製品の設計や生産において、効率的なデータ管理をするために、PDMについて詳しく知りたい方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、PDMの導入を検討している方向けに、「PDMとは何か」「主な機能や導入するメリット」「導入を成功させるために必要なポイント」「PDMとPLMとの違い」について解説します。PDMについて詳しく知るうえで、ぜひお役立てください。
目次
PDM(Product Data Management)とは
PDM(Product Data Management)とは、設計時に作成するCADなどの製品データや、BOM(部品表)などの設計技術に関する情報を一元管理する、製品情報管理システムです。
設計ではCADを使うのが一般的ですが、CAD以外の製品データも多数存在します。仕様書などの文書、設計データ、設計や生産の日程など、作成アプリケーションも異なるデータが膨大にあり、管理も一苦労です。しかし、PDMを導入することで、製品ごとにデータを一元管理することが可能になります。
PDMの機能
PDMには、主に次のような機能があります。
1)データの一元管理
PDMでは、CADデータやBOM(部品表)、図面やドキュメントなど、膨大なデータを一元管理できます。各製品情報に対して、画像や文書など形態が異なるデータを複数紐づけた管理が可能です。データごとのバージョン管理やアクセス権設定もできます。
2)BOMの作成・管理
全製品を通じてBOMデータの同期が可能になり、整合性の維持や、変更前後における違いの確認ができます。
3)ワークフローの管理
自社における業務の流れにそったワークフローを設定できます。ワークフロー機能にそって業務を進めることで、ワークフローの可視化や標準化が自動的に達成可能です。
また、ワークフロー上にチェックポイントや申請・承認ポイントを設置することで、進行の遅れや重要な工程で、自動アラートを送信したり上司の確認を必須にしたりするシステムにすることもできます。
4)データの検索
ファイルや図面をキーワードで検索可能です。ファイル内の文章検索が可能なシステムもあります。
5)セキュリティ
データを共有したいメンバーのみで共有できるよう、ユーザーやチームごとにアクセス権限を設定できたり、担当する製品や工程以外のデータは更新できないようにしたりなど、さまざまな制御が可能です。
PDMを導入するメリット
PDMを導入するメリットとして、主に次の点が挙げられます。
1)データの一元化
製品設計のデータ管理における問題点として、主に次の点が挙げられます。
1)情報数が膨大すぎて管理できない
2)必要なデータを検索できない
3)どれが最新データか分からない
製品設計においては、複数の部署がそれぞれ膨大な情報を扱います。製品数が増えるほど情報も増えるため、社内ネットワークのファイルサーバー上でフォルダ管理をするのも限界です。
部署ごとにデータの管理方法が異なるなど、部署間を横断する仕組みが存在しないと、必要なデータの検索ができない場合もあります。
さらに、情報のアップデートは担当者任せが多く、古い情報のまま更新されなかったり、どの情報が最新か分からなかったりという事態も発生します。このような状態では、情報を探すだけで時間がとられてしまいます。
PDMの導入によりデータを一元管理できれば、必要な情報がすぐに入手できるため、情報を探す時間が削減され生産性の向上につながります。
2)データをリアルタイムで共有
部署をまたがって共通するデータに修正があった場合、部署ごとに更新のタイミングが異なる問題もあります。PDMの導入により、複数のデータに共通する更新はリアルタイムで同期できるため、どのデータが最新かで悩むことはなくなります。
また、従来は地方や海外など遠隔地とのデータ共有は、メールなどではリアルタイム性やセキュリティに課題がありました。PDMの導入により、遠隔地ともリアルタイムでデータ共有ができるため、海外での製造などグローバル化にも対応できます。
3)データの再利用
データの一元化と検索性の向上により、既存の製品・部品データの再利用もスムーズになります。別製品の設計データ構成をフォルダごとコピーして、ファイル名を変更してそのまま利用し、共通する部品については元ファイルを参照などの制御も可能です。また、複数のデータに共通する変更の同期もできます。
4)ワークフローの可視化・標準化
製品の品質管理をするうえでは、ワークフローの厳守が重要です。しかし、ワークフローが分かりづらく仕組みに落とし込まれていないと、守ろうとしても守れません。
PDMのワークフロー機能に沿って仕事を進めることで、自然とワークフローの可視化・標準化が可能です。加えて、ワークフロー上へのチェックポイントの設置により、上司の確認や承認を確実化できます。
