工数とは?基本的な人日・人月の意味から見積もりの計算方法まで解説

プロジェクト管理に伴う煩雑な業務や複数プロジェクトの兼任、プレイングマネージャーなど、現在のビジネス環境ではプロジェクトマネージャーは多大な責任を負って日々業務に追われています。

そんな中でもプロジェクトを成功に導き、クライアントから高い評価を得るためには工数についての理解が必要不可欠です。今回の記事では、主にIT業界の工数管理について解説していきます。

工数管理が適切に行われれば「プロジェクト期間・費用について精度の高い見積もり」「正確な進捗管理」ができるようになります。この機会に工数の基礎をマスターしましょう。

工数を扱う際の注意点

工数の解説の前に、その注意点についてお話ししておかなければなりません。工数はプロジェクトに必要な作業量を表すのに有用な指標ですが、その数字だけを根拠にプロジェクトの期間やメンバーの数を決定するのは避けるべきです。

人はそれぞれ能力も得意な領域も違う

実際に作業をするのは数字ではなく人間です。人はそれぞれ能力も得意な領域が違いますから、同じ作業であっても、それを完了するまでの時間は適正によって大きく変わってきます。人は数字のように単純には入れ替えられません。数字だけを根拠にメンバーの数を割り振ると、プロジェクトの実態とかけ離れたメンバー構成になってしまう危険があります。

工数は必ず現場の人間とセットで扱う

しかしながら、プロジェクトの作業量を数字で表す工数という概念は有用であることも事実です。工数を扱う際は必ず、実際のメンバーのプロジェクト遂行能力も考慮に入れて扱うことで、より工数管理を機能させられるでしょう。

工数とは?

工数とは?基本的な人日・人月の意味から見積もりの計算方法まで解説
工数とは「ある作業を完了するまでに必要な人数と時間」を示す指標です。「作業時間」と言い換えると分かりやすいです。

工数を減らすことは原価を下げることに直結します。逆に工数が増えることはコストや納期遅延リスクの増大を意味します。お客様に費用や納期を提示するときには、工数を使って見積もりを実施します。

工数を正確に理解していることは、精度の高い見積もりができるという証明になります。プロジェクト成功、ひいてはお客様の信頼に直結する重要なスキルです。キャリアアップを目指しているのであれば、必ず工数について理解しておきましょう。

工数管理の重要性とは?

工数管理はIT業界のみならず、製造業などでも使われている重要なマネジメントスキルになっています。工数管理を行う事はプロジェクトの収支管理・進捗管理・PDCAサイクルのチェックをするのと同義です。

また、特に製造業であれば工数管理のデータを管理部門と交換・連携することによって、経営効率を向上させることができます。

工数管理はクライアントに対する見積もり・納期の妥当性を証明する根拠にもなります。ビジネス交渉において見積金額と納期の交渉はシビアな展開になりがちです。

交渉において一方的に「難しいです」「対応できないです」と連呼するのはナンセンスです。あなたがクライアントと交渉するときは「根拠」、つまり工数に基づいた精度の高い見積もりを示して理由をクライアントに説明する必要があります。

訳も分からず一方的に交渉NGを突き付けられた場合と、数字とデータに基づいた根拠の説明を受けた場合、どちらの納得度が高いかは明らかです。

工数管理ができることは、クライアントのあなたへの信頼に直結します。

工数管理の必要性とは?

工数管理を行う目的は、「利益を確保するため」です。一般的な感覚だと、仕事をすれば報酬をもらえると思いがちです。しかし、会社経営側としてはクライアントから回収できる金額がプロジェクトに必要なコストを上回った時点で赤字です。

IT業界の場合、一番大きなコストは人件費です。スキルなどによってバラつきはありますが、エンジニアを一人確保するのに約100万円/月は必要になります。

もし工数管理に失敗して残業続きになった場合、人件費が一気に膨れ上がります。工数管理の失敗が経営危機を招く恐れがあることを理解していただけたでしょうか。

一方で工数管理が適切に行われた場合、経営側にとっては確実な利益確保が可能になり、賞与や福利厚生のアップなどに還元される可能性もあります。また、従業員側としても無理な残業が無くなるので労働環境の改善につながります。

