「目標管理は大切」「ゴールに対する認識の共有は大事だ」と、頭で理解している人は多いです。しかし、実際に目標を適切に設定してやるべきことを洗い出せる人は多くないと思います。
今回紹介するKGIは、「何を目標とするのか」「何を成果とするのか」を設定するためのツールです。仕事のゴールがあいまいになっている人はKGIを意識して仕事に取り組みましょう。
また、KGIを理解するにはKPIやKSFといった紛らわしい言葉の理解も必要不可欠です。しかし、内容を理解すれば混同することはありませんので安心してください。
まずは、KGIの意味について理解していきましょう。
目次
KGIの意味とは?
KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)とは、組織やプロジェクトの最終的なゴールを数字で表したものです。分かりやすいたとえだと売上金額や新規成約数、利益額が当てはまります。
KGIは、部門ごとや商品ごとの目標設定ではなく、会社全体の戦略的な目標設定という位置付けです。たとえば1年前の決算書よりも利益額を50%増加させる、業界での製品シェアを5位から3位まで上昇させるなどです。どれも客観的かつ会社全体で総力を挙げて達成すべき目標です。これを「KGIを設定する」といいます。
KGI設定のポイントは「客観的な数字を使った目標を設定する」ことです。「売り上げを伸ばす」ではKGI設定としては不適切です。これを「昨年度の決算書の売上額の1.5倍の利益を今年度の売り上げ目標にする」など「対象」と「時期」を具体的に設定することがポイントです。
KGI導入の目的
KGIの目的は企業の方向性の決定です。売り上げを伸ばすのか、コストを削減するのか、業界シェアの確保に力をいれるのか、利益率を上げることを大切にするのか、などの「何を重視するのか」がKGI設定において重要です。
KGI導入のメリット
KGIを導入すれば「明確で短期的な目標」を共有することができます。目標が具体的で達成可能だと思えれば「KGIを達成するために行動しよう」と促すことができます。
明確な目標設定による社員の意識改革がKGI導入のメリットです。
KPIとKSFの違いと関連性
KGIを説明する上で避けられない概念が「KPI」と「KSF」です。KGIを理解するなら、このふたつの言葉を覚えないといけません。
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)とはKGI(目標)を達成するまでの中間指標のことです。
「ゴール(KGI)」にたどり着くために「何をすべきか(KPI)」を明確にすることは、目標達成するうえで必要不可欠です。ここで、KPIもKGIと同じように数字を使って明確に設定する必要があります。
KPIはKGIよりも日常業務で意識されます。たとえば、KGIが「昨年度より売り上げ額50%アップ」であればKPIは「4半期ごとに売り上げ額のペースが上がっているか」「新規開拓の件数は増えているか」「成約数や失注数は想定どおりか」などといったKPIが考えられます。
最後に、KSF(Key Success Factor:主要成功要因)について解説します。KGI(目標)からKPI(中間指標)を設定するときにKSF(達成手段)を明確にします。
「昨年度より売り上げ額50%アップ」の例でKSFを考えると「新規開拓率の回数を増やす」「失注を少なくする」「既存の取引量を増やす」といったことが考えられます。
そこからKPIを「1週間で10件以上新規開拓する」「既存の取引先を週に3件以上訪ねてフォローする。そこから1件以上は追加受注につなげる」などと設定することができます。
KGI、KPI、KSFは相互が密接に関係しています。KGIを決めたらKSFを明確にしてKPIを設定する、という流れを意識しましょう。
KGIを効果的に運用する方法
KGIを効果的に運用するコツ、それは「達成可能かつ明確な目標」を設定することです。当たり前に思うかもしれませんが、実際に上手くできている会社は少ないです。
上手くできない理由は「KGI導入に失敗するポイント」で解説します。ここではKGIを適切に設定、運用するためにはどうすればいいのかアドバイスします。
KGIを効果的に運用することはKPI、KSFを適切に運用することと同義です。それぞれの言葉の意味は理解できたかと思いますが、混同しないように注意しましょう。
ロジックツリーでKGIを設定
KGIが適切か、達成できる可能性があるかはKPIを設定すれば分かります。売上を昨年の3倍にする、というKGIを設定しても具体的かつ実現可能と思えるKPIを設定できないとKGIの達成は不可能ということになります。
売り上げを3倍に伸ばすは極端な例ですが、達成できるKGIかチェックするには「ロジックツリー」を使ってKPIを設定する必要があります。
