PM&WEB界隈で考える、AI時代のプロジェクトマネジメント|JBUG広島#18イベントレポート

2026年8月8日、広島にてBacklogユーザーコミュニティ「JBUG」が開催されました。
会場は株式会社ドリーム・アーツ様の広島本社オフィスです。

今回のテーマは「PM&WEB界隈waiwaiワイわ~い!」。

AIを使えばWebサイトはつくれるようになり、課題も計画も一瞬で形になります。それでも、何を課題として立てるか、誰にどんな仕事を渡すか、どこまで引き受けるかという判断は人の手元に残ります。

今回のJBUG広島では、新人育成の工夫、リーダーとしての覚悟、AIとBacklogを組み合わせた自動化、プロジェクトマネジメントの本質まで、立場も業種も異なる登壇者の実践を共有いただきました。後半は参加者全員でのワークショップも実施しています。当日の内容をまとめましたので、ぜひご一読ください。

※掲載内容はすべてイベント開催当日時点の情報です。

新卒教育のためにBacklogでやっていた、たった1つの指示というお話

ご登壇者紹介

ネット集客・Webマーケティング専門家
関 勇貴 様

チームに経験の浅いメンバーが一度に増えたとき、何から手をつけるべきか。最初のセッションでは、6年前に東京のシステム開発会社でBacklogを導入したときの話が共有されました。

当時、関様はRPAの新事業チームを任された課長でした。メンバー13名のうち、10名が全員新卒です。会社としても手探りの商材を扱いながら初年度から利益を求められる状況で、一人ひとりに付いて教える時間はありませんでした。そこでBacklogを導入し、新卒に出した指示はたった1つ、「自分がやるべきタスクをひたすら量産すること」だけでした。

評価軸は、作ったタスクの数と処理した数の2つ。優先度が高いのは作った数のほうです。5個作って5個処理する人よりも、10個作って5個処理する人を高く評価していたといいます。RPAの案件では、そもそも課題がどこにあるのかを探す作業が多く、課題を洗い出せる力が必要だったからです。

この仕組みによって、次の案件に誰を連れて行くかで迷わなくなったそうです。タスクを多く作り、処理もできる人は自ずとリーダーになり、当時の新卒には今も役職に就いている人がいます。作らせたうえで、マネージャーがその中身を読む。それが部下をグリップするマネジメントの鍵になっていたのではないかと振り返るセッションでした。

そこに覚悟はあるんか?

ご登壇者紹介

株式会社フォノグラム
マーケティング支援事業部
早坂 ハンナ 様

プレイヤーとして成果を出してきた人がリーダーになったとき、何が変わるのか。

早坂様は入社7年目、リーダー歴は2年目です。自身のことを、気合と情熱でなんとかなると思っている「お気持ち人間」だと表現します。リーダーは人を鼓舞する役割、マネージャーはチームを勝たせる役割。30人ほどの会社のため、その両方が重なる部分を担う必要がありました。

そこで整理したのが、保守などの作業中心からマーケティング中心へ仕事の質を変えること、予算を達成すること、そのために人を育てることの3つです。アクションプランの進捗管理は昨年までのExcelからBacklogへ移し、ガントチャートによってどのメンバーが見ても進捗とタスクを確認できるようにしました。売上や粗利は経理のメンバーにも入ってもらい、一緒に数字を読む形に変えています。

一方で、2ヶ月ほど前に会議の場で社長から「マネージャーとして覚悟が決まっているのか」と問われ、しばらく呆然としたそうです。登壇に向けて考えを整理する中で気づいたのは、言いにくいことや面倒なことから逃げていたのではないかということでした。覚悟とは、自分で決めた役割に向かうために弱い自分に勝つこと。「皆さんの仕事において、覚悟は決まっていますか」という問いかけでセッションを終えました。

Nulab Flowbaseの話

ご登壇者紹介

株式会社ヌーラボ
鈴木心

決まった流れの仕事は、いま誰が進行しているのでしょうか。執筆、レビュー、校正、公開のように順序のある作業では、次に何をするのかがドキュメントに書かれていたり、それぞれの人がなんとなく把握していたりします。月次の請求処理のように毎月繰り返す作業では、その都度課題を複製している方も多いはずです。

