Backlogユーザーのみなさま、こんにちは!
2024年12月14日、横浜港を一望できる会場で、「Backlog World 2024 in Yokohama 〜 Grow Together 〜」が開催されました。イベントでは、さまざまなセッションやワークショップ、そして参加者同士の交流を通じて、プロジェクトマネジメントに関する“発見”を分かち合うことができました。
今回は、招待講演より、PIVOT株式会社 プロダクトマネージャー 蜂須賀 大貴氏の「リスクと不確実性に立ち向かう:マネージャーとチームメンバーが知るべき3つの原則」をレポートします。
「リスクと不確実性」に対して強いチームを作るために、プロジェクトマネージャーだけでなく、プロジェクトメンバーも身につけるべきこととは、いったいなんでしょうか?
目次
そもそも「プロジェクトマネジメント」って何だろう?
蜂須賀さんがまず引用したのは、PMBOK(Project Management Body of Knowledge)という、国際的なプロジェクトマネジメントのガイドライン。
「プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトの要求事項を満たすために知識・スキル・ツールおよび技術をプロジェクト活動に適用すること」と定義されています。
ただし、最新の第七版では、プロジェクトマネジメントが、「プロセス重視のアプローチ」から「原理原則に基づくアプローチ」へと変更され、より柔軟で適応性の高いものとして扱われるようになりました。
不確実性が高まる現代では、作るプロダクトも、優先順位も、すぐさま差し替えていけるような、柔軟な方法が重視されるようになったということです。
「私なりの解釈では、プロジェクトマネジメントとは、QCDS(品質・コスト・納期・安全性)を最大化するために、不確実性を下げる仕事です」と、蜂須賀さん。
「そうしたプロジェクトマネジメントを推進するために、マネージャーとメンバーそれぞれが抑えておきたいポイントを、これから3つずつ、ご紹介します」
プロジェクトマネージャーがやるべき3つのこと
蜂須賀さんは、次の3つがプロジェクトマネージャーにとって大事なポイントだと言います。
一つひとつ、見ていきましょう。
まずは「複数のプランを用意する」。
プランが一つだけでは、予想外の事が起きたとき、すぐさま対処することができません。本命のAプランだけでなく、たとえば、「スコープを調整してやる事を狭めるBプラン」「外注してパワープレイで進めるCプラン」など、代替のシナリオを用意しておくことで、柔軟な対応をしやすくなります。
続いて、「プランごとの可能性を常に考える」。
今現在、どれくらいの確率で、本命のプランを進めることができそうなのでしょうか?
「今のところAプランは70%くらいで実現できそう。でも、予算が抑えられそうな状況になったら、Bプランに移行する確率が上がるかもしれない」と、日々状況をアップデートすることで、どのプランが現実的なのか、判断していくことができます。
そして3つめは「プランのトリガーを把握する」。
「もし10月末までに新メンバーが採用できなかったら、Cプランに移行しよう」
「競合が先に同様の機能をリリースしたら、Bプランへスイッチしよう」
といった具合に、どんなイベントが起きたらプランを切り替えるかを明確にしておくと、判断がスムーズになります。
「ぼくは師匠に、『常に10個のプランを考えておくのが当たり前だ』と言われて、そうできるよう努めています」という蜂須賀さん。
なるほど。豊富な引き出しを用意しておくことが、不測の事態に直面してもプロジェクトを円滑に進めていける秘訣なのですね!
