロジェクトテーマパークがどのようにして作られたのか、企画から実際のゲーム製作まで一連の流れを、製作・開発者である砂川がお届けします!

プロジェクトテーマパークとは?

プロジェクトテーマパークは、プレイヤーがチームとなって、ヤル気を出したりサイコロを振りながら、期日までにテーマパークのオープンを目指すというものです。詳しい内容やプレイ感はユーザーのみなさんが書いてくれたプレイレポートをご覧ください。

プレイしていただいた方には伝わったと信じたいのですが、学習要素も持ちながらハラハラドキドキちゃんと遊べるガチのボードゲームになっています。

さてこのプロジェクトテーマパーク、実はプロジェクト開始から完成まで、まるまる1年ほどかかった長めのプロジェクトでした。プロジェクトの初期段階やテストプレイの他、ゲームの外側ではたくさんの人に協力してもらいましたが、ルールを構築したのは基本的に僕1人。

ですが振り返ってみると、ルール作りはチームビルディングにおけるタックマンモデルのような経緯を辿っていました。

ゲームのルールはそれぞれが他のルールと繋がりあって1つのメカニズムを構築するものなので、1つのチームと見立てることもできます(こじつけました)。タックマンモデルになぞらえて完成までの流れを追ってみることにしましょう。結構長い!

形成期:ボードゲームを作るということだけが決まる

なんでボードゲームを作ろうと思ったの?

プロジェクトテーマパークは「『プロジェクトを管理する』ということを沢山の人々が知ればもっと楽しく仕事ができる」というヌーラボの課題感から生まれたボードゲームです。

ヌーラボは数年前から、サルでもわかるプロジェクト管理入門サルでもわかるバグ管理入門のようなコンテンツも作成し、この課題に取り組んでいます。思いつきではなく、ヌーラボの割と根っこの方の課題感から生まれた製品なのです。

さて、この企画の始まりは「Backlogをボードゲームにしたい」というアイデアでした。イメージとして提示されたのはソフトバンクでも幹部教育に使われていたというマネジメントゲームです。社内のボードゲーム部の有志が集まり、開発が始まりました。

混乱期:表現したい要素がぶつかり合う

で、どうやってゲームにするの?

Backlogをゲームにすると聞いた時、みなさんはどのようなものを想像するでしょうか? 素直にゲームにすれば、課題がどんどん降ってきて、担当者を決め、課題の状態を処理中や完了にしてこなしていく、という形式のものではないでしょうか。

実際、初期の試作として、似たような形式のものもいくつか試してみました。しかしテストプレイをすると、ある大きな問題点が発覚します。

ボードゲーム初期の試作品たちボードゲーム初期の試作品たち

これ、まるで仕事だよ!

テストプレイに参加したメンバーの口から出てくるのは「これ、まるで仕事だよ!」でした。ゲームではなくて仕事をしている感覚になってしまい、プレイ中全っ然楽しくないんです。

かといってゲームとして面白いような仕組みを入れていくと、Backlogの形からどんどん離れていきます。さらに対戦型のゲームとなると、プレイヤー同士がタスクを奪い合うという世にも珍しい職場ができあがりました。

学習用のゲームなのか?楽しむためのゲームなのか?この2つの天秤が、製作の初期から僕たちの前に立ちふさがったのです。

面白くてためになる良いとこ取りのゲーム

今回のプロジェクトで厄介だったのは「学習とゲーム的な面白さのトレードオフのバランスを取るだけでは良いものにならない」ということです。

いくら含蓄のあるゲームでも面白くなければ真剣にはなれません。そしていくら面白くても、プレイヤーが何かを考えるきっかけにならなければ意味がありません。このトレードオフを破壊して「学ぶこともできるし、ゲームとしても面白い!」ゲームを作ることを目標に据えました。

実際に製作をしてみるとわかるのですが、Backlogを面白いボードゲームにして、さらにそのゲームでプレイヤーに何かを学習してもらうというのは、なかなかの高さのハードルです。「これ無理ゲーじゃん!」と何度も思いました。

このトレードオフを破壊するためには、ゲームのルールを作る前に以下の2つを考える必要がありました。

  • そもそもなんのために作るのか?
  • Backlogとはなんなのか?

僕たちは、ボードゲームはもちろん、Backlogの根本的なところを改めて見つめ直すことにしました。

統一期: 表現する核の要素を整理する

Backlogの思想をゲームにする

企画の始まりは「Backlogをボードゲームにする」でしたが、僕たちがボードゲームを作るのは、Backlogの使い方を覚えてもらうためではありませんプロジェクトのうまい進め方を楽しく学んでもらうため、に作るわけです。

そこで、Backlogの機能からこのヒントを探ることにしました。

Backlogの一番重要な機能は「課題機能」ですが、この機能は何のために作られたのでしょうか?

