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Backlog World 2019、盛況でした!
2019年1月26日、秋葉原UDXにて、プロジェクトマネジメントの祭典 Backlog World 2019が開催されました。
最初から最後まで大変もりあがり、プロジェクトマネジメントに関する様々な知見が共有され、多くの出会いや議論が生まれました。素晴らしい場を作り上げてくださったJBUGの運営スタッフのみなさんには感謝しかありません。
ヌーラボとしては去年に引き続き、Good Project Awardを開催しました。あらかじめ社内での一次審査で選出した5組の優秀賞のみなさんによるピッチコンテストを行い、来場者による投票と審査員の皆様(津脇様は国会対応により欠席でした)による審査で、最優秀賞を決定し表彰しました。
当日の模様をレポートします。
前説
ピッチコンテストに先立ち、アワードの目的などを説明する時間を少しだけいただきました。
プログラマーの間では、試して上手くいったことをアウトプットすると何かしら良いことが起こって成長につながることが多く、知識の共有やアウトプットが盛んに行われています。
一方、プロジェクトマネジメントやコラボレーションといったことに関しては、チームで仕事をしている人、つまりほぼ全てのはたらく人の総数に比べてあまりにも少ないアウトプットしかなされていません。
そこで昨年、素晴らしいプロジェクトを「自慢する」と良いことが起こる、というサイクルを回すためにアワードを始めました。こういった取り組みが増えて、日本中でプロジェクトに関する知識の共有やアウトプットが行われ、日本中のコラボレーションが前進していくことが目的です(と、言い出したのは弊社代表の橋本です)。
Good Project Award 2019ではBacklogを始めとするヌーラボ製品の使用有無を問いませんし、発表の中でBacklogの使い方云々といった話も求めていません。実際、去年も今年も、最優秀賞を受賞されたプレゼンテーションではBacklogの話は全く出てこなかったと記憶しています。
株式会社あしたのチーム 部署の枠組みを超える!!「お客様目線」の製品開発
ピッチコンテストが始まり、最初の発表は株式会社あしたのチームの林田さんでした。
あしたのチームさんはもともとバリバリの営業系で、システム開発の案件は創業メンバーと役員によるトップダウンで仕様定義されていました。しかし、ある大型案件で、作った機能がユーザーに使ってもらえない状況が続いていたそうです。
それを改善するために、開発の主体を開発者に移譲したがそれでも上手く行かず、結局、営業、サポート、開発者の250人全員がBacklogで課題を登録共有し、登録された課題の優先順位を週1回チェックする仕組みを作りました。
その結果、機能を提案したサポートメンバーにとっては自分が提案した機能が実装されることが、開発者にとってはちゃんと使ってもらえる機能を実装できることがモチベーションとなり、会社全体の意識が良い方向に変化したそうです。
所感
社員数250人になるまで培われた企業文化を短期間で変えるというのは非常に難しいことだと思います。発表ではさらっと「仕組み化した」と仰っていましたが、様々な苦労があったと想像できます。
その結果として、社員ひとりひとりの喜びが感じられるような変化が起こったというのは本当に素晴らしいことだと思いました。
ウォンテッドリー株式会社 良き出会いを最大限に、手間を最小限にした話
ウォンテッドリー株式会社の越石さんはセールス担当者としてユーザーや退会者のもつ課題を分析し、「スカウト」という機能がユーザーにとって手間がかかりすぎるという課題を発見しました。
しかし機能開発にはコストがかかるため、社内のいろいろな人に相談していたところオペレーション担当の震明さんが「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション:定形作業の自動化)でできますよ」と声を上げてプロジェクトが発足しました。
サービス開発者ではない2人が3ヶ月ほどの短い期間でベータ版提供し、ユーザーからも高い評価を受けると同時に、それまで社内のオペレーションを自動化するためだけに使っていたRPAをサービス提供という「攻め」の領域にも使えそうだという手応えが得られたそうです。
所感
2人チームのメリットは何よりもコミュニケーションコストが最小であることによるスピードです。この発表は強みの違う2人がこのメリットを存分に活かして最速で大きな価値を生み出したというお話でした。
データを元にユーザーのニーズを発見しているところ、ランチの時間に他の部署のメンバーに相談しているところなど、見習う点が多いと感じました。
Classi株式会社 2ヶ月で3種類の文化が混ざる会社がビジョンとバリューを作ったプロジェクト
Classi株式会社さんは学校で教師、生徒、保護者が利用するプラットフォームサービスを提供している会社で、ベネッセ、ソフトバンクから来た社員とClassi採用の社員がいるそうです。
発表者の三戸さんは人事担当者として、3種類の文化が混在する会社で、社会に対する使命(ミッション)を達成するための行動指針である「ビジョン」と「バリュー」を作るというプロジェクトを行いました。メンバーは幹部と人事、広報に外部のファシリテーターを加えた11人。
しかし、残念ながらプロジェクト開始した、というあたりで発表時間切れとなってしまいました。惜しい!
