トヨタ生産方式の「カイゼン」とBacklogのコラボレーションで業務効率を向上。ヌーラボ公式パートナーとの連携で業務合計時間のグラフ化も実現
Backlog導入前の課題
・エクセルなどでのタスク管理では更新や進捗の把握に手間がかかり、部内の情報共有にも課題を感じていた
Backlog導入後の効果
・部署全体の活動と個人の業務状況を一目で把握
・Backlogとパートナーソリューションを連携し、詳細な工数の数値化・グラフ化も実現。業務の平準化と知見の蓄積、共有を目指す
世界有数の自動車メーカーであるトヨタ自動車株式会社。自動車の足腰とも言えるシャシーの設計を担当するTCシャシー設計部では、業務効率化とデジタル化を目的にBacklogを導入しています。
部内でDX推進グループを発足し、一連の活動をリードする傍嶋氏、城戸氏、久保氏に、Backlog導入の決め手や具体的な活用場面、導入後の効果を伺いました。さらに、ヌーラボ公式パートナーである株式会社オープントーンの金田氏も交え、独自にカスタマイズしたダッシュボード構築の経緯についても詳しく迫ります。
目次
自動車開発の現場から、ボトムアップでDXの取り組みを開始
—— まずは、TCシャシー設計部内でDX推進グループが発足した経緯について教えてください。
私たちTCシャシー設計部は、自動車のステアリングやサスペンション、ブレーキなどの設計業務を担当しています。2021年頃、労使協議の中でデジタル化をトップレベルまで引き上げるという方針が示され、部内の有志メンバーによってDX推進グループを発足しました。
最初は城戸が活動を始め、その後、傍嶋・久保もメンバーに加わりました。現在は7名体制で運営しています。発足当初は、自分たちでコードを書いてみながらブレーキ制御開発を支援するツール作成からスタート。以降も、本業の合間を縫ってデジタル化を促す取り組みを継続しています。
—— 有志メンバーで運営されているんですね!
トヨタ自動車が大事にしている考え方の一つに「現場主義」があります。デジタル化の取り組みについても、ボトムアップで各現場から積極的に進めていこうという動きが活発化しています。ここにいる私たちも、以前より業務のデジタル化が必要だと危機感を抱いていました。同じ課題意識を持つメンバーで自発的に集まり、現在の活動につながっています。
誰にも使いやすいBacklogを選定。
現場の担当者と決裁者、双方からの働きかけがイノベーションを起こす
—— 部内でデジタル化の取り組みを進める中、Backlogの導入を決めた理由をお聞きしたいです。
日々行う業務管理のさらなる効率化には、ITツールの導入が欠かせないと感じていました。もともとはエクセルなどを利用していたのですが、部内の情報共有や知見の蓄積をより強化していきたいと考えたのです。
そこでまずはさまざまなタスク管理ツールをリストアップし、その中から必要な機能を考慮しながら候補を絞っていきました。
当部署はハードウェア設計者が多く、部員はITスキルを向上させるべく積極的に学んでいる状況です。そのため、シンプルで誰でも使いやすい点が、Backlog導入の決め手となりました。2022年12月頃から無料トライアルを開始し、現在は部署全体でBacklogを活用しています。
—— 導入にあたり、どのように部内の理解を得ていきましたか?
当初は、最終決裁権を持つ部長に対して「最初の3か月間はBacklogの活用を希望するグループで試した後、問題なければ全面運用していきましょう」と段階運用を提案していました。そして提案内容には「ITツールを武器にして、より強いエンジニア集団になりたい」という私たちの思いも込めました。
すると、部長もかねてからデジタル化の重要性を感じており「最初から全面運用でいこう」と押してくれました。
—— 部長の強い後押しで、導入が一気に進んだのですね。
こうしたボトムアップの提案は、最終的に決裁権を持つ人の承認がなければ、検討段階で終わってしまう可能性も大いにあります。その点、部長は「自分からもBacklog導入の重要性を部員へ伝えます」と言ってくださり、背中を見せてくれたのが心強かったですね。
現場に変化を起こすためには、ボトムアップとトップダウン、双方からの働きかけがあることが非常に重要だと感じました。
Backlogの活用で、部署全体の活動と個人の業務状況が一目で把握できるように
—— Backlogを日々の業務でどのように活用されていますか?
