創業80年超の映像コミュニケーションカンパニー「IMAGICA Lab.」のBacklog活用術【週5時間の定例会議を0時間に削減】
Backlog導入前の課題
■ 各種映像関連制作特有の「業務の属人化」と「作業負荷の偏り」を解消したい
■ 週5時間の定例会議を減らしたい。会議の時間を報告の場ではなく「議論の場」にしたい
■ 電話やメールなどのアナログなタスク管理を改善したい。チームや部内のナレッジやプロジェクト情報の共有を効率化したい
Backlog導入後の効果
■ Backlogでタスクを可視化して、週5時間の定例会議を0時間に削減
■ BacklogAPIを活用して個人の業務の負荷を自動で可視化
■ プロジェクト管理表 / ガントチャート作成に費やしていた不要な時間を97%削減
■ Backlog Wikiで部門をまたいだ、シームレスな情報共有、ナレッジシェアを実現。社員の自律化に貢献
創業80年を超える、映像コミュニケーションカンパニーの「IMAGICA Lab.」では、Backlogを260名規模で活用しています。映像制作特有の「業務の属人化」と「作業負荷の偏り」を解消し、電話やメールに依存したタスク管理を改善したいと考えていた同社。
Backlog導入により、個人業務の負荷を自動で可視化して、週5時間の定例会議を0時間に削減、プロジェクト管理表やガントチャート作成に費やしていた時間を180分から5分に削減して不要な時間を97%削減した同社の「働き方改革」事例をご紹介します。
■プロフィール(写真左から)
- 水上幸則(みずかみゆきのり)エンターテイメント事業本部 デジタルネットワークグループ課長
- 蜂須賀大貴(はちすかひろき)研究開発本部 技術開発室
- 加藤欧一郎(かとうおういちろう)研究開発本部 開発営業部 映像マーケティンググループ課長
目次
創業80年超の映像コミュニケーションカンパニーIMAGICA Lab.が取り組むITツールの活用
ーーIMAGICA Lab.の事業概要について教えてください。
加藤欧一郎(以下、加藤):IMAGICA Lab.(イマジカラボ)は1935年にフィルムの現像を目的とした商業ラボとして設立された映像技術サービス会社です。
映像の会社というと、企画・制作が想起されがちですが、弊社のメイン事業は、プロデューサーや監督が企画・演出した映像作品が世に送り出される前の最終仕上げをする、ポストプロダクションと呼ばれる各種映像技術サービス、およびシステム開発です。
具体的には、映画・TV番組・CM・PR等における映像編集(テロップ入れやノイズ除去など)や音声編集(MAと言われる音声仕上げ)、フィルム素材の現像や4K変換、CGやVFXなどがあります。
水上幸則(以下、水上):私が所属するデジタルネットワークグループでは、完成した映画やドラマ、バラエティ、アニメといった映像をスマートフォンやパソコンなどでも視聴できるようなデジタル処理やファイル変換、吹き替えや字幕などの海外へのローカライゼーションなど流通の部分もサービスとして提供しています。
ーーIMAGICA Lab.はプロジェクト管理にBacklogをご利用されているそうですね。
蜂須賀大貴(以下、蜂須賀):はい。開発部門、映像制作部門、営業部門、総務部門、人事部門など、全社的にBacklogを利用しています。部署を横断したプロジェクトの進捗管理から、社外のベンダーとのコミュニケーションまで、幅広い用途で利用しており、導入から1年でアカウント数は260名以上になり、今では弊社の基幹システムになりつつあります。
映像関連業界がプロジェクト管理に注目している理由
ーーそもそも映像関連業界ではプロジェクト管理、タスク管理は浸透しているのでしょうか?
水上:制作の現場では、基本的に電話やメールといった即時性のあるツールで連絡を取り合うことが多く、全体を俯瞰したプロジェクト管理、タスク管理をチーム全体で共有する、というのはまだまだ一部でしか行われていないように思います。
加藤:理由として、映像制作は非常にクリエイティブな領域なので、事前にすべてのタスクを見込んでプロジェクトを立てるというのが難しいという背景があります。例えば、番組制作などは突然別の素材が入り込むこともありますし、差し替えなども発生することもあります。
加えて、映像制作の現場には優秀な方も多く、制作スタッフが1人3役対応する、ということもざらにあります。個々人が経験豊富なので、タスク管理をわざわざしなくても現場が回るという側面もありますね。
蜂須賀:現場の方は「プロジェクト管理」という言葉を知らなくても、感覚的にプロジェクト管理に相当する業務が求められます。だからこそ、プロジェクト管理ツールがあるのを知らない、「プロジェクトマネージャー」という役職があるのを知らない、といった状況が起きているのかなと。
ーーそうした背景があるなかで、プロジェクト、タスク管理がなぜ注目されているのでしょうか?
