NTTドコモ10,000名のアカウント運用をBacklogで効率化–Backlogエンタープライズ活用事例
Backlog導入前の課題
■ Backlogクラウド版は新規ユーザーのアカウントの発行申請から実際の利用まで1ヶ月のリードタイムを要していた
Backlog導入後の効果
■ 自社セキュリティで運用することで平均1ヶ月かかっていたリードタイムを1営業日に短縮。■ Backlog APIを使ってアカウント発行を自動化
NTTドコモは、10,000名もの規模で「Backlogエンタープライズ」を全社的に導入しています。社員だけでなく外部ベンダーも交えた大規模な利用は、エンタープライズ版が最適。全ユーザーのアカウント管理や運用を任されている同社イノベーション統括部ご担当者に、Backlogクラウド版からエンタープライズ版に移行で、運用管理コストがどのように削減されたのか導入事例をお伺いしました。
2019年5月追記:プレスリリースでお知らせした通り、 以前の利用人数「2600名」の記載を最新の利用人数である「10,000名」に変更しました。
―――貴社の事業概要について教えてください。
森谷 優貴氏(以下、森谷):イノベーション統括部は、R&D部門の管轄で、主に新規事業の立ち上げなどを行なっています。その中で我々は、クラウドを用いたコストの削減やシステムの最適化など、社内業務の最適化を図る部門です。社内で培ったノウハウは、「Cost Visualizer」「docomo cloud package」という、ライセンス製品として、社外に販売しています。Backlogは、イノベーション統括部で運用をしていますが、社内外で進めている各種プロジェクト管理に活用しています。
目次
外部ベンダーと社員のアカウント管理・運用を効率化するためにBacklogのエンタープライズ版を活用
―――NTTドコモ様でのBacklogのご利用状況について教えてください。
森谷:現在、Backlogエンタープライズ版はNTTドコモおよびその関係会社を含め10,000名規模で利用されており、ユーザー数は軒並み増加傾向にあります。プロジェクトの作成はイノベーション統括部で実施しています。他にベンダーのIP制限の解除や、ユーザーの削除など行なっており、BacklogのAPIを使って自動化するようにしています。ユーザーとしては社内SaaSアカウントの払い出しフロー管理等で利用しています。
守屋 裕樹氏(以下、守屋):アカウントの払い出しという観点での利用方法でいうと、イノベーション統括部はBacklog以外にもさまざまな共通基盤を作っており、アカウント払い出しのフローは定型化しています。アカウント払い出しは、決裁者の承認から、その後のどういう権限をだれに払い出すかという一連の流れを、すべてログとして残す必要があります。 そのフロー管理とログの記録をBacklogで行っています。具体的に言うと、ユーザーからアカウントの払い出しの依頼があった際は、決裁者を課題担当者とした課題を作成、決裁者がチェックして承認するならコメントと共にアカウント管理者を課題担当者に指定、アカウント管理者がアカウントを払い出して課題を完了、という流れで利用しています。
―――Backlog クラウド版からエンタープライズ版へ移行することになった経緯を教えてください。
森谷:Backlog自体は2013年から使っており、当初はクラウド版を使っていましたが、2016年12月からエンタープライズ版へ移行しました。エンタープライズ版へ移行したのは、複数の部門ごとに結んでいた契約を一元化して、管理を効率化したかったことがきっかけです。他にも、アカウントの払い出しのログ管理に、以前はエクセルやメールを使っていたのですが、Backlogを使うことで効率化できると思ったのです。
Backlogの社内申請から利用開始にいたるまでのリードタイムを1ヶ月から1営業日に短縮!アカウント運用を改善
―――クラウド版からエンタープライズ版へ切り替えたことでどのような効果がありましたか?
森谷:クラウド版よりも気軽に使い始められるということで、社内のBacklogユーザーが増えました。これはBacklogに限ったことではないのですが、SaaSやクラウド系のサービスは、ログの取得、アカウント管理、運用の3点が必須です。エンタープライズ版でアカウントを一括管理できるようになったことで、これらの必須業務を当事業部で管理、運用できるようになりました。そのため、各部門のメンバーはプロジェクトに紐づく作業に集中できるようになりました。
神崎 由紀氏(以下、神崎):Backlogのような共通基盤系のサービスを使いたい方は、1週間後ではなく、今すぐに使いたい!という方が多いんです。でも、弊社の場合はクラウド版だと一から自分で始めようとすると、社内手続きで時間と労力がかかってしまう。そこを半減できるのがエンタープライズ版の魅力ですね。
守屋:アカウントの払い出しにかかっていた時間を大きく削減できました。クラウド版の利用は社内申請や審査など複数の手続きが必要でした。申請から利用開始まで、平均して1ヶ月はかかっていましたが、1営業日まで短縮することができました。利用後のログの管理についても、クラウド版はベンダーによってログを出してもらえないところがあり、その調整にかかっていたコストも削減できました。
森谷:弊社のようにすべてを内製している訳ではない企業にとって、ベンダーとのやりとりなどのログをすべて自社管轄で管理できるのは、セキュリティ的にもメリットがあると感じます。
―――クラウド版からエンタープライズ版に移行するにあたって、課題はありましたか?
