プロジェクトを円滑に進めるためには、プロジェクト管理を適切に行うことが極めて重要となります。しかしながら、効率的なプロジェクト管理の方法がわからない方やプロジェクト管理の目的を理解できない方も多いはずです。
そこで本記事では、プロジェクト管理のスコープや管理手法、また進め方について解説します。これから自社の様々なプロジェクトを推進する立場の方であれば、最後までお読みください。
目次
プロジェクト管理とは?
プロジェクト管理は、特定の目標を達成するために、計画、実行、監視、そして完了までの一連のプロセスを体系的に行うことを指します。
プロジェクトは、明確な開始と終了があり、特定の成果物を生み出すためにリソースを効率的に活用する必要があります。そのため、プロジェクト管理は、時間、コスト、品質、リスクなどの要素を考慮しながら、プロジェクトを成功に導くための手法となります。
プロジェクト管理が行われる領域
プロジェクト管理は、さまざまな領域で実施されており、その適用範囲は非常に広いです。
一般的には、建設、IT、製造、マーケティング、研究開発など、多岐にわたる業界でプロジェクト管理の手法が用いられています。
IT業界では、ソフトウェア開発プロジェクトにおいて、要件定義からテスト、リリースまでの各フェーズを管理することが求められます。
また、マーケティング分野では、キャンペーンの計画や実施を通じて、効果的なプロモーションを行うための管理が重要です。
プロジェクト管理の目的
プロジェクト管理は、単にタスクを進めるための手段ではなく、明確な目的を持って行われる重要なプロセスです。ここでは、プロジェクト管理の各目的について解説します。
目標達成期間・時期の順守
プロジェクト管理において、目標達成期間や時期の順守は重要な要素です。プロジェクトは通常、特定の期限内に成果物を提供することを求められます。
このため、プロジェクトの進行状況を常に把握し、計画通りに進めることが求められます。期限を守ることで、クライアントや関係者の信頼を得ることができ、次のプロジェクトへの良い影響を与えることにもつながります。
プロジェクト目標達成による利益の最大化
プロジェクト管理において、目標を達成することは単なる成果物の完成にとどまらず、企業や組織にとっての利益を最大化する重要な要素です。
プロジェクトが設定した目標を達成するために、リソースの最適化やコスト削減に取り組むことになります。
まず、プロジェクトの目標が明確であることが前提です。具体的な目標設定は、プロジェクトチーム全体の方向性を定め、各メンバーが自分の役割を理解しやすくします。これにより、作業の効率が向上し、無駄な時間やコストを削減することができます。
プロジェクト管理のメリット・デメリット
プロジェクト管理は、プロジェクトを成功に導くための手法ですが、その実施にはメリットとデメリットが存在します。ここでは、メリットとデメリットについて紹介します。
プロジェクト管理のメリット
プロジェクト管理は、組織が目標を達成するために不可欠なプロセスです。
その主なメリットは、効率的なリソースの配分、時間の最適化、そしてリスクの軽減にあります。まず、プロジェクト管理を行うことで、限られたリソースを最大限に活用することが可能になります。
さらに、プロジェクトの進行状況を把握しやすくなるため、時間の管理が向上します。進捗を定期的にチェックすることで、遅延が発生した場合でも迅速に対策を講じることができ、納期を守ることが容易になります。
プロジェクト管理のデメリット
プロジェクト管理は多くの利点を提供しますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。
まず、プロジェクト管理には時間とリソースが必要です。特に、計画や進捗の追跡、報告書の作成など、管理業務に多くの時間を割かなければならないため、自身の業務に集中できない場合があります。
次に、プロジェクト管理の手法が複雑であることもデメリットの一つです。特に新しい管理手法やソフトウェアを導入する際には、チームメンバーがその使い方を習得するためのトレーニングが必要となり、初期の段階で混乱を招くことがあります。このような学習曲線は、プロジェクトの進行を遅らせる要因となることがあります。
プロジェクト管理の主な項目
プロジェクト管理を効果的に行うためには、いくつかの重要な項目を把握し、それぞれを適切に管理することが求められます。以下に、プロジェクト管理の主な項目を紹介します。
