こんにちは!一般社団法人日本PMO協会の伊藤大輔です。私は過去に、約380社に対してプロジェクトマネジメントのさまざまなご支援を行ってきました。その中には、「PM・PMO(Project Management Office)を組織に導入したい」ので支援してほしいという依頼もあります。
過去の経験から「PM・PMOの導入が上手くいかない組織」には共通点があり、この共通点を打破することが、PM・PMO導入成功の秘訣となることに気づきました。
全3回にわたってお伝えする「上手くいかない共通点とPM・PMO導入成功の3つの秘訣」。第1回に続く第2回となる今回は「テーラリング」についてお話しします。
上手くいかない共通点その2:テーラリングをしない
「テーラリング」という言葉を聞くと、お洋服の「テーラリング」や「テーラーメイド」という言葉を思い浮かべるかもしれません。「テーラリング」はお洋服を「仕立てる」という意味で、自分の体型に合わせてお洋服を調整することを意味します。
実はプロジェクトマネジメントの知識や技術も、利用する際にテーラリングが必要です。米国PMI(Project Management Institute)も、テーラリングの重要性を説いています。
つまり、自分たちの組織や自分たちのプロジェクトの「特徴」に合わせてプロジェクトマネジメントの知識と技術を「仕立て」て、カスタマイズしたうえで導入することが大切なのです。
プロジェクトマネジメントの導入や定着が上手くいかない企業や組織の共通点は、
- PMBOKやISO21500などの書籍や研修で得た知識や技術をそのまま導入する
- 他社事例を参考にし、それをそのまま導入する
などです。
PMBOKやISO21500を学ぶ、研修で学ぶ、他社事例を参考にするというのはとても大切なことです。しかし、「そのまま導入」せずに、自分たちの組織に合うように「考えて」テーラリングして導入しなければいけません。
「そのまま導入」するというのは、体型が違う他人の洋服を着るようなものです。違和感があり、最終的にはその洋服を着なくなってしまいます。
テーラリングの2つの考え方
では、どうテーラリングをするのか、2つの観点をお伝えします。
プロジェクトマネジメントのスコープをテーラリングする
ひと言でプロジェクトといっても、個々のプロジェクトはユニークです。
予算規模やステークホルダーの人数は、プロジェクトによりさまざまです。さらに発注側のプロジェクトなのか、受注側のプロジェクトなのか、どの業種・業態のプロジェクトなのかなど、あらゆる条件がすべて異なります。それらに合わせて、どこまでプロジェクトのマネジメント範囲を設定するかが大切です。
たとえば、プロジェクトの予算規模が数千万円と小さく、さらにステークホルダーも少ない場合、「ステークホルダーマネジメント」は、あまりプロジェクトの成功・失敗に影響しない可能性があります。こういったプロジェクトでは、ステークホルダーマネジメントはやらないと決めることもテーラリングのひとつです。
極端な話をすれば、小粒のプロジェクトを多数、同時並行でマネジメントする企業があったとして、ここに宇宙開発などで活用するフルスペックのプロジェクトマネジメントを導入したらどうなるでしょうか。恐らく、管理工数が膨大になりすぎて、多数の小粒プロジェクトは停止してしまうことでしょう。
だからこそ、小粒のプロジェクト用に管理工数を下げ、プロジェクトマネジメントのスコープを最低限必要なものに限定させるテーラリングが必要なのです。
逆に、管理工数を極限まで下げた小粒プロジェクト用のプロジェクトマネジメントでは、宇宙開発プロジェクトの管理はできないでしょう。
ツール、技法、知識をテーラリングする
もうひとつの観点は、利用するツールや技法、知識自体をテーラリングすることです。
たとえば、とても小粒なプロジェクトで、リスクマネジメントはやるべきだというプロジェクトオーナーの指示があったとします。この時考えるべきことは、「リスク対応をする必要があるけれど、どこまでリスクマネジメントをやるべきか?」と、その管理度合いをテーラリングすることです。
リスクマネジメントでは、リスクの特定→定性分析→定量分析→リスク対応の優先順位付け→リスク対応などを行っていきます。またこれらをリスク管理表で管理していきます。しかしすべてのプロジェクトで一連のリスクマネジメントのプロセスを完璧に行う必要はありません。
小規模なプロジェクトであれば、リスクを特定し定性分析した上で、プロジェクトに影響度が高く、発生頻度が高いリスクのみに絞ります。簡易的なリスク管理表で管理、リスク対応するという、対応も可能です。
違和感があれば変更することも可能
プロジェクトマネジメントで一番大切なことは、「プロジェクトの成功」です。
テーラリングしたプロジェクトマネジメントで、実際にプロジェクトをやってみたら、上手くマネジメントできないこともあります。
その場合は、「変更会議」を通じて、プロジェクトマネジメントの手法を、プロジェクト期間中に微修正することも可能なのです。お洋服の仕立て直しと一緒ですね。
以上、「PM・PMO導入成功の3つの秘訣(その2)」でした。
次回もぜひお楽しみに!
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