ガントチャートを使った年間計画は、長期的なプロジェクト管理に効果的です。手軽に作成できることから、多くの企業がエクセルを利用していますが、実際の運用では様々な課題があります。
本記事では、エクセルでのガントチャート作成方法を解説するとともに、日々の運用における問題点についても詳しく説明します。さらに、それらの課題を解決できるプロジェクト管理ツール「Backlog」もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ガントチャートとは
ガントチャートとは、作業工程や進行状況を管理する際に用いられる棒グラフ形式のチャートのことです。名称は、考案者の「ヘンリー・ガント」に由来しており、計画表や工程表とも呼ばれています。
ガントチャートは以下のような構造になっています。
- 縦軸:タスク名、担当者名、開始日、期日などを記載
- 横軸:日付や時間の経過を表示
- 棒(バー):各タスクの実施期間を示す横長の帯
例えば、新商品開発プロジェクトでは、「市場調査」「企画立案」「試作品制作」といったタスクを縦に並べ、それぞれの作業期間を横棒で表します。これにより、「どのタスクが同時進行しているか」「次に何をすべきか」が一目で分かります。
プロジェクト全体の進捗を視覚的に把握できるため、複数のタスクを並行して管理する必要がある場合でも、効率的な運用が可能です。
年間計画でガントチャートを使うメリット
ガントチャートで年間計画を作成することで、以下のようなメリットがあります。
- 長期的なプロジェクトの全体像を把握できる
- タスク間の関連性や依存関係を明確化できる
- リソースの配分を最適化できる
それぞれ解説します。
長期的なプロジェクトの全体像を把握できる
プロジェクト全体を視覚的に把握できることが、ガントチャートの大きなメリットです。
長期プロジェクトには、プロジェクト全体の見通しが立てにくく、進捗や問題点の把握が難しいという課題があります。ガントチャートを使えば、1年以上の長期にわたる工程を一枚の図で可視化できます。
また、意思決定会議や報告会といった重要なマイルストーンと、それに関連する準備作業の期間も、ガントチャート上で確認可能です。これにより、適切な準備期間を確保でき、遅延リスクを早期に発見できます。
タスク間の関連性や依存関係を明確化できる
ガントチャートを利用することで、タスクの順序や優先順位を視覚的に表現できます。
長期プロジェクトでは、タスクの数が多くなるため、タスク間の依存関係が複雑になりがちです。タスク間の依存関係が明確でないと、後続の作業に必要な前工程が完了していないことに気づかず、手戻りや進捗の遅れが発生します。
ガントチャートでは、こうした依存関係をグルーピングや親子課題といった形で明確にできます。これにより、どのタスクが遅れると後続の作業に影響するのかが一目瞭然となるのです。
このように依存関係を可視化することで、タスク間の無理な重複を避け、手戻りのない効率的なスケジュール管理が実現できます。
リソースの配分を最適化できる
リソースを適切に活用できる点は、ガントチャートの大きなメリットです。ガントチャートでは、各タスクの期間を視覚的に把握できるので、人手不足や余裕のある時期を予測できます。
この可視化により、繁忙期の作業を閑散期に前倒しする判断が容易になります。また、メンバー別の作業量も把握できるため、特定のメンバーへの作業集中を防ぐことも可能です。
このように、人員配置の最適化と作業量の平準化により、リソースを効率的に活用できる点も、ガントチャートの優れた特長です。
ガントチャートの年間計画をエクセルで作成する方法
ここでは、ガントチャートの年間計画をエクセルで作成する方法を、以下の4つに分けて解説します。
- タスクを洗い出し、整理する
- WBSを作成する
- 時間を表す横軸を作成する
- 作業日数を表す棒(バー)を作成する
それぞれの手順について、詳しくご説明します。
タスクを洗い出し、整理する
まず、年間プロジェクトの作業工程を整理していきます。手順は以下の通りです。
- プロジェクトの最終目標を設定する
- 目標達成に必要な主要な工程を洗い出す
- 必要に応じて、各工程をより具体的なタスクに分解する
年間計画では、工程の粒度が重要です。タスクが細かすぎると更新作業が煩雑になり、工程数も膨大になってしまいます。そのため、四半期や半期単位で管理できる程度の大きさに設定し、詳細な作業は別途管理することをおすすめします。
WBSを作成する
洗い出したタスクをもとにWBS(Work Breakdown Structure)を作成しましょう。WBSとは、プロジェクトを構成する作業を階層的に分解し、整理した一覧表のことです。
年間計画では、四半期や半期といった大きな区切りを置き、その下に主要な工程を配置していきます。各工程には担当者と期限を設定します。個人ではなく、チームや部門で対応する場合は、代表者名を記入しましょう。
