2026年5月21日、大阪にてJBUGイベントを開催しました。
今回のテーマは「ミスと属人化を防ぐ、Backlogでつくるチームの仕事設計」。
Backlogを日々使っているチームでも、「あの件、誰に聞けばわかるんだっけ」「前回の判断理由が見つからない」「チャットには残っているはずだけど、どこにあるかわからない」といった場面は起こります。
情報を残しているつもりでも、次の人が迷わず動ける状態になっていなければ、属人化やミスは少しずつ生まれていきます。
では、チームが同じ認識で仕事を進めるために、Backlog上でどのような情報を残し、どのようなルールを整えればよいのでしょうか。
今回のJBUG大阪では、AI活用、Wiki整備、課題属性の使い方、運用ルールの定着など、Backlogユーザーの皆さまに実践を共有いただきました。当日の内容をまとめましたので、ぜひご一読ください。
※掲載内容はすべてイベント開催当日時点の情報です。
目次
情報を集める時間を、チームを進める時間へ
ご登壇者紹介
株式会社ヌーラボ
プロモーション部
原田 泰裕

AIをチームで活用するには、ツールの性能だけでなく、チームの仕事の文脈がどこに残っているかが重要になります。
個人でAIを使う場合は、自分の頭の中にある前提や経緯を補いながら活用できます。一方で、チームの仕事では、判断の理由や過去のやり取りが複数人の頭の中に分散しがちです。汎用的なAIは、そうしたチーム固有の文脈を最初から知っているわけではありません。
そこで鍵になるのが、Backlogに蓄積された課題、コメント、進捗、議事録などの業務データです。セッションでは、議事録からタスクを抽出してBacklogの課題登録につなげる使い方や、1on1前にメンバーの1週間の動きを整理する使い方を紹介しました。
ポイントは、AIに判断を任せきるのではなく、人が確認し、次の行動につなげること。Backlogにチームの文脈が残っているからこそ、AIは情報を整理し、チームが動き出すための支援ができます。日々の仕事をBacklogに残していくことが、AI活用の土台にもなることを共有しました。
▼登壇資料はこちら(bラボ掲載)
https://backlog-community-lab.backlog.com/chats/6jtpvs55h3m3rp8t
引き継ぎで困らないためのBacklog Wikiの整え方
ご登壇者紹介
株式会社ビーワークス
ディレクター
村井 絵里加 様

長く続く運用案件では、担当者が変わっても同じ品質で仕事を進められる状態をどうつくるかが、大きな課題になります。
取り上げられたのは、大手複合機メーカーのWebサイトの長期運用案件です。CMS上での記事投稿を中心に、スポット依頼やリニューアルなど、依頼内容は多岐にわたります。長期で続く案件だからこそ、担当者の入れ替わりがあったときに「前の担当者に聞かないとわからない」状態では、業務が止まってしまいます。
そこで意識されているのが、「次の人が迷わないWiki」をつくることです。実際に、CMSの記事投稿作業を別の担当者へ依頼した際、Wikiを見ながらほぼ正確に進めてもらうことができ、最終確認だけで対応できたそうです。
Wiki作成のポイントは、作業をしながら書くこと、分岐を網羅すること、判断軸を残すこと、画像や表で見やすくすること。特に印象的だったのは、「自分の一挙手一投足を記録するくらいのつもりで書く」という考え方です。慣れている人には当たり前の操作でも、初めて対応する人にとっては不安の種になります。
また、手順だけでなく「なぜそう判断したのか」を残すことも重要です。過去の経緯や判断理由、参考課題が残っていれば、次の担当者も同じ判断を引き継ぐことができます。Wikiは単なるマニュアルではなく、担当者が変わっても同じ品質で仕事を続けるための土台だと感じられるセッションでした。
▼登壇資料はこちら(bラボ掲載)
https://backlog-community-lab.backlog.com/chats/bv8yaj9hsogyzj1b
Backlogで発揮できるホスピタリティの工夫
ご登壇者紹介
株式会社TAM
ディレクター
伏見ゆず 様

