
2025年11月29日、2025年の最も素晴らしいプロジェクトを表彰するためのアワード、「Good Project Award 2025」が開催されました。
一次審査を通過した3つの優秀賞プロジェクトと、特別参加枠1プロジェクトが最終ピッチに登壇。「Backlog World 2025」の締めくくりとともに、最優秀賞が発表されました。それぞれの物語が交差する熱のこもったピッチコンテストの様子をレポートします!
目次
Good Project Awardとは
Good Project Awardは、ヌーラボのサービスを活用するさまざまなチームの中から、最も素晴らしいプロジェクトを表彰するためのアワードです。「“このチームで一緒に仕事できてよかった”を世界中に生み出していく。」という思いから、より多くのプロジェクトとチームコラボレーションの成功を願い、今年で6回目の開催となりました。
今回の審査員は、Good Project Award 2024にて最優秀賞を獲得したユニフォームネクストの髙栁 卓門氏、Backlog World 2020 運営委員長の西馬 一郎氏、ヌーラボ 代表取締役CEOの橋本 正徳が務めました。
それではさっそく、各社のピッチの様子をご紹介します。
【株式会社クロスメディア・パブリッシング】Backlog公式ガイドブック刊行。短納期と品質を両立した制作プロジェクト

最初に登壇したのは、特別参加枠*の株式会社クロスメディア・パブリッシング。ビジネス書の企画、編集、執筆、PRまでトータルサポートを提供している企業です。
*最優秀賞の審査対象外
ヌーラボが2025年10月2日に発売した公式ガイドブック『ゼロからはじめるBacklog活用大全』の制作プロジェクトについて、その裏側とBacklog活用について語っていただきました!
株式会社クロスメディア・マーケティング
工藤 貴之 氏
2025年3月、ヌーラボから「Backlog20周年に合わせて、公式ガイドブックを半年で制作できないか」という相談がありました。通常は半年~1年以上かかる書籍制作を、図版や複雑なレイアウトを含めて半年で仕上げるのは異例。ほかの出版社には断られた案件でしたが、「クロスメディアにしかできない仕事。やらない選択肢はない!」という言葉とともにプロジェクトが始動しました。
短納期に対応するため、通常の「原稿完成→デザイン着手」ではなく、作成途中の原稿を即レイアウトへ流し込むフローに変更。進行は加速しましたが、やり取りは膨大に……。

そこで欠かせなかったのが、Backlogです。
進行管理・修正指示・議論をすべてBacklogに集約し、カバーデザイン案はCacooで投票して決定するなど、意思決定も可視化しました。

クロスメディア側の多くはBacklog未経験でしたが、ヌーラボ担当者が「バックログスイーパー」として立ち上げを支援。結果、メンバーもすぐに使いこなせるようになりました。
こうして半年で刊行を達成。情報解禁後はAmazonランキング1位、1週間で重版決定と順調なスタートを切りました。今回のプロジェクトは、短時間で議論を重ねながら成果を出す「チームワークマネジメント」を体現する場となり、その進め方はカルチャーとして定着。現在、クロスメディア社でもBacklogを正式導入し、活用を進めています。

【エボルテック株式会社】「仕事が増えるのでは?」という不安を超えて、自走し始めた組織

優秀賞1組目は、ITの請負開発やエンジニア派遣などを手がけている、エボルテック株式会社。
「今日お話しするのは、特別かっこいい仕組みの話ではありません。導線を設計して、一緒に使うという体験をすれば、課題解決は自走する。そんな事例をご紹介したいと思います」
そう前置きしてピッチをスタートしたのは、名古屋拠点でマネージャー(営業・採用担当)を務める大河原 翔さん。組織が抱えていた非効率な負のサイクルを、Backlogによってどのように断ち切っていったのかを語りました。
エボルテック株式会社
大河原 翔 氏
【背景】
エボルテックは、メンバーがそれぞれ社外で活躍しており、社内に集まる機会が少ないのが特徴です。職種や作業場所が分散しているため、全員で議論できる場は、月1回の会議のみという状況でした。
【課題】
月1回の会議が必ずしも有効に機能していたわけではありませんでした。思いつきで課題が棚卸しされ、新たな課題が発生しても記録する場所がなく、背景や担当者が不明な課題が山積……。こうした非効率な負のサイクルが日常的に発生していたのです。

