
こんにちは!Backlogブログ編集部です。
連載企画「ヌーラボのエンジニア・クリエイターが実践する、Backlog活用術」の第5弾をお届けします!開発や制作の最前線に立つヌーラボのメンバーたちが、日々の業務でBacklogをどう使い倒しているのか——リアルなノウハウをお届けするシリーズです。
第5回となる今回は、デザインエンジニアの楠による「課題は丁寧に書きたい、でも起票は面倒。AIに任せて両立させたWebサイト運用」です。
Backlogでは、タスクや依頼内容、チケットのことを「課題」と呼びます。
「依頼内容は詳しく書いておきたいけれど、毎回タスクを起こす(起票する)のが面倒で後回しにしてしまう…」「雑な依頼のまま放置されて、後から確認に時間がかかる」
とお悩みのWeb担当者やエンジニア・クリエイターの方は、ぜひ参考にしてみてください!
目次
はじめに
こんにちは。ヌーラボのデザインエンジニア・楠です。業務では主に、ヌーラボのさまざまなWebサイトの制作・日々の運用・サーバー周りの保守などを担当しています。
私の所属するチームには、社内のいろいろな部署から、Backlog/Slack/口頭など様々な経路で依頼が届きます。
マーケティングからLP制作、法務から規約更新、カスタマーサポートから表記修正、などなど。
そんな私たちには、こんな悩みがありました。
依頼を受けた直後に次の打ち合わせが入っていて、課題を起票しないまま忘れてしまった...
「とりあえず」で雑に起票した課題を後で読み返したけど、内容が薄くて困る...
別のタスクに集中したいのに、起票作業が割り込みで入ってきて集中が途切れちゃう...
散らかった情報を整理して書くのが面倒で、起票を後回しにしがち...
Backlogのようなプロジェクト管理ツールを使っていても、この「課題の起票」に悩みやハードルを感じる方は多いのではないでしょうか?
そこで私は、この面倒な起票をAIエージェントに任せることにしました。結果として、丁寧な課題を残すことと、起票を軽くすることを両立。さらにはその先の調査・実装までがスムーズに繋がるようになっています。
この記事では、実際に課題起票をAIに任せた方法とそこから得られた結果、さらにAIによる課題起票を支えたBacklogの2つのポイントを紹介します。
[悩み] 課題を詳しく書こうとすると、起票のハードルが上がる
私たちのチームのBacklogプロジェクトでは、以前から課題テンプレートを整備していました。
概要、対象URL、目的、実施内容、期限、関連情報。何を書くべきかを決めておくことで、誰が書いても内容や意図が正確に伝わるようになり、業務の効率化や品質向上につながります。
## Summary [必須]課題の概要を記入してください。 ## Target URLs 対象ページ・サイトのURLを記入してください。 ## Purpose 誰のどのような状態を解決できますか?課題の目的を記入してください。 ## Detail 課題の詳細を記載してください。 ## Deadline 課題の期限の目安を記載してください。確定した日付がある場合は課題の期限日を設定してください。 ## Related issues and posts 関連する課題やSlack投稿URLなどを記載してください。
一方で、項目を増やして詳細にしていくほど、起票そのもののハードルは上がっていきます。
これまでは「雑でも良いからいったん起票して、後で詳しく書こう」という方針で運用していました。
しかし、この場合「後で詳しく書く」というステップが未来に積まれることになります。起票忘れの対策としては効果があるものの、結局作業の先延ばしになり効率化そのものには繋がっていませんでした。
課題は最初から詳しく書いておきたい。でも起票のハードルは上げたくない…
この「課題の詳細化」と「起票のハードル」は常にトレードオフの関係で、両者のバランスの取り方がずっと悩みの種でした。
しかし、ここにAIを導入することで、この問題を一気に解決することができたのです。
[解決策] スキルを作ってAIに起票を任せる
やったことはシンプル。「Backlogに課題を起票する手順」をスキル(Skill)化しただけです。(ここではこのスキルを creating-website-issue と呼びます)
