エクセルからBacklogへ。日本の国土交通政策を支えるJICEが挑む、組織を超えたプロジェクト管理効率化

一般財団法人国土技術研究センター(JICE)

Backlog導入前の課題

・エクセルでのタスク管理は更新の手間が大きく、進捗管理が負担になっていた
・組織を超えたやり取りがメール中心で、前提の説明や心理的な障壁がコミュニケーションコストを押し上げていた
・2、3年おきの人事異動で担当者が入れ替わるなか、プロジェクトの経緯やナレッジを引き継ぐ仕組みが十分ではなかった

Backlog導入後の効果

・ステータスと期限を入力するだけで進捗が自動的にビジュアル化され、会議の場でリアルタイムな共有・更新ができるようになった
・タスク単位で会話が完結する仕組みにより、コミュニケーションがスムーズになった
・タスクごとにやり取りが蓄積されることで、メンバー交代後も経緯を辿れるナレッジ基盤の土台ができつつある

国土交通政策の社会実装を技術面から支える一般財団法人 国土技術研究センター(以下、JICE/ジャイス)。同団体は、組織を超えたプロジェクト管理の効率化を目指し、Backlogを導入しました。国の政策をサポートする組織は、なぜBacklogの導入に踏み切ったのか。その背景にある課題とともに伺いました。

政策の社会実装をデザインする組織が、タスク管理に抱えていた課題

── まずはJICEがどのような組織なのか、お聞かせください。

JICE(ジャイス)は国土交通政策の「先導と補完」をミッションとしており、技術的な調査研究を通じて、政策の実装を支援する組織です。政策が定まると、具体的な施策になっていき、基準やガイドライン、データベース、認証制度や評価制度という形で社会実装されていきます。そのシステム全般をデザインしていくのが、私たちの大きな役割です。

── 技術・調達政策グループでは、どのような領域を担当されていますか。

公共土木工事の技術開発や公共調達のルール、土木構造物の品質管理や、基準類の整備などを担当しています。昨今はDXに関連する業務も増えています。

全国の公共事業のデータは数万件に上りますから、扱うデータは膨大です。工事だけでなく、受注企業の情報も含めて分析し、現状のトレンドを把握しながら、今後の政策を検討しています。データを整備し、意思決定に活かしていく、いわゆるデータドリブンの重要性は、日々の業務のなかで実感してきました。

── Backlog導入前は、どのように日々の業務を管理していましたか?

エクセルなどの表計算ツールでガントチャートを作り、それぞれの担当者が、いつまでに何をやるかをまとめて、定例ミーティングで進捗管理をしていました。ただ、項目が多くなると、進捗を更新するだけでも大変になってきます。

加えて、2、3年おきに人事異動があるので、プロジェクトメンバーがその都度入れ替わります。経緯が分からなくなってしまわないよう、業務管理をいかに持続可能なものにするか、という課題は常にありました。

一般財団法人国土技術研究センター(JICE)早川氏

一般財団法人国土技術研究センター
技術・調達政策グループ 総括
早川 潤 氏

「使わないと分からない」。30日間の無料トライアルから、シームレスに本導入へ

── Backlogを知ったきっかけを教えてください。

国土交通省のBIM/CIM* 推進委員会の公開資料で調査設計段階での情報共有や引継ぎ、さらにはプロジェクトが計画通りに進むように監督・管理する業務において、Backlogが活用されていました。

国土交通省の本省からも、プロジェクト管理の仕組みづくりに関する問題提起があり、私たちの実務でもタスク管理は不可欠ですので、自分たちで使って効果を検証しようと導入を決めました。30日間の無料トライアルを経て、すぐ本契約を申し込みました。

* BIM/CIM:3次元モデルなどのデジタルデータを活用して、建築・土木プロジェクトの計画・設計・施工・維持管理を効率化する取り組み

── 「トライアルを始めよう」のステップに、なかなか踏み出せない企業・組織もあるなかで、迅速な判断をされたのですね。

新しいツールやサービスは、まずはどんどん使ってみることが大切だと考えています。ツールが自社やメンバーに合うかどうかは、使ってみないと分かりませんからね。

Backlogは価格設定もリーズナブルなので、内部の承認手続きもスムーズに進みました。

── プロジェクト・タスク管理ツールに初めて触れる方も多かったと思います。皆さまの反応はいかがでしたか?

「感覚的に使える」というのが第一印象でした。まずは身の回りの「やらなければいけないこと」を切り出して、ずらっと並べて始められます。自分の業務の棚卸しから、無理なく使うことができました。

それから、土木の現場で見慣れたガントチャートと、システム開発で使われるカンバン* を、ビューの切り替えで行き来できるのもよかったですね。前々から、システム開発のようなプロジェクト管理を建設分野でもやるべきだと思っていたので、非常にしっくりきました。

* カンバン(ボード):タスクを「未対応」「処理中」「完了」などの状態ごとに並べ、進捗をひと目で見渡せる管理手法。Backlogでは「ボード」機能として搭載しています。

人によって差はあれど、トライアルのなかで自然体で使っていけたので、そのまま本導入までシームレスに移行することができました。

JICE ガントチャートの画面

ガントチャートでタスクの進行状況を可視化

定例会の進捗管理から重要文書の叩き台まで。情報の集約点としてのBacklog

── 本導入から約2か月、現在はどのようにBacklogを活用されていますか?

