その“症状”、きっと治ります!プロジェクトマネジメントのお悩みに“効く”おすすめ本をご紹介【第4回】

プロジェクトマネジメントのお悩みに“効く” おすすめ本のご紹介 第4回

日々の業務を進めるなかでは実にさまざまな問題に見舞われます。「自分でやった方が早い」と、リーダーやマネージャーの業務だけがどんどん増えてしまったり、メンバーが主体的に行動できず、すべて指示しなければならなかったり。しかし、そのような状況が続けばプロジェクトは遅れ、マネージャーは疲弊し、メンバーは育たないという三重苦に見舞われてしまいます…!

本ブログではプロジェクトで起こりがちな問題を病に見立て、その症状と原因に“効く”「おすすめ本」をピックアップして、全5回の連載でご紹介。第4回は「抱え込み症候群」「中央集権症候群」「フォロワーシップ不全症候群」に効く本です。「プロジェクト・クリニック」の前田考歩氏に、さまざまなジャンルからおすすめ書籍を“処方”していただきます。

問題解決の糸口は、意外な書籍から見つかるかも知れません。

選者/執筆:前田 考歩 氏

前田 考歩(まえだ・たかほ)氏
選者/執筆
前田 考歩(まえだ・たかほ)氏

プロジェクトの「言語化」と「構造化」を支援するツール「プ譜」を考案。「プ譜」を用いたコンサルティングやProject Based Learningの研修・授業を企業・教育機関向けに提供する『プロジェクト・クリニック』を運営。著書:『予定通り進まないプロジェクトの進め方』(宣伝会議)『紙1枚に書くだけでうまくいく プロジェクト進行の技術が身につく本』(翔泳社)『ゼロから身につくプロジェクトを成功させる本』(ソーテック社)等

こんな症状があったら、「抱え込み症候群」「中央集権症候群」「フォロワーシップ不全症候群」かも知れません

これまでに携わった業務や、今進行しているプロジェクトのなかで、自分自身の心情やメンバーの言動・様子を省みて、以下のようなことに心当たりはないでしょうか?

  • 何でも自分で決めねばと思ってしまう
  • 自分でやった方が早い。メンバーに任せられないと思ってしまう
  • すでに決定したことだけをメンバーに指示・通達している
  • メンバーの報告を信用しきれない。いちいち確認しなければ気が済まない
  • メンバーやサブマネージャーが自分で決められず、細かなこともすべて相談がくる
  • メンバーが主体的・自律的に思考、発言、行動できない

もし思い当たることがあれば、リーダー・プロジェクトマネージャーとしての「抱え込み症候群」か「中央集権症候群」、もしくはメンバーの「フォロワーシップ不全症候群」の疑いがあります。

プロジェクトの問題症候群マップ

プロジェクトの問題症候群MAPプロジェクトの問題症候群MAP(クリックで拡大)

原因:理想にとらわれすぎている、プロセスを共有していない

リーダーやプロジェクトマネージャーになって間もない頃であれば、これらの症状の原因は第1回の記事で扱った「プロジェクト経験不足」になります。しかし、マネージャーとしての経験を積んだとしても、これらの症状は出てきます。

根強い心理的な原因として、「マネージャーやリーダーは、的確な指示をメンバーに与え、遭遇する問題を解決し、率先垂範してプロジェクトを引っ張っていく存在でなければならない」という、滅多にお目にかかることのない理想像にとらわれていることが挙げられます。

常に自分は正しくなければいけない、自分だけは間違えてはならないという理想像を追い求めるあまり、自分が納得するまで情報を確かめなければ気が済まないといった症状が、内向きに出ると抱え込み症候群になり、外向きに出れば中央集権症候群になる傾向があります。

抱え込みと中央集権、いずれの症候群もメンバーに自分の頭で考える機会を奪うことになり、これがフォロワーシップ不全症候群の原因になります。考える機会を「奪う」のと同じくらい問題なのは、何かしらの作業を依頼するとき、何のためにその作業を行うのか、目的を共有していないことです。ある仕事を的確に行なうために十分な情報を与えていないことで、フォロワーシップ不全症候群が起きてしまいます。

メンバーの提案を説明なしに却下したり、報告を過度に疑ったり、話を途中で遮ったりといった、マネージャー・リーダーのコミュニケーション上のふるまいも容易にメンバーの士気を低下させます。対話の量は減り、提案・意見をしていたメンバーはそのうち何も言ってこなくなるでしょう。