加藤:理由としては、昨今の「働き方改革」の流れで、映像業界としても個々人の仕事をより効率化して、改善していきたい、と考えるようになったのです。
経験豊富な方の知恵でまわっていた映像制作の現場のタスクをきちんと可視化して、人に依存しないような仕事の進め方をする、そして組織全体に知恵を共有する、という目的で弊社をはじめとした、映像業界でもプロジェクトやタスク管理ツールの重要性が増しています。
IMAGICA Lab.流「働き方改革」にはBacklogが欠かせない
ーーIMAGICA Lab.でも働き方改革の流れでBacklogの導入が進みましたね。
蜂須賀:はい。弊社でも「業務の属人化を解消する」という目的で、Backlogを導入しました。タスクに対する重み付けは個人によって変わるので、そこをちゃんと可視化して足並みを揃えないと働き方改革のスタートラインに立てない、と考えたんです。
そこで「ワークシェアの促進」と名付けて、BacklogAPIを活用して業務の予測や実績を可視化したり、毎朝昨日やったことの共有と今日やることの洗い出し、週次の振り返りをしています。
ーー現在はBacklogを全社導入していますが導入前の課題について教えてください。
蜂須賀:当初はRedmineなどのタスク管理ツールを開発部門で先行して利用していましたが、映像制作部門、営業部門など非開発職の部署と共同で進めていたプロジェクトで、利用が浸透しなかったのです。
それでGoogleスプレッドシートに切り替えたのですが、プロジェクト開始前にスプレッドシート作成だけに3時間も費やしており、こちらも利用が浸透せず......。
そこで、開発部門と一部の営業部門でBacklogをスモールスタートさせたところ「これは使いやすい」と声が上がりじわじわと他の部門にも広がっていき、導入から1年で260名以上の利用になりました。
プロジェクト管理表やガントチャート作成に費やした不要な時間を97%削減
ーー導入後の定量的な効果について教えてください。
蜂須賀:Backlogを導入したことで、180分かかっていたGoogleスプレッドシート作成がBacklogのプロジェクト申請の5分に短縮できました。
Googleスプレッドシートを作るときは、タスク項目の作成や、ガントチャートの作り込みなどがあったのですが、Backlogは課題を追加する、のボタンを押せば自動でタスクが登録されて整理されます。さらに、ガントチャートも自動で生成されます。時間の効率化を実現できましたね。
週5時間の定例会議を0時間に削減!タスクの可視化による効果
ーー会議の進め方はBacklogで効率化されましたか?
蜂須賀:開発部門と制作部門の例でいうと、以前はタスクの進捗を確認するためだけの打合せが週5時間以上は発生していましたが、Backlogでの課題更新と通知メールによる把握で進捗確認のみの定例会議はほぼ0になりました。さらに、開発部全体で毎週150時間発生していた定例会議も大幅に効率化できました。
加藤:Backlogを導入してタスクを可視化できるようになったことで、営業部門でも会議の定義自体を変えることができました。ただ情報共有をするだけの場が「決定すること」「課題を解決する場」になったのは大きな改善効果ですね。
ーー業務の属人化という課題は解決できましたか?