Nulab Flowbaseは、こうした繰り返しや型の決まった仕事をBacklogと連携して自動化するワークフロー作成サービスです。執筆、レビュー、校正、公開というワークフローを作っておくと、開始時にまず「執筆」の課題がBacklogに作成され、担当者が完了にすると次の「レビュー」が自動で作られます。スケジューラーを使えば毎月決まった日時に起動する設定もできるため、請求作業のような定型業務を自動で立ち上げられます。

現時点では柔軟性に課題があることも率直に共有されました。課題のタイトルに年月を差し込めない点などは改善を予定しており、課題種別からワークフローを起動する、差し戻しで前のステップに戻すといった仕組みも検討中とのことです。プレミアムプランとプラチナプランをご契約のスペースでは無料で使えるため、ぜひ試してほしいと呼びかけました。

AIとBacklogでたくさん便利!でも知識がないと事故る場合もある。

ご登壇者紹介

株式会社mgn
代表取締役CEO
大串 肇 様

AIは便利ですが、その便利さの裏側で何が起きているのか。便利な話と失敗した話の両方が共有されました。

SlackのURLを渡して内容を課題として登録する、日報の代わりに自分の活動を集計させる、会議の自動議事録をもとに課題を更新する。Backlog MCPを使うと、こうした操作を自然言語で指示できます。リポジトリと連携すれば、課題から関連ファイルを探して実装し、プルリクエストを出すところまでつなげることも可能です。

一方で、プロジェクトの概要を渡して課題群とガントチャートを瞬時に作らせたところ、作業者に渡した段階で意図が分からないという事態が起きました。オールインワンの立派なキッチンなのに、おたまも包丁もどこにあるか分からない状態だと表現されました。原因は、社内の制作フローに対する解像度がAIに反映されていなかったことにあります。

もう一つは、バナーの表示崩れをAIと相談して直したところ、実際には先頭固定の機能を止める形になっており、後日、別の担当者から固定が効かないと連絡が入った事例です。継続的な運用を前提とすれば経験のある人なら思いつく実装も、経験がないと抜け落ちます。AIの性能は上がり続けますが、何をどう教え、何をどう聞くかは人がやること。コミュニティなどで相談しながら自分の視座を上げていく必要があると語られました。

シフト作成から考えるプロジェクトマネジメント

ご登壇者紹介

タイチ 様

プロジェクトマネジメントの視点は、身近な現場にも当てはまります。今回が初めての登壇といういちほ様からは、大学で受けた講義をきっかけに、アルバイト先のカフェのシフト表を題材にしたLTがありました。

このカフェでは名札に付く星バッジの数によって担当できる業務が決まっており、シングルからクアッドまで4段階あります。ただし星の数と実務経験は必ずしも一致せず、ダブルになりたての人はシングルとほぼ同じ状態になるといいます。先月のあるシフト表では、ピークタイムである12時から14時に社員の会議が重なり、経験2ヶ月のダブルの人に30分の休憩が組まれていました。結果として、経験の浅いメンバー2人でピーク帯を回すことになってしまったそうです。

講義の内容と照らし合わせると、できていたのは要員の割り当て問題の洗い出しだけでした。制約の考慮、負荷のシミュレーション、リスク分析と代替案の検討ができていません。ピーク帯であることを踏まえていれば、会議の時間をずらす、休憩を人手に余裕がある時間に移すだけで防げたはずです。資格だけでなく経験も合わせて見ることでトラブルは避けられる、という気づきを店長に伝えてみるという宣言で締めくくられました。

5分で学ぶプロジェクトマネジメント

ご登壇者紹介

佐藤 達男 様

プロジェクトマネジメントには多くの知識や手法があり、すぐには覚えられません。大学でプロジェクトマネジメント論を講義されている佐藤様からは、そぎ落とした本質を5分で伝えるLTがありました。

プロジェクトとは目標を実現する活動であり、その中身は現状と目標の間にあるギャップを埋めることです。ギャップの中にある問題から今回解決すべき課題を抽出し、対象と範囲というスコープを決めて具体的なタスクにブレイクダウンし、品質、コスト、時間というQCDの制約のもとで進めます。理想の計画と現実、計画と実行力、想定とリスク。プロジェクトには複数のギャップがあり、これらを解消しなければ前には進めません。

