工数とは?基本的な人日・人月の意味から見積もりの計算方法まで解説

プロジェクトマネジメントにおいて、工数管理は非常に重要な要素の1つです。一方で、工数という言葉はビジネスシーンで日常的に使われていることから、なぜ重要なのかをあらためて問われると答えるのは難しいと感じるのではないでしょうか。

今回は、工数の定義や工数管理を行うメリット、効果的な工数管理のポイントについて解説します。工数管理に役立つツールや業種別の注意点もあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

工数管理が適切に行われれば「プロジェクト期間・費用について精度の高い見積もり」「正確な進捗管理」ができるようになります。この機会に工数の基礎をマスターしましょう。

工数とは

工数とは?基本的な人日・人月の意味から見積もりの計算方法まで解説
そもそも「工数」とは何を意味しているのでしょうか。工数の定義や必要性、計算方法について基本的な知識を整理しましょう。

工数の定義

工数は、ある作業が完了するまでに必要な人数・時間を表す指標です。作業完了までに要する人員や時間が多いほど、工数がかかる作業ということになります。

プロジェクトマネジメントでは、完了までにどれだけの人員と時間を要するのか、計画段階で見積もりを出さなくてはなりません。実際に必要な人員・時間よりも少ない場合、作業が計画通りに進まず納期に間に合わない恐れがあります。

反対に人員・時間を多く見積もってしまうと、人件費が膨らむ原因となるでしょう。適正な見積もりを算出するには、工数をできるだけ正確に算出する必要があります。

工数管理はなぜ必要?

工数を管理することを「工数管理」といい、プロジェクトマネジメントの基本とされています。工数管理を適切に行うことが、計画通りにプロジェクトを進行できるかどうかを決定づけるといっても過言ではありません。

たとえば、クライアントに対して料金や納期の見積もりを提示する際、算出した工数は見積もりの妥当性を証明する根拠となります。具体的な工数が示されていれば、見積もりに対して納得してもらえるでしょう。

また、工数を適正に見積もることは、より確実に利益を確保する意味でも重要なポイントです。適正な予算を算出した上で、予算内で作業を終えられれば計画通りの利益を確保できるでしょう。このように、クライアントの信頼獲得や利益確保を実現する上で、工数管理は重要な位置を占めているのです。

工数管理の単位

工数の単位には「人月(にんげつ)」「人日(にんにち)」「人時間(にんじかん)」の3種類があります。

人月とは、1日8時間・1カ月20日間稼働すると仮定した場合の仕事量です。3人月であれば、「3人が1カ月間」または「1人が3カ月間」作業した場合の仕事量を表します。人日の場合は1人が1日8時間、人時の場合は1人が1時間でこなせる仕事量のことです。工数管理では人月の考え方をよく用います。

同様に、2人日であれば「2人で1日間」または「1人で2日間」に換算できます。30人時であれば「30人で1時間」または「1人で30時間」かかる作業と考えてください。

工数の計算方法

人月・人日・人時間とは?_工数とは?基本的な人日・人月の意味から見積もりの計算方法まで解説
30人月の工数がかかると見積もったプロジェクトについて、必要な人員と実際にかかった工数の計算方法を見ていきましょう。

必要な人員は「見積もり工数÷期間」で算出します。プロジェクト期間が6カ月と仮定すると30人月÷6カ月=5人であることから、プロジェクトに必要な人員は5人です。

プロジェクトの完了後、実際にかかった工数を計算する際には「人数×時間」を用います。たとえば、最初の4カ月間は4人で作業を進めたものの、進捗に遅れが生じたために残り2カ月間は6人で作業した場合の工数を計算してみましょう。

・最初の4カ月間:4人×4カ月=16人月
・残りの2カ月間:6人×2カ月=12人月
・全体の工数:16人月+12人月=28人月

上記の例では、30人月と見積もったプロジェクトが実際には28人月で完了していることから、計画の範囲内に収まっていると判断できます。

参考: プロジェクト管理とは?目的や項目、管理手法について徹底解説!

