その“症状”、きっと治ります!プロジェクトマネジメントのお悩みに“効く”おすすめ本をご紹介【第5回】

プロジェクトマネジメントのお悩みに“効く” おすすめ本のご紹介 第5回

日々の業務を進めるなかでは実にさまざまな問題に見舞われます。当初の計画にはなかった企画の追加や大幅な仕様変更が頻繁に発生したり、成果物の完成後にやり直しを求められたりといった経験がある方は多いでしょう。業務やプロジェクトが予定どおりに進まないのはよくある話です。しかし、しばしば発生するようであれば、そこには何かしらの原因が潜んでいるかも知れません。

本ブログではプロジェクトで起こりがちな問題を病に見立て、その症状と原因に“効く”「おすすめ本」をピックアップして、全5回の連載でご紹介します。最終回の本稿では「後天性蛇足・転変症候群」に効く本をラインアップ。「プロジェクト・クリニック」を運営されている前田考歩氏に、さまざまなジャンルからおすすめ書籍を“処方”していただきました。

選者/執筆:前田 考歩 氏

前田 考歩(まえだ・たかほ)氏
選者/執筆
前田 考歩(まえだ・たかほ)氏

プロジェクトの「言語化」と「構造化」を支援するツール「プ譜」を考案。「プ譜」を用いたコンサルティングやProject Based Learningの研修・授業を企業・教育機関向けに提供する『プロジェクト・クリニック』を運営。著書:『予定通り進まないプロジェクトの進め方』(宣伝会議)『紙1枚に書くだけでうまくいく プロジェクト進行の技術が身につく本』(翔泳社)『ゼロから身につくプロジェクトを成功させる本』(ソーテック社)等

こんな症状があったら、「後天性蛇足・転変症候群」かも知れません

  • プロジェクトが動き出してから、当初の計画にはなかった追加の企画・設計・開発作業が発生した
  • 成果物ができても上司やクライアントからやり直しをたびたび求められる
  • システムの仕様変更が相次ぐ

みなさんのプロジェクトではこんな症状が起きていませんか?…というより、こんなことが大なり小なりしばしば起こるのがプロジェクトです。

プロジェクトの問題症候群マップ

プロジェクトの問題症候群マッププロジェクトの問題症候群MAP(クリックで拡大)

原因:さまざまな「●●症候群」が積み重なった結果

後天性蛇足・転変症候群はこれまでの記事で紹介してきた症候群が原因で起きています。
成功の定義があいまいだったり多義的だったりするため、仕様変更が相次ぐ
全体像や状況・過程が把握できていないため、ステークホルダー間で認識のズレが起きている
品質の基準を共有していなかったため、成果物のやり直しをたびたび求められる

当初の計画からの変更が絶対悪ということではありません。未知のプロジェクトに計画の変更はつきものです。また、計画や仕様の変更にも柔軟に対応しやすいアジャイルの考え方は、システム開発以外の業務にも広がりつつあります。

しかし、問題が発生するたびに無計画に際限なく対応してしまったり、その影響で追加の企画や設計作業が相次ぎゴールも見失ってしまうような事態に陥ってしまえば、それは後天性蛇足・転変症候群です。

これらの症状は、いわゆる「スコープの変更」をすることで回避できる場合があります。

たとえばシステム開発のプロジェクトであれば、当初の計画ではすべての機能を最高品質でリリースする予定だったけれども、リリース状況と残り時間、機能がユーザーに与える影響やビジネス上の重要度などに鑑みて、「今回のプロジェクトではこの機能開発はここまで」「この機能はリリースしない(対象から削る)」といった判断をするといった、目標の変更を行うことです。救急医療現場の「トリアージ」のように、緊急度や重症度に応じて優先順位を決め、改めて成功の定義を調整することで、プロジェクトをソフトランディングさせることができます。

症状が悪化すると:納期遅れやコスト超過に直結。プロジェクト失敗の一歩前

この症候群の悪化は納期遅れやコスト超過に直結します。プロジェクト失敗のまさに一歩手前です。時間が経過するほど、追加作業にかかる時間のねん出や、その分ほかの作業を削ったり後回しにしたりといったリソースの調整が難しくなります。追加の予算と時間が必要になったとしても、用意できないケースも多いでしょう。

