2026年6月12日(金)、愛知県名古屋市にてBacklogユーザーコミュニティ「JBUG」のイベントが開催されました。
今回のテーマは「製造業×Backlog 〜情報の見える化で実現する現場の効率化〜」。
ヌーラボからの開発最新情報、インフラ運用現場の実践知、トヨタ自動車株式会社TCシャシー設計部のDX推進事例という三者三様のセッションに加え、参加者同士が活発に意見を交わすグループディスカッションが行われ、会場は終始熱気に包まれました。
当日の内容をまとめましたので、ぜひご一読ください。
※掲載内容はすべてイベント開催当日時点の情報です。
目次
孫課題の開発裏側とこれから
ご登壇者紹介
株式会社ヌーラボ
片山 達文

2013年の親子課題リリースから13年を経て、Backlogにいよいよ「孫課題(3階層目)」が追加されます。今回のセッションでは、Backlog開発チームの片山が、その開発背景と具体的な活用イメージを紹介しました。
なぜ今、孫課題なのか
孫課題の開発が決まった背景には、圧倒的なユーザー要望がありました。「3階層以上で管理したい」というフィードバックは、Backlogに寄せられる機能要望の中で長年No.1であり続けてきました。また、ガントチャートのフルリニューアルが完了したことも、開発に踏み切る絶好のタイミングとなりました。
業務の複雑化にともない、チェックリストや子課題内のToDoで階層を擬似的に補う運用も広がっていましたが、一つの課題に担当者を一人しか設定できないBacklogの仕様上、粒度の細かいタスクで責任の所在が曖昧になるという課題が生じていました。孫課題によって、タスクを担当者レベルまで分解できるようになり、「誰が何をすべきか」が明確になります。
2つの活用パターン
孫課題の使い方として、主に2つのパターンを紹介しました。
1つ目は「孫課題を新規作成するパターン」です。たとえば「ログイン・ログアウト画面の実装」という子課題に対して、UIデザイン・フロントエンド実装・バリデーション実装など、担当者単位の具体的なタスクを孫課題として紐付けることで、進捗の見える化と責任の明確化が同時に実現します。
2つ目は「既存の課題をまとめるパターン」です。経営的な判断でプロジェクトを統合したい場合などに、これまでは2階層の制約上難しかった再構造化が、3階層になることで可能になります。
シンプルさは損なわれない
「3階層にするとBacklogが複雑になるのでは?」という懸念に対して、片山氏は「プロジェクト設定でオン・オフを切り替えられる」と説明しました。シンプルな運用を好むチームは孫課題機能をオフにでき、従来どおり親子2階層で運用できます。Backlogらしいシンプルさを守りながら、必要なチームにだけ深い階層を提供する設計思想が伝わりました。
質疑応答では参加者から「孫課題のオン・オフは親子とは独立して設定できるのか」という質問があり、「段階的な設定が可能になる予定」と回答。また「紙やExcelで計画を立てる際に自然と3階層になることが多いので、Backlogと親和性が高くなる」という声も挙がり、多くの参加者がうなずく場面もありました。
▼登壇資料はこちら(bラボ掲載)
https://backlog-community-lab.backlog.com/chats/xeajmlpafbv0y2zb
書けば、資産になる
ご登壇者紹介
株式会社ヘプタゴン
水谷 兆 様

MSP(Managed Service Provider)としてAWS・サーバー運用・セキュリティ対策を手がけるヘプタゴンの水谷様が、「書けば、資産になる」をテーマに、運用現場特有の属人化問題とBacklogを「チームの真実の源」にする実践を紹介しました。
運用現場に潜む3つの属人化リスク
インフラ運用は「動いて当たり前」を支える仕事だからこそ、情報の属人化が特に深刻になりやすいと水谷様は言います。具体的には、
①情報がメール・チャット・個人メモに散らばる
②対応の経緯や判断の理由が記録に残らず誰かの頭の中にある
③担当者が異動・退職するとノウハウごと消えてしまう
