
2025年10月17日、品川インターシティホールにて「Nulab Conference 2025 ~ DESIGN YOUR TEAMWORK ~」を開催いたしました。
本記事では、2026年初頭にリリース予定の新機能「Backlog AI アシスタント」と、AIを活用した新事業開発を得意とする株式会社ABEJAと共同開発中の「AI バックログスイーパー」の発表セッションについてレポートします。
目次
仕事が停滞する構造を抜本的に変える。Backlogが目指すAI新機能
ヌーラボが提供する「Backlog」は、これまでプロジェクト管理を通じてチームのコミュニケーションと業務の透明化を支援してきました。その一方で、多くの人が直面している「プロジェクト管理の重要性はわかってはいるけれど、実行できない」という壁は、まだ解決できていない課題のひとつです。
「Backlogを日常的に活用していても、何がどこまで進んでいるのか、把握できなくなることってありませんか?」と、中島は問いかけます。プロジェクト全体の進捗を正確に把握することは、容易なことではありません。
たとえば、会議で「これをやろう!」と決めたはずなのに、1週間後には「あれ、どうなりました?」「まだです……」なんてことも珍しくないでしょう。このように仕事が止まってしまう現象は、Backlogを使いこなせれば解決するというわけではありません。「チームワークマネジメントを、どう実践に落とし込むか」という構造的な課題が潜んでいると、中島は指摘します。
株式会社ヌーラボ
執行役員CPO
中島 成一朗
こうした課題を踏まえて構想されたのが、AIを活用したチームマネジメントの新しい形です。ヌーラボが目指すAI活用は、チームの動きを実際に推進する仕組みそのものに組み込むことです。
ヌーラボでは、AIを活用したチームマネジメントの新しい枠組みとして「Nulab AI エージェント(仮)」という構想を掲げています。ヌーラボのプロダクトに蓄積された業務データをAIが分析し、タスクが円滑に完了する状態、いわば「キチンとシゴトが終わる世界」の実現を目指しているのです。
AIエージェントは、Backlogに集約したコミュニケーションや業務データの蓄積で機能します。それらをもとに、AIが「この業務ならこのマイルストーンを設定して、こういう課題を立てると進むはずですよ」と提案してくれたり、さらに、AIはチーム内のスキルやリソース状況を見ながら、最適な人員配置もレコメンドできるようになったりするといいます。
「皆さんが本来実現したい仕事の内容を、プロジェクトマネージャーのようにAIが形づくってくれる。そんなAI エージェントを、私たちは実現していきたいと考えています」
AIがチームの構造や文脈を理解しながら「仕事を前に進める存在」として機能する――。ヌーラボが描くのは、AIが「信頼できる同僚」として働く未来のチーム像です。その実現のためには、Backlogというひとつのツールに閉じるのではなく、ほかの業務システムやツールとも自由につながる状態が欠かせないと中島は話します。
「他社の基幹システムや、外部のチャット・メールツールなどともつながりやすい仕組みを整えていきます。そうすることで、Backlogに蓄積されるナレッジデータをさらに活用し、AIによるレコメンドの精度を高めていけると思っています」

AIがチームの一員になる。「Backlog AI アシスタント」の革新性
AIエージェントの布石となる具体的な新機能が、2026年初頭にリリースを予定している「Backlog AI アシスタント」です。これはAIをまだ使い慣れていないユーザーでも、チャット形式で自然に触れながら、AIがどのようにチームに貢献できるかを体感できる機能です。
Backlogのユーザーの多くは、日々のプロジェクト進行やレポート作成に追われ、「情報が点在している」「進捗が把握しづらい」「報告作業に時間がかかる」などの悩みを抱えています。リーダーやマネージャーであれば「毎回メンバーに進捗を聞きづらい」といった悩みもあるでしょう。「Backlog AI アシスタント」はそうした課題を解決します。
具体的に、現在4つの主要機能の実装を予定しています。
- 情報の整理と理解
Backlog上の分散した情報を文脈に沿って結びつけ、プロジェクトの全体像を自動で整理・可視化します。背景や目的も学習し、共有を円滑にします。
- レポート・資料の自動生成
進捗状況を分析し、日次・週次・月次のレポートや仕様書などを自動で作成。目的に合わせて書式を変えられるため、報告作業の負担を大幅に削減します。
- 会話ベースの実務サポート
「今どこまで進んでいる?」「遅れは?」といった質問に即時対応。状況に応じて課題や担当者を提案し、判断を支援します。
- リスク検知と予兆の通知
過去の履歴や傾向から遅延・停滞を予測し、リスクを事前に知らせます。早期対応を促すことで、プロジェクトの停滞を防ぎます。
「Backlog AI アシスタント」の構想は2025年4月にはじまり、そこからわずか3カ月でβ版をリリース。すでに約100社のユーザーがモニターとして利用中です。ポジティブな反応が寄せられ、現場の課題解決に直結する成果も見えはじめています。