大幅な納期遅れやリリース延期は、会社として失注や減収につながりかねない深刻な事態です。そうなればプロジェクトは「失敗」と判断され、マネージャーやリーダーは管理能力を問われることもあるでしょう。クライアントワークであれば信用を失い、取引は終了…というように、最悪の事態に発展する可能性もあります。

処方箋:おすすめ書籍

なんとしても避けたい後天性蛇足・転変症候群ですが、予防するにはこれまでの記事で紹介してきた症候群を起こさないのが一番です。それ以外にも起きた変化への対応方法や、これまでの意思決定を適切に記録して、その記録を素材としてより創造的なプロジェクトに変化させていく考え方を知ることで、症状が出てきたとしても改善していくことができます。

アジャイルサムライ−達人開発者への道−

プロジェクトでは計画の変更、仕様の追加などは日常茶飯事ですが、これを際限なく受け付けるわけにはいきません。本書では、新しく機能などを追加する場合、既存の機能や変更のために要する時間に同等するものを削るといった対処方法を知ることができます。またこのようなルールをクライアントと共有することで、際限のない追加や変更を予防することができます。システム開発プロジェクトでなかったとしても参考になる考え方を学べます。

ルールの世界史

うまくいっていないプロジェクトは、そもそものやり方やルールに間違いがあったり不備があったりする可能性が高いです。そんなときは思い切ってやり方やルールを変える必要があります。最初に決めた計画を変更することにためらいがある方に読んでいただきたい一冊です。

マインドストーム☆〔新装版〕☆: 子供,コンピューター,そして強力なアイデア

プロジェクトでは最初に立てた計画通りに、何の変更や障害もなく成功にたどり着くということはまずありません。一発で正しい答えを出すことよりも、問題を発見して解決し、つくり直し、改善していくことが重視されます。バグ(bug)を取り除く(de-)「デバッグ」の思想をプロジェクトに組み入れて計画・進行していくヒントを得ることができます。

レッジョ・エミリアと対話しながら:知の紡ぎ手たちの町と学校

本書で紹介されている「ドキュメンテーション」は、子どもたちの学習過程や、意味の探究、知識の構成方法を、目で見えるものにしてくれるものです。この手法は、プロジェクトの複雑さを汲みとり、定型的であったり不定型であったりする複数の動きをよく記述し、変化を活かす視点を与えてくれる方法です。

おわりに

いかがでしたか?さまざまな原因が積み重なり、プロジェクト失敗につながってしまう前に、ひとつずつ対処していくことの必要性を強く感じますね。また、最初に決めたゴールや定石にとらわれ過ぎずに、変化や変更に対して柔軟に対応できる体制を整えることも重要です。一方で、対応すべきことの取捨選択や、過去の実績や経験からの学びも積み重ねていきたいところです。

状況変化への対応方法や意思決定の背景・経緯などの記録には、Backlogが便利です。
日々の業務管理・プロジェクト管理にBacklogを活用することで、全体の進行状況を管理できるだけではなく、大小さまざまなタスクの詳細、関連情報や対応履歴、担当者のやり取りなどをすべて情報として残すことができます。
知識と情報、そしてノウハウの蓄積と共有は、さまざまな「症候群」の改善に役立ちます。

30日間無料トライアルもご用意しておりますので、ぜひお試しください。

本ブログは全5回の連載で、プロジェクトの問題でよく見られる「〇〇症候群」の解説と、処方箋(おすすめ書籍)をご紹介してまいりました。問題解決の糸口を見出すきっかけになれば幸いです。

第1回:プロジェクト経験不足

第2回:あいまい・多義性症候群

第3回:俯瞰不全症候群・情報コスト高症候群・コミュニケーション不全症候群

第4回:抱え込み症候群・中央集権症候群・フォロワーシップ不全症候群

第5回:後天性蛇足転変症候群

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