見積もり失敗は信頼を失う

お客様への見積書作成は責任の重い業務です。予算や納期、品質に関わる特記事項はすべて見積書に記載されている内容をもとにプロジェクトが進みます。

「もしも金額が間違っていたら」「もしも最初から達成不可能な納期であったら」「もしも品質上重大な欠点が記載されていなかったら」それはすべて見積書を作成した側の責任になります。

見積もりの失敗はプロジェクトの失敗に直結します。予定していたスケジュールは混乱し、プロジェクトメンバーは先の見えない不安に陥ってしまいます。見積もりの正確に出来ない人はクライアント・メンバー双方から信頼を失うと心得ましょう。

正確な見積もりのポイントとは?

見積もりに失敗すると大変なことになると理解できたと思います。それでは、正確な見積もりをするためのポイントは何でしょうか。

一番確実な方法は金額・納期に余裕を持たせることです。しかし、実際のビジネスにおいて見積もりは複数社との競争になります。コスト・納期で他社に負けてしまっては仕事を受注できなくなります。

そんな時は、クライアントへの徹底的なヒアリングが有効です。見積もりを求められる段階ではクライアント自身も最終的な納品物のイメージを正確に描けていないことが多いです。そこでエンジニアなどのスペシャリストがヒアリングを実施し、クライアントのアイデアを現実的な要求・要件として分解することで見積もりの精度を向上させることができます。

ヒアリング時の注意点として、納期を口頭で尋ねられても即答しないようにしましょう。不正確な回答はクライアントの信頼を損なうだけです。「5分相談させてほしい」「社内で相談してから回答したい」など必ずスペシャリストと相談してから回答すると良いでしょう。

工数管理のポイントとは?

工数管理の重要性について理解できたかと思います。それでは、実務で工数管理する場合、どのようなポイントに気を付けるべきなのでしょうか。

工数管理のポイントは「メンバーのスキルと実行できる作業量」を見極めることです。システム開発における工数管理の場合、メンバーのスキルによって1日の生産性は大きく異なります。スキルの低いメンバーに1日分の仕事を割り当てても実際に作業完了するのに2日以上必要になるケースはよくあります。

また、メンバーが1日に費やせる作業時間についても注意が必要です。よくある失敗が、1日8時間の作業時間で見積もるケースです。この場合、会議や進捗の共有などといった雑務に充てる時間が考慮されていません。実際は1日の作業に費やせる時間は8時間より少ないです。

メンバーのスキルの見極めと1日に費やせる作業時間の見積もりを誤ると1か月で大きな誤差が生まれます。工数を作るときには十分に注意しましょう。

失敗しない工数管理とは?

工数管理で失敗する主なパターンは「メンバーの過剰な増員」と「余裕のないスケジュール」の2通りです。

システム開発において主流の見積もり方法は「人月計算」です。人月については下記で詳しく解説します。ここで指摘したいポイントは、人月計算する際に「作業員を増やせば作業ペースが上がる」と誤解している人がいることです。

しかし「工数管理のポイントとは?」でも解説した通り、スキルによって一日当たりの生産性は大きく異なります。さらに会議や進捗共有など「作業以外の連絡業務」が増え、思うように作業効率は上がりませんので、メンバーの過剰な増員はプロジェクトの進行において必ずしも有利に働きません。

次に指摘したいポイントは「余裕のないスケジュールはトラブルに弱い」という点です。

前提として、完全にミスのない正確な見積もりを出すことは不可能です。メンバーの欠員や作業ミス、作業遅れなどのトラブルに直面した場合、余裕のないスケジュールは一気に崩壊してしまします。

余裕のないスケジュールを作らないために、必ずスケジュールバッファ(問題対応期間)を設けましょう。工数管理において避けなければいけないのは納期遅れとコストアップです。

スケジュールバッファを設けない工数管理を実施すれば、個人の残業に頼ったマネジメントになってしまいます。これはマネージャーが工数管理を放棄したのと同義です。大切な事なので繰り返しますが、これから工数管理を作成するマネージャーは必ずスケジュールバッファを設けましょう。

工数における単位

工数管理において「人月計算」は避けては通れない考え方です。ここでは人月計算についての説明と、工数を作るときの計算方法、工数計算の注意点を解説します。

工数における単位は「人月(にんげつ)」「人日(にんにち)」「人時間(にんじかん)」の3種類があります。システム開発を例に説明していきます。

人月・人日・人時間とは?