【アクション】
この負のサイクルを断ち切るために導入したのがBacklogです。目指したゴールは、自律的に課題解決に向かう組織の構築でした。そのために重視したのが、決裁権を持つ管理部門メンバーに、確実に使ってもらうことです。
導入時には、あえて運用ルールを徹底的にシンプルに設計しました。最初からマイルストーンや親子課題は使わず、「まずはすべての課題をBacklogに集める」ことを優先しました。
さらに課題テンプレートを充実させ、「何を書けばよいか分からない」という状態を防ぎ、ツールに不慣れな管理部門のメンバーでも迷わず使える設計を徹底。会議のスタイルもBacklogを中心に据えた形へと変更し、報告の場ではなく「議論の場」へと切り替えていきました。

「ここまで簡単にしたら、きっと使ってくれるはず」―― そんな期待を持って臨んだ社内プレゼンの反応は、予想に反するものでした。
「仕事、増えるの?」
このままではまずいと感じた大河原さんは、次の手を打ちます。まずは身近な仲間に協力を要請。タスク管理に慣れているエンジニアに、エンジニアだけで完結する課題も含めてすべてBacklogで起票してもらったのです。さらに、口頭で受けた依頼やチャットでの議論もBacklogで行うように誘導。地道でアナログな働きかけを徹底し続けていきました。

【成果】
地道な努力を続けた結果、徐々に成果を感じ始めます。リーダー用のチャットチャンネルはBacklogの更新通知で埋まり、「Backlogを見たほうが楽に把握できる」という意識が社内に広がっていったのです。やがて管理部門のメンバーからも、「Backlogは便利」「意外と操作が簡単」といった声が上がり、利用は自然と定着しました。課題は誰かが管理するものから、「自走するもの」へと変化していきました。
月1回の会議の内容も大きく変わり、報告中心だった場は、次第にクリエイティブな議論の場へと進化していきました。
大河原さんはピッチの最後を次のように締めくくりました。

「自律的に課題解決をする組織を構築する。このチャレンジによって得られたのは、透明性、スピード、そして一体感です。Backlogは、私たちにとってただのツールではなく、組織が成長するためのパートナーであり、チームの一員だと感じています」

【近鉄グループホールディングス株式会社】「あの人がいないと回らない」から脱却。社内のDX支援にBacklogを活用

鉄道を起点とした多角的な事業展開を行っている、近鉄グループホールディングス株式会社。運輸業、不動産業、国際物流業、流通業、ホテル・レジャー業など、私たちの暮らしに密着した幅広い分野で事業を展開しています。
【背景】
近鉄グループ各社を統括する同社。業種が幅広く、労働集約産業が多いなか、IT人材が少なくDX推進に後れを取っている状態でした。このままではまずいという危機感から、グループ各社のDXを支援する新チーム「デジタル活用支援チーム」が発足したのです。
ところが、グループ各社が何に困っていて、どのような支援を必要としているのかを正確に把握できていませんでした。そこでまず、DXに関する困りごとの相談窓口を設ける、「近鉄グループデジタル相談窓口プロジェクト」がスタートしました。
近鉄グループホールディングス株式会社
阪田 和樹 氏
【課題】
これまでは、ITやシステムに関して分からないことがあると、特定の「頼れる人」の経験やホスピタリティに依存する、いわゆる「属人化」した状態でした。その「頼れる人」が起点となり、「この内容ならこの人に聞こう」と個人的なネットワークをフル活用しながら、相談事を解決していたのです。

これにより一定のクオリティの支援は実現できていましたが、万が一この“頼れる人”や“詳しい人”が異動してしまったら、これまで積み上げてきたノウハウがすべてリセットされてしまう懸念がありました。そこで、「良い点は残し、悪い点はなくす。そして属人化を解消する」という課題意識が、今回の取り組みの出発点でした。
【アクション】
属人化の解消とノウハウの蓄積、その両立を実現するために活用したのが、Backlogです。デジタル活用支援チームが管理者となり、セキュリティなどそれぞれの専門チームの協力のもと、プロジェクトチームが編成されました。
相談の受付窓口はフォームに一本化し、相談先を明確化。フォームの内容は、メールを通じてBacklogに自動で課題登録されるため、どんなに小さな案件でも漏れなく起票できる体制を整備したのです。