ご存じの方も多いと思いますが、スキル(エージェントスキル / Agent Skills)とは、AIエージェントに特定の専門知識や作業手順を伝え、再利用するための仕組みです。
作ったスキル
詳細な内容や作成手順は割愛しますが、今回作ったスキル creating-website-issue がやってくれることを大まかに紹介します。
1. 入力は何でもOK
雑に書いたメモ、Backlogの課題キーやコメント、Slackのスレッドのリンク、ローカルファイルのパス。どんな形でも入力として受け取ります。
2. テンプレートに沿って書く
Backlogの課題テンプレートをAPIで取得し、その時点の最新の構成に沿って本文を組み立てます。
3. 足りない情報を質問する
項目ごとに情報の充足度を判定し、内容が薄いところがあれば質問を返します。空欄のまま起票することはありません。
4. メタデータは推論して確認を求める
タイトル、担当者、優先度、カテゴリ、マイルストーン、期限を内容から推論し、そのうえで必ず確認を求めます。勝手に確定はしません。
スキルの使い方
使い方も簡単です。Claude CodeのようなAIエージェントに以下のようなプロンプトを投げるだけです。
/creating-website-issue
[BacklogコメントのURLやSlackスレッドのURL]
あとはAIが情報を収集し、整理して、足りない部分は質問を投げながら課題を作ってくれます。
人間がやることは、雑に依頼を投げて、質問に答え、できあがったものを確認するだけになりました。

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backlog.comスキルを使って実際に起きた変化
このスキルの運用を始めてから、実際に起きた変化をいくつか紹介します。
時間がなくても、雑に投げるだけで詳細な課題ができる
マーケティング部門から「ブログにバナーを追加して欲しい」という依頼が来たときは、その依頼コメントのリンクを creating-website-issue に渡すだけでした。それだけで、テンプレートに沿った課題が作られます。
カスタマーサポートチームからSlackで「ページ内の注釈が誤解を生みやすい表現になっている」というフィードバックをもらったときも同じです。SlackのURLを貼っただけで課題ができあがりました。
実際に作成される課題のイメージ
できあがった課題はどちらもテンプレートに沿って、必要な項目が埋められた状態になっています。何を、どのページで、なぜ直すのか。関連する資料はどこにあるのか。これなら誰が見てもやるべきことがひと目で分かります。
スキルを呼び出してリンクやメモを投げるだけでAI主導で起票が進むため、認知負荷が大きく減り、心理的な負担が無くなりました。
打ち合わせの直前でも、他のタスクの進行中でも、「後で整理して起票しよう」と後回しにする理由がなくなり、起票漏れや課題の情報不足が劇的に解消しています。
リポジトリやドキュメントを読ませれば、より詳細な計画を立てられる
このスキルは対話形式で起票を進めるので、指示をすればAIエージェントにGitリポジトリやBacklogのドキュメントを調査させることもできます。
そのため、ただ依頼内容を整理するだけでなく、何をどこまで、どのように直すか、という詳細な計画まで立てさせることができます。
たとえば、「APIドキュメント上に最新仕様の記載漏れがある」という報告を受けたとき。報告されたのは1ページだけでしたが、AIエージェントにリポジトリを調べてもらうと、日英各11ページ分の更新が必要なことが分かりました。
実際に作成される課題のイメージ。リポジトリを調査したことで内容が詳細化された。
報告された1箇所だけ直していたら、残りは後日また報告され、再度対応する手間が生まれていたはずです。最悪の場合、他ページの情報の更新漏れに気がつかないままになっていたかもしれません。
これまではこういった事態を避けるために、
起票 → 対応範囲の洗い出し → 実装
というステップを踏んでいました。しかし今では、AIによって
起票と対応範囲の洗い出し → 実装
のように、前半がワンステップで完了する状態になっています。
起票と同時に実装が始められる
さて、ここまで読んだ方の中には
リポジトリの調査も済んでいるなら、このまま実装までAIに任せられるんじゃない?
