Backlogが支えるユーザーサポート。属人化の解消とAPI活用で対応可能件数が5倍に
Backlog導入前の課題
・担当者の記憶と経験に依存しており、業務が属人化していた
・対応工数と手間がかかっており、対応できる件数に限界があった
Backlog導入後の効果
・業務の属人化が解消され、ユーザーサポート体制が強化された
・傾向分析により「よくある質問」を整備し、お問い合わせ件数が半減
・Backlog APIを活用し、すべてのアプリレビューに対応できるようになった
学習塾からアプリまで、さまざまな角度から教育事業を展開する株式会社ワオ・コーポレーション。知育アプリ「ワオっち!」の開発チームでは、日々の業務からユーザーサポートまで、すべての情報をBacklogで一元管理しています。
とくにユーザーサポート業務では、運用方法のアップデートを重ねることで、対応品質の向上を実現したといいます。ワオっち!開発チーム セールスセクション リーダーの小林氏に、具体的な活用方法や工夫について詳しくお話を伺いました。
目次
Backlogにすべての情報を集約。浸透のコツは明確な運用ルール
―― 最初に、御社の事業内容について教えてください。
当社は全国47都道府県で学習塾を経営するほか、オンラインでの個別指導サービスなど、さまざまな教育事業を展開しています。私は、シリーズ累計1900万ダウンロードを記録する知育アプリシリーズ「ワオっち!」の開発チームに所属しています。エンジニア、デザイナー、セールスの3職種15名で構成されており、開発から運用、ユーザーサポートまですべての業務を担っています。
―― ワオっち!開発チームではBacklogをどのように利用されていますか。
メンバー全員のすべての業務をBacklogで管理しています。“オープンなコミュニケーション”を原則とし、「Backlogで管理していない仕事はない」と言えるほどです。たとえば「長期休暇の取得時期の集約」のような細かなタスクについても、Backlogで課題を立て、記録を残しています。
プロジェクトの中には、社外のスポンサーや他部署のメンバーが参加するものもあります。メールでコミュニケーションを取る場合も多いですが、やり取りが増えると情報やタスクの把握が困難になりがちです。そこでBacklogの利用を提案すると、実は先方もすでに導入しており、Backlogを使った運用に移行するケースも多いのです。
―― 社内外とのコミュニケーションをBacklogに集約されているんですね。ほかのコミュニケーションツールは導入されていますか?
チャットツールや電話も使用しており、Backlogとの使い分けルールを明確にしています。具体的には、「30分以内のフィードバックが必要な場合は電話を使用し、決定事項は必ずBacklogに記録する」など、誰もが迷うことなく判断できる基準を設けています。
また、「プライベートな内容」「お客様の個人情報」「人事関連の情報」などは、Backlogへの記録や共有を禁止していますが、それ以外は原則すべてBacklogで共有する方針です。
―― Backlogやコミュニケーションツールの運用ルールは、どのように周知していますか?
ルールの見直しと共有をする場を、半年に1回程度設けるようにしています。新しくジョインしたメンバーだけでなく、メンバー全員にあらためてルールを浸透させることが目的です。こうすることで、チーム全体の共通認識のもと、誰もがBacklogを含むコミュニケーションツールを安心して利用できる環境を整えられると考えています。
属人化を解消し、誰もが精度の高い対応が可能に
―― アプリユーザーからのお問い合わせ対応にも、Backlogを活用されていると伺っています。
アプリユーザーからのお問い合わせ内容や対応履歴は、すべてBacklogに記録しています。課題の「種別」や「カテゴリー」「マイルストーン」をカスタマイズして、お問い合わせの内容を分類し、あとから検索しやすい状態での管理を徹底しています。
ユーザーからのお問い合わせに対し、社内でどのようなやり取りを経て、どのような返信をすることになったのか。対応の結果だけでなく、途中のやり取りや経緯をすべて残しておくことが重要です。Backlogは、こういった途中経過も含めてすべて履歴として残しておける点で重宝しています。改善に改善を重ね、現在の管理方法にたどり着きました。
―― 具体的にどのような改善を行ってきたのでしょうか。
以前は、Backlogにお問い合わせ内容を記録していたものの、膨大な課題の中から類似のお問い合わせを探し出す作業には慣れが必要でした。結局のところユーザーサポート担当である私個人の記憶と経験に依存しており、業務が属人化している状態だったのです。
そこで、組織体制の刷新期にあたる2020年に、業務の属人化解消と増加するアプリユーザーに対応する方法を検討しました。「ユーザーサポート」を一つのプロジェクトとして切り出し、課題登録のルールを定め、情報検索の効率化を図ったのです。
具体的には、課題を登録する際に「問い合わせ区分」「アプリ名」「具体的な症状」の3つの属性情報を付与します。これは、データベースのAND検索と同様の仕組みです。たとえば、「音が出ない」という症状で「アプリA」を使用している際の事例を検索する場合、「具体的な症状=音が出ない」かつ「アプリ名=アプリA」という条件でBacklogを検索します。
この改善により、「音が出ない」という問い合わせがあった場合、過去に同じ条件で登録された事例を効率的に見つけられるようになりました。
―― これは業務効率が格段に上がりそうです!改善の成果はいかがですか?