まずは「人月」について理解しましょう。1日8時間、1か月20日稼働すると仮定して計算したのが人月です。つまり「1人のエンジニアが1日8時間、20日作業してこなせる仕事量」が1人月というわけです。3人月の場合は「1人で60日間(3か月)作業してこなせる仕事量」を表します。

ちなみに、1人のエンジニアが1か月働く場合のコストは「人月単価」と言います。
人月・人日・人時間とは?_工数とは?基本的な人日・人月の意味から見積もりの計算方法まで解説
人日」の場合は期間が変わり、「1人のエンジニアが8時間(1日)費やしてこなせる作業量」を表します。3人日であれば、1人で作業した場合に3日必要な作業量を表します。

人時間」の場合も同じように、「1人のエンジニアが1時間費やしてこなせる作業量」を表します。3人時間であれば「1人で作業すれば3時間かかる仕事量」、30人時間であれば「1人で作業すれば30時間かかる仕事量」を表します。

工数管理においては「人月」の概念を頻繁に使うので、ここで覚えておきましょう。

工数の計算方法

人月の概念が分かったところで、次は工数計算のやり方について学びましょう。あなたは新規プロジェクトの工数管理を任されたとします。プロジェクトを完了させるのに30人月の工数がかかると見積もった場合、6か月で終わらせるには何人の人員が必要でしょうか。

必要なメンバー数を求めるときは「見積もり工数÷期間」で計算しましょう。この場合だと30÷6=5人が必要なメンバー数になります。

プロジェクト完了後に、実際にかかった工数を計算する場合は「人数×時間」を足していけば求めることができます

例えば最初の4か月は4人で作業したプロジェクトが、進捗が遅れていたので、残りの2か月は6人で作業することになったとします。この場合、プロジェクトの工数は何人月なのでしょうか。

「人数×時間」を足して計算すると、最初は4か月×4人=16人月、それに加えて2か月×6人=12人月、足すと16+12=28人月がプロジェクトにかかった工数となります。

工数を計算するうえで「人月」の概念を理解しないことには始まりません。最初は慣れないかもしれませんが、繰り返し人月計算をすることによって早く正確にできるようになります。繰り返し人月計算をしてみましょう。

工数計算の注意点

工数計算するときに注意する点があります。上記の例では、プロジェクト完了まで30人月必要というのが前提でしたが、これまで紹介してきた「スケジュールバッファを設ける」「納期を即答しない」「進捗共有などのコミュニケーションコストを考慮する」「メンバーのスキル差を考慮する」の4点に気を付けて工数計算をしても、正確に全くミスなく実行するのは不可能に近いです。
うまく工数計算通りにいかなくても、過剰に自分を責めないようにしましょう。

工数計算はプロジェクトの成功を左右する重要な仕事です。小さいプロジェクトや部下のメンバーの管理などで工数を意識して、早いうちから慣れておきましょう。

全体のまとめ


工数はプロジェクト管理やクライアントへの見積もりの根拠、自社の損益管理にも使える便利な管理方法です。もしあなたがこれから初めて工数管理を担当するのであれば、工数管理データを全社内で共有してみませんか。

工数を共有することで作業の明確なロードマップが分かり、それが社員のモチベーション維持につながります。また、示された工数管理表をもとにデータの分析や社員の議論などが発生し、現場の処遇改善にもつながります。

はじめて工数を扱う人にとっては心理的なハードルが高いかもしれません。しかし、まず本記事で知った内容をまずは実行してみましょう。試行錯誤を繰り返し行えば、工数についての理解が深まるはずです。

この記事との出会いをきっかけに、工数について真剣に考えてみましょう。

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記事の監修
砂川 祐樹

Backlog開発チームで開発を担当する傍ら、プロジェクト管理について噛み砕いて解説する入門サイト、サル先生のプロジェクト管理入門サル先生のバグ管理入門の制作に携わった他、プロジェクト管理を楽しく学べるボードゲーム「プロジェクトテーマパーク」を制作。プロジェクト管理を身近なものとして広めるヌーラボの活動に関わっている。


記事の作成
Backlog編集部


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