「質問が明確であれば、7~8割の確率でAIから的確な回答を得られたという声もあります。資料作成の時間が半分に減ったり、過去の課題データを分析して新入社員の教育マニュアルを自動生成したり、という活用事例も出てきました」
「Backlog AI アシスタント」の提供形態にも、ヌーラボらしい独自の哲学を込めています。それは、AIを誰もが使える身近な存在にするための仕組みづくりです。多くのSaaSツールでは、利用人数に応じて費用が発生する従量課金型のモデルが一般的ですが、Backlogはそのような形式を採用していません。
つまり、チームが大きくなり、社内外のメンバーがどれだけ増えても、Backlogの利用費用は変わりません。メンバーが増えることで、チーム内に蓄積されるナレッジも加速度的に広がっていきます。Backlogではより多くのチームに使っていただけるよう、独自の仕組みを構築しているのです。
AIが会議をプロジェクトに変える「AI バックログスイーパー」
そして、もうひとつの新機能「AIバックログスイーパー」について、共同開発パートナーである株式会社ABEJA蓑和 航氏に登壇いただき、その概要をお話いただきました。
株式会社ABEJA
CEO室オペレーショングループ
AI バックログスイーパー事業責任者
蓑和 航 氏
「バックログスイーパー」とは、組織やチーム内の未処理の作業や停滞しているプロジェクト、抜け落ちたタスクを「掃き清め」ながら、チームの仕事を前に進める人のことです。現在開発中の「AI バックログスイーパー」は、その役割の一部をAIが担う仕組みです。
「会議の内容を自動で議事録化し、そこからタスクを生成する新しいプロジェクトマネジメント支援ツールです」と蓑和氏は説明します。
AI バックログスイーパーが目指すのは、「話すだけでプロジェクトが進む世界」。開発背景には、プロジェクトマネージャーが日々直面する課題がありました。誰がどのタスクを担当しているか把握できない、タスクが放置されてプロジェクトが停滞する…、そうした現場の悩みを、AIの力で解消できないかという発想が原点だったのです。

「AI バックログスイーパー」は、Google meetなどのWeb会議システムでの会議を自動で文字起こしし、その内容をもとにBacklog上のタスクを自動生成します。生成された議事録はAI バックログスイーパー上で参照でき、未完了タスクや担当者、期限などが自動で整理される仕組みです。

さらに、会議で話された内容を自動で整理し、「この発言は既存タスクに関連」「新しいタスクとして登録すべき」といった候補をAIが提示。過去のプロジェクトデータも参照しながら、類似タスクやスケジュール案をレコメンドする機能も備わっています。
また、Slackなどのビジネスチャットツールとも連携でき、チャット上で「このタスクは終わりました」と話しかけるだけで完了処理が行われます。
さらに、会議中のやりとりを通じて、タスクを更新するかAIがレコメンド。Backlogは常に最新の状況が反映されます。すなわち、会議で話すだけでBacklogが更新される、という世界が実現するのです。議事録はWikiに同期でき、Backlogでの会議議事録の一元管理も可能。「会話を起点にプロジェクトが動く」仕組みが整いつつあります。
ほかにも、やりたいことを入力するだけで、AIが自動的にタスク構成や進行計画を提案する仕組み「新規プロジェクト補正機能」を搭載。過去に同じプロジェクトで作成した類似タスクを参照し、最も成功しやすいプランを算定します。
生成されたタスクは一括または部分的にBacklogへ登録でき、プロジェクト運営の初動をスムーズにします。プロジェクトマネジメントに不慣れなチームでも効率的に立ち上げられるようになります。
今後は、会議やレビューの文脈をAIが理解し、「この人ならこうレビューする」といった判断傾向を再現する研究も進めているといいます。タスクを整理することや、進捗を報告することに追われるのではなく、もっと現場と関わり、メンバーと対話しながら本質的なマネジメントに集中したい。AIバックログスイーパーは、そうした思いを形にするためのツールです。
「ぜひAIを活用して、健康的なプロジェクトマネジメントライフを目指していただきたいです」と蓑和氏は締めくくります。

創造性を引き出す、AIと共存するプロダクト開発の次ステージ
セッションの最後に、「Backlog AI アシスタント」や「AI バックログスイーパー」に続く、複数の新プロダクト構想が進行中であることを発表しました。
「新しいプロダクト構想もどんどん進めています。AIで仕事を加速させるために、皆さんがより良く、より使いやすいと感じられる機能を、これからも早いペースで追加していきたいと考えています」
AIをチームの一員として迎えることで、これまで個人プレーだった仕事がチームで共有され、仕事そのものの価値を創造していく。そんな世界を実現するべく、プロダクトを進化させていくのです。
ヌーラボが目指すのは、AIと人が共に働きながら「チームの創造性」を引き出す世界。その実現に向けて、プロダクト開発はすでに次のステージへと動き始めています。
「これから皆さんに実際に使っていただき、ぜひ率直なフィードバックをお寄せください。私たちはその声をもとに、より良いチームワークを実現するプロダクトをつくり続けていきます」
セッションを通してあらためて感じたのは、「Backlog AI アシスタント」や「AI バックログスイーパー」は、チームの時間と心に余白を取り戻し、人が本来向き合うべき創造的な仕事に集中できるよう支援するテクノロジーだということです。
AIが働く人に寄り添い、タスク管理のパートナーとなることで、仕事の未来はもっとあたたかく、豊かになっていくはずです。そんな希望を込めて、私たちはこれからもプロダクトを進化させていきます。
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