事業を成功させるための目標を設定したり、事業計画書を作成したりするうえで、「KSFとは何か」を理解することは有益です。
この記事では、「KSFとは何か」「KGIやKPIとの違い」「KSFの設定例」「KSFを抽出するためのフレームワーク5選」などについて解説します。KSFについての理解を深めるうえでご活用ください。
目次
KSFとは
それでは、「KSFとは何か」について解説します。
KSFとは
KSF(Key Success Factor)は「重要成功要因」と訳され、事業を成功させるために必要な要因を指します。
KSFは、市場の動向や競合の参入・撤退などの外部要因と、自社の強みや後述するKGI(最終目標)達成に必要な要素などの内部要因の2つです。
外部環境分析から外部要因を、内部環境分析から内部要因を明確化します。
KSFは一度設定したら終わりではなく、技術のアップデートなどの外的環境を受けて日々変わっていきます。
そのため、事業における成功を継続するためには、KSFの変化に合わせてビジネスの戦略・戦術を変えていくことが必要です。
KSFと似ている用語には、CSF(Critical Success Factor)などがあります。
KSFがなぜ必要か
KSFが必要な理由として挙げられるのは、消費者の多様化するニーズへの迅速な対応が求められるなか、企業経営において戦略立案が重要な位置を占めてきているという背景です。
フレームワーク分析から抽出したKSFを戦略立案に活かすことは、事業成功に効果的な手段であるため、KSFの必要性が注目されてきています。
KSFが明確であれば、1〜3年後を見越した事業計画書が立案可能なため、たとえば新規事業への参入などもスムーズにいきやすいです。
KSFとKGI・KPIとの関係
KSFと似た言葉に、KGIやKPIがあります。
同じようなアルファベットの略称なので区別しづらいですが、事業目標を達成するうえで、KGI・KPI・KSFの各内容と3つの関係を理解することは重要です。
KGIとは
KGI(Key Goal Indicator)とは「重要目標達成指標」と訳され、最終的な目標を数値化した指標を指します。
KGIは、抽象的な目標ではなく、具体的な数値での設定が大切です。
たとえば、ECサイトでの売上増加に対するKGIを設定する場合、単なる「売上アップ」ではなく、「半年以内に単月の売上2,000万円を達成」など具体的に設定します。
KPIとは
KPI(Key Performance Indicator)とは「重要業績評価指標」などと訳され、KGI達成に必要となる、各プロセスの目標を数値化した指標を指します。
KPIは、特にWebマーケティング・営業などで用いられるケースが多いです。
KGIを達成するために、どんなプロセスでどのような目標数値を達成すればよいか、具体的な道筋を示すものがKPIです。
そのため、KPIもKGIと同じく、具体的な数値で設定します。
たとえば、「半年以内に単月の売上2,000万円を達成」というKGIに対して、「○月の購入者数○人を達成」など、購入者数や訪問者数、自然検索流入数などにおいて期日と具体的な目標数値を用いた、複数のKPIを設定します。
KSFとKGI・KPIとの関係
KSFとKGI・KPIとの関係が分かりやすいように、ダイエットを例にして説明します。
ダイエットにおいては、次のようになります。
KGI:2ヶ月で3kg減量
KSF:「運動」「食事制限」など
KPI:
・毎日40分ウォーキングする(運動)
・1日1600kcalの摂取に抑える(食事制限) など
「2ヶ月で3kg減量」というKGIを設定したら、その目標を達成するための要因(KSF)を分析します。
「運動」「食事制限」などのKSFが抽出できたら、各KSFに基づいたKPIを設定します。
KSFは「運動」などの内部要因だけとは限りません。
単身赴任によって不規則な食生活になりがちであれば「食生活」がKSFとなるかもしれません。このようにKSFは外部の影響を受けて変化することがあります。
KSFの設定例
ダイエットにおけるKSFの設定を例に挙げましたが、事業においても同じように、KGIを達成するための(または障害になる)要因を、内的・外的なものを含めて抽出します。
たとえば、化粧品メーカーにおけるKGI「○ヶ月以内に売上○%増加」に対して、挙げられるKSFは「商品力」「ブランド力・認知度」などです。
複数のKSFの中でどのKSFに重点を置くかは、後述するバリュー・チェーンのどこに付加価値を置くかに関連してきます。
KSFとなる要因の例として、たとえば次の要因が挙げられます。
- 生産
- 販売
- サービス
- 広告宣伝
- マーケティング
- 品揃え
- 流通
- 研究開発
- 調達
- 人材
- 組織 など
KSF分析のためのフレームワーク5選
KSFの抽出・選定においては、フレームワークによる分析が有効です。
ここでは、一般的に用いられることが多いフレームワーク5選を紹介します。
3C分析
3C分析とは、次の3つの視点をもとにKSFを抽出するフレームワークです。
- Customer(顧客・市場):顧客層や顧客ニーズなど
- Competitor(競合):競合他社の現状や市場シェアなど
- Company(自社):自社の強みや弱み、評価など
3つの頭文字「C」を取って、3C分析と呼ばれています。CustomerとCompetitorは外部要因、Companyは内部要因です。