業務の属人化が排除されただけでなく、ユーザーへの返信のリードタイムが短縮されたことを実感しています。また、お問い合わせ内容を分類して管理したことにより、お問い合わせの傾向が可視化できました。それを元に、アプリ内の「よくある質問」に掲載する内容を改善したことで、お問い合わせ件数がほぼ半減したのです。Backlogでの情報管理が、ユーザーエクスペリエンスの向上につながったと感じています。
新しいツールを導入すると、操作を覚えたり、別の画面にログインしたりする手間が増えてしまいます。日常的に使っているBacklogであれば、メンバーも使い方を熟知しているので、浸透も早かったですね。現在は主に4名のメンバーがお問い合わせ対応に携わっていますが、より効率的な運用方法をそれぞれが提案・起案・開発しており、日々の業務効率が着実に向上しています。
Backlog APIを活用した、自動化システムを開発
―― 最近では「Backlog API」を活用した、業務自動化の取り組みも進められているそうですね。具体的な内容について教えてください。
ユーザーサポートの更なる効率化を目指し、Backlog APIを活用した2つの自動化システムを開発しました。
1つ目は、課題起票の工数削減です。以前は、お問い合わせシステムやメールフォームからの情報を元にBacklogに起票する際、必要事項を漏れなく転記する手間が生じていました。この手間をなくすために、社内のエンジニアが独自ツールを開発しました。
問い合わせの内容をコピー&ペーストして実行ボタンを押すだけで、適切な「種別」「カテゴリー」「マイルストーン」が選択された状態でBacklog課題を自動起票してくれるんです。これまでは、問い合わせ内容に応じて手作業で分類していたので、劇的な工数削減につながりました。
2つ目は、アプリレビューへの返信フローの改善です。20以上のシリーズアプリに不定期に寄せられるレビューに対して、従来は、テクニカルサポートへの誘導が必要と思われるものにのみ返信していました。しかし、ユーザー満足度を考えると、すべてのレビューに返信することが望ましいのは間違いありません。
そこで、Backlogとクラウドベースのスクリプトエンジンを連携させることで、レビュー確認から課題起票、返信担当者の割り当てまでを自動化する仕組みを構築しました。具体的には、スクリプトエンジンが毎朝起動し、各アプリストアのレビュー情報をチェック。対応済みのレビュー以降の新しいレビューを抽出し、自動でBacklogに課題を起票します。
Backlogには「レビューに返信する」という親課題を登録しており、そこに紐づく子課題としてレビューのリンクを自動で掲出できるようにしています。担当者はBacklogを確認するだけで、返信が必要なレビューが一覧表示されるため、アプリストアを個別に確認する手間がなくなりました。この起票の自動化によって、同じ時間で約5倍の件数に対応できるようになりました。
Backlog APIのおかげでさまざまなシステムと連携できるため、新たなシステムを導入することなく業務の自動化を実現できています。
AI活用の未来に向けて、Backlogに情報を蓄積していきたい
―― 今後、ユーザーサポートにおいて、Backlogをどのように活用していきたいですか?
究極は問い合わせ対応の完全自動化を実現したいと考えています。現在ではどうしても対応時間が限られてしまうため、お問い合わせいただいた曜日や時間帯によっては、返答までにお時間をいただいてしまいます。AIを活用した問合せ対応の自動化ができれば、工数の削減以上に、お客様のユーザーエクスペリエンスの向上に寄与するものと考えています。
過去のデータはAIに学習させるための貴重な情報源となります。将来のAI活用を見据え、これからもBacklogで情報の一元化を徹底したいですね。
―― 完全自動化という先を見据えていらっしゃるのですね。ユーザーサポートの現場がどのように変わるのか、今後の展開が楽しみです。
会社全体の業務効率向上のため、私たちの部署以外にもBacklogを広めていきたいです。Backlogはタスク管理だけでなく、情報共有のプラットフォームとしても機能しますので、部署間での情報共有がスムーズになり、連携の強化が期待できます。ある部署で発生した問題やノウハウをBacklogで共有することで、問題への対処が早くなったり、効率的に業務を進めたりすることが可能になるはずなのです。
さらに、Backlogはリモートワーク環境下でも効果を発揮します。場所にとらわれない柔軟な働き方を推進し、多様な人材の活用を促進することにもつながるので、全社で活用しない手はないと思っています。
Backlogはユーザーサポートの品質向上や、業務の属人化解消に役立つ重要なツールです。今後、チームがさらに大きくなった際にも、チームワークマネジメントを支援してくれると期待しています。これからもフル活用していきたいですね。
―― 貴重なお話をありがとうございました!
※掲載内容は取材当時のものです。