属人化を防ぐための運用ルールは、厳しく管理するためだけのものではありません。相手が迷わず仕事を受け取れるようにする工夫でもあります。
属人化の解消を「その人がいなくても大丈夫にする」と捉えると、少し心理的なハードルが高くなることがあります。そこで、「迷いなく必要な情報にたどり着けて、円滑にタスクを進められる状態を目指すこと」と言い換えて考える視点が共有されました。
仕事のやり取りは、ドッジボールではなくキャッチボール。相手にボールをぶつけて終わりではなく、受け取りやすい形で渡し、やり取りが続いていく状態をつくることが大切です。探す、思い出す、判断する、といった“迷い”は脳のメモリを使うため、できるだけ余計な負荷をかけない設計が必要だと語られました。
具体的には、状態、マイルストーン、カスタム属性、課題テンプレートなどを、現場の運用に合わせて活用されています。たとえば「お客様に確認中」「請求待ち」といった状態を追加することで、今どこで止まっているのかが一覧でわかりやすくなります。マイルストーンも、フェーズ管理だけでなく請求月の管理に活用するなど、機能の特徴を現場に合わせて使い分けている点が印象的でした。
一方で、ルールを作り込みすぎないことも大切です。複雑な項目や必須入力を増やしすぎると、かえって迷いが増えてしまいます。Backlogの運用設計は、単なる効率化ではなく、相手が受け取りやすい形で仕事を渡すためのホスピタリティでもあると感じられるセッションでした。
▼登壇資料はこちら(bラボ掲載)
https://backlog-community-lab.backlog.com/chats/bglyk8wmm5ycofb2
案件を属人化させないBacklogの運用ルール3選
ご登壇者紹介
株式会社サービシンク
ディレクター
小野 嵩人 様

新しく参加したメンバーがすぐに案件を理解し、自走できるかどうかは、日頃の情報の残し方に大きく左右されます。
入社して間もないメンバーでも短期間で案件をスムーズに回せている理由として挙げられたのが、「ルールが整っていたこと」です。ルールがないと、後任者は前任者に何度も確認する必要があり、前任者も別の案件に集中しづらくなります。さらに「ちゃんと引き継ぎしてほしい」「書いてあるから調べてほしい」といった、人間関係の摩擦につながることもあります。
紹介されたルールは、正式名称の統一、ボールの所在の見える化、チャットで仕様に関わる話をしないことの3つです。社名やプロジェクト名などの表記をそろえることで、検索したときに必要な情報へたどり着きやすくなります。また、担当者・状態・期日を更新し、次にアクションしてほしい人にはメンションすることで、誰のボールなのかを明確にします。
特に印象的だったのは、「チャットは通知、Backlogは記録」と役割を分けている点です。チャットには「コメントしました」「回答しました」といった通知とURLだけを流し、仕様や意思決定の経緯はBacklogの課題に残します。
また、社外の方にルールを守ってもらう際は、相手側のメリットを伝えることも大切です。口頭や電話で確認した内容をBacklogに残すことで、双方の確認時間を減らし、本来の制作や作業に時間を使えるようになります。ルールは決めるだけでは定着しません。なぜ必要なのかまで共有することで、チームの仕事が回り続ける状態につながります。
▼登壇資料はこちら(bラボ掲載)
https://backlog-community-lab.backlog.com/chats/ifeix1k8xqtbtxrc
参加者交流・感想共有


各セッションの後には、近くの参加者同士で感想を共有する時間も設けられました。
会場では、Backlogの属性を増やしすぎないことや、一覧で見たときに迷わない設計にすることについて、共感の声があがっていました。
同じBacklogを使っていても、プロジェクトやチームによって悩みは少しずつ異なります。だからこそ、実際の運用例を聞きながら「自分たちの現場ならどう使えるか」を考える時間になっていたように感じます。
参加者の声
属人化に関する考え方や具体的な課題の管理の仕方など共感、参考になる部分が多かった
業務引き継ぎのヒントをもらえて、大変勉強になりました
AI機能をまだ使ってなかったので勉強になりました
ユーザー会を終えて
今回のイベントでは、AI活用、Wiki整備、課題属性の使い方、運用ルールの定着など、さまざまな角度から「属人化を防ぐ仕事設計」について考えました。
共通していたのは、Backlogに情報を残すことが、チームの仕事を支える大切な土台になるということです。課題やコメント、判断理由、進捗が残っているからこそ、誰が見ても経緯をたどり、次の行動に移れる状態をつくれます。
そして、課題名をそろえる、判断理由をコメントに残す、状態を見れば誰のボールかわかるようにする。小さなルールの積み重ねが、必要な情報を見つけやすくし、属人化やミスを防ぐチームの力になります。
ご登壇いただいた皆さま、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
今後もJBUGでは、Backlogユーザー同士が実践知を共有し合える場をつくっていきます。