また、プロジェクトの仮説や計画をメンバーと共につくる過程を経ておらず、意思決定の基準やプロセスを共有していないのも、これら3つの症候群の原因になります。

症状が悪化すると:リーダー・マネージャーがボトルネックに!「指示待ち」メンバーも量産

いずれの症候群も放置していると、どんどんリーダーやマネージャーがボトルネックになってしまいます。メンバーに現場で判断や決定をさせずに、状況報告だけさせてすべて自分が意思決定しようとすれば、当然そこでスタックが起き、プロジェクトのスピードは遅くなります。それは認知負荷を高めることにもなり、誤った意思決定をしてしまう原因にもなってしまいます。

フォロワーシップ不全症候群の行きつく先は、なんでもかんでも指示待ちで、他人事のメンバーの量産です。プログラムや提案書といった何かしらの成果物やアウトプットをメンバーに任せても、マネージャーが思い描いていたものとのズレが生じやすくなります。そうなると、また作り直しを指示して時間を浪費し、メンバーの士気をいっそう下げてしまいます。ある日突然チームを離脱してしまうといったことが起きても不思議ではありません。

処方箋:おすすめ書籍

もっとメンバーを信頼しましょう。もっとメンバーに権限を委譲していきましょう。委譲することに不安を感じるなら、メンバーが自分で行動できるようにするための基準や計画づくりをメンバーと共に行いましょう。メンバーが経験不足なら、自身で判断できるようになるための教育体制の構築や、経験値を積む機会をつくることも重要です。

ここで紹介する書籍は、プロジェクトマネージャーが英雄になるためのものではありません。メンバーの力を引き出し、自律的なプロジェクトチームをつくっていくための書籍です。

用兵思想史入門

メンバーに権限を渡した結果、各人がバラバラに行動したり、間違った判断をしてしまっては元も子もない―。そう思って分権に踏み出せないマネージャーの参考になる「ドクトリン」「委任戦術」といった、分権指揮で成功を収めた戦史の事例と方法を解説。直接現場を見て、すぐ傍でメンバーに指示を与えることのできないプロジェクトマネジメントで、大いに参考になります。

「無知」の技法NotKnowing

知識が多ければ多いほど、経験を積めば積むほど失敗はなくなるはずですが、知識が多いほど、変化や未知のものの受け入れが遅れ、既知のものへ執着し、盲信してしまうことがあります。知らない、わからないことはむしろ可能性に満ちていると本書は説きます。抱え込むこもうとすることへの不安も解きほぐしてくれる一冊です。

決断の本質 プロセス志向の意思決定マネジメント 

人は、自分に情報提供の機会がほとんどなかった計画を実行せよと言われても、なかなか乗り気になれません。実行面で主役となる人たちに意思決定プロセスでの発言の機会を与えれば、「この計画は自分たちのものだ」という感情が生まれます。自分たちの決定ということになれば、実行のプロセスで通常の力量以上の努力をする可能性が生まれます。そうなるための方法とプロセスを具体的に解説しています。フォロワーシップ不全症候群にも。

教育心理学概論〔新訂〕

ルーチンワークは「決められた通り正確に繰り返す」ことが一番大事なため、マネージャーが指示した通りにメンバーがその作業を黙々とこなせば仕事は済みます。しかし未知のプロジェクトでは、メンバーの創意工夫、主体的な参加が求められます。本書ではそれらを引き出す方法や「自主的に学ぶようになる仕組み」などを学べます。

問いかける技術――確かな人間関係と優れた組織をつくる

マネージャーからメンバーに対して話す量が多くなっているとき、それはフォロワーシップ不全症候群の兆候です。一方、メンバーの話をよく「聞く」だけでは、主体的な参加は促せません。「謙虚に問いかける」ことで、メンバーと信頼関係を築き、メンバーが自ら考え、行動することを促します。そのための問いかけの技術が学べます。

おわりに

いかがでしたか? 症状が進むとプロジェクトのスタック、果てはチームの崩壊にもつながりかねない怖い症候群です…! チームとしてうまく機能するために、マネージャーとメンバーの双方の認識を合わせ、同じゴールに向けてプロジェクトを進行したいですね。

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本ブログは全5回の連載で、プロジェクトの問題でよく見られる「〇〇症候群」の解説と、処方箋(おすすめ書籍)をご紹介してまいります。問題解決の糸口を見出すきっかけになれば幸いです。

お楽しみに!

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