「課題」という機能は複数の人間が1つの目的に向けて協力し、プロジェクトを成功に導く助けのために作られた機能です。それであれば、作るボードゲームも「複数の人間が、ゲームを通して上手い協力の仕方を学べる」ものにしたい。

そこで「課題」や「状態」といった、Backlogというサービスの具体的な要素は一旦忘れて、プロジェクトという概念を見つめ直してゲームを作ることにしました。

つまり、Backlogをゲームにするのではなく、Backlogの裏に流れている思想をゲームにしようと考えたのです

最終盤まで手作りでした最終盤まで手作りでした

対戦ではなく協力!

自然な流れとして、マネジメントゲームのような対戦型ではなく、協力型のルールが採用されました。

プレイヤーは全員が1つのチームとなって同じ目的の達成に挑戦します。初期の試作では、各プレイヤーが素材を持ち寄って宇宙ステーションを建造したり、魔王を倒したりするものがありました。

魔王討伐プロジェクト

プロジェクトをモデル化する

協力してプロジェクト達成を目指すルールを構築するためには、プロジェクトが内包する要素を整理したモデルが必要です。

最終的に、以下のようなモデルを念頭にルールを組み上げていきました。

機能期:核の要素を表現するためのルールを構築する

プレイヤーに話し合ってもらうためのルール

協力型にすると決めたときに、ここは絶対に力を入れると決めたポイントがありました。いわばプロジェクトテーマパークの核となる要素です。それは、プレイヤーが真剣に話し合う時間をどこかに作ることです。

参加者が1つの目的に向かって建設的な議論が交わせるようなルールができれば、このゲームは成功だと考えました。

真剣に見積もりする大人たち。

そのために導入されたルールが「見積もり」です。

プロジェクトテーマパークにはスクラム開発の一部がモチーフに組み込まれています。

プレイヤーたちは、そのターンで取り組むタスクを、ターンが始まる前になるべく正確に見積もらなければなりません。見積もりは厳しすぎて達成できなければクライアントの信頼を損ない、ゆるすぎれば期限までにプロジェクトが完了しません。

そのターンで3つのタスクを取るのか、2つに留めるのか、また、難易度の高いタスクにはいつ取り組むのか。プレイヤーたちはあーでもないこーでもないと話し合います。

1. 見える情報を整理する

議論のためのルールを整えるとともに、見積もりの議論が白熱するように、見える情報と見えない情報を整理しました。

  • 最初から見えている情報
    • プロジェクトの期限
    • 達成に必要な全てのタスク
  • 議論すると見えてくる情報
    • 自分以外のプレイヤーが持つリソース
  • ぼんやりとしかわからない情報
    • 見積もりの後に起きるアクシデント

これらの情報が整理されることで、プロジェクトの先行きをふんわり予想できるようになり、どのタスクから取り組むか、誰が取り組むかをプレイヤーが議論できるようになりました。

逆に言えば、「なにを」「いつまでに」やるのかが、最初に明確になっていなければ、建設的な議論は難しいのです。

また、ゲームを面白くするためにアクシデントやプレイヤーのリソースは隠していますが、実際のプロジェクトでは、これらの情報も明確にしておくとプロジェクト進行が更に安定します。

2. バランスを整える

カードの数値の内訳やイベントの効果、タスクの難易度を調整していきます。確率などを計算して、事前にある程度のバランスは取れるのですが、テストプレイは必須です。

人を呼び集めてはテストプレイを繰り返す度に、問題点や改善案が見つかりました。

3. ルールは最低限に

機械が計算してくれるデジタルゲームとは違い、ボードゲームは人間が全てのルール処理をしなければなりません。

数値の計算やプレイの工程を可能な限り取り除き、ゲームとしての深さとルールの明快さ、そしてテーマの表現、という三点の並立を目指しました(最終的にルールはやや複雑になってしまいましたね)。

この段階で、数字の異なる三色のサイコロや、ヤル気カードは1枚ずつ出すなどのルールが採用されていきます。

例えば、エースは数字が2から7までの青いサイコロを振ることができますが、サイコロが一種類だった段階では「出た目に+1する」という能力でした。

「+1をする」という仕様から「青いサイコロを振る」に変えることで、プレイヤーの計算が1つ減るのです。ヤル気カードの枚数を1枚に制限したのも、計算処理を少なくするためです。

4. 泣く泣く外した「スター(☆)」

開発の初期段階から存在し、個人的にも気に入っていたものの、泣く泣く外した要素があります。それは「スター(☆)」です。

Backlogには課題やコメントにイイネ!を込めて送るスター機能があり、Backlogの思想を体現した特徴の1つとも言える機能です。プレイヤーはゲーム開始時にスターカードをたくさん持っていて、メンバーがナイスプレイをした時にポイポイ送り合う、というものでした。ちなみに、このスターはゲーム上の何の効果もありません!

