パレート図とは?基礎知識と作り方、活用方法をわかりやすく解説

製造業における品質保証やシステム開発におけるプロジェクトマネジメントでは、しばしば「パレート図」が活用されます。実務でパレート図を目にしたことがあるものの、具体的にどのような意味があるのか、どう活用すればよいのか、詳細に把握していないという方も多いのではないでしょうか。

今回は、パレート図の概要と用途例、具体的な作成方法についてわかりやすく解説します。パレート図を活用する際の注意点にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。

パレート図とは?

はじめに、パレート図の概要と活用するメリットについて整理しておきましょう。パレート図の土台となっている「パレートの法則」とあわせて解説します。

棒グラフ+折れ線グラフの複合図


パレート図とは、全体の中で大きな影響を与えている要素を明確にし、重要な問題を特定するためのツールです。上図のように棒グラフと折れ線グラフの複合図で表され、主に改善活動における問題点の発見に活用されています。

たとえば、製造工程では一定の割合で不具合や不良品が検出されます。汚れやキズ、歪みといったさまざまな要素が不具合や不良品の発生要因として考えられるでしょう。このうち、どの要素が大きな割合を占めているかを特定することにより、不具合や不良品の発生件数を抑えるための手がかりになるのです。

QC(Quality Control)7つ道具の1つ

パレート図は、QCの7つ道具の1つとされています。QC7つ道具とは、品質管理のためにデータを整理・分析するための手法のことです。

【QC7つ道具】
・パレート図
・フィッシュボーン図(特性要因図)
・グラフ
・ヒストグラム
・散布図
・管理図
・チェックシート

このうち、パレート図は品質管理を行うにあたって「どこに問題があるのか」「どんな処置を講ずるべきか」を判断する際に用いられます。現状を客観的に俯瞰するために活用されるツールと捉えてください。

パレート図を活用するメリット

パレート図は、現状を項目に細分化・定量化したデータをグラフにプロットしたものです。グラフ化することによって、重要な品質問題の項目と数量・全体への影響度が一目でわかります。結果として、優先的に対処すべき問題点を的確に判断しやすくなるのです。

パレート図は製造業やシステム開発以外にも、クレームの傾向やタスク管理、研修成果の測定など、幅広いシーンで活用されています。改善すべきポイントがわかりやすくなること、改善後にどの程度改善が図られたのかを可視化できることが、パレート図を活用するメリットといえるでしょう。

パレートの法則とは

パレート図の土台となっている理論は、「パレートの法則」と呼ばれています。全体の数量のうち、80%は残りの20%の要素が生み出しているというのが、パレートの法則の基本的な考え方です。80%・20%という比率から、「80:20の法則」と呼ばれる場合もあります。

たとえば、ある製品の故障にはさまざまな原因が考えられるものの、このうち20%の原因を作っている部品を改善することで、残りの80%の故障も改善できる可能性があるのです。このように、あらゆる原因に一つひとつ対処するのではなく、影響が大きい原因を重点的に改善することにより、全体の改善を図ろうとするのがパレート図の考え方です。

パレート図の用途例

パレート図は、具体的にどのような場面で活用されているのでしょうか。3パターンの用途例から、パレート図の活用方法をイメージしてください。

例1:不良発生件数・金額の分析

製造工程で発生する不良品について、不良品が何件中何件発生しているのか、不良発生金額がいくらになっているのかを詳細に分析できます。とくに件数が多い発生事由の原因を分析していくことで、解決につながる糸口が見つかる可能性が高まるでしょう。

一見すると不良発生の原因はまちまちでも、根本的な原因は共通しているケースも少なくありません。件数・金額をあわせて分析することにより、原因を客観的に分析しやすくなるのです。

例3:クレームの発生原因別分析

コールセンター業務などでは、一定の割合でクレームが発生することが想定されます。クレームが発生しやすい事象を整理し、原因を分析することによって、応対の改善やクレームの発生抑止につなげられるでしょう。

クレーム件数がやや多い事象であっても、1件あたりの応対にほとんど時間がかかっていないようであれば、人件費の面では大きな負担になっていないと判断できます。反対に、発生件数そのものは目立って多くない事象であっても、1件あたりの損害額が大きいクレームについては、早期に再発防止策を講じておく必要があるでしょう。このように、問題の大きさを客観的に分析するにあたって、パレート図を有効活用できるのです。

パレート図の作り方

パレート図を作成する際の具体的な手順について解説します。作成手順は「データ収集」「データ分析」「表の作成」「グラフ作成」の4ステップです。それぞれやるべきことと注意点を押さえておきましょう。

データを収集する

はじめに、分析対象となるデータを収集しましょう。パレート図で分析できるデータは、数値で表せる定量データです。不良数やクレーム発生件数など、対象を絞ってデータを漏れなく集めることが大切です。

データを収集する際に、対象となる期間を明確にしておくことも重要なポイントの1つです。対象期間が長すぎると発生頻度の低いデータが混在しやすくなるため、長くても1年程度の期間に留めておくとよいでしょう。