スコープ管理
プロジェクト管理において、スコープ管理は重要な役割を果たします。
スコープとは、プロジェクトの目的や成果物、作業範囲を明確に定義することを指します。スコープ管理を適切に行うことで、プロジェクトの目標を達成するために必要な作業を特定し、無駄な作業やリソースの浪費を防ぐことができます。
コスト管理
コスト管理とは、プロジェクトに必要な資金を計画し、実行し、監視するプロセスを指します。これにより、プロジェクトが予算内で進行し、無駄な支出を抑えることが可能になります。
コスト管理の主な目的は、プロジェクトの全体的なコストを把握し、適切にコントロールすることです。具体的には、プロジェクト開始時に予算を設定し、その後の進捗に応じて実際の支出を追跡します。これにより、予算オーバーを防ぎ、必要に応じて調整を行うことができます。
スケジュール管理
スケジュール管理は、プロジェクトの進行状況を把握するプロセスです。プロジェクトの遅延を防ぐために行われます。
スケジュール管理では、プロジェクトの全体的なタイムラインを設定し、各タスクの開始日と終了日を明確にし、依存関係を考慮する必要があります。その上で、タスクの優先順位を決定し、リソースの割り当てを行います。
要員管理
要員管理では、プロジェクトに必要なスキルや経験を持ったメンバーを選定し、役割分担を明確にすることが求められます。
まず、要員管理の基本的なプロセスには、メンバーの選定、チームビルディング、パフォーマンスの評価、そしてフィードバックの提供が含まれます。
プロジェクトの初期段階で、必要なスキルセットを明確にし、それに基づいて適切な人材を選ぶことが重要です。また、選定したメンバーが効果的に協力できるように、チームの雰囲気やコミュニケーションの促進にも配慮する必要があります。
品質管理
品質管理とは、プロジェクトの成果物が顧客の期待や要求を満たすことを保証するためのプロセスを指します。具体的には、品質基準の設定、品質計画の策定、品質の測定と評価、そして必要に応じた改善策の実施が含まれます。
品質管理はリスク管理とも密接に関連しており、品質に関する問題を早期に発見し、対処することで、プロジェクトの成功率を高める役割も果たします。
さらに、品質管理はプロジェクトの各フェーズで継続的に行う必要があります。計画段階では、品質基準を明確にし、実行段階ではその基準に従って作業を進め、監視段階では成果物の品質を評価し、必要に応じて改善策の実施が必要です。
リスク管理
リスク管理も重要な要素です。リスクとは、プロジェクトの進行に影響を及ぼす可能性のある不確実な要因を指します。これらのリスクを適切に特定し、評価し、対策を講じることで、プロジェクトの成功率を高めることができます。
また、プロジェクト管理の不確実要素としては、次のようなものがあげられます。
- 要件定義を誤り、追加作業が発生する
- チームメンバーが病欠になり、リソースが足りなくなる
- PCが故障し、作業ができなくなる
リスク管理ではまず、リスクの特定を行います。これは、プロジェクトに関連する潜在的なリスクを洗い出す作業です。次に、特定したリスクの評価を行い、その影響度や発生確率を分析します。この評価に基づいて、リスクの優先順位を決定し、対策を立てることが重要です。
代表的なプロジェクト管理の手法・方法
プロジェクト管理の手法や方法は多岐にわたりますが、ここでは特に代表的なものをいくつか紹介します。
CCPM
CCPM(Critical Chain Project Management)は、プロジェクト管理の手法の一つで、特にリソースの制約を考慮した効率的なプロジェクト進行を目的としています。
CCPMは、プロジェクトのスケジュールを最適化し、遅延を最小限に抑えることを重視しています。CCPMでは、プロジェクトのクリティカルパスを特定し、リソースの利用状況を分析することで、プロジェクト全体の進行をスムーズにすることが可能です。
CCPMの特徴的なアプローチは、タスク間の依存関係を考慮しつつ、リソースの競合を解消することにあります。これにより、プロジェクトの進行中に発生する可能性のあるボトルネックを事前に特定し、対策を講じることができます。
WBS
WBS(Work Breakdown Structure)は、プロジェクト管理において重要な手法の一つです。WBSは、プロジェクトを小さな作業単位に分解することで、全体の作業を視覚的に把握しやすくするための構造を提供します。