5)生産性の向上
製品の設計をするうえで、膨大な情報をどのように管理して活用するかは、生産性に大きく影響します。PDMの導入による、データの一元化に伴う検索性の向上や、ワークフローの標準化に伴うムダな業務の削減などを受け、業務が効率化され生産性が向上し、開発期間も短縮されます。
6)認定取得やクレーム対応のサポート
PDMの導入により、あるデータがいつ作成・更新されたかといった履歴の管理が可能です。こうした履歴管理は、ISO認定などの取得や、クレームや製品不良の原因究明に役立ち、社会的な信頼や企業イメージの向上にもつながります。
PDMの導入を成功させるためには
PDMの導入を成功させるためには、次の点に注意する必要があります。
1)データ管理における問題点を把握する
PDMの導入を決める前に、まずは、自社のデータ管理においてどのような問題点があるのか、現場の意見をヒアリングして把握することが重要です。その後、PDMの導入によって解決できる問題点を絞り込みます。
2)経営陣と現場が問題意識を共有する
PDMの導入には、現場における運用体制の整備が不可欠です。また、新システムの導入に現場が抵抗を示すケースもあります。
PDMを導入する前に、経営陣と現場が「このような問題点があるので、PDMを導入してこのように改善する」と問題意識を共有することが大切です。ともに目的を明確化し、経営陣は現場の理解、現場は当事者意識を持つことに努めましょう。
3)段階を踏んで改善していくという意識が大切
一度にすべての問題点を解決しようとすると、かえって上手くいきません。段階を踏んで改善していこうという意識が大切です。
どの問題点から重点的に解決するかを決めたら、段階を踏んでPMDを導入します。最初はできるだけ単純な仕組みにして、ひとつの部署のみに導入し、状況を見ながら他部署に導入を拡大していくのがよいでしょう。
導入後は、現場からのフィードバックを受けて、使いづらい点を徐々に改訂していきます。そのため、自社で改訂やワークフローの変更などができるシステムかどうかも、PDMを選ぶ際のポイントにしましょう。
4)現場への周知を行い、運用体制を確立する
PDMの導入初期には、現場には何らかの負荷がかかります。そのため、PDM導入による効果を事前にアピールし、関心と当事者意識を持ってもらいましょう。また、PDMの使用方法についての研修や、データの分類基準を統一なども必要です。
5)仕組みはシンプルに
ワークフロー上のチェックポイントやPDMの画面項目など、製品を管理する仕組みが複雑すぎると、現場が更新作業を負担に感じてPDMが活用されないケースがあります。
現場にはシステムが苦手な従業員もいる可能性を考慮し、仕組みはできるだけ分かりやすくシンプルにすることが大切です。画面項目は、項目ごとに優先度をつけ、必要性が高いもの以外の項目はできるだけ減らしましょう。
PDMとPLMの違い
「PDM」と似ている用語に「PLM」があります。PLM(Product Lifecycle Management)とは、製品のライフサイクルを通して、製品情報をトータルで管理するシステムを指します。
製品のライフサイクルとは、企画・設計開発・生産準備・生産計画・製造・販売・廃棄などを指し、調達軸からみた調達や、販売軸からみた販売計画や保守なども含まれます。
PDMとPLMとの違いは、どの工程に特化しているかという点です。
PDMは、設計におけるCADデータやBOMといった製品データの管理に特化している傾向があります。対してPLMは、設計工程に限定せず、生産設備や人員、流通やユーザーサポートといった、製品のライフサイクルすべてにおけるデータ管理を対象としています。
しかし、PDMでも設計以外の工程も対象としているシステムがあり、PDM・PLMシステムを提供するベンダーによって対象範囲や解釈が異なり、違いは明確にされていません。
まとめ
PDMの導入により、「データの一元化」「データのリアルタイム共有」「データの再利用」「ワークフローの可視化・標準化」「生産性の向上」「認定取得やクレーム対応のサポート」など、多くのメリットを受けられます。
PDMの導入を成功させるためには、「データ管理における問題点の把握」「経営陣と現場での問題意識の共有」「PDMの段階的な導入」「現場への周知と運用体制の確立」「シンプルな仕組み」などが注意ポイントです。
PDMの導入に限らず、データ管理を効率化するためには、自社における問題点の把握が必須となります。問題点を把握したうえで、設計工程における製品データ管理を集中的に解決したいのならPDMを導入し、設計工程に限らず製品ライフサイクルにおいて総合的にデータを管理したいなら、PDMに加えてPLMも検討したほうがよいでしょう。
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