Backlog×AIで、現場が使えるヒントを持ち帰る|JBUG Creative #4イベントレポート

2026年8月26日、東京にて「JBUG Creative #4」を開催しました。

今回のテーマは「Backlog×AI 実践知共有会 現場で使えるAI活用のヒント」。 AIアシスタントやMCPを活用できる環境は整いつつありますが、実際の現場で運用してみると「何をどう依頼すべきか」「返ってきた回答をどこまで信用してよいか」と迷う場面も少なくありません。便利になった一方で、使い方の勘所を見出すのは容易ではありません。

今回のJBUG Creativeでは、Backlog AIアシスタントの仕組み、過去プロジェクトのキャッチアップ、レベル別の実践マップまで、開発側・ユーザー側の双方から実践知をご共有いただきました。セッションの合間には、参加者同士で感想を共有する時間も設けています。当日の模様をまとめましたので、ぜひご一読ください。

※掲載内容はすべてイベント開催当日時点の情報です。

開発者から見たBacklog AIアシスタント、仕組みと、うまく付き合うためのヒント

ご登壇者紹介

株式会社ヌーラボ プリンシパルエンジニア
AI Integration Unit
渡邉 祐一

普段はあまりお見せする機会のない、Backlog AIアシスタントの内部構造に関するお話です。2026年3月5日に正式リリースされた本機能は、あらかじめ答えを記憶しているわけではありません。質問のたびに適切なツールを選択してBacklog内を参照し、取得したデータをまとめて回答しています。教えていない情報は把握できないため、渡邉はこの状態を「本日入社したばかりの新しいメンバー」と表現しました。

AIの振る舞いを決定づけているのは、日本語で記述されたシステムプロンプトです。手順を具体的に記述し、「がんばった」といった曖昧な言葉に対する評価基準を定め、確認できない内容は推測で答えさせないように設計されています。これはまさに、新メンバーのオンボーディングに近い作業といえます。

権限管理も同様の考え方に基づいており、毎回依頼したユーザーの権限でBacklogを参照します。参照・検索ツールは自由に活用させる一方、データを書き換えるツールには必ず人間の承認ステップを挟む構成としています。

利用側のヒントとして、以下の4点が挙げられました。

  • 依頼時は条件と希望する出力形式を具体的に記述すること
  • 回答に提示された課題キーを1件確認し、根拠を検証すること
  • 判断基準はドキュメントとして整理して渡すこと
  • 大規模なタスクは小分けにして依頼すること

学習を行わない設計だからこそ、日頃蓄積しているBacklogのドキュメントがそのままAIのスキルとなります。「皆さんが育てたBacklogが、そのままAIへの指示書になる」という言葉でセッションが締めくくられました。

プロジェクトのリズムを体に取り込む

ご登壇者紹介

株式会社アイスリーデザイン
PM/ディレクター
平 光蔵 様

How-to(ノウハウ)以上に、活用するうえでの「心構え」に関するお話です。平様が重要視されているのは「リズム」という概念であり、これは「いつ・どこで・何を決めるか」という段取りを意味します。1年規模のプロジェクトであれば月1回のゲートレビュー、0.5ヶ月単位であれば週次のスプリントレビューというように、規模や制約に応じて適切なリズムは変化します。かつては決めるべき範囲を想定せずに進行し苦労した経験もあり、この感覚を身につけるまでに相当の時間を要したと振り返られました。

具体例として挙げられたのが、今年初めて参加された「Backlog World 2026」の運営事例です。イベント運営の経験がない状態から、全体のスケジュール感を把握するため、Backlog AIアシスタントを活用して2025年のプロジェクト情報を抽出しました。今年の前提条件を付与してマイルストーンを整理し、2026年用プロジェクトのドキュメント作成まで進めたことで、初期のキャッチアップ速度が大幅に向上したとのことです。

ただし、この手法には前提が存在します。出力の精度が高かった理由は、前年の担当者がBacklogを適切に運用・記録していたからです。AIの出力を鵜呑みにせず、自身の経験と照らし合わせて違和感を検証すること、そして最終的な妥当性を判断するのは人間であるという本質は変わらないと語られました。

BacklogとAIの組み合わせで捗るプロジェクトマネジメント

ご登壇者紹介

株式会社サービシンク
代表取締役/テクニカルディレクター
名村 晋治 様

選択肢が増加したことで、何から着手すべきか迷いが生じやすくなっています。名村様からは活用レベルに応じた3つのアプローチが提示されました。

  • レベル1: 管理者が有効化するのみで利用できるBacklog標準のAI機能
  • レベル1.5: GASやGPTsを活用したスモールな自動化
  • レベル2: MCPとAIエージェントを組み合わせた高度な連携

レベル1の価値として、情報を手動で渡す手間が削減される点、プロンプト構築の負担がない点、そして「機密情報を生成AIに投入してよいか」というセキュリティ課題が構造的にクリアされている点が挙げられました。Backlog内で完結する設計であるため、金額や顧客名を含むコメントも安全に扱いやすくなります。

また、AIによる課題の一括登録も注目の機能として紹介されました。PM視点における真の価値は単なる作業時間の短縮ではなく「標準化」であり、計画の品質が担当者の経験値に左右されなくなる点が強調されました。

一方で、書き込み権限を付与した瞬間に誤操作等のリスクが生じます。起票・更新・削除は明確な指示がない限り実行しない旨をルール化し、設定ファイル側で削除系ツールの呼び出しを制限するなど、慣れないうちは読み取り専用(Read-Only)から運用を開始するのが原則であると説明されました。結論として「AIの精度を高める最善の近道は、Backlogへ正確に情報を記載すること」であり、全員で課題の書き方を見直すことから始めてほしいと呼びかけられました。

参加者交流・感想共有

各セッション終了後には、近隣の参加者3〜5名によるグループ対話の時間を設けました。

1回目の交流では、セッションの感想にとどまらず「普段どのようにAIを活用しているか」という実運用についての意見交換が活発に行われました。Backlog AIアシスタントの存在は認識しつつも、効果的な活用法を模索している参加者が多く、互いの試行錯誤を持ち寄る貴重な機会となりました。

2回目の交流では、段階的な導入とノウハウ蓄積が精度向上につながるという、各セッション共通のテーマについて理解が深まりました。また、ツールの情報集約に関する悩みも共有され、Microsoft 365を軸にしつつ外部開発でBacklogを利用するケースや、すべての情報をBacklogに集約して運用する実践例など、具体的な運用の知見が交わされました。

利用プランやチーム体制、併用するツールによってAIとの向き合い方は様々です。他社の取り組みに触れることで、「自社の現場であればどのように適用できるか」を具体的に検討する機会となりました。

ユーザー会を終えて

「JBUG Creative #4」では、AIアシスタントの内部構造から過去プロジェクトのキャッチアップ、レベル別の実践マップまで、多角的な視点からBacklogとAIの活用法を探求しました。

全セッションを通じて示された共通のメッセージは、「AIの性能以上に、Backlog上にどのような情報が蓄積されているかが成果を左右する」という点です。課題テンプレートの整備、期日・担当者の明確化、判断プロセスのログ記録といった日常の丁寧な運用が、そのままAI活用の堅牢な土台となります。そして、AIから得られた回答の妥当性を最終的に判断するのは「人」であるという点も、改めて確認されました。

ご登壇いただいた皆様、ならびにご参加いただいた皆様に心より感謝申し上げます。 今後もJBUGでは、Backlogユーザーの皆様が相互に実践知を共有し合える場を提供してまいります。

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