という3点が現場の実態です。製造業の現場でも共通する悩みとして、会場の参加者も大きくうなずいていました。
ナレッジも進捗も、ぜんぶBacklogに書く
水谷様のチームが実践しているのは、「ナレッジも進捗も、ぜんぶBacklogに書く」というただひとつのルールです。口頭やチャットで完結させず、調べた内容・判断の理由・対応の経緯まで課題のコメントに残す。これを徹底することで、Backlogがチームの「真実の源(Single Source of Truth)」になります。8人のチームで直近1週間のBacklog活動件数は780件(課題更新466件・新規起票131件・コメント163件)に上るといい、書き続けることの積み重ねの大きさが数字で示されました。
Backlogに書いたものをAPIとAIで活かす
「書いてあるから取り出せる」というのが次のステップです。水谷様は自社で開発・公開しているCLIツール「logvalet(ログバレー)」を使い、今日締切の自分の課題だけ一覧表示したり、チーム全体の活動件数を集計したりしていると紹介しました。さらに、AIアシスタント(Claude)に指示を出すことで、情報の取り出しにとどまらず、返信文の下書きや依頼先の提案まで自動化できると説明。「AIが賢いというより、ちゃんと書いてあるから賢く動ける」という言葉が会場に響きました。
まとめとして提示された「まず書く→1か所にまとめる→活かす」という3ステップは、ツールよりも先に「残す文化」を作ることの大切さを端的に示しており、参加者からの共感の声が多く上がりました。
▼登壇資料はこちら(bラボ掲載)
https://backlog-community-lab.backlog.com/chats/aogzju986ages4ok
Backlog導入で仕事のやり方を変え、知見を財産にするまで
ご登壇者紹介
トヨタ自動車株式会社 TCシャシー設計部
第3シャシー設計室 室長 / 部内DX推進リーダー
傍嶋 幸之助 様

ブレーキ設計歴23年、Backlog歴3年半。トヨタ自動車のTCシャシー設計部でDX推進リーダーを務める傍嶋幸之助様が、約140人規模の製造現場にBacklogを根付かせるまでの3年半の歩みを語りました。
きっかけはミドルマネージャーとしての課題感
室長・DX推進リーダーという役職に就いた傍嶋氏が直面したのは、「職場あるある」の連鎖でした。先輩から受け継いだノウハウや自分の検討資料が部内で共有されない、業務管理ツールがチームごとにバラバラで引き継がれない、毎年作られる部方針が作りっぱなしになる。こうした課題を解決すべく、部長からの声がけをきっかけにBacklogの部内導入が始まりました。
定着までの苦難と2つのターニングポイント
導入当初は抵抗の声が相次ぎました。「Excelの方が使いやすい」「Plannerから乗り換える必要があるのか」「階層が2段しか作れない」といった声が次々と挙がり、定着には相当な時間がかかったといいます。
転機となったのは2つのアプローチです。1つ目は「強制力」です。部方針の管理をBacklogで行うことで、全員がBacklogを使わなければ上司承認が得られない環境を作りました。2つ目は「柔軟さ」です。メンバーが困っていることを集約し、ヌーラボに改善要望として届け続けました。この「不平不満に寄り添う姿勢」が信頼を生み、活用が広がっていきました。
3つの活用事例
傍嶋様が紹介した活用事例は大きく3つです。
【方針管理】部方針と個人テーマ(子方針)を課題として入力し、ボードで一覧化。トヨタ生産方式のアンドン(問題発生時に手を挙げて知らせる仕組み)をBacklogのステータス管理に取り入れ、「計画中→処理中→課題発生!→完了」という流れで進捗を見える化しました。部室長から担当者まで直通でコミュニケーションが取れるようになり、月末の進捗コメントを通じたタイムリーな連携も実現しています。