所感
実はヌーラボも状況は違いますがほぼ同じプロジェクトを経験しています(私もメンバーでした)。その際ファシリテート役をやっていただいた合同会社こっからさんをClassiさんに紹介したご縁もあり、これがとても重要で難しくて面白いプロジェクトだということをよく理解できます。
- 新しい行動規範づくりもしっかり遊んだ! ヌーラボ の行動規範「NUice Ways」ができるまで
- 創業13年の会社が行動指針を刷新してみたハナシ 〜行動指針、つくりかた編〜
- 創業13年の会社が行動指針を刷新してみたハナシ(後編) 〜NuiceなWaysができたよ編〜
それだけに、一番いいところで終わってしまったのがもったいなくて仕方ありません。
要求仕様や納品といったわかりやすいゴールがないプロジェクトで、メンバーのやる気を起こさせ、納得の行くゴールを自分で設定し、一つの形に収めるまでの苦労や上手くいった要因など、共有されるべき知見がたくさんあると思います。ぜひ他の場所でアウトプットされるのをお待ちしています。
シタテル株式会社 縫製工場向け案件管理システム『マイオペレーター』
アパレル業界出身の発表者宇田川さんがディレクターとなり、数多くのクライアントと縫製工場をつなぐサプライチェーンシステムを開発したお話です。
自身の経験やヒアリングをもとに縫製工場のニーズについて丁寧に掘り起こし、様々な職種のメンバーを集めて一丸となって開発し、ちゃんと使ってもらえるシステムになるようにサポートもしっかり行いました。
結果、工場とクライアント間でのFAX(!)や郵便を削減でき、工場の工員さんにも喜ばれるシステムになったそうです。
所感
宇田川さんはITに詳しいわけではなく、手書きの絵をスキャンしてKeynoteに貼り付けた味のあるスライドが印象的でした。開発にあたっても「私がわからないということは工員さんにもわからない」という立場で、自らわかりやすいUIを作るための指針として貢献されていました。
私個人としては色彩調整のされていないモニタの利用まで考慮するといったあたりに苦い経験を思い出しつつ(Backlog UI リニューアルの舞台裏)、やはりユーザーとのコミュニケーションを密にとることが重要だという確信が強まりました。
パワーママプロジェクト パワーママプロジェクト
2013年に発足した当時、働くママのイメージが「苦しい・サバイバル・凄い人」だったのを「無理なく・ハッピーに・等身大」というポジティブなものにシフトするべく活動されている任意団体のお話です。Webサイトはこちら:パワーママプロジェクト
発表者の佐藤さんは活動が5年間も継続して拡大している理由として
- 方向性の明確化
- 「無理なく楽しく」ルール
- ビジョンに共感した有機的チーム
- 効率的生産性意識したコミュニケーション
- 自然に増殖する仕組みづくり
の5つを挙げられていました。コミュニケーションとしては通勤中にFacebookチャットでミーティングとか、ながらKPTといった、全員リモートな組織ならではの手法を活用されていました。また質疑応答では、この活動と本業の両方が相乗効果のように良い影響を与えあっていると話されていました。
所感
審査のときに話が挙がったのは、リモートワークやテレワークが当たり前になってくるこれからの時代に、ビジョンを共有することやコミュニケーションの方法はとても参考になるのではないかということでした。
また、いろんな職業についているワーママさんたちが一つのビジョンを共有して強みを活かしあっているところが、まさに理想的なコラボレーションの姿だと思いました。
あと発表と関係ない細かい点ですが個人的にお気に入りなのが記事についている「2005年生まれ」「2008年生まれ」といった子供の生まれ年タグで、なるほど、読む人にとってはその時点の子供の年齢によって気にするところが違うのだからこれは上手い、と勝手に感心していました。
最優秀賞はシタテル株式会社 縫製工場向け案件管理システム『マイオペレーター』 でした!
来場者の皆様にはリアルタイム投票フォームのQRコードをお配りしてありましたが、50名もの皆様が投票してくださいました。ありがとうございます。
審査員3名の審議では、意見が割れたりして悩みに悩み、当初予定の5分間をだいぶオーバーしてしまいましたが、最優秀賞はシタテル株式会社さんに決定しました!
ユーザーの課題を丁寧に分析して、立場の違う多くのメンバーをまとめ上げ、リリース時には全員が工場に向かって導入サポート、と、プロジェクトマネジメントという文脈において非常に正しいプロジェクト進行であることが評価されました。来場者の投票でも総合得点で1位でした(かなりの僅差でしたが)。
プレゼンテーションのテクニカルな面について、個人的には、みなさん意外と10分という時間の使い方に苦労されていた印象をうけました。
前回は1組5分だったので一番伝えたい、インパクトのあることだけに絞るしかなかったのですが、10分あったことで逆に伝える内容を絞りにくくなっていたかもしれません。このあたりは運営側の反省点として次回に活かしたいと思います。
皆様、ありがとうございました!
熱量たっぷりのプレゼンテーションを準備してコンテストに臨んでくださった優秀賞の発表者および各プロジェクト関係者の皆様、審査員の中田華寿子さん、中村駿介さん、そして会場に来てくださり投票にご協力いただいた皆様、皆様のおかげでいいコンテストになったと思います。
ここから、今回発表された様々な知見がメディアや口コミを通じて広まっていき、いろんな良いことが起こり、またたくさんの人がプロジェクトマネジメントに関するアウトプットをし……といったようなサイクル自体がコラボレーションとなり、日本中のプロジェクトがより良くなることを願っています。
業務連絡
発表された方は発表資料をなんらかの形で公開するとき、Twitterの @nulabjp にメンションいただければこの記事からリンクさせていただきますのでぜひお知らせください。
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