活用の中心は定例会での進捗管理です。会議でBacklogの画面を共有しながら、「このタスクはどうですか」「これはいつから始めますか」と、その場でステータスを更新しています。会議資料の共有にもBacklogを使っていますね。

これがエクセルだと、ファイルを作って、送ってと、ひと手間かかってしまいます。それにエクセルは、セルのレイアウトやマクロを作り込む「エクセル職人」を生んでしまいがちですが、注力すべきはそこではないはずです。

Backlogは、わかりやすく固定された「器」として用意されていることが、良さの一つだと思います。

── 運用の効果を実感している業務があれば、教えてください。

毎年決まった時期に公共工事関係のデータが集まってきて、いつまでにまとめる、いつまでに分析するという、ルーチンになっている業務があります。こうした業務では、パートナーの担当者にもゲストアカウントを提供し、共通の期限を設定して効率的な管理ができています。エクセルから移行したメンバーからは「非常にやりやすい」という声が上がっていますね。

一方で、仮説を立てて検証し、場合によっては方向性がガラリと変わる探索的な業務では、タスクの切り方に苦労しています。検討が固まってくればスムーズに回り始めると思いますが、どういう粒度でタスクを設定するかは、まさに試行錯誤しているところです。

一般財団法人国土技術研究センター(JICE)亀山氏

一般財団法人国土技術研究センター
技術・調達政策グループ 研究員
亀山 武士 氏

── 組織を超えてBacklogを活用されているのですね。

ジョイントベンチャーで同じプロジェクトを進めるチームや、クライアントである国土交通省の方に参加いただいているプロジェクトもあり、全体ではアカウントは90名ほどになりました。

これまでメールでやり取りしていたファイルや情報が、Backlogに集約されてきています。メール以外の選択肢ができたことで、コミュニケーションの心理的な障壁は確実に下がっていると感じます。

── ほかに活用している機能はありますか?

ドキュメント機能は、計画書のような重要文書の叩き台づくりに使い始めました。複数人でのレビューがBacklog内で完結しますし、何より、ファイルが増殖していかないのがいいですね。

それから、「プロジェクトメンバーならまず知っておいてほしいこと」といった文書を用意することで、新しいメンバーが来たときの説明を簡略化できると考えています。

JICE ドキュメント機能

ドキュメントに必要な項目を記載し、情報を整理

── Backlogの使い方については、書籍『Backlog活用大全』をお読みいただいたと伺いました。

基本がまとまっているので、重要なページには付箋を貼りながら、参考書籍のように活用していました。マイルストーンの使い方や、カテゴリーをどう分けるべきかなど、本のなかのユースケースを参考に進めています。

プロジェクトマネジメントの力を、より多くの現場へ

── あらためて、エクセル中心だった頃と比べて、どのような効果を感じていますか?

Backlogの活用によって、進捗の可視化にかかる負担が大きく減ったと感じます。以前はエクセルのガントチャートを手動で調整して管理をしていましたが、Backlogであればステータスや期限を入力するだけで、進捗が自動的にビジュアル化されます。

コミュニケーションのコストも下がりました。チャットやメールで何かを依頼するときは、まず「何の話をしているか」という前提の説明から入らなければなりません。しかしBacklogはタスクごとに会話がまとまっているので、その説明を省いてすぐ本題に入ることができるんです。

── 「人事異動でプロジェクトの経緯が引き継がれにくい」という課題にも効果を発揮しそうですね。

タスクごとにやり取りが残っているので、経緯を後から辿れるのはいいですね。導入からまだ日が浅いので、蓄積が進めばナレッジベースとしての価値はさらに見えてくるはずです。

私たちの業務では、意思決定の根拠を残すことが非常に重要です。誰が、何を根拠に決めたのかを構造化して残していくことが、ナレッジになり、プロジェクトの後戻りを減らすことにもつながります。生成AIの活用が進むほど、AIに読み込ませるデータをどう整備するかが重要になってきますから、Backlogを使いながらそうしたトライアルもしていきたいと思います。

一般財団法人国土技術研究センター(JICE)

── 最後に、Backlogのようなデジタルツールが、建設分野でどのような価値を持ち得るか、お考えをお聞かせください。

建設分野の土木事業においても「プロジェクトマネジメント」の重要性は認識されていますが、実際の方法やレベルにはバラつきがあります。経験豊富なマネージャーであれば、自分なりの段取りや勘所で回すことができます。しかし、そのような人材ばかりではないのが実情です。

一番大切なのは、より多くのメンバーが一定のレベルでプロジェクトマネジメントができる環境を整えることだと思います。それが全体の底上げにもつながりますからね。

プロジェクトマネジメントは本来、経験に裏打ちされた高度なスキルです。しかし、Backlogのようなツールがあれば、それを自然に使うこと自体が、プロジェクトマネジメントの入り口として機能してくれると思います。

── JICEの皆さまの実践を通じて、プロジェクトマネジメントの底上げにつながっていくことを願っています。本日は貴重なお話をありがとうございました!

※掲載内容は取材当時のものです。

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