部門の壁を越えてBacklogを広げる「巻き込み術」|NuWave vol.2イベントレポート

2026年9月17日、東京のヌーラボ東京事務所にて「NuWave vol.2」を開催しました。

今回のテーマは「部門の壁を越える『巻き込み術』〜DX推進を加速するBacklog運用ルールの作り方〜」です。

「自分のチームではBacklogを使えているのに、他の部署にはなかなか広がらない」「ルールを決めたはずが、いつの間にか守られなくなっている」。ツールの導入推進を担う方なら、一度はこうした壁にぶつかったことがあるのではないでしょうか。

今回のNuWave vol.2では、少人数から始めて組織へ広げていく導入の進め方から、Backlogを人と組織を育てる場として捉え直す視点まで、2名のユーザー様から実践知を共有いただきました。後半には、参加者の皆さまのお悩みに登壇者のお二人が答える「なんでも相談コーナー」も行いました。当日の内容をまとめましたので、ぜひご一読ください。

※掲載内容はすべてイベント開催当日時点の情報です。

Backlogという乗り物に、チームで乗り慣れる 3人から始める業務改革

ご登壇者紹介

Piece of Make
峠 幸寛 様

峠様が最初に紹介したのは、Backlogを使う前の状態です。前任のリーダーが退社し、大規模なプロジェクトを丸ごと引き継いだとき、QA管理表には同じ質問に違う回答が並び、仕様書と設計書の内容も食い違っていました。依頼側もベンダー側も担当者とマネージャーが入れ替わり、いつ誰が何を承認したのかもわからない状態です。そこから議論や決定事項をすべてBacklogに残すようにしたことで、打ち合わせは週1回1時間に減り、資料を読んでから会議に臨むことで、より深い議論ができるようになったそうです。

峠様がBacklogを使ううえで徹底しているのは「自分が楽になるために使う」ことです。資料を探す時間や再説明の時間といったムダ、遅れの理由や仕事の偏りが見えないムラ、計画にない仕事を抱え込むムリを減らしていく。楽になる工夫を積み重ねてチームに還元することで、やらされ感のない推進を続けられるといいます。

進め方として示されたのが、Backlogを乗り物に見立てた3つのステップです。まずは自分が徹底できるシンプルなルールで乗り慣れること。次に、Backlogに慣れていないメンバー同士なら3人ほどでルールを作り込みます。峠様は思いついても自分からは提案せず、メンバーに考えてもらうそうです。自分で組み立てたものに愛着がわく「イケア効果」で、ルールが定着しやすくなるからです。最初に決めるのは、実施内容、資料の置き場、達成条件、担当者、期限の5つだけ。ルールは2週間に1回、みんなが覚え直せる範囲で少しだけ見直します。

3つ目のステップは「部門をタクシーに乗せる」ことです。他部門にはBacklogを見てもらうだけと割り切り、議事録やタスクはこちらで作成します。メールやチャットで依頼が来ても、返信の際には必ずBacklogに起票し、「こちらに返答を書いたので確認してください」と案内して、以降のやりとりをBacklogの中で完結させます。ただし、乗り心地が悪いまま乗せると「使いづらいツール」というレッテルを貼られてしまうため、少人数から順番に広げることが欠かせません。

目指すのは「私のチームの芝は青い」と思われる状態です。うまく回っている姿を見せていけば、真似したい人や聞きたい人が自然に増えていきます。「今日お伝えした3つのステップから始めていただければ」という呼びかけで、セッションが締めくくられました。

Backlogを入れても定着しない?「ツール導入」を「組織の課題解決」に変える視点

ご登壇者紹介

システムワークスジャパン株式会社
髙木 俊輔 様

Backlogを使い始めて約9年、JBUG横浜の運営にも携わる髙木様のセッションは、Backlogの使い方ではなく、使っていく中で生まれる「付加価値」についてのお話です。お気に入りの機能は、AIアシスタント、親子課題、メールによる課題登録の3つだそうです。

導入や利用拡大の場面では、目的が曖昧なまま自部署だけの利用にとどまる、課題が更新されず口頭やチャットでの確認に戻ってしまう、メンバーが指示待ちになりリーダーだけが課題を抱える、といった悩みがよく聞かれます。髙木様は、こうした課題の本質はツールや運用ルールではなく「現場の主体性の欠如」にあると指摘しました。

