Backlogユーザーのみなさま、こんにちは!
2023年12月9日土曜日、Backlog World 2023「Re:Boot-未来への帰還」が開催されました。
Backlog World 2023のプログラムの中で、今回で4回目となる 2023年の最も素晴らしいプロジェクトを表彰する「Good Project Award 2023」も開催されました。優秀賞を受賞した3社による、最優秀賞をかけた熱いピッチバトルをレポートします!
目次
遠鉄システムサービス株式会社|遠鉄グループにおける国を超えた共同開発プロジェクト〜コミュニケーションとITツール活用〜
トップバッターは、遠鉄システムサービスさまです!
静岡県の西部エリアを中心に、鉄道やバスをはじめとした地域の暮らしに貢献する生活産業を展開する遠鉄グループのシステム会社である遠鉄システムサービス様。日本とベトナムのオフショア開発プロジェクトでBacklog、Cacooを活用したプロジェクトの推進について発表いただきました。
【プロジェクトの背景】
2021年7月、遠鉄システムサービスは、遠鉄グループ第2のシステム開発拠点として「遠鉄ベトナム有限会社」を設立しました。遠鉄ベトナムが設立されて2年が経過したものの、
コミュニケーションの課題と自社の技術スキルの課題が発生していたと、同社の大庭さんは語ります。
具体的には、以下のような課題感を感じていたと言います。
- 翻訳者を挟んだコミュニケーションが難しい
- 日本とは異なる言語・文化のため上手く伝わらない
- アジャイル開発の経験が少なく形だけの導入になってしまっている
- 自社のWeb系システムの知見・経験が不足している
課題解決に向けて、同社は3つの施策を実施しました。
- 日本側でも「Webシステム開発できる」組織能力獲得のためのプロジェクトチームを発足
- 日本側の社内向けプロジェクトでアジャイル開発を実践
- ベトナムとの共同開発における開発フロー・プロセスの策定
これらの施策を通じて、技術スキルの向上と開発ルールの標準化を実施しました。そして、この取り組みを経て、いよいよ日本とベトナムの共同開発プロジェクトがスタートしたのです!
【プロジェクトへの3つの取り組み】
プロジェクトを推進するにあたって同社が実施した、3つの取り組みを見ていきましょう。
- 対面によるプロジェクトキックオフにより結束感を醸成
同じ場に集まって話せたことで、オンラインでは伝わらない人となりを知ることができ、「プロジェクトを成功させよう!」「一緒に頑張ろう!」との結束感が生まれました。 - Backlogによるプロジェクト管理
プロジェクトのタスク管理にBacklogをフル活用することで、プロジェクトの進捗状況の可視化や情報共有の円滑化、作業漏れの防止にもつながりました。
翻訳によるコミュニケーション齟齬に課題がありましたが、Backlogで起票したものを翻訳してもらうという「文字のコミュニケーションの導入」により、誤解の防止などの効果も生まれました。
- KPT法を使った継続的な振り返りの実施です。
KPT法とは、(Keep)続けたいこと、(Problem)問題だったこと、(Try)次の2週間でトライしたいことを、2週間に1回のペースで振り返ることです。
BacklogだけではなくCacooも併用することでお互いの考えを知り、意見交換を行うことでコミュニケーションが円滑になりました。
【結果】
今回のプロジェクトでは、まずキックオフで日本とベトナム、両国対面のキックオフで結束感を醸成し、プロジェクト開始後は適切なタスク管理と振り返りをアジャイルで回していくことで、良いサイクルを実現することができたと、同社の大庭さんと木村さんは言います。
現在、日本とベトナムの共同開発については、プロジェクトが完了した段階とのことです。今後は日本とベトナム両社の能力向上と連携強化を目指し、「1つのチーム」として、最大の効果を発揮して、自社グループに貢献していきたい、と展望を語り、発表は終了しました。
株式会社ALL CONNECT|カスタマーサポートの業務改善でプロマネ未経験の新入社員が月間1,000万の費用削減した話
続いて、株式会社ALL CONNECTさまによる発表です。
福井県に本社を置きスマホや通信回線・電力などのインフラサービスを提供する同社の、「工数削減と顧客満足度の向上を両立した上で、カスタマーサポート業務の効率化を実現したプロジェクト」について、富田さん、中澤さんの発表を詳しく見ていきましょう。
【プロジェクトの背景】
ある日、富田さんの元に依頼がきます。
「通信販売事業のカスタマーサポートに費用がかかってるからなんとかしてくれ。
だけど顧客満足度は下げないで。
7か月後には結果だして。」
入社して間もない富田さんの元に、いきなり難しいミッションが降ってきてしまいます!
業務を把握しておらず、見通しも立てられない。さらにプロマネ未経験で、コミュニケーションも思うように行かない状況。
ここから、「未経験からのプロジェクトマネジメント」がスタートしました。
【7か月間のプロジェクトへの取り組み】
コスト1,000万円削減という目標達成に向けた取り組みは、現状の整理から始まりました。
- まずは、リソースがかかっている業務内容の把握と改善策の洗い出し
既存業務で忙しい現場部署からは「時間が無い」とヒアリングに協力を得られませんでしたが、そこで諦めない富田さん。対話を重ねていくことで、現場部署にもプロジェクトの目的が伝わり、協力してくれるようになりました。 - 改善案を次々にリリース
現場ヒアリングにより、電話問い合わせにリソースがかかっていることを把握した富田さんは、Webマイページを改善してユーザー自身で解決できる環境を作りました。問題はすぐにメンバーと話し合いながら改善案を次々にリリースし、目標達成までの道筋をつけていきます。
順調に見えていたプロジェクトですが、開始から4か月のところでピンチ!Webマイページの改善によるコスト削減が2割程度に止まっていたのです。
- 残り3か月、発想を転換!