こうした階層的な整理により、1年間の作業内容と実施体制を明確にできます。
参考:WBSとは?ガントチャートとの違いとWBSの作り方を解説 | Backlogブログ
時間を表す横軸を作成する
続いて、チャートの横軸を作成します。エクセルには日付を簡単に入力できるオートフィル機能や関数機能が用意されています。1日ずつ手入力する必要はなく、自動的に連続した日付を生成できます。
H2を基準日とした場合の関数例
区切り | 関数 | H2の値 | 関数の結果 |
---|---|---|---|
日単位 | =H2+1 | 9/1 | 9/2 |
週単位 | =H2+7 | 9/1 | 9/8 |
月単位 | =EDATE(H2,1) | 9/1 | 10/1 |
時間の区切り方は、日単位・週単位・月単位の3種類が一般的です。プロジェクトの期間や管理の目的に応じて、適切な単位を選択しましょう。
それぞれの区切りの特徴について説明します。
日単位
日単位の時間軸では、タスクの進捗を詳細に把握できます。細かいマイルストーンや締め切りを正確に表現できるため、短期プロジェクトの綿密な管理に適しています。
一方で、長期プロジェクトでは横軸が長くなりすぎて視認性が下がり、データ入力や更新作業の負担も大きくなります。
リアルタイムでの進捗把握が必要な場合は日単位に選びましょう。
週単位
週単位の時間軸は、日単位より視認性が良く、かつ月単位より詳細な管理が可能です。そのため、数ヶ月から1年程度のプロジェクトの管理に最適です。
ただし、週の途中で開始・終了するタスクは正確な表現が難しく、祝日や休日の影響も考慮しにくいという課題があります。
月単位
月単位の時間軸は、長期にわたるプロジェクトの全体像を把握しやすいというメリットがあります。年間計画や複数年プロジェクトの管理に適しており、複雑な工程の概要を簡潔に表現できます。
ただし、月の途中で開始・終了するタスクの表現が難しく、短期的な進捗や遅延も見えにくくなります。大規模プロジェクトの全体像を把握したい場合に最適です。
作業日数を表す棒(バー)を作成する
続いて、作業日数を表すガントバーをエクセル上に入力していきます。ガントバーは、以下の3種類の方法で作成可能です。
- セルを塗りつぶす
- 図形を利用する
- 条件付き書式で自動化する
セルを塗りつぶす
セルを塗りつぶして作成する最もシンプルな手法です。該当する日数分の範囲を選択して「ホーム」タブの「塗りつぶしの色」をクリックし、セルを塗りつぶしましょう。
図形を利用する
手動で矢印や線の図形を挿入する方法です。挿入した図形は、クリックのみで容易に長さを調整できるため、修正に手間がかかりません。
ただし、マウスの操作を誤ると、位置がズレることがあるため注意しましょう。
条件付き書式で自動化する
エクセルの条件付き書式を活用すると、日付変更をするだけでチャートを作成できます。作成の手順は以下のとおりです。
- 「ホーム」タブの「条件付き書式」から「新しいルール」を選択する
- 「数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選択する
- 数式を入力し、「書式」をクリックする
条件付き書式の活用によって、チャートの作成・修正作業を一部自動化できます。
年間計画のガントチャートの問題点
ガントチャートによる年間計画には、以下の2つの大きな課題があります。
- 日々の進捗管理が難しい
- 細かいタスクが見えにくい
それぞれ解説します。
日々の進捗管理が難しい
年間計画のガントチャートは、月や週単位で区切られた大きな目盛りで表示するため、日々の進捗状況を正確に反映できません。
例えば、あるタスクが予定より2日遅れていても、週単位の目盛りでは遅れを視覚的に表現することが困難です。また、日単位の目盛りに変更すると、1年分の期間を表示した際にチャートが横に長くなり過ぎて、かえって進捗状況を把握しづらくなってしまいます。
そのため、日々の進捗管理をするガントチャートは、別途用意したほうがよいでしょう。
細かいタスクが見えにくい
年間計画のガントチャートは、個々の作業レベルまで細かく管理するには不向きです。なぜなら、年間という長期のスケジュールを見渡すためには、ある程度大きな単位でタスクを区切る必要があるためです。
日々の細かな作業まで全て書き込もうとすると、タスク数が膨大になり、プロジェクトの全体像が分かりにくくなってしまいます。
そのため、年間計画では適切な粒度を保ちながら、重要なマイルストーンを中心に管理することが効果的です。
年間計画と日々の管理のガントチャートは、分けるのがおすすめ
年間計画と日々の管理は、それぞれに適したガントチャートを使い分けることで、効果的なプロジェクト管理が実現できます。