神崎:Gitやファイルなどの既存のデータをエンタープライズ版にどのように移行するかが課題でした。Backlogのプロジェクトなどの課題は、すべてデータベースに入っていますが、Gitやファイルはすべてサーバー側に入っていたのでそれを移行するのが難しかったです。
森谷:これは現在進行形ではありますが、社内で一部クラウド版が使われていたり、過去に各プロジェクトで個別利用したりしていたBacklogエンタープライズ版のデータを全体的に統合したいです。データのコンフリクトが起きる可能性があるというのは理解しているのですが、何か良い方法で統合できないかなと考えています。
ヌーラボ 中村:既存のBacklogスペースのデータを移行できる「Backlog移行ツール」を提供しています。このツールは、元のBacklogデータを新しいプロジェクトに移行できるので、社内で使われているものに、プロジェクトとして取り込むことはできます。ただ、ファイルなどの移行は現状だとWebDAVを使っていただくしかなさそうですね。
―――エンタープライズ版を導入した際の運用はどのように進めていましたか?
森谷:導入当初は、ユーザー権限のみを開放しアカウント作成の部分もイノベーション統括部で行なっていました。 理由としては、プロジェクト管理者まで開放してしまうと、プロジェクトIDが勝手に変えられてしまったり、ユーザーの大量追加によるライセンス超過問題が起きたりすることを懸念していたためです。 当初は控えめに権限を開放していましたが、ユーザーやプロジェクトに関わるすべてを当部で管理するのは大変なので、調整を重ねつつ、プロジェクト管理を各部門に開放していくようにしました。 一番懸念していた、新規ユーザーの大量登録によるライセンス超過問題は、BacklogのAPIを使って全体のユーザーのカウントやプロジェクトごとの参加者をモニタリングする機能を作って、自動検知をするようにしています。超過しそうな場合は、Backlog上で課題を作成して、私たちに通知が飛ぶようにしています。
―――Backlog APIを活用して管理を自動化する場面は多いですか?
守屋:先述のライセンス超過の自動検知に加えて、プロジェクト管理者を社員以外に設定した場合の自動検知にもBacklog APIを使っています。 プロジェクト管理者は権限が強いため、基本的には社員にのみ割り当てられるようにしています。ただ、社内に常駐している外部ベンダーの方がプロジェクト管理者になることもあるため、その場合はメールアドレスのドメインを利用して、社員以外のドメインがプロジェクト管理者に割り当てられた場合に検知して、課題を自動登録するようにしています。その課題は、当部の担当者でチェックするようにしています。 APIは基本的に、事前チェックや検知のアプローチで使っています。最長で24時間以内にメールが上がってチェックをするような形で運用しています。
森谷:他のBacklog APIの活用例としては、年に1000件発生するAWSのアップデートをBacklogの課題に自動で登録するようにしています。登録された課題を担当者が対応するかしないか判断しています。
コスト管理やセキュリティなど、利用規模が大きいからこそ抱く懸念点をエンタープライズ版は解決してくれる
―――エンタープライズ版とクラウド版の管理形態の違いなどはありますか?
森谷:エンタープライズ版はユーザー数課金なので、コスト管理がしやすいです。クラウド版は、スペース課金なので、複数の部署でひとつのスペースを利用する場合に、どちらの部署でどれくらい利用しているのかがわかりづらくなります。 一方で、エンタープライズ版は、プロジェクトに参加しているユーザー数でコストを割り出せるため、費用の割り当てがしやすくなりました。スペースをひとつにしてコスト管理までしようとすると、単体で管理するクラウド版よりも、エンタープライズ版の方が向いていると思います。 他にも、ベンダーのスペースで管理するのではなく、NTTドコモ側で情報を管理できるのもメリットのひとつですね。ベンダーと進めているプロジェクト管理は一括して弊社のスペースでできるようになったので、情報面でのセキュリティ管理がしやすくなりました。
―――エンタープライズ版を勧めたいひとはどんなひとですか?
森谷:管理を一元化したい方に勧めたいですね。クラウド版は、費用面から部門や担当が個別に契約することが多く、管理が煩雑になります。また担当者が、管理部門の許諾なく、独自にクラウドサービスの利用を始める例も増えていますが、その防止にもつながります。他にも、人事異動などで、大量のユーザー登録の変更が発生する場合にもアカウント管理がしやすいと思います。 セキュリティに不安がある方にもお勧めです。例えば、Struts2の脆弱性がでたときに、Backlogに影響があるのではないか?という声がユーザーから上がりました。結局Backlogには影響がありませんでしたが、エンタープライズ版は、こうしたセキュリティの問題や万が一の事故が起きたときにも即座に対応できます。さらに、ユーザーへの説明などもしやすいので、そういった懸念がある方には最適だと思います。
守屋:大手企業だと社外アクセスを禁止されている会社が多く、クラウド版が使えない企業も多いと思います。そういった環境下でもBacklogを使いたい場合の選択肢はエンタープライズ版になるのかなと思います。
神崎:機能的には、クラウド版の方が進んでいると思う部分が多いですが、エンタープライズ版は、自分で管理したい人にとっては最適だと思います。
―――今後の活用計画を教えてください。
森谷:社内でのBacklog利用が平常化してきたと感じています。いまは口コミベースで利用を増やしているので、今後はBacklogの全社的な利用を視野に入れています。その取り組みの一環として、各プロジェクトを統合できる、Backlog移行ツールのようなツールを活用していきたいです。
守屋:Backlog の運用ノウハウを社内で配信していくような取り組みをしていきたいです。BacklogはUIがわかりやすく、開発者以外でも活用できます。そうした特徴を活かして、エンジニアだけで構成されていない、事業部にも活用の幅を広げていきたいです。
神崎:ステータス管理、プロジェクト進捗管理にもBacklogを活用しています。今後求めるのは、視覚的な効果としてカンバンのような機能を使えたら、良いと感じています。
—— ありがとうございました!
※掲載内容は取材当時のものです。