チームメンバーみんなで前提から考え直し、Webサイトの改善ではなく、ユーザーの体験を変えることに着目します。「電話問い合わせをWebページに案内する」ことで、プロジェクト前半で取り組んだWebの改善も活かすことができました。また、プロジェクト開始当初に懸念していた「プロマネ未経験」と「コミュニケーション」のハードルは、Backlogを活用することで解決できると富田さんは言います。
【結果】
取り組みの結果、顧客の自己解決の幅を増やすことで顧客満足度を下げることなく、月間1,000万円のコスト削減を実現しました!
「諦めずにプロジェクトに本気で向き合い続けることで、いずれは必ず結果に繋がります」と、富田さんは発表を締めくくりました。
未経験からプロマネに挑戦したい方にも学びがある発表でした。富田さんのこれからのご活躍も楽しみです!
パシフィコ横浜|初めての内製で4か月で実現!「サスティナブルWEBデザイン」でサイトをフルリニューアルした話
いよいよラスト3組目は、パシフィコ横浜の松原さんです!
「コロナ禍において会社の公式サイトを大規模リニューアルしたプロジェクト」についての発表を見ていきましょう。
【プロジェクトの背景】
コロナ禍の2020年、大きな業績の落ち込みを機に、サイトの課題点を洗い出してみたところから、このプロジェクトが始まりました。
サイトの3つの課題点(発表資料より)
- 長年、増改築しすぎ
- UI/UX悪すぎ
- 運用コストかかりすぎ
会社の公式サイトは、長年、増改築してきたことから合計1,000ページ、ピーク時では月間PVが100万を超えるボリュームになっていました。
そこで、公式サイトをフルリニューアルするプロジェクトを立ち上げた松原さんは考えます。「ハレーションを起こすことなくプロジェクトに社内を巻き込むには、どのようなメッセージを伝えるのが良いのだろう……」
そして生まれたのが地球にも会社のみんなにも優しいこの言葉でした!
「ユーザーファーストを追求して、環境にやさしいサイトにしよう」
【プロジェクトへの取り組み:「プロレスリング」】
では、どのようにして環境にやさしいサイトを実現していったのでしょうか?
松原さんは4つの取り組みを進めていくことにしました。
- 「出てこいや!ご意見プロレスリング」
Googleのスプレッドシートを「プロレスリング」に見立てて、催事担当、予約担当、広報担当など、全員がスプレッドシートのリングへ意見を出します。
- データに基づいたUI/UXの設計
ユーザーに合わせたUIで、必要な情報に最短でアクセスできる体験を創り出しました。 - STUDIOを利用してノーコードツールでの内製化
- 「3つのバッサリ」による、サステナブルWEBデザインの実践
シンプル イズ ベスト。Webの構成もシステムも、全体をすっきりさせていく方向に思い切って舵を切ります。
【結果】
本プロジェクトは最終的に驚異的な結果を出すことになります。
まず、サイトの運用コストが年間数百万円→6万円に削減されました。あまりのインパクトに会場がどよめきます!
つづいて、PV20%削減、お問い合わせ数も88.7%減となりました。そして、目標に掲げていたCO2の削減においても、サステナブルWEBデザインに取り組んだ結果、CO2削減量として年間6.8トン削減を達成しました!これは、杉の木約772本が1年間に吸収するCO2の量に値する※とのこと。
※パシフィコ横浜 2023年12月22日 プレスリリースより
今回のプロジェクトは、結果としての数字のインパクトも大きいですが、
「社内での意識変化も起きたんです」と、松原さんは話を続けます。
例えば「株主宛の事前資料をサイト上で電子提供できますか?」「会社説明会の動画をアクセス制限かけて掲載できる?」など、各部署から「あれできますか?」との声が積極的に上がるようになったそうです。
「正解がはっきりと分からなくても、まずはやってみようというマインドが大事」と、松原さんはプレゼンを締めくくりました。
パシフィコ横浜のピッチからは、「失敗を恐れず、完璧を求めず、まず明日からでもやれることをやってみる」姿勢を教わりました!
Good Project Award 2023 結果発表
3組のプレゼンが終わったところで審査員および会場のみなさんによる投票が行われ、最優秀賞は「パシフィコ横浜」に決定しました!審査員のみなさんからも好評をいただいた今回のGood Project Award。
アクチュアリ株式会社 代表取締役 中田 華寿子 氏:
本当に素晴らしいプレゼンをありがとうございました。Backlogのツールを使いつつ、その先にいる人やチームがこのプロジェクトを支えていることが伝わってきました。
株式会社Colere 共同創業者 代表取締役 中村 駿介 氏:
3組とも素晴らしい発表で審査員もギリギリまで悩みました。今日のプレゼンだけでは説明しきれない気持ちや想像しきれない大変さもあったのだろうと感じています。
元Backlog World運営委員長 西馬 一郎 氏:
チームのメンバーの熱意などが伝わってきて、みんなが勇気づけられる話が聞けました!
どのプレゼンも、プロジェクトを効率的に進めるための創意工夫を凝らし、しっかりと成果を出した素晴らしい内容でした。そして何より、難しいと思われるプロジェクトにも前向きに取り組もうという熱意が伝わり、会場は大きな拍手に包まれました。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!
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