データを分類する

次に、収集したデータを項目別に分類していきます。項目を増やしすぎると問題の発生件数が分散されてしまい、かえって重要度がわかりにくくなる恐れがあるため注意が必要です。ある程度まとまった件数ごとのまとまりになるよう、適切な項目数を設定してください。

項目を設定したら、件数が多い順に項目を並べ替えておきます。件数がごくわずかな項目については「その他」などの項目にまとめ、合計件数に関わらず項目の最後に配置しましょう。

表を作成する

並べ替えたデータを表にまとめていきましょう。表の項目として「件数」「割合」「累積件数」「累積割合」を設け、項目ごとに数値を算出します。

表が完成したら、累積割合が100%になっているか必ず確認してください。100%になっていない場合、いずれかの項目の計算が誤っていると考えられます。間違ったデータを元に分析を進めないためにも、表が完成した時点で正確な数値が算出されているか確認しておくことが大切です。

パレート図を作成する前に、どんな分類で分析すると改善につながるか、という点を考慮することが大切です。

グラフを作成する

完成した表のうち、件数を折れ線グラフ、累積割合を棒グラフに反映させましょう。2種類のグラフが表示されれば、パレート図のベースは完成です。

項目間の件数の差や累積割合の違いが一目でわかるよう、グラフの目盛り幅を調整しておくことをおすすめします。グラフのタイトルや各軸の単位を記載し、第三者が見てもわかるよう体裁を整えておくとよいでしょう。

エクセルによるパレート図の作成方法

実際にパレート図を作成する際には、エクセルを活用するケースが多いでしょう。そこで、エクセルによるパレート図の作成方法を紹介します。

表の作成例

・累計件数の算出方法

累計件数=最も件数が多い項目+各項目の件数

上表では、項目Aの24件が全項目のうち最も多くなっています。項目Bは20件のため、AとBの累計件数は44件です。 エクセルでSUM($B$2:B2)のように関数を設定しておき、オートフィルを使って数式をコピーしていくことで自動的に累計件数が計算されます。基準となる件数(上表の例ではA項目の「24件」)を絶対参照(「$」付きで表記することにより、参照するセルを固定すること)にしておくことで、表を効率よく作成できるでしょう。

グラフの作成例


表をグラフ化する際には、表を選択した状態で「挿入→おすすめグラフ→OK」の順に選択することでパレート図を簡単に作成できます。おすすめグラフが適切な形式になっていない場合は、「グラフの挿入→すべてのグラフ→組み合わせ→集合縦棒−第2軸の折れ線」を選択するとよいでしょう。

グラフの目盛りは、項目間の差異が一目でわかる幅に設定するのがコツです。目盛りの刻みやグラフの上下幅を変更し、差異がわかりやすいように調整してください。

パレート図を活用する際の注意点

パレート図はさまざまな問題の重要度や影響度を客観的に把握するには便利な分析方法ですが、活用の仕方を誤ると適切な分析結果が得られない恐れがあります。次に挙げる3つの注意点を押さえた上で、パレート図を活用していくことが大切です。

ABC分析を活用して優先順位づけを行う

パレート図で可視化された情報を整理するには、ABC分析を用います。ABC分析とは、累積比率をA〜Cの3ランクに分けることで優先順位づけをする分析方法のことです。

Aランク:累積比率0〜80%。全体に占める割合が高く、影響度が大きい項目群。
Bランク:累積比率81〜95%。全体への影響が無視できない項目群。
Cランク:累積比率96〜100%。全体への影響は小さいと考えられる項目群。

問題に対処していく際には、Aランクに該当する項目を最優先事項とし、Aランクへの対処が完了したらBランクの対処へと移っていくのがポイントです。

分析結果の活用目的を決めておく

パレート図は、対処すべき問題点を明らかにするために作成されます。よって、「項目ありきで活用する」のではなく、「活用目的に合った項目設定をする」ことが重要です。分析結果をどう活用したいのかを先に決めておき、目的に合わせて項目の分類方法を決めましょう。

たとえば、損失金額をできるだけ抑えたいのか、品質改善を図りたいのかによって、必要とするデータは大きく異なるはずです。何を目的としてパレート図を作成するのか、最初の段階で明確にしておく必要があります。

項目の過度な細分化・分析期間の設定に注意

項目を分ける際の粒度を細かくしすぎたり、分析期間を長く確保しすぎたりすることのないように注意しましょう。項目を過度に細分化すると、全体に対する影響の大きさが把握しにくくなる恐れがあります。また、対象期間が長すぎると前提条件が変化してしまい、目的に即して分析を進めにくくなりがちです。項目数や分析期間は全体像が把握できる範囲に留めておくことをおすすめします。

まとめ

パレート図は、「対処すべき問題は何か」「全体への影響度はどの程度か」を把握する上で有効な分析手法です。優先的に対応すべき問題が明らかになることで、より効果の高い対策を講じやすくなるでしょう。

今回紹介したパレート図の作成方法や活用時の注意点を参考に、ぜひ課題の抽出や解決に向けたアクションに役立ててください。パレート図を適切に使いこなせるようになれば、品質保証やプロジェクトマネジメントのレベルをいっそう高められるはずです。

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