工数を行うメリット

工数管理を行うことによって、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。主なメリットとして次の3点が挙げられます。

予算や見積もりの根拠として提示できる

適正な工数を算出することで、予算や見積もりの根拠として提示できます。プロジェクト予算の妥当性を示すツールとして、工数管理表は重要な役割を果たしているのです。

また、クライアントに見積もりを提示する際にも、料金や納期が適正に算出されている事実を示せます。料金や納期の交渉時には、譲歩できる限度を根拠とともに提示できるでしょう。このように、工数管理を適切に行うことによって社内外から納得してもらえる根拠を提示できるのです。

スケジュール管理が行いやすくなる

工数管理を適切に行うことは、スケジュール管理においても重要な意味をもっています。必要な人員と時間が明確になることによって、現実味のあるスケジュールを策定できるからです。

人件費を抑えたいからといって、配置する人員を過小に見積もってしまうと作業が遅延し続けることになるでしょう。反対に、適正な人員を配置していることが把握できていれば、作業が遅延した場合に人員不足が主要因ではないと判断できます。

進捗管理を行う際に役立つ

工数管理は作業の進捗管理にも役立ちます。作業に高い負荷がかかる箇所をあらかじめ把握できていれば、人員を多めに配置するなどの対処ができるでしょう。また、作業が遅れている箇所が特定できるため、追加の人員配置が必要かどうかの判断を下しやすくなります。

プロジェクトの計画はできるだけ実態に即して立てておく必要があるものの、実際に作業が始まると予定通りに進むことばかりではありません。工数を適切に算出することは、人員を調整する際の基準としても活用されるのです。

工数管理を効果的に行うポイント

工数管理を効果的に行うには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。実態を踏まえて工数管理を行うためにも、次の4点を押さえておきましょう。

メンバーの能力やスキルを考慮する

人月計算をする際に見落としやすいポイントとして、メンバー間の能力・スキルの差が挙げられます。同じ作業を任せたとしても、人によって処理能力や作業スピードは異なるものです。

工数を計算する際には、実際に誰が作業を担当することになるのかを考慮する必要があります。機械的に計算するのではなく、メンバー間での能力差を織り込み、実態に即した工数を算出することが大切です。工数計算の精度を高めるためにも、各メンバーが作業に要している時間を日頃から記録しておくことをおすすめします。

過去のプロジェクトの工数を参考にする

工数を算出したら、過去の類似したプロジェクトの工数と照らし合わせておきましょう。実際にかかった工数と大きく乖離しているようであれば、工数計算が実態を踏まえたものになっていない可能性があります。

過去のプロジェクトにかかった工数は、自社にとっての実績そのものです。実績を加味して工数を見積もることによって、工数計算の精度を高められます。

適度にバッファを設ける

工数見積もりを元にスケジュールを作成する際には、適度にバッファを設けて余裕のある日程を組みましょう。バッファを設けることによって、想定外のトラブル等が発生した際にもある程度まで吸収できるからです。

ただし、工数見積もりの段階では必ず実態に即した工数を算出してください。工数そのものにバッファを設けてしまうと、プロジェクト全体の工数を正確に把握しづらくなります。できるだけ正確に工数を見積もった上で、スケジュールに落とし込む際にバッファを確保するのがポイントです。

プロジェクト発足後も適宜見直しをする

事前に計算した工数通りにプロジェクトが進行するのはまれなケースといえます。作業がスタートした後、必要に応じて工数の見直しを図ることが大切です。

工数ありきでスケジュール管理を進めると、作業に無理が生じたり、遅延が生じる兆候を見落としたりする原因にもなりかねません。作業を予定通りに完了させることが工数管理を行う本来の目的のため、プロジェクト発足後も適宜見直して実態に合わせていく必要があります。

【業種別】工数管理の注意点

工数管理は、携わる業務の性質によって注意点が異なる場合があります。ここでは3業種で求められる工数管理について、押さえておくべき注意点を見ていきましょう。

受注業務が中心の製造業・制作会社の場合

製造業や制作会社など、受注業務が中心の企業においては、担当者によって作業スピードが異なることを織り込んだ工数管理が求められます。担当者ごとのスキルや経験を度外視して工数を算出した場合、作業の実態と乖離しかねないからです。

