こんにちは!一般社団法人日本PMO協会の伊藤大輔です。私は現在まで、約380社に対してプロジェクトマネジメントの様々なご支援を行ってきました。
ご支援をさせていただく中で、プロジェクトマネージャーの悩みとして「メンバーが思うように動かない!」や「自分とメンバーのプロジェクトに対する意識や意欲が違いすぎる!」というものがありました。
今回はこの悩みの対処法として、欧米でも使われているフレームワークなど、お役に立ちそうな情報をお伝えしていきます。
目次
ニューロロジカルレベルとは
今回は「ニューロロジカルレベル」をもとに解説していきます。
ニューロロジカルレベルは、アメリカのロバート・ディルツ氏が提唱した、人間の意識レベルを体系化したモデルで、NLP(神経言語プログラミング)の基となった理論です。
コミュニケーションや心理療法におけるアプローチ技法として知られており、ビジネスの世界ではコーチングや個人の自己啓発や人材マネジメントなどにも活用されています。
今日の記事の主題は「プロジェクトの課題解決」ですので、ニューロロジカルレベルについては「話を単純化して」お伝えします。この理論はとても深い理論になりますので、今回の記事で興味が出たら、ぜひインターネット等で詳しく学んでみてください。
ビジネスでよく利用される「ニューロロジカルレベル」では人間の意識レベルを以下のように5つに分けています。
まず押さえていただきたいことは、これらの意識レベルの階層は「自分」を形作っている要素だということです。そして、それぞれのレベルの階層は、隣接するレベルの階層に影響を受けていると考えてください。
例えば、自分の「行動」レベルを見てみましょう。
あなたの「行動」は、置かれた「環境」と「能力」に影響を受けているということです。
2020年以降、新型コロナウイルスの影響でお仕事に関する行動が変わったのではないでしょうか?それは、新型コロナ感染症対策など、世の中の「環境」が変わったから、それに応じてビジネスでの「行動」が変わったと考えられます。
さらに、その「行動」によって、オンライン会議やリモートでのお仕事など、新たなデジタルを活用したビジネス活動の「能力」が得られたのではないでしょうか。逆に、これらのデジタル活用の「能力」がなければ、オンライン会議やリモートでのお仕事などの「行動」ができなかったことでしょう。
このように、それぞれのレベルの階層は、隣接するレベルの階層に影響を受けていることを押さえておいてください。
次にそれぞれのレベルの階層がどのように変化するのかを解説いたします。まずは、レベル5からレベル1まで、つまり「トップダウンの変化」から、自分がどう変化するのかを、見てみましょう。
自らがプロジェクトの「チームメンバー」で、それぞれの階層レベルは下記のような人がいたとします。
この人が「プロジェクトマネジャー」になり、レベル5の「自己認識」が変わったとします。すると、トップダウンでレベル4からレベル1まで、階層レベルの認識が変わっていきます。
例えば、
のように変化していきます。
それでは、レベル1から レベル5までの変化、つまりボトムアップで自分がどう変化するのかを見てみましょう。
例えば、新型コロナウイルス禍によるビジネス活動において、コロナ禍になる以前は以下のような意識の階層レベルの人がいたとします。
それが、新型コロナウイルスの影響で環境が変わり、環境というレベル1からボトムアップで、以下のように自己認識や信念・価値観までもが変わることもあり得ます。
例えば、
のように変化していきます。
カンタンに変えることは難しい
プロジェクトを行っていると、メンバーの「特定の意識レベルの階層」を変えてほしいと思うことがあります。
残念ながら、相手を変えたいと思っても急に変えることはできません。万が一、相手が瞬間的に変わったとしても、その変化が長続きせず、元に戻ってしまうことも多いと思います。
特に、ニューロロジカルレベルの「レベル5:自己認識」や「レベル4:信念・価値観」など、レベルが上位階層になればなるほど、その人の人格に関与しています。
さらに、この上位階層は、相手の長年の環境、行動、能力により形成されていることがほとんどですので、それを一夜にして変えること自体が難しいのです。皆さんも「自分の価値観を明日から変えろ!」と言われたら、難しいのではないでしょうか。
すぐに変えることはできなくても、相手にアプローチをかけていくことは大事です。そこでやってはいけないこととして、「レベル5:自己認識」、「レベル4:信念・価値観」、「レベル3:能力 」を否定してはいけないということです。
例えば、「あなたはコミュニケーション能力が無いからタスクが上手くいっていないね」、「あなたの仕事に対する考え方や価値観が〇〇だからタスクが上手くいっていない」と言われると悲しい気持ちになりますよね?