Backlogの活用場面は大きく3つあります。
1点目は「部方針のタスク管理」です。部として1年間推進するタスクを一元管理し、125名の部員が部方針に基づく個々のタスク進捗を部員全体で共有できるようにしました。
課題の進捗ステータスを表す「状態」にはトヨタ生産方式の「アンドンを引く」という考え方に基づき、「課題発生」「停滞中」も加えることで、何か問題が発生した際はすぐに状況を共有でき、相談しやすい仕組みを整えました。
結果、誰もが一目で部全体の状況を把握できるようになり、大きな効果を感じています。
2点目の活用場面は「個人のタスク管理」です。タスクを数時間単位の粒度で課題として起票し、業務の流れやボリュームをガントチャートで可視化して、チーム内で共有しています。
Backlog上では、課題の開始日でタスクを並び替えて表示できるので、タスクの優先順位が明確になり、チーム内で共通認識を持てるようになりました。エクセルでの管理では並び替えに手間がかかり、先に手をつけるべきタスクが埋もれてしまい、見落としにも繋がっていました。
また、他のチームメンバーがタスクをどのように進めているかを参考にできる点もメリットに感じています。タスクの遂行状況がログとして残り、かつ共有できることで知見が個人持ちではなく組織の財産となり、後から振り返る際に辞書的な役割も果たしてくれると期待しています。
3点目は「回覧物の一元管理」です。コロナ禍で承認回覧が紙書類から電子書類に変わりましたが、回覧手法がメールやMicrosoft Teamsチャットなどコミュニケーション手段が様々だったので、Backlogのボード機能を活用して一元管理することにしました。
メールやチャットの場合、回覧物の見落としや停滞状況が不明瞭な事が課題でしたが、Backlog導入後は、回覧状況がひと目で分かるようになりました。
また、Backlogでは依頼の目的や背景などをコメントに記載できる上、回覧中の履歴も残るので、後に回覧されてきた人でも経緯がわかりやすいです。そのため、承認者が前承認者と同じ確認を依頼者にする事がなくなり差し戻し回数が大幅に減ったことも、良い変化の一つですね。
さらに、これらの改善状況を定量化するために独自に回覧物のリードタイム計算ツールを作成しました。Backlogの回覧履歴からデータを抽出して、回覧リードタイムやコメント数(手戻り・停滞・回覧効率の指標化に活用)、工程能力等で可視化して、回覧のスピードと質向上を図っています。
さらなる業務改善を目指して「Backlog助っ人サービス」導入
—— 御社では、ヌーラボの公式パートナーであるオープントーン社の「Backlog助っ人サービス」を活用されていると聞きました。
トヨタ自動車はモビリティ・カンパニーへの変革を方針として掲げ、全社的に新しい部品や機能を扱う仕事が増えています。
仕事の範囲が広がる中で、業務量の平準化や業務スキルの伝承を実現するためにも、業務をひと固まりの単位ではなく、細かい作業に分解して工数や所要時間を可視化したいと考えていました。
Backlog上のデータから、業務の実態を数値化・グラフ化する方法がないかと模索していたところ、ヌーラボの担当者から「Backlog助っ人サービス」を紹介していただきました。こうしたパートナーによるサービスを組み合わせる手もあるのだと知り、Backlogの活用範囲がさらに広がることに大きな期待を抱きましたね。
IT業界の方と一緒に仕事をする機会があまりなく不安でしたが、問い合わせたところ丁寧に対応していただき感謝しています。
—— オープントーン社の金田さんにもお話を伺います。トヨタ自動車様へ、どのように「Backlog助っ人サービス」を導入していったのでしょうか?
お問い合わせの段階で皆さまからかなり詳細なご要望をいただき、実現されたい姿が明確だったことが印象的でした。そこから予算感を伺い、仕様の優先順位づけを一緒に整理させていただきました。
そうして構築したのが、Backlog APIを利用して、メンバー全員の、プロジェクト別・ステータス別の稼働時間集計をグラフ化できるダッシュボードです。すり合わせはスムーズに進み、2か月程度でリリースまで実現しました。
皆さまからは、グラフの出力とは別に、計算に使ったデータをエクセルに出力したいというご要望もいただきました。部内でデータを加工して業務改善に活かしたいとのことで、エクスポート機能も設けています。
—— 導入後、部内の反応はどうでしたか?
まだ実装して間もないですが、部員にアンケートを取ったところ、おおむねポジティブな声をもらえています。具体的には「ほかのメンバーとの共有が容易で業務平準化に役立ちそう」「プロジェクトやステータスごとの稼働時間が見られるのが便利」といった反応がありました。
Backlogは「カイゼン」と組織運営を支えてくれる存在
—— Backlogの活用および両社のコラボレーションについて、今後の展望をお聞かせください。まずは、オープントーン社の金田さんよりお願いします。
構築したダッシュボードの機能改善で引き続きご支援していきたいと考えています。弊社のサービスを使って見える化し、手順化に役立てていただくなど、さまざまな形でお手伝いができるのではないかと思っています。
—— 続いて、トヨタ自動車の皆さまからもぜひお願いします。
Backlogを見れば、部内全体の業務進捗やメンバーの状況がすぐに把握できるので、今後はさらに効率の良いタスク配分や知見の蓄積に活かしていきたいと考えています。Backlogの情報やデータを参照することで担当者本人の納得感も高まり、社員のモチベーション醸成や部署全体の活性化にもつながると期待しています。
今後の課題は我々の目指す姿を実現するためにも、工数見積もりの精度を高めていく必要があります。そのために運用ルールをブラッシュアップして、それが仕事のスピードと質向上、コミュニケーションの活性化に繋がれば良いですね。
Backlogは、業務の効率化はもちろん、組織運営自体も助けてくれるツールだと感じています。トヨタ自動車が大切にする「カイゼン」やトヨタ生産方式とBacklogは非常に親和性が高いので、これからも活用の幅を広げていきたいと思います。
—— 貴重なお話をありがとうございました!
※掲載内容は取材当時のものです。