「キックオフ」とはサッカーの試合開始時にボールを蹴り出すこと。試合開始を意味します。
人は何かが始まるとき、未来に何が起こるのかわからない不安からドキドキします。そして、これから見る新しい世界がどんなものかとワクワクした気持ちにもなります。プロジェクト開始時にも皆同じ気持ちが起きることもあるでしょう。
そんな浮き足立った気持ちをプロジェクトを進めるエネルギーに変えるため、プロジェクトを開始するときに実施するのがキックオフミーティングです。
キックオフミーティングが上手くいくと、プロジェクトを成功に導く鍵になります。逆に上手くいかないとプロジェクトメンバーの士気を下げることにもなりかねません。
メンバーのモチベーションを上げ、プロジェクトを成功に導くためのキックオフミーティングを実施するコツを紹介します。
目次
キックオフミーティングとは?
キックオフミーティングとは、プロジェクトの開始をメンバーに知らせるイベントです。
ステークホルダー全員を集めた大規模なものもあれば、社内メンバーのみで行うものもあります。あるいはもっと小規模な集まりもあります。
内容も、メンバーの顔合わせ程度のものから、プロジェクト計画を詳細に説明するものまであり多様です。
ですが、どんな規模のキックオフミーティングでも、メンバー全員と目的を共有することは共通しています。
メンバー全員が同じ目的を共有することが、プロジェクトの成功にはとても大事です。ここでは、キックオフミーティングをやる意義について3つ紹介します。
プロジェクトの目的をメンバーと共有する
キックオフミーティングでは、そのプロジェクトの目的や目標をメンバー全員と共有します。
「このプロジェクトの目指す先はどこなのか」
「プロジェクト成功のために自分ができることは何か」
「プロジェクトリーダーが求めているものは何か」
メンバーにはそれぞれ違う役割があります。もしも目的を共有しないままプロジェクトを開始すると、メンバーはそれぞれ違う方向に進んでしまう可能性が高くなるので全員で同じゴールに向かうために、目的を共有しましょう。
メンバーはキックオフミーティングに参加することで、プロジェクトの進む方向性と、自分の立ち位置を把握することができます。
全員が同じ目的を持ち、一丸となることでプロジェクトは正しい方向に進みます。
プロジェクトの情報を共有する
キックオフミーティングでは、プロジェクトの日程、コスト、体制、課題といった情報を全員で共有します。情報共有をする理由は、メンバー全員がプロジェクトの理解を深めるためです。各メンバーは共有された情報をもとに自分の役割を確認します。
情報をその場の全員で共有すると、プロジェクトを進める際に前置きの必要がなくなり、コミュニケーションコストを下げることができます。また、全員で情報を確認すると多角的な視点を持てるので、参加者の理解が深まるという利点もあります。
キックオフミーティング中、情報を共有した後で各メンバーが話せる時間を設けるのも効果的です。各メンバーは話すことで、「いつまでに何をする必要があるか」を具体的に考えることができます。
「いつまでに何をする必要があるか」が分かれば、プロジェクトリーダーの細かな指示がなくても、メンバーは作業を進めることができます。
メンバーの信頼感を醸成する
キックオフミーティングで大切なのはメンバーの信頼感を醸成することです。信頼感があると、メンバーは目標に向かって一丸となって進むことができます。
課題が出てきたときはお互いが自然と助け合える雰囲気が生まれ、プロジェクトが円滑に進んでいきます。信頼感のあるプロジェクトはメンバー同士が、いい影響を及ぼしあい成功に向かって進みます。
また、メンバーの信頼感は、使命感を生みます。「皆のために、自分の役割を全うしよう」と考えるからです。いい雰囲気はプロジェクトを成功に導きます。
キックオフミーティングの進め方
キックオフミーティングをスムーズに進めるためには、いくつかポイントがあります。ここではキックオフミーティングの内容を4つ紹介します。
プロジェクトの方向性を示す
キックオフミーティングで初めにやるのは、プロジェクトの方向性を示すことです。そのためにプロジェクトの目標や目的を「シンプル」に説明します。
メンバーは作業に追われて方向性を見失ったときに、プロジェクトの目的を思い出します。困ったときや悩んだとき、目標が思い出せれば間違った行動を取りづらくなります。
複雑な目標ではメンバーから忘れ去られてしまいます。常に心に留めておけるくらい「シンプル」なものがお勧めです。
具体的な体制を説明する
プロジェクトで重要なのは体制です。メンバーはプロジェクト内の自分の立ち位置が気になるものです。
「自分が与えられた役割が何か」
「責任の所在がどこにあるのか」
「課題が出たら誰に相談すればいいのか」
キックオフミーティングで体制が説明されていれば、自分の役割を認識しやすいです。各部門の責任者がわかると、現場は混乱しづらくなります。
プロジェクトが進行すると皆、自分の作業にかかりきりになります。相談したいことが出てきても、誰に相談すれば良いかわからなくなります。
こんなときに体制図があれば、相談相手を間違えません。すべての課題がプロジェクトリーダーに集中して、リーダーの業務が回らなくなることも防げます。
課題や未決定事項を明らかにする
キックオフミーティングで、すでにわかっている課題や未決定事項があれば伝えましょう。一覧で見れる資料があれば、参加者により伝わるのでよいでしょう。
課題はプロジェクトの進行を妨げます。皆で共有すると、解決の糸口が早く見つかる可能性が高くなります。