ロジックツリーとは、物事を分解して考える手法です。ロジックツリーには「Why(なぜ)」と「How(どうやって)」に注目する方法があります。KPI設定のときにはHow(どうやって)に注目したほうがよいです。
KGIをロジックツリーの最上部層におきます。そこから目標を達成するために「どうすればいいのか」を段階的にブレイクダウンしていく方法です。ロジックツリーが下層にいくほど日常的に達成すべき目標が見えてきます。
このとき、ロジックツリーから導き出されたKPIが達成不可能な場合、そのKGIは不適切ということです。このロジックツリーの結果をもとにKGIを見直してみましょう。
KSFを明確にしよう
KSFは、やみくもにたくさん設定すればよいというものではありません。KGIやKPIと同じように、数字を使って明確な手段を設定しましょう。
よくある失敗として「KSFの絞り込み不足」が挙げられます。KSFが絞り込まれていないとKPIの指標が増加します。そうなるとリソースが分散してしまい、KPIおよびKGIを達成することができなくなります。
KSFが絞り込めない理由は「何が重要かわかっていない」という可能性があります。重複したKSFはないか、本当にKSFとして適切なのか意見を集める必要があります。
KPIは過不足なく設定しよう
「KSFを明確にしよう」でも書きましたが、KPIの過不足もまたKGIの効果的な運用を妨げます。
KPIが乱立すると個人のタスクが増えてしまい疲弊してしまいます。その結果、早期にKPIの未達成が判明し「これ以上頑張っても意味がない」と思ってしまいます。
KGI導入に失敗するポイント
最後にKGI導入に失敗するポイントを解説します。少し重複する内容もありますが、KGI導入を成功させるには注意点を抑えることが肝心です。
KGIに失敗するケースは、「KPIとKGIがズレる」「KPIの絞り込み失敗」「目標設定のミス」です。まずは、KPIとKGIのズレについて見ていきましょう。
目標がブレる
とてもよくあるケースとして、KPI達成がKGI達成に結びつかないことを設定していることがあります。たとえば社員の離職率低下をKGIに設定した場合、KPIはどうするべきでしょうか。
通常であればストレスチェックの実施や上司との定期的な面談、相談窓口の設置や残業時間の削減がKPIとして考えられます。しかし、KPIがブレると「毎週水曜日の定時退社の日にはみんなで飲み会をしよう」「当番制で毎朝あいさつ運動をしよう」などとなってしまいます。
飲み会やあいさつも悪いことではありません。しかし、本当に離職率が下がるかと考えると疑問符が残ります。指摘しづらい場面もありますが、KGI達成に取り組むのであれば、KPI設定が間違っていないかチェックすしましょう。
KPIが多すぎる、少なすぎる
少し触れましたが、KSFの絞り込み失敗にともなうKPIの過不足は失敗するパターンです。離職率の例で考えると、KPIが多すぎる場合「あいさつ当番がある」「水曜日は飲み会」「上司との面談」「ストレスチェック」「残業時間の削減」などを同時に実行するのはとても難しいです。むしろそれがストレスになって離職率が上がりそうです。
またKPIが少ない場合、「ストレスチェック」だけ、「残業時間の削減」だけではKGI達成に十分とは言えません。退職するに思い至るまでには複雑な事象が積み重なっているからです。
大切なことなので何度も書きますが、KPI・KSFの絞り込みには「何が重要か」を理解する必要があります。
目標設定が間違っている
KGIが達成できない原因として、「何が重要か」を理解していないためにKPI設定が間違っていることが多いです。
離職率を下げる例でもそうですが、何が重要か理解していないままにKPIを設定すると状況が悪化するリスクがあります。KPIを設定するときには、設定項目のマイナス面についても目を向けるようにしましょう。
全体のまとめ
KGIは企業全体の目標設定、経営戦略の決定と同義です。ただ目標を設定するだけでは達成は不可能です。達成するために考えられる手段(KSF)を厳選し、中間指標(KPI)を設定することによってはじめて目的(KGI)が達成できる目途がたちます。
KGIを達成するためには目をそむけたくなる事実と向き合わなければなりません。中途半端で方向違いのKPI設定はKGIを達成できないだけでなく、現状を悪化させるリスクがあることを忘れないようにしましょう。
KGIの設定は言葉で説明するほど簡単ではありません。しかし、試行錯誤して取り組めば必ず現状を改善する有効な手段になります。1度や2度の失敗に負けず、根気強く取り組みましょう。
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