対応状況はすべてBacklog上で管理することで、対応履歴はそのままノウハウとして蓄積されます。これまで属人化していた「豊富な経験」を、組織の資産として残していく仕組みが整いました。

このプロジェクトは長期にわたり、それぞれ所属の異なる複数のメンバーが参加しています。そのため、対応のばらつきや、記載が徹底されないといった懸念も想定されました。そこで、プロジェクト管理者が中心となって運用ルールを策定し、チームメンバーに共有。手順書や記載ルールを作成し、説明会も実施しました。さらに、定例会議の場で、内容が適切に書かれているか、対応が適切に行われているかを継続的に確認したのです。

【成果】
取り組みの結果、約2か月で16件の相談が寄せられました。今回のプロジェクトにおいて何より重要な成果は、対応ノウハウが確実にBacklog上に蓄積され始めたことでした。その結果、次回以降の対応にも活用できるようになり、今後はグループ会社への支援内容の検討にも活かせる状態が整いました。
近鉄グループホールディングス株式会社
新藤 達郎 氏
タスク情報をすべてBacklogに集約したことで、プロジェクト管理とノウハウ蓄積を同時に実現し、“属人化の解消”という長年の課題を解決できたのです。
そしてこの11月、ついに恐れていた事態が…
「頼れる人」、そしてプレゼンを担当した新藤さんまで、これまで支援の中心を担っていた人物の異動が発生したのです!「Backlogにノウハウを残しておいて本当によかった…」と、ホッと胸をなでおろすのでした。
今回のプロジェクトを通じて、プロジェクト管理を成功させるためには「仕組み」が重要だと実感しています。さらに、その仕組みを円滑に機能させるためには、管理者がメンバーに対して根気強く働きかける熱意が不可欠であることも、大きな学びとなりました。

【東急株式会社】40名が関わる長期プロジェクトで問われた「合意形成」の設計力

東京・神奈川を中心に、交通事業や不動産事業など多様な事業を展開している、東急株式会社。鉄道、スーパー、百貨店、ショッピングセンターなど、さまざまな場所で「貯まる・使える」TOKYU POINTは、現在約250万人規模の会員基盤を持ち、年間のポイント流通量は約100億円にのぼります。
今回は、このポイントサービスを起点に、リアルとデジタルを融合させた新たな顧客体験をどのように構築していくのか、その基盤となるシステム再構築プロジェクトの取り組みについてお話いただきました。
【背景】
当社はこれまで、鉄道や商業施設といったリアルの接点を中心としたビジネスモデルを強みに事業を展開してきました。今後はそこにデジタルを融合させた新しい体験価値をお客様に提供していく方針です。
東急株式会社
江川 琢雄 氏
象徴的な取り組みが、「TOKYU POINT」のシステム刷新です。TOKYU POINTのシステムは約20年にわたって運用してきたもので、設計の老朽化によってアジリティが低下していました。そこでまず、顧客接点であるアプリやWebサイトの再構築から着手し、段階的にシステム全体を刷新していくプロジェクトをスタートさせました。2023年に開始し、現在はテストフェーズに入っています。
【課題】
このプロジェクトの関係者は約40名規模となり、複数の部門からメンバーが集まる体制になっています。それにより、部門ごとのカルチャーの違いや、各組織で使用しているツールがバラバラであることが、コミュニケーションや進行管理の面で大きな障壁になりました。

また、プロジェクトの途中では、要件がなかなか定まらず、検討期間が長期化するという状況にも直面しました。とりわけシステム刷新に伴う新しい業務フローの策定については、関係者間での合意形成に時間を要しました。
【アクション】
組織横断的な管理ツールとしてBacklogを採用し、課題管理やアジェンダ管理をBacklogに一本化しました。
要件定義や合意形成にあたっては、「どうするのか」「いつまでにやるのか」「誰と進めるのか」の3点を必ず意識して、協議を進めるルールを設定。
具体的には、BacklogのWikiに運営ルールを明文化し、課題のテンプレートも活用しました。メンバーは運用の中でルールを意識できるので、合意形成の円滑化につながりました。