相手を変える/変わる3つのポイント
相手の変えたい意識レベルの周辺階層にアプローチする
相手の変えたい階層レベルに直接アプローチしても、変化が見られない場合は、その意識レベルの周辺階層にアプローチをしてみましょう。
「行動」を変えたい時は、周辺の階層である「環境」や「能力」がそれに値します。相手の行動レベルに間接的にアプローチをしていくことが大切となります。
例えば、「環境」に対するアプローチとして、「15分の朝礼・夕礼などを実施し、メンバーが必ず参加し、進捗報告するルール・環境を整備する」などをしてみたり、「能力」に対するアプローチとして、「メンバーに対してプロジェクトマネジメント研修、特にスケジュールマネジメントの研修を受講してもらう」などを通じて、相手の行動レベルに間接的にアプローチをし、変わっていただくようにするのです。
褒めるポイントと叱るポイントを考える
先ほどお伝えしたように、まずは「レベル5:自己認識」、「レベル4:信念・価値観」、「レベル3:能力 」に対して叱ったり、相手を否定しないようにしましょう。
このレベル3~レベル5に対しては、相手が望ましい「自己認識」、「信念・価値観」、「能力」を示した場合、それを「褒める」ようにし、それが周囲から期待されていることであることを認識いただきましょう。
逆に、どうしても叱る必要がある場合は、「レベル1:環境」、「レベル2:行動」の部分を叱り、改善をもとめましょう。
プロジェクトの進捗管理能力の改善を求めたい人がいたとして、進捗管理能力が無い!と叱るのではなく、例えば、「環境」レベルとして「デスクを片づけて業務がしやすいようにしてほしい」と求めてみたり、「行動」レベルとして「進捗報告をする日次をカレンダーに入れるようにしてほしい」と求めてみたりしましょう。
各メンバーの自己認識を意識したマネジメントの徹底
ニューロロジカルレベルでは、意識レベルの変化について「トップダウン」と「ボトムアップ」があるとお伝えしました。
つまり、トップの「レベル5:自己認識」とボトムの「レベル1:環境 」がマネジメントにおいて大切な要素だということです。
「レベル1:環境 」については、プロジェクトマネジメントのマネジメント体制やプロセスが極めて大切です。成果物を納期に遅らせないようにするには、どのような体制やプロセスやルールが最適なのかを考え設定します。
プロジェクトに応じてテーラリングされた「仕組み」がプロジェクトの「環境」となり、メンバーやステークホルダーの行動⇒能力⇒信念・価値観⇒自己認識を適切に導く可能性を高めます。
「レベル5:自己認識」については、メンバーやステークホルダーに対する個々のプロジェクトでの役割、プロジェクトへの期待を伝え続け、適切な自己認識をしていただくようにサポートします。それが、信念・価値観⇒能力⇒行動⇒環境を適切に導く可能性を高めます。
皆さんのプロジェクトが成功することを、心より祈念いたしております。
youtubeでも展開中!
こちらもオススメ:
プロジェクト管理とは?目的や項目、管理手法について徹底解説! | Backlogブログ
プロジェクト管理の基本や主な項目を紹介。CCPMやWBSなどのプロジェクト管理の代表的な手法やプロジェクト管理全体の流れを解説。これからプロ…
backlog.com