「とはいえ、こんな綺麗ゴトを言っても、失敗するときは失敗します」
最大の不確実性とは
蜂須賀さんいわく、不確実性の最頻要因は「人」なんだそうです。
「プロジェクトマネージャーが一人であれこれシミュレーションしても、ダメです。プロジェクトメンバーがその意図を汲んでいなければ、計画倒れになってしまいます」
失敗の原因となる「“人と人”の小さなボタンの掛け違い」について、蜂須賀さんは次の3点を紹介します。
①想像している完了の定義が違う
例:「資料を準備して提案して合意するとこまでやって欲しい」と頼んだつもりだったが、当人は「資料を作るだけでいい」と思っていた。
②タスク完了までの道筋が組み立てられていない(組み立てられていない事に気づいてもいない)
例:「ステークホルダーの合意をとってください」と頼んだが、「自分の上司に言うだけで良いと思っていた(実際は隣の課長にも話を通さなければならなかった)。
③スケジュール時間配分が逆算できず、時間を使いすぎる
例:金曜日の会議に向けて資料を作り込んでいたが、直前になるまで、肝心の関係者調整を忘れていた。
こうしたトラブルを避けるには、「可視化」が必要だと言う蜂須賀さん。
「頭の中にあることを外に出せば、お互いそれを見つめて、正しいかどうか判断することができます。可視化して、一緒に話をして、合意を採ることが重要です」
To Doリストなどのタスク管理を自分だけで抱え込まずに、チームで可視化することが、認識のすりあわせに重要なんですね。
「でも、ほんとうに奥にある大事なことまで言語化できないと、そもそも書き出すことも、可視化することもできません」
プロジェクトメンバーがやるべき3つのこと
真の言語化をしていくために、プロジェクトメンバーにとって大事なポイントを、蜂須賀さんは3つ挙げました。
こちらも一つひとつ、見ていきましょう。
まずは「理解したことを言語化する」。
ふんふん、と人の話を聞いて、分かったつもりでも、実際に言葉にしてみるとあいまいだったり、うろ覚えだったり、勘違いしていたりします。
自分の理解をもう一度言語化して、チームで共有する。それが認識ズレを防ぐ第一歩です。
続いて、「自分の思うタスク完了までのステップを言語化する」。
ごく簡単な例ですが、
□たたき台の作成
□関係者とのすり合わせ(Aさん、Bさん)
□最終案をリーダー確認
□開発チームに展開
などと書いておけば、タスク完了までの流れをシンプルに整理することができます。
最後は、「時間割を作る」。
いつまでに何をやらなければならないのか。スケジュールから逆算して、所要時間を割り振ります。
「こうしたことをメンバーが心がけて、しっかり言語化できるようになると、Backlogは劇的な効果を発揮します」という蜂須賀さん。
「1時間かけて『業務棚卸し』の打ち合わせをせずとも、5分で要所をチェックできるようになります。また、『それはセキュリティ対応が必要だから、情シスのCさんにも見てもらって』とフォローすることも簡単です。結果として、“ボタンの掛け違い”がもたらす不確実性を、グッと減らすことができるんです」
明日からすぐ始められること
講演の最後に蜂須賀さんは、プロジェクトマネージャーとメンバーがそれぞれ「まず何から始めるか」を提案してくれました。
>プロジェクトマネージャーのあなたへ
まずは、今のプロジェクトのシナリオを、複数考えることから始めてみましょう。
>プロジェクトメンバーのあなたへ
まずは、今のプロジェクト、タスクの道のりを、自分なりに言語化してみましょう。そしてそれを、プロジェクトマネージャーや他のメンバーが見えるところに置いておきましょう。
そして蜂須賀さんは、講演を締めくくります。
「あとは進んでいくのみです」
質疑応答より
講演後、会場からこんな質問が寄せられました。
「いくら言語化しても、マネージャーと噛み合わないんです。タスクが終わったあと、『もうちょっと考えて欲しかった』とか言われます。どうすればいいでしょうか?」
蜂須賀さんの回答は次の通りです。
「そのプロジェクトマネージャーを変えてもらうことですね。これは、冗談のような本気で言っています。
あとは、タスクを開始する前に『これでお互い握った』と確認することです。そして、『あのときと言っていることが違いますよ』と、違っていることを認識してもらうことです。
ただし、当初と違うことを言うこと自体は、悪ではありません。プロジェクトの情勢は刻一刻と変化しています。違うことを言っている背景は何なのか、奥底にある真意を見てみてください」
おわりに
市場の移り変わりを常に的中させ、人の心をも見通すプロジェクトマネージャーがいたら最強かもしれませんが、そんな人はどこにもいません。
けれど、複数のプランを用意して状況を見極めるマネージャーがいれば、状況変化に負けない柔軟性が生まれます。
そして、そのプランを形にするメンバーたちが、自分のタスクを言語化・可視化していけば、チーム内の認識ズレを最小化できます。
全員のちょっとした工夫で、リスクと不確実性に立ち向かっていきましょう!
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