水上:制作部門でも開発部門の成功事例をみて、Backlogの導入を進めました。私の部門は40名程スタッフが在籍しているのですが、業務の属人化とナレッジの共有の2つに課題を感じていました。
1つめの業務の属人化は、チーム内の作業負荷の偏りが課題でした。以前はメーリングリストを活用して進捗を共有していたので、タスクの担当者や進捗状況が可視化されておらず、一部のスタッフに作業負荷が偏ったまま、業務がなかなか進行しないことがありました。
Backlogの課題を活用して担当者や進捗状況を可視化し、進捗をコメント欄に記録することで、誰に負荷が偏っているのかや、何が原因で進んでいないかが一目で把握できるようになり、組織として業務を進めることができるようになりました。
2つめのナレッジの共有では、各スタッフが持っている知見やプロジェクトのゴールなどをストック情報として組織で共有したいという狙いがありました。
Backlog Wikiを活用しているのですが、後からプロジェクトに参加したメンバーへの情報共有を効率化でき、スタッフが自律的に動けるようになりました。また、お客様からいただいた要望やその対応も共有することで、組織のナレッジとして業務に活かすことができています。
営業の現場でもBacklogによるナレッジシェアを促進
ーー営業部門でもBacklogを使ってナレッジ共有をしているそうですね。
加藤:はい。営業部門では自社サービスの問い合わせ対応や案件管理で一部Backlogを利用しています。私が参加している、あるプロジェクトでは上は57歳、下は24歳と年齢、業種、専門分野が異なるのですが、Backlogのデザインは誰でも使いやすく簡単なので、背景が違うメンバーでも円滑に「知の共有」ができています。
また、メールと違って進捗を細かに記録して可視化できるので、営業のワークフロー(問い合わせ、見積もり、受注、失注)を記録する習慣を身につけるのにも最適なのではと感じます。実際Backlogを使って、営業に関する無駄な作業を省いて業務が効率化できたと感じます。
ーー営業部門へのBacklogの浸透スピードは早かったですか?
加藤:はい。最初はBacklogは開発部門起点で社内への浸透が進みましたが、徐々に営業部門のメンバーからもBacklogをゼロから教えて欲しい!と開発部門にリクエストが来る事が増えて来ました。
Backlogのデザインや操作がとてもわかりやすいという点に加えて、IMAGICA Lab.のカルチャーとして、新しい物好きで試したがり、みたいな側面があるからだと思います。
各種映像関連事業に従事する存在として働き方改革とどう向き合うか
ーーIMAGICA Lab.はBacklogを使って全社的に働き方改革に向き合っていますが、今後映像業界のプロジェクト管理をどのように変えていきたいですか?
蜂須賀:映像業界は職人、クリエイターの色が強い世界です。従来のような属人化する仕事の進め方は、良くも悪くも、世の中の流れに通用しないこともあります。それらをすべて解決するのは難しいですが、タスク管理や可視化、情報共有がその1歩目として大切だと考えています。
ツールを使って働き方改善や新しい習慣を取り入れたりするためには、ツールの浸透と文化の育成を同時並行で進めていく必要があります。
ツールを使ってタスクを可視化して、どう改善していこう、一人当たりの作業量を増やしていこう、という議論ができるような文化が根付いて欲しいですね。そうすることで真の働き方改革が実現できるはずなので。
水上:制作の現場でもツールを活用することで、技術力や制作者としての強みをより活かせると考えています。デジタルネットワークグループでは、年間約20万もの映像配信ファイルを作成していますが、内訳を見ると、ファイルを制作する時間よりも、コミュニケーションや情報整理が工数の大半を占めています。
Backlogなどのツールを活用することでこれを効率化できれば、クリエイティブなことに時間を割くことができ、制作部門の働き方も変わり、他社と差別化できるようなサービスの創出につながると思います。また当社のお客様に対しても、こういったツールをご提供させていただくことで、同様の効果を上げることができると考えています。
ーーIMAGICA Lab.のBacklog活用は今後の事業展開にも大きな影響を与えそうですね。
加藤:そうですね。YouTubeや映像加工技術の進化にともない、専門的な知識がなくても、個人がクリエイターになれる時代になりました。そうした背景のなかで、IMAGICA Lab.としては、優秀な「クリエイター」人材を確保することが大きな課題です。
その解決策として、Backlogなどのプロジェクト管理ツールやクラウドツールを活用することで、先端的なことに取り組んでいるという「ブランディング」をしていきたいと考えています。加えて、プロジェクトや会議など、社内業務の生産性を高めることで、100%のアウトプットを120%に引き上げていき、働きやすい環境も整備していきたいと考えています。
これは、営業、制作現場、開発など、全員で意識を高めていくことが必要ですが、Backlogはそのコミュニティとして、欠かせない存在になると思います。
※掲載内容は取材当時のものです。