と思った方がいるかもしれません。
その通りです。
リポジトリの調査を経て起票された課題は、ほぼそのまま実装の計画書になっています。ここまでくると、もはや起票フェーズと実装フェーズはシームレスに繋がり、起票と同時に実装が進められるような状態になります。
最近では、Backlogに課題を起票したあと、同じセッションで
このまま実装まで進めてください
とAIに指示することが当たり前になってきました。
これだけで、あとはブランチを切り、修正を実装し、ステージング環境に反映し、プルリクエストを作成し、課題にコメントを残すところまでAIが自律的に進めてくれます。
つまり、起票と対応範囲の洗い出しと実装 がほぼワンステップで終わるようになったのです。
もちろん課題の粒度や内容によっては、ワンステップで進まないものもあります。それでもスキルを導入する以前と比べて以下のように明らかな変化が見られています。
- 起票から実装を終えて確認に出すまでの期間: 2.3日 → 4時間(※中央値)
- 起票したその日のうちに確認出しまで到達した割合: 36% → 59%
- 起票したその日のうちに完了した割合: 13% → 35%
「この課題いつやろうかな」と考える間もなく、起票と同時に実装が動き出し、完了する。これまでには考えられなかった劇的な変化が起きています。
AI課題起票を支えたBacklogの2つのポイント
このような変化が起きた背景には、Backlogの2つの性質が関係しています。
ポイント① Backlogは課題テンプレートが標準機能で、APIから取得できる
1つ目は課題テンプレート機能です。
Backlogでは、課題の種別ごとにテンプレートを設定できる課題のテンプレート機能が標準機能として利用できます。プラグインやアプリを追加する必要はなく、プロジェクトの設定画面から編集できます。
テンプレートによって課題の構造が揃っていることは様々な場面で効いてきます。
同じ構造で書かれた課題は、人が読むときも探すときも楽ですし、引き継ぎのときにも助かるでしょう。AIに課題を読ませる場合も、構造化された課題とフォーマットがバラバラな課題では、アウトプットの品質に影響が出ることが予想されます。
さらに、種別ごとの課題テンプレートはBacklog APIから取得できます。

種別一覧の取得 | Backlog Developer API | Nulab
Backlog APIを使って、プロジェクト管理ツール Backlog と連携
developer.nulab.comつまりAIエージェントが「このプロジェクトで今決まっている書式」をいつでも知ることができるのです。
これにより、スキル側にテンプレートを埋め込んで二重管理する必要がなくなります。課題テンプレートが更新された場合にも、自動で最新の情報に追従できます。
これは自分のチームのプロジェクトに限った話ではありません。他プロジェクトに課題を立てるときも、APIからそのプロジェクトのテンプレートを参照させられます。プロジェクトごとにテンプレートが違っていても、その都度最新の内容を取得できるわけです。
ポイント② 他部署・他プロジェクトのナレッジをAIが参照できる
AI起票を助けるもう一つのポイントは、BacklogにはAIに渡せる情報が豊富に溜まっているという点です。
Backlogは開発組織専用のツールではありません。そしてスタンダードプラン(新しいプランではビジネスプラン)以上*であればユーザー数の制限がありません。
* 2027年1月1日から、Backlogのプランが新しくなります。
そのため、他部署や他プロジェクト、社外のメンバーまでを気軽に巻き込めます。結果として、社内外のさまざまなナレッジがBacklog上に集まり、AIエージェントがそれをまとめて参照できる状態になります。
実際に、今回作ったスキルへの入力で一番多かったのは、他プロジェクトのBacklog課題や課題コメントのURLを渡すケースでした。
/creating-website-issue
[BacklogのコメントURL]の依頼を起票してください
Webサイトへの依頼が私たちのところに届く前段には、多くの場合、すでに別のプロジェクトの課題が存在しています。法務からの依頼なら法務のプロジェクトに、コンテンツ関連の依頼ならコンテンツのプロジェクトに、その依頼の経緯が課題として残っています。
その課題キーやコメントを渡せば、AIエージェントは依頼の背景や、元の課題で交わされたやり取りまで読んでくれます。自力で辿るには相当な手間がかかる範囲でも、AIは詳細に調査してくれるので、こちらが把握していなかった前提が出てくることもあります。
たとえば、コンテンツマーケティングチームから「ブログ記事内に補足や注意を強調するパーツを追加したい」という要望をもらったとき。
プロンプトとして渡したのは依頼コメントのURLだけでしたが、AIエージェントがコメント欄を遡り、「読者が重要ポイントを読み飛ばしてしまうかもしれない」という編集側の声を拾ってくれました。
それをもとに、最終的にはなぜこのパーツが必要なのか、なぜ今の見た目では足りないのか、という理由までが明確に書かれた課題が出来上がっていました。
おわりに
丁寧な課題を残すことと、起票を軽くすること。この2つは両立できないものだと思っていました。しかしAIの導入によってこのトレードオフが見事に解消されました。
そして、振り返るとそれを支えていたのはBacklogが元々持っていた性質です。
- 課題テンプレートが標準機能で、APIから取得できる
- 他部署や外部パートナーを気軽に巻き込めるので、依頼元のプロジェクトや情報が同じツールの中に溜まる
AI活用のためになにか特別な準備をしたわけではなく、すでにBacklogにあったものをAIエージェントの視界に入れただけです。
Webサイト運用の現場には、社内外のいろいろな立場の方から、多種多様な依頼が届きます。だからこそ、課題起票をAIに任せることは大きな効率化につながります。
AIによる業務効率化をどこから始めるか迷っている方は、ぜひBacklogを活用して、課題の起票からはじめてみてはいかがでしょうか。