各工程を誰が担当するのかを明確にした上で、担当者ごとに過去の作業履歴や実績を参照しながら工数を見積もることが大切です。日頃から担当者別の平均工数を把握しておくことをおすすめします。

コンサルティング会社や士業など専門職の場合

コンサルタントや士業などの専門職の業務においても、工数管理は重要な意味をもっています。案件ごとの難易度や案件完了までの予定期間に応じて、適切な人員を割り当てる必要があるからです。

各案件の進捗状況を確認する際にも、あらかじめ見積もった工数と実績を照らし合わせる必要があります。見積もりよりも少ない工数で案件が完了しているようなら、担当者の問題解決能力が高いと判断できるでしょう。それぞれの担当者を公正に評価するためにも、工数管理をきめ細かく行う必要があります。

ソフトウェア開発など小規模プロジェクトの場合

ソフトウェア開発などの小規模プロジェクトでは、成果物の難易度によって見積もった工数と実際の進捗にずれが生じることが想定されます。作業が難航することも想定した上で、代替計画や人員補充に対応できる柔軟な計画を立てておくことが大切です。

不測の事態に素早く対処するには、プロジェクトが正常に進行した場合のスケジュールを明確にしておかなければなりません。クリティカルパスを見極めた上で、想定される工数をきちんと見積もっておきましょう。

適切な工数管理にはツールの活用がおすすめ

工数管理を適切に行うには、ツールを活用することをおすすめします。代表的なものとして、エクセルとプロジェクト管理ツールの2つが挙げられます。それぞれの活用メリット・デメリットは次の通りです。

エクセルで工数管理を行うメリット・デメリット

エクセルで工数管理を行うメリットは、書式の自由度が高く用途に合わせてカスタマイズがしやすい点です。導入に際してコストも発生しないことから、工数管理を手軽に始められる点はメリットといえるでしょう。

一方で、運用開始後にフォーマットを変更しにくいことはデメリットといえます。プロジェクトの状況に応じて、工数の見直しが求められるケースは少なくありません。新たなタスクの追加などに伴う管理内容の変更が発生するたびに、フォーマットを更新する手間がかかる可能性があります。短期的に見れば手軽に取り組める工数の管理方法ですが、長い目で見ると管理が煩雑になるリスクを孕んでいるのです。

工数管理にツールを活用するメリット・デメリット

プロジェクト管理ツールやタスク管理ツールなどを活用するメリットは、最新状況の把握・共有がしやすくなることです。工数見積もりをスケジュールに反映させたり、担当者別の工数を素早く確認したりするには、エクセルよりも適した管理方法といえるでしょう。

プロジェクト始動後のスケジュール変更や人員の変動等にも適宜対応できるため、実態に即した工数管理を行いやすいのが特徴です。

ただし、プロジェクト管理ツールやタスク管理ツールの多くは導入に際してコストがかかります。ツールの導入によって適正な工数管理が実現できれば、長い目で見た場合に人件費の削減につながるでしょう。自社にとって必要な機能が備わっているツールを見極め、費用対効果の高いツールを選定することが大切です。

工数管理にはBacklogの活用がおすすめ

工数管理を含む総合的なプロジェクト管理には、プロジェクト・タスク管理ツールの「Backlog」の活用をおすすめします。担当者ごとの進捗状況を可視化するタスク管理機能やプロジェクト全体の進捗を一覧表示できるガントチャート、課題ごとの進捗を管理するカンバンボードなど、工数管理に役立つ機能が充実しているからです。

また、タスク同士の親子関係を関連づける機能を活用することで、工数管理の漏れ重複を防げます。タスクを親課題と子課題に分割し、タスクの内容と担当者を明確にできるため、より正確な工数見積もりと実績管理に役立つでしょう。工数管理を適正化し、プロジェクトの進行を円滑にしたい事業者様はぜひBacklogをご活用ください。

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関連機能: ガントチャート | 機能 | Backlog
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まとめ


工数とは作業完了までに必要な人数・時間を表す指標です。計画通りにプロジェクトを遂行するには、適切な工数管理が欠かせません。

今回紹介したポイントや注意点を参考に、工数管理の目的と重要性をあらためて見直してみてください。工数管理の精度が向上することによって、プロジェクトの円滑な進行が実現するはずです。

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