組織やチームのマネージメント手法として1on1ミーティングに取り組む企業が増えている。
企業文化や組織形態によって1on1ミーティングの場に求められるものは異なるものの、目指しているところには共通した部分が多い。ヌーラボでも昨年から取り組んでいるがいまだ試行錯誤をしている。この場を借りて一度、1on1について整理してみたい。
目次
なぜ1on1をやるのか?
1on1は読んで字の通り1対1で実施するミーティングであり、いわゆる個人面談の一種である。通常の業務ミーティングとは異なり、業務の中では話せないようなメタ的な話をする場になる。
半年や一年に一回ではなく、毎月や毎週といった頻度で行い、上司や先輩が一方的に指導するのではなく傾聴やコーチングによって本人の気付きを引き出す、というのがいままでの面談とは違う特徴になる。
なぜこのようなスタイルの1on1がいま注目されているのか?
組織として大きな力を発揮するためには、構成する個人がそれぞれ自分がどう動くと効率的か、先に向かってどういう役割を担っていくべきか理解して行動する必要がある。バラバラで噛み合わない組織では、高いパフォーマンスは発揮できない。
軍隊的なガチガチのヒエラルキー組織であればそういったものはトップダウンで与えられるだろう。しかし、変化の大きい市場に対応することを目指す柔軟な組織では、自分で状況に応じて活路を見出す必要がある。じゃないと組織が環境変化に置いていかれるのだ。
こうした組織では、自律的に問題を発見し解決できる人材や、個性にマッチした適切な役割を発見し担い合えるチームが求められる。1on1は、そういった自律的な人材になってもらうのをサポートする仕組みなのだ。
ちなみにヌーラボの場合、一昨年まで、社長が年一回、全員の個人面談を実施していた。
上記の1on1スタイルと比べると頻度が少ないが、まだ社員数が少なく、また新しく入る人もレアだったので、それぞれがやっていること、やるべきことを把握しやすいく、フォローもしやすい状況だったのであまり問題なかった。
しかし、一昨年から採用を増やし組織としてサイズアップしていく過程で、新しく入る人をきちんとフォローする体制がないことや、いままでの会社の文化がうまく伝えていけないなどの懸念が生じた。成長しても壊れないような組織体制へシフトいていく中で、時間をかけて現場に近い人間がフォローするような仕組みとして1on1の取り組みも導入されたのだった。
1on1をどのような場にしたら良いか
さて、実際に1on1ではどういったことをするのか?以下の表は、1on1を3つの目的に分類した表だ。
1on1の場 | 目的 | 話す内容 | 求められる役割やスキル |
問題解決の場として | 業務の効率化 | 業務の中で引っかかっていることやその解決方法など | コーチング、メンタリング、問題解決力 |
スキルやモチベーション把握の場として | 組織全体としての効率化 | 得意なこと、チャレンジしたいことなど |
共感力 |
評価フィードバックの場として | 成長方向の軌道修正 | 現在の評価、期待されていることなど |
評価力や組織の中でどう成長していくかを支援する力 |
表に書かれている3つの目的別に1on1を紐解いていく。
1.問題解決の場として
普段関わっている業務の効率化を目的とする場合。業務がうまく進められないと感じている場合に、その原因を本人に探ってもらう。この場合も自律的な成長を促すためにティーチングではなくコーチング、精神面含めた働き方の支援が必要な場合はメンタリングといった手法をメインに据えて行う。ただし、成長の段階に合わせて問題解決の手法を選ぶべきであり、まだ業務経験が浅いなどの場合はティーチングから始め、徐々に自分で問題に気付けるようにガイドしていく。
また、本人だけでは解決できない問題は組織として解決すべきでそいういった問題が大きくなりすぎる前に気付き手を打つことも目的に含まれる。
2.スキルやモチベーション把握の場として
特定業務ではなく組織全体としての効率化を目的とする場合には、人材を適切に配置する必要がある。変化に強い組織は、状況に応じて内部で人を適切に移動できる組織だ。そのためには現在のスキルの適性であったり、どういった業務にモチベーションが湧くかどういった役割で貢献したいかなどを把握しておく必要がある。
業務からではなく趣味として何に取り組んでいるかという話からでも、本人が気づいていない得意分野が引き出せることもある、かもしれない。
3.評価フィードバックの場として
年一回の評価とフィードバックでは、自己と外部からの認識のギャップが大きくなりすぎるのでこまめにフィードバックを伝え、日頃から組織で求められることをアップデートする必要がある。現在の立ち位置、どういうことを期待しているかを1on1を通じて小まめに伝えることで、個人の行動が軌道から大きくずれる前に修正できる。
1on1実施者が求められる役割とスキルはそれぞれの目的によって異なる。すべてを同じ人がやる必要はなく、分けてセッティングしても良い。一人で全部できるのなら時間を区切って「今はこういう場」と明示してから話始めるのが良いだろう。
1on1を成功させるために知っておきたいこと
以下では、1on1を成功させるために押さえておくと良いポイントを解説する。
どれくらいの頻度でやるか
毎週なのか毎月なのかどれくらいのペースで1on1を行うのか?
あまり間隔が空きすぎると前回何を話したか、思い出すのに時間をとられるので空けすぎないほうが良い。日々の業務について相談するタイミングにもなるので頻度を多く、時間は短くするのがよい。また新入社員や新しくチームに入ったメンバーは頻度を多めにする、など個別調整をするのも良いだろう。
誰がやるのか
1on1は、評価と密接に関わっていることもあるため上司部下の組み合わせで実施されることが多い。メンタリング重視の場合は、直属の上司部下でなくとも「ロールモデル」となる人がやるとうまくいく傾向にあるので先輩後輩の組み合わせがよい。
ヌーラボ(Backlogチーム)の1on1の場合
では私たちヌーラボの場合はどうだろう?
社内の1on1は、全員が参加し、月に1回、時間は30分〜1時間程度だ。新入社員やサービス開発の経験が少ないメンバーについては慣れるまで毎週やることもある。場所は会議室か、フランクに話せる近所の喫茶店を選ぶことが多い。(※ちなみに喫茶代は1on1の予算として確保されている)
ヌーラボの場合は基本的に役職がなく、組織構造はフラットに近い。通常であれば上司と部下のような組み合わせで1on1は実施されるが、ヌーラボでは「Bridge」というヌーラボの文化を発信したり評価を担当するチームを編成しており彼らが評価者として1on1を実施している。
もちろん、評価以外をBridgeでない人にお任せすることもある。またやり方もひとによって異なり、PCを使わずにポストイットを活用したり、A4用紙に話した内容を書き出したりする(文字起こしは大変だが…)など工夫を凝らしている。こうしたノウハウは共有される。
実際に筆者も1on1を評価者として取り組んだことがあるが、コーチングやメンタリングのスキルをある程度習得しないと効果的な1on1を実施するのは難しいかも…ということを実体験として感じている。
1on1を通じて、個人の成長やキャリアアップをどうやって支援できるのか。また、そこから派生して1on1でフィードバックをするための評価制度をどのように設計するかなど、1on1を実施する上で固めなければならないことは多い。
しかし、1on1を有効に活用できれば個人の能力を最大限に活かしつつ自律的で柔軟な組織が手に入るだろう。あなたのチームでも1on1をぜひ一度実施してみてはいかがだろうか?
参考資料
– ヤフーはなぜ6000人の社員を巻き込む「1on1ミーティング」を続けるのか?
– 週1回×15分でチーム変革!事業を成功に導くクックパッドの振り返り
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