年間計画では、プロジェクト全体の方向性や重要なマイルストーンの把握が重視されます。一方、日々の管理では、細かな作業の進捗やメンバー間の作業分担の確認が目的です。
これらを1つのチャートで管理すると、情報が過密になり、どちらの目的も果たせなくなってしまいます。そのため、用途に合わせて2種類のガントチャートを使い分けましょう。
特に日々の管理では頻繁な更新が必要なため、効率的に作業ができる使いやすいツールを選ぶことが重要です。
日々のプロジェクト管理をエクセルで実施する問題点
日々の進捗管理でエクセルのガントチャートを利用する場合、以下のような問題点があります。
- 修正に手間がかかる
- コミュニケーションがとりづらい
- モバイル端末での操作が難しい
これらの課題は、プロジェクト管理の効率を大きく下げる要因となります。それぞれの問題点について、詳しく解説していきましょう。
1. 修正に手間がかかる
修正作業に時間がかかってしまうことが、エクセルの大きなデメリットです。
ガントチャートでスケジュールに変更が発生した場合、日付や期間を表すバーを組み直す必要があります。特に、タスク間の依存関係が複雑な場合は影響が大きく、場合によっては、プロジェクト全体のスケジュールを見直さなければなりません。
関数やマクロを活用して修正作業を効率化することも可能ですが、設定ミスのリスクがある、保守作業のコストがかかる、といった問題があります。
これらの理由から、頻繁な変更が発生するプロジェクトでは、エクセルでの管理は非効率といえます。
2. コミュニケーションがとりづらい
エクセルのガントチャートには進捗や状況をコメントする機能がなく、タスクの詳細や補足情報の共有には別のツールが必要です。
進捗報告はメール、資料は共有フォルダ、質問はチャットと、情報がバラバラに存在することになります。このため、「ガントチャートは更新したが関係者への連絡を忘れた」「変更の経緯が残っていない」など、重要な情報の見落としや共有漏れのリスクが高まります。
そのため、管理ツールとコミュニケーション手段は統一したり、連携したりすることがおすすめです。
プロジェクト管理ツール「Backlog」では、タスクごとのコメントや資料共有が可能です。さらに、Slackなどのコミュニケーションツールと連携すれば、情報共有を自動化できます。
3. モバイル端末での操作が難しい
エクセルは、スマホを始めとしたモバイル端末での操作に向いていません。主な理由な以下の3つです。
- 画面サイズの制約によりプロジェクトの全体像が把握できない
- 表示されるセルやボタンが小さく、選択やテキスト入力を正確に行えない
- タスクを確認する際に頻繁にスクロールする必要がある
これらの要因から、スマホのような画面の小さいモバイル端末でエクセルのガントチャートを利用するのは困難です。
社外での作業が多い場合や、移動中にタスクを確認する必要がある場合は、スマートフォンに対応したプロジェクト管理ツールをおすすめします。スマートフォンに最適化されたインターフェースで、いつでもどこでもスムーズな操作が可能です。
Backlogでガントチャートを利用する6つのメリット
日々のプロジェクト管理は、プロジェクト管理ツール「Backlog」の利用がおすすめです。ここでは、Backlogを利用するメリットについて、以下の6つに分けて解説します。
- すぐにガントチャートを利用できる
- 日単位、週単位、月単位表示を簡単に切り替えられる
- 直感的に操作できる
- コミュニケーションを促進できる
- 様々なデバイスで利用できる
- エクセル形式でも出力できる
1. すぐにガントチャートを利用できる
Backlogでガントチャートを作成する際は、従来のエクセルのように一から表を組み立てる必要がありません。
エクセルでは、ガントチャートの枠組みづくりや計算式の設定、デザインの調整など、作成に時間がかかります。また、運用ルールの策定や仕様の検討なども必要です。一方、Backlogなら、タスク名、担当者、期限を入力するだけで、すぐに実用的なガントチャートを利用できます。
日々の業務で多忙な担当者でも、特別な準備や設定なしですぐに活用を始められる点が、Backlogの大きなメリットです。
2. 日単位、週単位、月単位表示を簡単に切り替えられる
Backlogのガントチャートは、タイムスケールを自由に切り替えられる機能を備えています。
日単位の表示では、細かなタスクの進捗状況を詳細に把握でき、週単位では中期的な計画の確認に適しています。また、月単位表示に切り替えれば、プロジェクト全体の進行状況を俯瞰できます。
それぞれの期間に応じて別のガントチャートを作成する必要がないため、管理の手間を大幅に削減可能です。目的や状況に応じて表示期間を変更することで、最適なタイムスケールでのプロジェクト管理が実現します。
3. 直感的に操作できる
