
2025年11月29日、年に一度のプロジェクトマネジメントの祭典「Backlog World 2025」が、パシフィコ横浜にて開催されました。プロジェクトマネジメントに取り組む多くの方にご参加いただき、実務に役立つ知見やつながりを広げる場となりました。
本記事では、Backlogのプロダクトマネージャー吉澤毅によるセッション「AIとナレッジ共有で進化するBacklogの未来」をレポート。20周年を迎えたBacklogがどのように進化し、どのような未来を描いているのか —— 開発中の新機能情報をあわせてご紹介します!
目次
登壇者紹介
吉澤 毅
株式会社ヌーラボ
2009 年にヌーラボへプログラマーとして入社。受託開発を経て、「Backlog」「Cacoo」の開発や「Typetalk」の立ち上げを行う。2024 年からは Backlog のプロダクトマネージャーとして開発全般を統括し、より多くの人の働きを支えるサービスづくりに取り組んでいる。Backlog スター機能のプロトタイプ開発者でもある。
より使いやすく進化したBacklog。2025年の主要アップデートを総まとめ
冒頭では、Backlogが2025年に実施したさまざまなアップデートについてご紹介しました。
■ガントチャートのフルリニューアル
ガントチャートの全面リニューアルは、2025年に実施した中でも最も大きなアップデートです。これまで多くのユーザーから寄せられてきたフィードバックを踏まえ、UIを大きくリニューアルし、新たな機能を多数追加しました。
■CSVによる課題一括登録が可能に
5月には、CSVファイルでの課題一括登録機能が追加されました。これまでもGoogleスプレッドシートによる一括登録は可能でしたが、社内ルールで利用できないユーザーも多く、環境に依存しないCSV版を新たに開発。また、7月に登場したプロジェクト設定のインポート・エクスポート機能と組み合わせることで、新規プロジェクトの立ち上げがよりスムーズになりました。
■iOSアプリの見やすさと操作性が向上
モバイルアプリでも大きな刷新がありました。2025年11月にアップデートしたiOSアプリでは、通知から課題確認、コメント返信までの一連の流れを見直し、モバイル利用に適したUIへ大幅に改善しました。移動中や現場での確認作業が効率化され、より使いやすいアプリとなっています。Android版も現在開発中で、提供に向けた準備が進んでいます。
■Backlog AI アシスタント(β版)の提供
さらに、2025年夏から提供が始まったBacklog AIアシスタント(β版)も大きな進化ポイントです。参加プロジェクトのデータをもとに、AIが課題・Wiki・ドキュメントといった機能を横断的に検索し、要約や状況把握を行います。プロジェクト全体の状態やメンバーの取り組みなどもAIが答えられるようになっており、モニターに参加いただいた皆さまへのヒアリングを重ねながら、実務に適した形へと磨き込みを続けています。
2025年に実施したBacklogの主なアップデート
プロジェクトマネジメントをさらに前へ。ヌーラボが目指す未来構想
ヌーラボが掲げる新たなプロダクト戦略は、2025年10月17日に開催された「Nulab Conference 2025」にて発表されました。その根幹を成すのは、「業務のナレッジデータをもとに、AIで“キチンとシゴトが終わる世界”を実現していく」という構想です。
「Backlogには日々の業務で生まれる膨大な情報が蓄積されています。ヌーラボは、このデータを起点に外部ツールの情報も組み合わせることで、AIと人が協働し、チームの創造性をより発揮できる未来を描いています。AIがチームの文脈や関係性まで理解し、仕事を前に進める『信頼できる同僚』としてそばにいるイメージです」

この構想の中核を担うのが「Backlog AI アシスタント」です。その役割を語る前に、これまで業務の現場で生じていた課題を、吉澤は次のような例えを交えて整理しました。
経営層から「DXを急いで推進してほしい」と求められた担当者は、その報告資料の作成や確認作業、関連チームとの調整に多くの時間を費やしています。また、複数プロジェクトを抱えるPMは、全体像を把握しきれず誤った判断につながるリスクを常に抱えています。近年一般化した1on1についても、マネージャーがメンバーの頑張りや状況を客観的につかむことが難しく、人間関係や主観が影響してしまうという課題が残っています。
こうした状況は、Backlog AI アシスタントの導入によって変化するでしょう。Backlog AI アシスタントは課題データからプロジェクトの問題点や進捗を読み取り、レポートまで自動で作成します。これにより、DX推進担当者は本来の業務に集中できるようになります。多忙なPMに対しては、複数プロジェクトやメンバーの状況を横断的に分析し、状況把握だけでなく「次に取るべきアクション」まで提案します。
株式会社ヌーラボ
吉澤 毅
AIは感情や人間関係の影響を受けないため、メンバーの貢献や変化を客観的に分析できます。「この人はこの部分をとても頑張っていました」といった客観的なデータからの気づきを提供することで、本人やチームが見落としていた価値を発見する手助けにもなります。
Backlogには、日々の業務を通じて蓄積される豊富な情報があります。ナレッジの価値を高め、情報共有が自然に行われる状態をつくるには、ヌーラボが提唱する「チームワークマネジメント」が不可欠です。蓄積されたデータがあるからこそ、Backlog AI アシスタントは各プロジェクトやチームの実態に即した回答を返すことができ、これがBacklogとヌーラボのAI基盤における大きな強みになります。

このBacklog AI アシスタントは、2026年初頭のリリースを予定しています。ぜひご期待ください。
ドキュメント機能を正式リリース!Wikiからスムーズに移行できる機能も提供
