こんにちは、中村です。ヘルプコンテンツ作成業務を題材として、開発業務以外でのソフトウェア開発での効果的なやり方を導入した感想とメリット・デメリットをご紹介します。
今回導入することになったきっかけは、同僚との会話です。以前公開した『イベントの登壇資料を「インクリメンタルとイテレーティブ」を意識して作っている話。』の「インクリメンタル」の考え方を応用してみることになりました。
目次
背景:新規機能のヘルプコンテンツ作成
今回取り上げる例は、Nulab Apps サポートページのヘルプコンテンツを作成する業務です。新規機能のリリース時に、同時にヘルプコンテンツを作成するものでした。
ヘルプコンテンツ作成の流れは、以下の通りです。サブページ単位で分割した作業に対して、「1. 下書きのコンテンツを作成」「2. コンテンツの英訳」「3. コンテンツをサイトに当て込み」の流れで進めていきます。英訳は、別の英訳担当が対応します。
抱えていた課題:スケジュールの見通しを立てづらい
当初、担当者が進めていたやり方は、まず「1.下書きコンテンツ作成」を全ページで行い、その後に2,3を進めていくというやり方です。
このやり方のメリット・デメリットは、以下の通りです。
メリット |
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デメリット |
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今回は、デメリットの「見積もりが不正確で、全体のスケジュールの見通しが立てづらい」点が課題となっていました。
担当者いわく、「1, 2, 3それぞれの作業に際して、不明点やブラックボックスが多く、見積もりが不正確でも仕方ない」と考えていたそうです。
提案内容:インクリメンタルに、1ページ単位で終わらせていく
上記の状況を受けて、「こういうやり方もあるよ」と提案した形が、以下の図です。1ページずつ、インクリメンタルに終わらせていきます。
「見通しが立てづらい」という課題に対して、1ページあたりの作業日数は出せますので、その実績から見積もりやスケジュールを立てやすくなります。1ページに3日かかったとして、同程度の分量のページが6ページならば、全部で18日程度と計算できるでしょう。
さらに、各ページごとの作業量の違いを吸収する手法や、スケジュールの見える化は、以前紹介した「相対見積もり」や「バーンダウンチャート」といった手法も採用できます。
この形のメリットとデメリットは、最初の例とおおよそ逆になります。合わせて、何点かこの形ならではのメリットをあげますと、
- 必要最小限のページから、段階リリースができる可能性がある
- 仕掛り中の作業を少なくでき、作業の切り替えのコンテキストスイッチを減らすことができる
これは、主にソフトウェア開発で採用されている、スクラムでの「動作するインクリメントを積み重ねつつ、状況に応じてリリース判定を行う」や、カンバンでの「仕掛中作業(WIP)を減らして」「流れを管理する」に通じるものがあります。
両方のやり方を比較して
今回取り上げたやり方は、それぞれにメリット・デメリットがあります。そのため、常にどちらかだけを採用するのではなく、業務やプロジェクトの性質に応じて適材適所のやり方を選択すべきです。
とはいえ、「全体の見通しが立てづらい」というスケジュール上の課題は、どういう業務においても注意すべき点となることが多いでしょう。「いつ終わるか分かりません・不明確です」というのでは、先の計画を立てるのが難しくなってしまいます。
その場合、今回提案したやり方を適宜取り入れるとよいでしょう。一つずつインクリメンタルに進めることによって、実績を参考にでき、それをもとにより明確なスケジュールや計画を立てやすくなります。
今日は、ソフトウェア開発業務で採用されている概念や手法を、開発業務以外でも導入した事例について紹介しました。業界・業種が違っても、各々で採用されている概念や手法は参考になるところも多いでしょう。今後も、可能な限り実例を交えながら、紹介していければと思います。
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