Backlogユーザーのみなさま、こんにちは!
2024年12月14日に横浜で開催された「Backlog World 2024 in Yokohama〜Grow Together 〜」には、多彩なゲストスピーカーが登壇し、これからのプロジェクトマネジメントについて熱い知見が交わされました。
今回はその中から、安達 裕哉氏による基調講演をご紹介します。テーマは『「頭のいい人が話す前に考えていること」~プロジェクトで「信頼」を生む技術~』。
Deloitteで品質マネジメントやプロジェクトマネジメントのコンサルティングを行い、近年は生成AI分野でも活躍中の安達さん。なんと2023年から2年連続でビジネス書部門のベストセラーランキング1位に輝いた『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者でもあります。
チームやクライアントから信頼を獲得し、プロジェクトを円滑に運営するためには、いったいどうすればいいのでしょうか? プロフェッショナルの実践スキルをレポートします!
目次
“頭のいい人”とは、どんな人か
「『頭のいい人が話す前に考えていること』なんて本、題名を見て、イラッときた方もいるんじゃないでしょうか」と話し始める安達さん。さっそく会場が笑いに包まれます。
確かに“頭のいい”って、なかなか刺激的なワードですよね。安達さんご自身、編集者からこのテーマで執筆を依頼されたときは、困惑したそうです。
「“頭のいい人”って、具体的にはどんな人のことを指すのでしょうか?」
安達さんは問いかけていきます。考えてみると、俺は頭がいいんだぜ、なんて吹聴する人は、頭がよさそうには見えません。学生時代ならば、テストで高得点を獲得したり、難関大学に合格すれば、頭がいい扱いされるでしょうが、社会に出ると、それだけでは通用しなくなります。
「この人、めちゃくちゃ刺さること言うなぁ」「ちゃんと考えて、いつも役立つアドバイスをくれる……」と周りに受け止められている人こそが、“頭のいい人”と見られるのだと、安達さんは言います。
「つまり、目の前の人の役に立ってはじめて、“頭のいい人”になるのです」
心理学者のウィリアム・フォン・ヒッペルは、他者の思考を読み、信頼を得て、他者を動かす「社会的知性」こそが真の知的能力であり、論理的能力はその副産物にすぎないと述べています。
「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK)第7版」においても、感情的知性が効果的なコミュニケーション、協働、リーダーシップの基盤、プロジェクト管理において非常に重要だと意味づけられています。
社会的・情緒的なスキルを発揮して、チームの関係性に価値をもたらす人こそが、“頭のいい人”というわけですね。
“信頼感”は何から生じるか?
次に安達さんは、ご自身のパートナーとのエピソードを交えながら、人間関係に“信頼”を築く方法を解説していきます。
『青い服と白い服、どっちが似合うと思う?』
『んー、青でいいんじゃない?』
『……適当に言ってるでしょ』
『ごめん正直めんどくさいと思った』
「このあと、めちゃくちゃ怒られました。これは仕事でも同じで、『A・Bどっちの施策がいいですか?』という質問に対して、適当に返事をすれば、一気に“信頼”を失います」
新人コンサルタント時代の安達さんが、上司に何度も言われたのは「ちゃんと考えろ」という言葉。最初は「ちゃんと考えているのに」と思っていたけれど、実は、「時間をかけて、ちゃんと考えるプロセス」こそが、“信頼”を獲得する鍵だったのです。
「ちゃんと考えようとしている人ならば、たとえば、『青と白、それぞれどこがいいと思ったの?』と聞き返すでしょう。簡単に答えることなく、まず相手と一緒に考える姿勢を持つんです。人間関係は効率化できません。かけた時間が、イコール“信頼”になります」
「ちゃんと考える」の三原則
①簡単に反応しない
②知識は無駄に披露せず、相手のためにつかう
③自分だけでなく相手と一緒に考える
“一緒に考える”ことを難しくさせる、言葉のあいまいさ
しかし、信頼を生むための“一緒に考える”を実践することは意外と難しいと、安達さんは深掘っていきます。
「皆さんの職場では、こうしたすれちがいが起きていませんか?」
会話A:
『うちの部署、コミュニケーションが足りてないと思うんですよ。部長』
『いやいや、朝礼も夕礼あるし、1on1ミーティングもしているし、積極的にみんなの話も聴いてるだろ』
会話B:
『ホウ・レン・ソウができてないよ、君』
『とんでもない、困ったらいつも相談してますよ。日報だってちゃんと出してるじゃないですか』
こうした会話では、信頼どころか逆に反感を生んでしまいますよね。安達さんは、すれちがいの原因を「言葉のあいまいさ」だと指摘します。
「『コミュニケーション』って、非常にあいまいな言葉です。対面での会話なのか、ビジネスチャットなのか、それとも飲み会のことなのか。何を指しているのか、とてもわかりにくい。『ホウ・レン・ソウ』も意味がどんどん移り変わっている言葉で、提唱者が嘆いていました。」
「また、『結論から言って』とよく言われますが、じゃあ『結論』とは何なのでしょうか? 意外と認識がずれていたりします。こうした数々の言葉の認識を、はじめにすり合わせしなければ、“一緒に考える”ことはできません」
相手は何を見ているのか? なぜそんなことを言うのか? 言葉に敏感になり、掘り下げていくことが、同じ世界を見て話をするために、とても重要なのですね。
ここで、冒頭で“頭のいい人”って、そもそもどういうこと? と、最初から安達さんが追求していた理由が分かりました。
知識を人のために使うには?