そこで提案されたのが、Backlogを主体性を引き出すコーチングの場にすることです。課題の進捗や結果が画面で見えるからこそ、単なる消化チェックではなく、会話と成長の機会として使えます。相手が変わるのを待つのではなく、まず自分の関わり方や伝え方を変えること。小さな成功体験を積み重ねること。信頼関係をベースにフィードバックすること。この3つを通じて、メンバーは目配り、気配り、心配りを発揮する勇気と知恵を身につけていきます。親戚の6歳の男の子に、お願いごとをする前にまず感謝を伝えることを教えたエピソードも交えながら、Backlogを人やチーム、組織を育てるプラットフォームとして捉え直す視点が語られました。ヌーラボのブランドメッセージ「このチームで一緒に仕事ができてよかった」を生み出せることこそがBacklogの価値だ、という言葉も印象的でした。

社外のメンバーと協働する場面で髙木様が大切にしているのは、タスクレビューです。抜け漏れや期限、担当者の確認だけでなく、Backlogの使い方の約束や、自社がどんな業界でどんな働き方をしているのかを相手に理解してもらう場にもなります。お互いを知ることで、会社の垣根を越えたワンチームとしての当事者意識や、相手の立場に立つホスピタリティが生まれるといいます。直接の契約関係がない会社同士でも、相手の遅れが自分たちの仕事に影響すると気づけば、指示を待たずに動ける関係になれるそうです。

質疑応答では、うまくいかないときの対応について質問がありました。髙木様は、定期的なミーティングでタスクを見直し、黄色信号や赤信号になっているものを改めて共有する場をつくっていると答えました。

なんでも相談コーナー

【写真:なんでも相談コーナーの様子】

休憩を挟んだ後半は、参加者の皆さまに紙に書いていただいたお悩みをもとに、峠様、髙木様と一緒に解決策を考える「なんでも相談コーナー」を行いました。進行はヌーラボの藤本が務めました。

1つ目は、課題に添付したファイルをその場で編集できないため、OneDriveのリンクを課題に貼って運用しているが、よりよい方法はないかというお悩みです。峠様は、Googleドライブを併用しつつ、WBS自体をBacklogの課題にしてガントチャートで管理していると紹介しました。発注者目線のWBSで粒度が粗めだからこそうまく回っている面もあり、開発側の細かいWBSとどう両立させるかは今後の検討ポイントとなりました。いただいたご要望は、ヌーラボでもしっかり受け止めています。

2つ目は、メンバーによってツールの熟練度がバラバラだというお悩みです。髙木様は、テンプレートで記載内容の粒度をそろえ、まずは課題の起票や更新といった最低限の機能から使ってもらい、慣れてきたら次の機能を任せていると話しました。峠様からは、Backlog Worldなどのイベントに同僚を誘い、管理者の目線や他社の使い方に触れてもらうことで使い方が変わったという経験が共有されました。教えるよりも「感じる」機会を増やすことが、自然な変化につながるといいます。

3つ目は、予定に対する実績が入力できず、プロジェクトが進んでいるのか期限を変えただけなのか判断しにくいというお悩みです。髙木様は、どこまで終わったら何パーセントという基準を決めて進捗率を更新し、期限を変える場合はコメントに理由を残す運用を紹介しました。峠様は、期限は勝手に変えないことを基本にしつつ、件名に前回からの進捗率の変化を書き、件名を見るだけで進み具合がわかるようにしているそうです。遅れた原因を分析して次に生かすためにも、初期計画とのずれが見える仕組みは大切だと話しました。

最後に、Backlog World 2026の運営にも携わるお二人から、参加をおすすめする一言をいただきました。峠様は3年前に初めて参加し、管理者の目線に触れたことが大きな気づきになったといいます。今年はワークショップを担当し、参加型のコンテンツを準備しているそうです。髙木様は2024年の登壇をきっかけに運営に加わり、今年は「双方向性」をテーマに、参加者同士が学び合える場づくりに取り組んでいると話しました。

ユーザー会を終えて

今回のNuWave vol.2では、少人数でBacklogに乗り慣れるところから他部門を巻き込むまでの進め方、そしてBacklogを人と組織を育てる場として捉え直す視点まで、「部門の壁をどう越えるか」を多角的に考えました。

共通していたのは、ツールの使い方を押しつけるのではなく、まず自分の関わり方を変えることから始めるという姿勢です。自分たちが楽になる使い方を見せること、相手を責める前に伝え方を見直すこと。そうした一人ひとりの小さな変化が、部門や会社の垣根を越えてBacklogが広がっていく土台になります。

ご登壇いただいた峠様、髙木様、そしてお悩みを共有してくださった参加者の皆さま、ありがとうございました。

今後もNuWaveでは、ヌーラボ製品の導入・定着・活用に取り組む方々が実践知を共有し合える場をつくっていきます。

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