また、「人を育てる」という観点も重要なテーマでした。大きなプロジェクトの経験者が少ない中で、システム部門のメンバーが利用部門に入り込み、一緒に要件を考え、プロジェクトを進めながら仕事の進め方を伝えていくことを意識しました。

【成果】
進め方が整理され、人が育ったことが、現時点での大きな成果です。メンバーが課題を適切に書けるようになったり、調整を主体的に行えるようになったりと、少しずつ成長が見られるようになりました。
現在もプロジェクトは進行中のため、最終的な成果はこれからですが、これまでの取り組みを通じて、仕事の進め方が明文化されたことは、大きな成果の一つだと感じています。
また、プロジェクトを通じて、ビジネスとシステムの両方を理解し、部門を横断して調整できるデジタル人材が育ち始めているという手応えを得られています。
東急株式会社
鈴木 伸尚 氏
長期的かつ大規模なプロジェクトでは、その進め方が重要です。数か月ごとに進捗を確認し、全体を客観的に把握すること。また、最初から完璧な可視化を求めず、「あとから修正すればよい」「必要に応じて追加すればよい」という柔軟な考え方で問題ありません。
何よりも、プロジェクトマネジメントのルールをしっかり定め、チーム全体に共有・浸透させることが大切だと実感しました。

Good Project Award 2025 栄えある最優秀賞を発表!!
すべてのピッチが終わり、審査員と来場者による投票・審査が実施されました。結果発表の前に、まずは審査員の講評から。
■髙栁 卓門 氏(Good Project Award 2024最優秀賞、ユニフォームネクスト)
「多くの困難を乗り越えてきた各チームの取り組みから大きな勇気をもらいました。Good Project Awardは、人を励まし、良いプロジェクトがさらに広がっていく力を持っているとあらためて感じました」
■西馬 一郎 氏(Backlog World 2020運営委員長)
「会議の生産性向上や人材育成など、どの取り組みもビジネスパーソンにとって身近で実践的な内容でした。現場の熱意が伝わる発表ばかりで、多くの学びを持ち帰れる時間だったと思います」
ユニフォームネクスト
髙栁 卓門 氏
Backlog World 2020 運営委員長
西馬 一郎 氏
そして、いよいよ最優秀賞の発表へ!栄えある最優秀賞に選ばれたのは、近鉄グループホールディングスによる「近鉄グループデジタル相談窓口プロジェクト」です!

大きな拍手とともに、受賞チームを祝福する空気が会場を包み込みました。審査員を代表して、ヌーラボの橋本が講評に立ちました。
「現場の課題解決、ナレッジの蓄積、組織運営の改善に向けた多様な取り組みを知ることができました。会議を『報告の場』から『議論の場』へ転換し創造性を引き出した事例や、部門横断でBacklogを活用した取り組み、ノウハウを残して異動に強い組織を築いた点は、レジリエンス向上の観点でも高く評価できます。
特に印象的だったのは、一人ひとりが高い熱量を持ち、主体的にリーダーシップを発揮していた点です。その姿勢を高く評価し、最優秀賞に選出しました」
株式会社ヌーラボ
代表取締役 CEO
橋本 正徳
プロジェクトの規模や業種、直面する課題はそれぞれ異なっていても、4つの発表に共通していたのは、「チームでどう乗り越えるか」を突き詰め続けた姿勢。Good Project Award 2025で語られた実践は、どの現場にも応用し得るヒントが満載でした。
次にGood Project Awardを受賞するのは、この記事を読んでいる皆さんのプロジェクトかもしれません。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

関連リリース

2025年の最も素晴らしいプロジェクトを表彰する 「Good Project Award 2025」 近鉄グループホールディングス社の「近鉄グループデジタル相談窓口プロジェクト」が最優秀賞を受賞 | プレスリリース | 株式会社ヌーラボ(Nulab inc.)
株式会社ヌーラボ(本社:福岡県福岡市、以下 ヌーラボ)が2025年11月29日(土)にパシフィコ横浜で開催した「2025年の最も素晴らしいプ…
nulab.comこちらもオススメ:

プロジェクト管理とは?目的や項目、管理手法について徹底解説! | Backlogブログ
プロジェクト管理の基本や主な項目を紹介。CCPMやWBSなどのプロジェクト管理の代表的な手法やプロジェクト管理全体の流れを解説。これからプロ…
backlog.com