WBSを用いることで、プロジェクトの範囲を明確にし、各作業の責任者や期限を設定することが可能になります。
WBSの主な目的は、プロジェクトの複雑さを軽減し、タスクの管理を容易にすることです。具体的には、プロジェクトの全体像を把握しやすくするために、作業を階層的に整理します。これにより、各作業の進捗状況を追跡しやすくなり、問題が発生した際にも迅速に対応できるようになります。
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backlog.comガントチャート
ガントチャートは、プロジェクトの各タスクを時間軸に沿って表示することで、全体の進捗状況を一目で把握できるようにします。具体的には、横軸に時間を、縦軸にタスクを配置し、各タスクの開始日と終了日をバーで示します。
ガントチャートの最大の利点は、プロジェクトの進行状況を視覚的に把握できるため、関係者全員が同じ情報を共有しやすくなる点です。
これにより、タスクの遅延や依存関係を迅速に特定し、適切な対策を講じることが可能になります。また、タスクの優先順位を明確にすることで、リソースの最適化にも寄与します。
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カンバン
カンバンは、視覚的な管理を重視し、作業の流れを可視化することで、チーム全体の進捗状況を一目で把握できるような手法です。カンバンは、アジャイル開発や製造業で広く用いられています。
カンバンボードを使用することで、タスクの状態を「未着手」「進行中」「完了」といったカテゴリに分け、各タスクの進捗をリアルタイムで確認することが可能です。
カンバンの基本的な考え方は、作業の流れを最適化し、ボトルネックを特定することにあります。これにより、チームはリソースを効率的に配分し、無駄を省くことができます。
関連機能: ボード | 機能 | Backlog
PERT
PERT(Program Evaluation and Review Technique)は、不確実性が高いプロジェクトにおいて、タスクの所要時間を見積もるために用いられます。
PERTは、プロジェクトの各タスクに対して楽観的な見積もり、悲観的な見積もり、そして最も可能性の高い見積もりの三つを設定し、それらを基に平均的な所要時間を算出します。
この手法の大きな利点は、プロジェクトの進行に伴うリスクを軽減できる点です。タスクの所要時間を複数のシナリオで考慮することで、予期しない遅延や問題が発生した場合でも、柔軟に対応できる計画を立てることが可能になります。
また、PERTは視覚的にプロジェクトの全体像を把握しやすくするため、関係者間でのコミュニケーションを円滑にする効果もあります。
PPM
PPM(Project Portfolio Management)は、複数のプロジェクトを戦略的に管理する手法です。PPMは、プロジェクトの選定、優先順位付け、進捗管理を行うことで、全体のパフォーマンスを向上させる役割を果たします。
PPMの目的は、プロジェクトの整合性を保ちながら、リスクを管理し、利益を最大化することです。これにより、企業は市場の変化に迅速に対応し、競争力を維持することが可能になります。
また、PPMはプロジェクト間の相互依存関係を考慮し、リソースの重複や無駄を排除するためのフレームワークを提供します。
PMBOK®
PMBOK®(Project Management Body of Knowledge)は、プロジェクト管理の知識体系を体系的にまとめたガイドラインです。これは、プロジェクト管理のベストプラクティスや標準的な手法を提供し、プロジェクトマネージャーが効率的にプロジェクトを進めるための指針となります。
PMBOKは、プロジェクト管理のフレームワークを提供するだけでなく、プロジェクトの成功に必要な要素を包括的にカバーしています。
PMBOKの管理項目
PMBOKは、プロジェクト管理のベストプラクティスを体系化したガイドラインであり、プロジェクト管理の専門家にとって重要な指針となっています。
PMBOKでは、プロジェクト管理を成功に導くための管理項目が定義されており、これらはプロジェクトの計画、実行、監視、制御、そして完了に至るまでの各フェーズで必要不可欠な要素です。
PMBOKの管理項目は、以下の10の知識エリアに分類されます。