また、課題を明示することでプロジェクトリーダーには見えていなかった課題がわかることもあります。そして、これらの課題をいつまでに解決しないといけないか全員が把握しておくことで、現場の混乱を抑えることができます。
未決定事項を伝えるのも大切です。未決定事項に関連する作業に関わるメンバーは、自分の仕事が進まない理由がわからないと不満がたまりやすくなるのでキックオフミーティング内に伝えることで、メンバーの不満を緩和させることができます。
また、いつまでに決める必要がある、という期限をメンバーから言い渡されることもあるでしょう。各メンバーが把握することで、未決定事項が放置されることはなくなります。
メンバーの自己紹介と質疑応答
プロジェクトが始まったときに初対面のメンバーがいる場合、メンバーの自己紹介は重要です。初対面の人に話しかけるのは勇気がいりますよね。それが仕事の相手なら、なおさらです。
自己紹介をすることで、声や話し方、表情などから相手のひととなりが伝わります。メンバー同士が知り合うことで親近感が湧いて、プロジェクトによい雰囲気が広がります。自己紹介がしにくい雰囲気の場合はアイスブレイクを兼ねたアクティビティを挟んでも良いでしょう。
短くでいいので、なるべく全員が話す機会を儲けましょう。時間がないという場合は、責任者だけでも構いません。必ずキックオフミーティングに自己紹介を入れましょう。
キックオフミーティングの開催を告知するときに自己紹介することを伝えておくと、よいでしょう。心構えができて自己紹介がスムーズに進みます。
また、キックオフミーティングの最後に質疑応答の時間があるとよいでしょう。人はわからないことがあると、仕事の進みが遅くなります。疑問は早めに解決しましょう。プロジェクトが円滑に進みます。
質疑応答があると各メンバーの理解が深まります。各メンバーが持っている知識や考えていることが、ほかのメンバーにも伝わるからです。
そのプロジェクトに対してより具体的なイメージがしやすくなります。質問を引き出しやすくするには「どう感じたか」という問いかけをするとよいでしょう。「どう感じたか」と聞かれると、発言のハードルが下がるため、相手が話しやすくなります。
各メンバーの異なる視点からのコメントは、理解を深めるきっかけとなり、メンバー全員の言葉が、全体の理解度を高めてくれます。
こんなキックオフミーティングはNG!失敗例3選
キックオフミーティングは、成功するとプロジェクトにいい影響を与えます。逆に、うまくいかないと悪影響が広がることもあります。
「プロジェクト開始だから、何となくキックオフミーティングをやってみた」
「時間もないことだし、とりあえずやっておこう」
こんな状態でキックオフミーティングを実施すると高い確率でうまくいきません。ここでは、キックオフミーティングでやりがちな失敗例3選をあげ、その対策について紹介します。
準備が不十分なまま開催する
「必要な資料ができていない」
「話す内容を決めていない」
準備が不十分というのは、よくやってしまう失敗です。キックオフミーティングは準備が欠かせません。それは、プロジェクトリーダーの意志を、メンバーに向けて正確に伝えるためです。準備を万全にするとメンバーは理解しやすくなります。
そのために、まず行うのはアジェンダの作成です。アジェンダとは会議の計画書のことです。キックオフミーティングの計画を立てます。アジェンダは以下のような内容です。
- 誰を呼ぶか
- いつ実施するか
- 発表する内容
- 進行手順
- 必要な資料作成
- どうなればキックオフミーティングは成功と言えるのか
まずは、上記項目の概要を考えます。あとは準備を進めるだけです。できるだけ具体的に会の進行をイメージし、対策しましょう。
メンバー全員へ案内を出していない
意外とやってしまうのがメンバー全員へ案内を出さないという失敗です。慌ててキックオフミーティングを実施してしまうと、案内を出す際にメンバーに漏れが出ることがあります。
案内が来なかったメンバーはプロジェクトリーダーに対して不信感や不満を抱きます。その結果、全体の士気が下がります。メンバーを漏らすのは決してやってはいけないことです。
案内を出す際には、メンバーに漏れがないようにリストを作成しましょう。そして、可能であれば第三者にチェックしてもらいましょう。
タイミングを逃した時期に開催する
キックオフミーティングの開催に慎重になるあまりやってしまう失敗が、開催時期を逃すということです。
参加人数が多いため日程調整をしていたら開催時期が遅くなりがちですが、開催タイミングを逃してもプロジェクトは進んでいきます。プロジェクトがかなり進んでからキックオフミーティングを実施すると、メンバー全体にいまさら感が漂います。
プロジェクトが決まったら、まずキックオフミーティングの開催日程を決め、早めにメンバーに通知することが大切です。早めのほうがスケジュールが押さえやすいですからね。
プロジェクト成功の鍵はキックオフミーティングから
キックオフミーティングはプロジェクトをスタートさせるための大切な会議です。プロジェクトの目的を明示することで、課題にぶつかってもゴールを見失いません。
情報共有はメンバーのプロジェクトに対しての理解を深めます。そして、メンバー同士が顔見知りとなることで、信頼感が高まり、プロジェクトを進める推進力になります。
キックオフミーティングが上手くいけば、プロジェクトは加速します。キックオフミーティングを活用してプロジェクトのスタートダッシュを切りましょう。
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