この要素はプレイ中の雰囲気作りに一役買っていたのですが、一方で「スターをたくさんもらったら、なにか有利になるご褒美が欲しい」というフィードバックもありました。

ナイスプレイにはメリットを。ゲーマーとしてはとてもよくわかる意見です。

ですが、スターには見返りがないということが重要でした。ゲーム上のご褒美を与えてしまえば、損得を超えてお互いを褒め合うための要素としては破綻してしまいます。このフィードバックは受け入れられませんでした。

となると、スターという要素はプレイ中の思考のノイズになってしまいます。ルールはなるべくシンプルにしなければなりません。それにどうせやるならカードじゃなくて大量の星型のチップにしたい……そうするとコストが……という葛藤の末、泣く泣く要素自体を外すことにしました。

5. プロジェクト管理っぽさを出す

ルールがほぼ固まり「プレイして面白い!」という自信も持てるようにはなったのですが、問題が1つ残っていました。

プロジェクト管理感が薄い、という問題です。このゲームにはプロジェクト管理というもののエッセンスが抽象化されて取り込まれているのですが、抽象化したが故に、テーマが伝わりにくくなっていたのです。

そこで取り入れられたのがバーンダウンチャートを描く」という工程です。

プロジェクトテーマパークでは、毎月終了時に進捗をバーンダウンチャートとしてマーカーで記録しますが、この工程はゲーム的には全く必要のないものです。しかしこの工程があることで進行の振り返りがしやすくなり、クリアに向けてどの程度進行しているのかをプレイヤー全員が把握できるようになりました。

6. 誰でも取り組みたくなるモチーフ

ルールを固めるのと並行して、このボードゲームがどんなプロジェクトに取り組むものなのかを決めていきました。

ヌーラボはWebサービスの開発会社ですが、このボードゲームは業種を問わず遊んでもらいたいものです。「システム開発」や「Webサイト制作」のようなプロジェクトをモチーフにしてしまえば、業種外の人が敬遠してしまいます。

いきなり「要件定義」などと言われてもなんじゃそりゃですよね。

セロテープをたくさん使いました

業種も問わず、男女も年齢差も問わず、進行のイメージがしやすく、取り組みたいと思えるもの……と考えた結果、街やビルを発展させるものやバベルの塔、ノアの箱船のような案もありましたが、最終的にテーマパークの建築プロジェクトに決定しました。

役割やイベント、細かいフレーバーテキストも「あるある」と思えるようなクスッと笑える表現とゲーム的な機能を両立させるようにまとめ、その後、コンポーネントやパッケージのデザインを整えていきました。プロジェクトテーマパークの誕生です。

そして完成した「プロジェクトテーマパーク」

完成したボードゲームは、アトラクションを建築する順番について、大人たちが肩書きや年齢を忘れてあーだこーだと真剣に話し合うものになりました。

Backlogが企画の始まりだったということは一見するとわからないかもしれませんが、ルールは全てBacklogとヌーラボの思想を表現したものです。

プロジェクトテーマパークで挑戦するプロジェクトは理想に近い

出来上がったものを改めて見てみると、プロジェクトテーマパークで挑戦するプロジェクトは比較的理想に近い状態であることに気づきます。

プロジェクト開始時から、やるべきタスクは全てリストアップされて可視化され、それぞれのタスクでは何をすれば完了になるかが明確に定義されています。メンバーの個性は役割カードとして全員が把握できて、アクシデントは必ず(!)見積もりの後に発生するとわかっています。有給休暇は申請すれば必ず取得できますし、信頼関係さえあればクライアントはリスケを受け入れてくれます。何より、途中でタスクが増えたりしません!

これらはつまり「やるべきことを明確にする」というステップをしっかり踏んだ上で、ようやくプロジェクトテーマパークで表現しているような戦いの舞台に立てる、というなかなか厳しい現実を示してもいます。

ゲームの中のプロジェクトはあくまでモデルであり、簡略化されたものです。

しかし、複雑な事情の絡む現実のプロジェクトであっても、情報を整理し、目的とやるべきことを明確にしていけば、メンバー全員で成功に向かって進みやすくなるのではないかと思います。

プロジェクトテーマパークのメイキング記事、どうでしたか?Backlog Advent Calendarの他の記事もとてもおもしろいのでぜひご覧ください!

おまけ

実はプロジェクトテーマパークは、僕がヌーラボに入ってから作った2つ目のゲームです。1つ目のゲームはBacklogの中に隠されているので探してみてください! ヒントは「ゴリラがいる、見つからない時にだけ見つかる画面」です。

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