1.統合管理
プロジェクト全体を統括し、各要素が調和して機能するように管理します。
2.スコープ管理
プロジェクトの範囲を明確にし、必要な作業を特定して管理します。
3.スケジュール管理
プロジェクトのタイムラインを設定し、進捗を追跡します。
4.コスト管理
プロジェクトの予算を策定し、コストを監視します。
5.品質管理
プロジェクトの成果物が求められる品質基準を満たすように管理します。
6.資源管理
プロジェクトに必要な人材や物資を適切に配置し、管理します。
7.コミュニケーション管理
プロジェクトチームやステークホルダーとの情報共有を円滑に行います。
8.リスク管理
プロジェクトに影響を与える可能性のあるリスクを特定し、対策を講じます。
9.調達管理
外部からの資源やサービスの調達を計画し、管理します。
10.ステークホルダー管理
プロジェクトに関与するすべての関係者との関係を構築し、維持します。
これらの管理項目を適切に実施することで、プロジェクトの成功率を高め、効率的な運営が可能となります。
プロジェクト管理の流れ
プロジェクト管理は、計画的にプロジェクトを進めるための一連のプロセスを含んでいます。以下に、プロジェクト管理の基本的な流れを紹介します。
目標の設定
プロジェクト管理において、目標の設定は重要なステップです。明確な目標がなければ、プロジェクトチームは何を達成すべきかを理解できず、結果としてプロジェクトが迷走する可能性があります。
目標を設定する際には、SMART原則を活用することが推奨されます。SMARTとは、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)の頭文字を取ったもので、これに基づいて目標を設定することで、より実現可能な計画を立てることができます。
必要タスクの整理
プロジェクト管理を円滑に進めるためには、タスク整理も重要です。この段階では、プロジェクトの目標を達成するために必要で具体的な作業や活動を明確にし、リスト化します。タスクを整理することで、プロジェクトの全体像を把握し、各タスクの優先順位や依存関係を理解できます。
まず、プロジェクトの目的や目標を再確認し、それに基づいて必要なタスクを洗い出します。この際、関係者とのコミュニケーションを密にし、意見を集約することが重要です。
タスクは、具体的で測定可能な形で記述し、誰が担当するのか、いつまでに完了させるのかを明確にすることを心がけましょう。
計画書の作成
プロジェクト管理を効果的に進める上で、計画書の作成は重要なステップです。計画書は、プロジェクトの全体像を明確にし、関係者間での共通理解を促進する役割を果たします。
具体的には、プロジェクトの目的、スコープ、スケジュール、リソース、リスクなどを詳細に記載し、実行に向けた具体的な指針を提供します。
計画書を作成する際には、プロジェクトの目的を定義することに加え、スコープ設定も重要です。スコープとは、プロジェクトで実施する作業の範囲を指し、これを明確にすることで、後の工程での変更や追加作業を防ぐことができます。
進捗チェック
プロジェクト管理を成功させるためには、進捗チェックは不可欠です。プロジェクトが計画通りに進んでいるかどうかを確認することで、問題点を早期に発見し、適切な対策を講じることが可能になります。
進捗チェックは定期的に行うべきであり、プロジェクトの各フェーズにおいて進行状況を把握するための指標を設定することが求められます。
進捗チェックの方法としては、定期的なミーティングや報告書の作成が一般的です。これにより、チームメンバー間での情報共有が促進され、問題が発生した際には迅速に対応することができます。
まとめ
プロジェクト管理は、プロジェクトを成功に導くための手法であり、その目的や手法を理解することは、プロジェクトを円滑に進めるために欠かせません。
プロジェクト管理の基本的な仕組みや、さまざまな管理手法を学ぶことで、目標達成に向けた計画を立て、リソースを効果的に活用することが可能になります。
今後、さまざまなプロジェクトに取り組む際には、この記事で得た知識を基に、より効果的なプロジェクト管理を実践していくことをおすすめします。
また、プロジェクト管理を円滑に進めたい方であれば、プロジェクト管理ツールBacklogの活用をご検討ください。
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