2024年9月にβ版提供を始めた「ドキュメント機能」に関しても、新たな発表がありました。
ドキュメント機能は、Wikiに代わる新機能として、チームでのコラボレーションを支える「リアルタイム同時編集」や「リッチテキストエディター」を備えています。Backlog記法やMarkdown記法を知らなくても気軽に書き始められるため、すでに幅広いユーザーにご活用いただいています。
ドキュメント機能とBacklog AI アシスタントとの連携にも注目です。たとえば、新しいメンバーがプロジェクトに参加するたびに、経緯や背景を説明する必要がある状況は、本来の業務とは異なる負担を生みます。そこで、ドキュメント機能にナレッジを蓄積しておけば、Backlog AI アシスタントがプロジェクトの経緯や背景を把握し、オンボーディングやガイドライン作成をよりスムーズに進められるでしょう。ドキュメント機能を活用することで、新しいメンバーが必要な情報に簡単にアクセスできることで、オンボーディング支援が格段に滑らかになる未来を描いています。
一方でユーザーからは、「すでにWikiで運用していて、ドキュメントに簡単に移行できない」「更新系APIが提供されていないため移行ができない」などの不安の声も多く寄せられていました。
Wikiからドキュメント機能への移行には、
さまざまな不安や課題の声が寄せられた
そこで、ヌーラボでは「どうすれば安心して移行してもらえるか」をチームで何度も議論してきました。その過程を経て、このBacklog World 2025の場で初めて公開されたのが、12月1日にリリース*される「Wikiからの移行機能」です。この発表で、会場は大きなどよめきと拍手に包まれました。
* リリース提供は段階的に行われます。利用方法や注意点など、詳しくは「ドキュメント機能の正式リリースとWikiからの移行機能提供のお知らせ|Backlogブログ」をご確認ください。
「ドキュメント機能はβ版を卒業し、正式版として安心して使っていただけるようになります。リリース後は、ドキュメントの追加や削除のAPIも順次公開していく予定です。今後はドキュメント機能の開発に注力してまいります」
移行ツールの発表をもって正式リリースとなったドキュメント機能。今後、Wikiについては廃止する予定ですが、詳細は決まり次第あらためてご案内いたします。ぜひこの機会にドキュメント機能を活用してみてくださいね!
見通しのいいプロジェクト運営をアシストする新機能
ガントチャートが長期間表示に対応
もう一つの大きなアップデートとして発表されたのは、「ガントチャートの長期間対応」です。これまでガントチャートで確認できる期間は6か月先まででしたが、今後は最長で5年先程度まで確認できるようになる予定です。
また、マイルストーンでグルーピングすることによって、プロジェクト全体のスケジュールをより俯瞰して把握できるような表示にしたいと考えています。こうすることにより、経営層やマネージャーが求める「全体を大まかに見渡したい」というニーズに応えられるアップデートになるのです。現在、開発を進めており、リリースは2026年初春を目指しています。
「孫課題」にいよいよ着手
最後に明らかにされたアップデートは、親課題と子課題に続く「孫課題」です。これまで多くのユーザーから要望が挙がっていた機能の一つです。
プロジェクトが長期化したり、関わるメンバーが増えたりすると、どうしても課題の粒度が大きくなりがちです。これに対して「Backlogの課題を、もっと小さな単位で運用しやすくするにはどうしたらいいか」をチームで検討し、オンライン対応の開発を進めました。
「Backlogの課題を個人のタスクレベルの粒度にまで落とせるようにしたいと考えていますが、現状は課題の粒度が細かく設定できません。そのために、カテゴリや課題種別を代用し、意図しない使い方になってしまうユーザーがいることも事実です。こうしたユーザーにも、Backlogをよりシンプルかつ正しく使ってもらえるようにするため、孫課題のリリースを決断しました」
一方で、孫課題が導入されることで、「これまでシンプルに使えていたBacklogが使いにくくなるのでは?」という不安の声も届いています。
これに対して吉澤は、「必要なプロジェクトだけで孫課題を有効化できるようにする方向も検討しているので、その点はご安心ください」と話しました。孫課題は、2026年内リリースに向けて開発を進めています。
「孫課題」の開発に着手したことが発表された
チームにナレッジが蓄積されるために大切なこと
セッションの締めくくりに、Backlogの今後を語るうえで欠かせない視点として、「チームにナレッジが蓄積されるための土台」について触れました。
「チームの目的や共有、役割の明確化、リーダーシップ、コミュニケーション。こうした要素がしっかり機能していることが不可欠です。チームワークマネジメントが前提として成立してこそ、価値あるナレッジが生まれ、AIの価値も最大化されると考えています。プロジェクトを終えたときに、『このチームで一緒に仕事できてよかった』と思っていただけるような体験を届けたい。私たちヌーラボは、そのためのプロダクトづくりを続けていきます」
今回のセッションを通して、Backlogの進化は機能改善にとどまらず、「チームがより良く働くための前提」を丁寧に整えていく取り組みだということが、あらためて示されました。
すべてのアップデートに共通しているのは、「業務の負荷を減らし、メンバーが本来の価値を発揮できるチーム環境づくりのアシスト」です。ドキュメント機能、ガントチャート、孫課題によって情報が整理され、チームがつながり、Backlog AI アシスタントが文脈を理解して助けてくれる。そんな未来が現実味を帯びてきたことを実感いただけたのではないでしょうか。
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