プロジェクトマネージャーは、技術に一番詳しい人でも、業務に一番詳しい人でも、管理が一番上手な人でもありません。情報収集は仕組みを作って運用とツールに任せ、判断は得意な人を横に配置し、行動はチームメンバーにやってもらう。求められているのはプロジェクトの進む道を示すことであり、その仕事は意思決定なのだと語られました。もし明日突然プロジェクトマネージャーになってしまったら、現場に向かう電車の中でこの話だけ思い出してほしい。持ち時間5分に対して4分46秒で走り切ったLTに、会場から大きな拍手が送られました。

Backlogの最新アップデート紹介

ご登壇者紹介

株式会社ヌーラボ
河野千里

ヌーラボの河野からは、Backlogの最新アップデートを実際の画面を見せながら紹介しました。

課題のコメントに別の課題のURLを貼っても、コメントは折りたたまれてしまうため後から探せなくなりがちです。新しく追加された「関連課題」を使うと、課題の上部に関連する課題として表示されるようになり、迷子にならずに済みます。

ガントチャートでは、グルーピングによって誰がいくつ課題を持っているかを確認でき、開始日を過ぎているのに未着手の課題には警告が表示されます。画面の横に課題の詳細が出るようになったことで、コメントの装飾やファイルのやり取りもガントチャートの画面のまま行えます。

Backlog AIアシスタントは、「ドキュメント」の作成・編集を支援できるようになり、、課題のコメントの中からドキュメントの情報更新が必要なものを洗い出して修正したり、作成したレポートをドキュメントとして登録できるようになりました。コメントの下書きをAIに任せ、内容を会話しながら整えたうえで元の文章に上書きすることも可能です。コメントに残したことがその後の情報資産になるので、少しでもいいので残してほしい。それが難しいときにAIアシスタントを頼ってほしいという呼びかけとあわせて、今年11月に横浜で開催する「Backlog World 2026」の案内も行われました。

ワークショップ「第二回天挑五輪大武會」

後半は、参加者全員でのワークショップです。名前は漫画『魁!!男塾』に登場する大会名から取られたもので、内容はホワイトボードの上でWebサービスの受注と発注を疑似体験するホワイトボードチャレンジです。

1つのホワイトボードに対して、クライアント役が2人、開発チームがAとBの2チームという構成です。開発チームはクライアントの話を聞いて提案し、最後にクライアントがどちらのチームに発注するかを決めます。制約は、2ヶ月後にリリースできること、予算は200万円、画面は3つまでの3つ。そして今回はAIの使用が禁止されました。

時間配分は、発注書の作成が10分、ヒアリングが5分、サービス開発が15分、納品と評価が6分。お題は主語と述語のカードの組み合わせで決まります。クライアントは絵を使わずテキストだけで発注書を書き、両チームに配ります。ヒアリングはAチームとBチームで別々に行うため、担当者によって言うことが違うという現場でよくある状況が再現されます。

サービス開発の残り6分というタイミングでは、満たしていないと採用されないという条件つきの追加要件が伝えられました。最後は各チーム3分ずつのプレゼンを行い、クライアント2人が話し合ったうえで「せーの」の合図で発注先を発表。顧客が本当に欲しかったものを探り当てる難しさと楽しさが凝縮された時間となりました。

※漫画『魁!!男塾』に登場する架空の大会名をオマージュしたワークショップです。

ユーザー会を終えて

今回のイベントでは、新卒育成の工夫、リーダーとマネージャーの狭間で問われた覚悟、AIとBacklogを組み合わせた自動化とその落とし穴、プロジェクトマネジメントの本質まで、さまざまな角度からチームの進め方について考えました。

共通していたのは、道具が変わっても、何を課題として立てるか、誰に何を任せるか、どこまで引き受けるかを決めるのは人だということです。タスクを量産させて中身を読む、数字を経理と一緒に読む、AIに渡す前に社内のフローを言葉にする。どれも、判断の材料を目に見える形にする工夫でした。

ご登壇いただいた皆さま、会場をご提供いただいた株式会社ドリーム・アーツ様、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

今後もJBUGでは、Backlogユーザー同士が実践知を共有し合える場をつくっていきます。

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