安達さんは、講演の冒頭にあった「社会的知性」「感情的知性」という言葉を掘り下げます。
「知識と知性の違いはなんでしょうか?」
辞書を引くと、知識は「知っている内容、ことがら」などと説明されます。知識の語源は「知恵」に近いのですが、時代が下るにつれて、informationに近しい意味になってきました。一方、知性は、「知り、考え、判断する能力」という意味を持ちます。
「知識をただ披露するものではなく、誰かのために使って、はじめて知性となるのです」と、安達さんは言います。
では、どうすれば知識を人のために使うことができるのでしょうか。安達さんの本の中には、客観視・整理・傾聴・質問・言語化のスキルについて解説されていますが、この中で最も重要なのは「傾聴」だと、安達さんは極意を明かしてくれました。
「傾聴」と聞いて、それなら意識してるし、やってるよ! という方もいることでしょう。しかし安達さんは、「傾聴とは『熱心に聞くこと』ではありませんよ」と釘を刺します。もちろん、うなずいたり、相手の方を向いたり、途中で口を挟まなかったりといった、外形的なことでもありません。
「社会人には、『聞いているのに、聞いていない人』が存在します。話を聞こうとしない人ではありません。彼らは、自分が認識できること、理解できることだけ聞いて、あとはほかのことを考えていたりするのです。傾聴とは、すなわち、『相手の話をあまさず理解する』ことを言います。自分の脳のリソースをすべて、理解に費やすことなのです」
プロジェクトで信頼を生むためのスキル
まずは相手の話を流さず、本当は何を言いたいのか、どんな背景を抱えているのかを探っていくこと。そうすると、少しずつ「相手が望むこと」が見えてきます。
そこから、自分が持っている知識や経験をどう活かせばいいのか考えていけば、「相手の役に立つ」ことができるようになります。そしてはじめて「この人、“頭のいい人”だなあ」と思ってもらえる。こんな仕組みがあったのでした。
プロジェクトで信頼を生むためのスキルについて、講演の最後、安達さんはこう総括します。
「ちゃんと聴けて、上手く話せる」
おわりに
では、安達さんに教わった方法の実践編です。
「ちゃんと」とは、どんな状態を指すのでしょうか?
「聴く」とは、どういう意味でしたか?
「上手く」と認識されるには、何が必要でしょうか?
「話す」には、どんな意味が込められているでしょうか?
ぜひチームメンバーと話し合ってみてください。
これからの時代、さまざまなバックグラウンドの仲間と一緒に活躍する機会が増えていくことでしょう。固定された人材ではなく、多様で流動的なメンバーが組織の枠を越えて協働し、共通の目標達成を目指す新しいマネジメント手法を「チームワークマネジメント」と呼びます。
チームワークマネジメントを実践し、言葉の一つひとつを磨き抜くことで、「ちゃんと聴けて、上手く話せる」人をめざしていきましょう。
こちらもオススメ:
プロジェクト管理とは?目的や項目、管理手法について徹底解説! | Backlogブログ
プロジェクト管理の基本や主な項目を紹介。CCPMやWBSなどのプロジェクト管理の代表的な手法やプロジェクト管理全体の流れを解説。これからプロ…
backlog.com