まず、Customer(顧客・市場)分析を行い、どのような人が顧客ターゲットなのか、顧客ニーズにはどのようなものがあるのかといった、顧客層・顧客ニーズ、市場動向・環境などの現状や変化を把握します。
この分析で、KBF(購買決定要因)の抽出が可能です。
次に、Competitor(競合)分析を行い、競合他社の現状や市場シェア、強みや弱み、受けている評価、顧客ニーズへの動向などを把握します。
その後、Company(自社)分析を行って、自社の強みや弱み、どのような評価を受けているかなど、現状の把握と競合との比較を行います。
こうした3つの分析から、顧客ニーズを満たして競合と差別化でき自社の強みを発揮できるようなKSFの抽出が可能です。
5F分析
5F(Five Forces)分析とは、次の5つの視点をもとにKSFを抽出するフレームワークです。
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
- 売り手の交渉力
- 買い手の交渉力
- 競合他社との敵対関係
新規参入・代替品の脅威は外部要因、それ以外は内部要因です。
外部要因として、新規参入の脅威には、法改正や規制整備、技術革新、経済成長率の低下など、新規参入するうえでの脅威が挙げられます。
代替品の脅威として挙げられるのは、代替品になり得る商品やその価格、提供価値などです。
内部要因として、売り手の交渉力には企業数や力関係といったサプライヤーの現状など、買い手の交渉力には販売業者数などの、各交渉力の強化により利益低下につながる脅威が挙げられます。
競合他社との敵対関係として挙げられるのは、競合や業界の現状など、競争関係の激化につながる要素です。
5F分析によって、業界における現状の明確化や、自社の「機会」と「脅威」の分析ができ、業界における差別化を保てる地位獲得のためのKSFを抽出します。
SWOT分析
SWOT分析とは、次の4つの視点をもとにKSFを抽出するフレームワークです。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
4つの頭文字「S・W・O・T」を取って、SWOT分析と呼ばれています。StrengthとWeaknessは内部要因、OpportunityとThreatは外部要因です。
まず、外部要因のうち、自社にとってプラスとなるOpportunity(機会)、マイナスとなるThreat(脅威)を分析します。
機会や脅威として挙げられるのは、技術革新による変化や経済情勢、ビジネスチャンスまたは危険要素になり得る環境変化や、競合の参入や撤退といった動向、顧客層やニーズの変化などです。
次に、内部要因のうち、自社にとってプラスとなるStrength(強み)、マイナスとなるWeakness(弱み)を分析します。
強みや弱みとして挙げられるのは、商品・サービス力、技術力や運用経験、情報のアピール方法、競合と比較した強みや弱みなどです。
そのうえで、クロスSWOT分析を行って、分析した外部要因において、競合と比較して差別化できるようなKSFを抽出します。
PEST分析
PEST分析とは、次の4つの視点をもとにKSFを抽出するフレームワークです。
- Politics(政治的要因)
- Economy(経済的要因)
- Society(社会的要因)
- Technology(技術的要因)
4つの頭文字「P・E・S・T」を取って、PEST分析と呼ばれています。すべて外部要因です。
Politics(政治的要因)では、法律や条例、税制や政権交代などの政治的要因が、自社にどのような影響を与えるかを分析します。
想定される例としては、薬事法や派遣法の改正など、業種によってはダイレクトに影響を受ける法改正においては、市場の勢力図が変わるタイミングでもあるため、早めの対応が必要などの分析結果です。
同様に、経済成長や株価・金利などのEconomy(経済的要因)、社会構造や消費行動などのSociety(社会的要因)、イノベーションや特許などのTechnology(技術的要因)を分析し、自社への影響を把握したうえでKSFの抽出につなげます。
バリュー・チェーン
バリュー・チェーンとは、企業の活動を、製造やサービスなどの「主活動」と、人事労務や技術開発などの「支援活動」に分け、どのプロセスでどのくらい「付加価値」が生じているかを明確化するフレームワークで、内部要因の分析に用いられます。
まず、自社における活動を主活動と支援活動に分けて図にします。
次に行うのは、各活動やプロセスでの強みや弱み、コストなどの分析による、自社現状の把握です。
その後、次の4つの視点をもとに、VRIO分析のフレームワークから経営資源を分析します。
- Value(価値)
- Rareness(希少性)
- Imitability(模倣可能性)
- Organization(組織)
結果、内部要因である自社の強みや弱みを把握して、KSFの抽出につなげます。
KGI達成のためには、KSFの抽出とKPIの設定が不可欠
最終目標であるKGIを達成するためには、その要因として何が必要なのか各種フレームワークを使って分析し、KSFの抽出が必要です。
そして、KSFをもとに、具体的な目標としてKPIを設定します。
そのためには、KGI・KPI・KSFの関係性を理解し、事業の成功に必要な要因を見極められるように、それぞれの理解を深めましょう。
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