Backlogは、誰でも簡単に使えるよう設計された直感的なインターフェースを採用しています。特にガントチャートでは、ドラッグ&ドロップ操作でスケジュールを変更できるため、エクセルのような複雑な操作は不要です。
また、専門的な知識がなくても短時間で操作方法を習得でき、導入時の学習コストを抑えられます。
使いやすさと機能性を両立した設計により、チーム全体の業務効率を向上させることができます。
4. コミュニケーションを促進できる
Backlogには、プロジェクトのコミュニケーションを活性化する多彩な機能が搭載されています。
具体的には、以下のようなコミュニケーション機能が用意されています。
- タスクごとに専用のコメントスペースを用意。関連する情報を一箇所に集約。
- メンション機能で特定のメンバーに確実に情報を伝達。
- 既読機能により、メンバーの確認状況を把握。
- Slackなどの外部ツールと連携し、情報共有を効率化。
これらの機能により、チーム内の情報共有がスムーズになり、プロジェクトの進行効率が高まります。利用シーンに応じて最適な機能を組み合わせることで、円滑なプロジェクト運営を実現可能です。
さらに、OpenAIと連携したAI要約機能により、タスクの経緯や対応内容を自動で要約する機能もリリースされました。この機能を活用することで、プロジェクトのキャッチアップを効率的におこなえます。
参考:課題の「AI要約」機能をアップデート!UIの改善と返信提案機能が追加されました | Backlogブログ
5. 様々なデバイスで利用できる
Backlogは、パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットでも利用可能。必要な情報を外出先でも確認できるため、柔軟な働き方をサポートします。
専用アプリを通じてタスクの確認や更新、コメントの投稿が簡単に行えます。また、プッシュ通知機能により、重要な更新も見逃しません。外出先や移動中でも、プロジェクトの最新状況を把握し、必要な対応を取ることができます。
6. エクセル形式でも出力できる
Backlogで作成したガントチャートは、エクセル形式で出力可能です。これにより、Backlogを利用していないメンバーや取引先とも、プロジェクトの進捗状況を共有できます。
出力したデータは、エクセルの機能を使って自由に加工できるため、会議資料やレポートとして活用できます。
Backlogの管理機能とエクセルの分析機能を組み合わせることで、より効果的なプロジェクト管理を実現可能です。
最適なツールでガントチャートを活用して、円滑なプロジェクト進行を実現しよう!
ガントチャートは、プロジェクトの全体像を可視化し、効率的な進捗管理を実現する優れた管理手法です。作業の依存関係や進捗状況を一目で把握でき、スケジュール調整も容易におこなえます。
エクセルでもガントチャートは作成できますが、更新作業に手間がかかる、チーム内での情報共有が難しいなど、様々な課題を抱えています。そのため、ガントチャートの利用にあたっては、専用のプロジェクト管理ツールの導入をおすすめします。
ヌーラボの提供する「Backlog」は、使いやすさと機能性を両立したプロジェクト管理ツールです。シンプルで分かりやすいデザイン設計により、普段ITツールを使わない方でも迷わず操作できます。
ガントチャート以外にも、プロジェクト管理に必要な様々な機能が搭載されています。
機能名 | 説明 |
---|---|
ボード | ボード上のタスクカードを動かして進捗更新。直感的な操作で状況把握と管理が可能。 |
親子課題 | 大きな作業を細かなタスクに分解して管理。関連性のある作業を階層構造で整理可能。 |
課題ごとのコメント | タスクごとに専用のコメントスペースを用意。関連する情報を一箇所に集めて共有。 |
ファイル共有 | プロジェクト資料を一元管理。チームメンバー全員がいつでも最新版にアクセス可能。 |
Wiki | 業務の手順やノウハウを体系的に蓄積。チーム内の知識共有を促進。 |
課題検索 | 担当者や期限、状態など、多様な条件でタスクを抽出。複数プロジェクトからの横断検索も可能。 |
モバイルアプリ | スマホやタブレットからいつでもアクセス。場所を問わずプロジェクトの最新状況を確認・更新可能。 |
これらの機能を活用することで、ガントチャートの作成・運用の手間を大幅に削減し、より効率的なプロジェクト管理を実現できます。
Backlogの具体的な使用感を確かめていただくため、30日間の無料トライアルをご用意しています。実際にガントチャートを作成し、チームでの情報共有を体験することが可能です。
また、ガントチャートをはじめとするBacklogの機能や活用事例、料金プランを詳しく解説した資料もご用意しました。プロジェクト管理の効率化をお考えの方は、ぜひ以下のリンクから資料をご覧ください。
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