【承認回覧】コロナ以降に多様化した電子承認ルートを一元化しました。「回覧準備→グループ長承認待ち→室長承認待ち→完了」という流れをボードで管理し、滞留・期限切れの案件がひと目でわかるようにしています。さらに、回覧物をSharePoint Onlineとリンクで紐付けたことで、承認回覧の蓄積が過去知見を検索できるデータベースへと自然になっていきました。2024年1月から運用を開始し、5月時点で約5,000件の成果物がDB化されています。
【日常業務管理】個人ごとのExcel管理からの脱却が実現しました。業務リストをBacklogの課題形式に整備しておくことで、新規プロジェクト開始時にテンプレートとして流用できます。「カローラ向けのToDoをヤリスのプロジェクトにそのまま持ち込む」といった再利用も可能になりました。
Backlog AIアシスタントの活用も
最後に、Backlog AIアシスタントの取り組みも紹介されました。5,000件を超える承認回覧のデータを活用し、関連する課題の一覧化や月次レポートの自動生成を試みており、担当者・進捗・案件名がまとめられたレポートが生成されます。「まだ使いこなせていない」と謙遜しつつも、蓄積されたデータとAIを組み合わせた次の展開への意欲を示しました。
質疑応答では、セキュリティ管理の方法(プロジェクト単位でアクセス権を設定)や進捗管理の運用(日程軸はガントチャート、タスクはBacklogと役割分担)など、現場に即した質問が集まりました。
▼登壇資料はこちら(bラボ掲載)
https://backlog-community-lab.backlog.com/chats/ec0diwsbaeotf9vy
座談会
JBUG名古屋の名物コンテンツであるグループディスカッションが行われました。3グループに分かれ、「Backlogの機能を使ってこんな効率化・見える化ができた成功体験」をテーマに約15分のディスカッションが展開されました。
各グループからの発表
【グループA】日報をBacklogで管理することで、全員の活動状況を把握しやすくなった事例が共有されました。また、海外エンジニアが現地語でコメントを書いてもAIが読み取れるため、日本語に翻訳して書かせる必要がなくなったという声も紹介されました。Backlog AIアシスタントを使って過去の情報からナレッジを引き出す活用法も話題に上りました。さらに、評価制度の見える化や、表立って見えない業務の可視化にも効果があったとの報告がありました。
【グループB】Backlogによる目標管理の活用事例が発表されました。会社目標→部門目標→個人目標という階層をBacklogで管理し、下期になっても上期の目標を見失わない仕組みを構築。全活動を蓄積したデータをAIに投げることで振り返りを自動化しており、「書けば自分の業績評価に直結する」という仕組みが、結果的にメンバーが積極的に書くようになる相乗効果を生んでいました。
【グループC】Googleフォームと連携したBacklogへの自動起票により、属人化していた問い合わせ対応を見える化した事例が紹介されました。当初8件だった定型作業フローが15件に増え、業務効率の向上につながっています。ディスカッション全体を通じて「強制力を持たせること」が定着のポイントだという意見で参加者の意見が一致。また、カテゴリーやマイルストーン・種別などの豊富なタグ付け機能と、CSVエクスポートの柔軟性がBacklogの強みとして挙げられました。
ユーザー会を終えて

今回のJBUG名古屋 #7では、Backlogの最新開発情報、インフラ運用現場の実践、そして製造業大手の3年半にわたるDX推進事例と、業種も立場も異なる3名の登壇者から多様な視点が持ち込まれました。
それぞれのセッションに共通していたのは、「まず書く、1か所に残す」という原則の力です。ツールの機能を使いこなす前に、情報を記録し続ける文化を作ることが、チームの仕事を支える土台になるというメッセージが、登壇者それぞれの言葉で語られました。
参加者それぞれが自分の現場に照らしながら持ち帰っていただけたなら幸いです。ご登壇いただいた片山さん、水谷様、傍嶋様、そしてご参加いただいた皆さまありがとうございました。
JBUGでは今後も、Backlogユーザー同士が実践知を共有し合える場をつくっていきます。次回のイベント情報もぜひお楽しみに。
