プロジェクト管理は「学んでから」より「Backlogを使いながら」。総合建設会社が選ぶDXへの近道

Backlog導入前の課題
・案件ごとに仕事の進め方や管理方法が異なり、全体の進捗状況を把握するのに手間がかかっていた
・依頼はチャットが中心で、過去のやり取りや対応経緯を確認するのに手間がかかっていた
・メンバーそれぞれの経験や専門性が異なるため、誰もが取り組みやすいプロジェクト管理の方法が必要だった
Backlog導入後の効果
・「誰が・何を・どこまで進めているのか」が見え、仕事の経緯が記録として残るようになった
・課題の依頼から完了まで、プロジェクト管理の流れがBacklogの利用を通じてメンバーに浸透しつつある
・Nulab Passでシングルサインオンを実現し、統制の効いた状態で使えるようになった
DXに注力する総合建設会社、矢作建設工業株式会社。同社のデジタル推進グループは、Backlog・Cacoo・Nulab Passの3サービスを同時に導入し、「使えば身につく」プロジェクト管理を実践しています。使い方そのものをBacklogの課題として覚えるオンボーディングは、導入からわずか3か月で、チームにどのような変化をもたらしたのでしょうか。
目次
ツールを使うこと自体が、プロジェクト管理の実践になる
── 御社の事業と、デジタル推進グループの役割についてお聞かせください。
矢作建設工業は、建築・土木・不動産を中心に事業を展開する総合建設会社です。施工後の維持管理やリニューアルも含め、建物や社会インフラのライフサイクル全体に関わっています。
現在はDXにも注力し、これまでの経験やノウハウを活かしながら、データも判断材料として活用できる組織を目指しています。そのために全社的なDXを推進しているのがデジタル推進グループです。
── Backlog導入前には、どのようなお悩みがありましたか?
デジタル推進グループは、若手社員から中途採用者までさまざまなメンバーがおり、それぞれの経験や専門性も異なります。仕事の進め方も案件ごとに異なっていたため、グループ全体の進捗状況を把握するのに手間がかかっていました。また、日々の依頼はチャットツールが中心でしたが、過去のやり取りや対応経緯を確認するのにも手間がかかっていました。
── そうした課題を、どのように解決しようと考えたのですか?
いきなり「WBSを作りましょう」「PMBOKに沿って管理しましょう」と呼びかけても、実践は難しいと思いました。
そこで目指したのが、専門的な管理手法を学んでから業務に反映させるのではなく、「ツールを使うこと自体を通じて、プロジェクト管理の進め方が身につく体制」づくりです。Backlogに沿って仕事を進めていけば、タスクの整理や進捗管理などの基本を自然と実践できる。そんな状態を狙いました。
※WBS(Work Breakdown Structure):プロジェクトの作業を細かく分解し、階層的に整理する手法
※PMBOK(Project Management Body of Knowledge):米国のプロジェクトマネジメント協会(PMI)がまとめた、プロジェクトマネジメントの国際的な知識体系

矢作建設工業株式会社
エンジニアリングセンター
デジタル推進グループ 係長
濱田 正悟 氏
── その体制を実現するためのツールとして、Backlogを選定された理由を教えてください。
重視したのは、機能の多さではなく、「社内に展開したときの運用のしやすさ」と「統制の取りやすさ」です。
たとえば、きっちりとした承認ワークフローを組むようなツールだと、毎年の人事異動のたびに承認ルートを設定し直さなければならず、メンテナンスがとても大変です。
それなら、Backlogのように「人から人へ直接タスクを渡す」仕組みのほうがスムーズだと考えました。Backlogなら、必要な管理は行いながら、日々の運用にかかる手間を抑えられますからね。
また、UIが非常にシンプルで、ほかの部門に広げやすいと感じたことも決め手でした。
BacklogとCacooを、Nulab Passでシングルサインオン化
── Backlogの導入と併せて、弊社が提供する「Cacoo」と「Nulab Pass」も導入いただきました。3サービスを同時導入されたのはなぜでしょうか?
Backlogは「タスク管理」、Cacooは「情報の可視化」、Nulab Passは「認証・統制」と役割が明確に分かれているので、同時に導入しても機能がバッティングしにくいと考えたんです。
料金体系も後押しになりました。Backlogはユーザー数に応じた従量課金ではない*ので、利用者が増えても年間のコストを見通しやすいんです。3サービスを合わせても、費用面で導入しやすいと感じました。
* Backlogはプランによっては人数制限があります。CacooとNulab Passはアカウント数に応じた料金体系です。詳しくは各サービスの料金プランをご確認ください。
※Cacoo(カクー):ブラウザ上で図やダイアグラムを作成・共有できるオンライン作図ツール。複数人での同時編集にも対応している。
※Nulab Pass:BacklogとCacooのセキュリティ・管理機能を強化する、ヌーラボのセキュリティオプションサービス。一度の認証で複数のサービスにログインできる「シングルサインオン」や監査ログの取得、アカウントの一元管理などができる。
── Cacooには、どのような役割を期待されましたか?
システム構成などを図解して、打ち合わせ参加者の認知負荷を下げることです。以前は、パワーポイントでサーバーやパソコンの画像を探して貼り付けていましたが、Cacooならブラウザですぐに使えて、構成図に使うアイコンもそろっています。
実際、あるサーバー案件の費用按分について上司や財務部と打ち合わせたときは、「こういう按分の仕方をしたい」という図をCacooで作って臨みました。経緯や考え方は、文章だけで伝えるより、図解したほうが共通認識をつくりやすいと思っています。

文章だけでは伝わりにくい内容を
図解することで認識のズレを防ぐ
── ちなみにCacooの付箋からは、Backlogの課題を直接作成することもできます。
そうなんですね!ちょうど、打ち合わせで図解しながら出てきたToDoを、その場で課題にできるといいなと思っていたんです。
── BacklogとCacooの両方に効くのがNulab Passですが、こちらの導入理由も教えていただけますか。
シングルサインオンが絶対に必要だと考えていたからです。ほかの社内サービスにもシングルサインオンを使っていますし、サービスごとにパスワードを覚えてもらうのは大きな負担です。Nulab Passがあれば、BacklogでもCacooでも、同じ入口から使えるようになります。
もう一つは監査・管理の面です。当社では情報セキュリティや内部統制を重視しているため、ユーザーの利用状況を把握し、適切に管理できることも重要だと考えました。
「このドキュメントを読む」も課題に。使えば身につくオンボーディングの工夫
── Backlogのトライアルは、どのように始めましたか?
まずは、同様の悩みを抱えていた身近なメンバーに声をかけました。複雑なシステム案件を担当している先輩と、ヘルプデスクやシステム刷新など、性質の異なる業務を並行して担当している同僚です。あえて業務特性の違うメンバーを選び、日常的な運用業務や細かなタスク管理にも使えるかを確かめたかったんです。
── 少人数でのトライアルからデジタル推進グループ全体へBacklogを広げるにあたって、どのような工夫をされましたか?
社内浸透の方法については、ヌーラボの担当の方に「何をしたらいいか」を相談したんです。そこでヒントを得て、「bラボ」の動画を見てもらうことと、使い方をまとめたドキュメントを整備することを柱に運用をスタートしました。
具体的には、オンボーディング専用のBacklogプロジェクトを作り、操作マニュアルと運用ルールをBacklog内のドキュメントとして用意しました。そして、メンバー一人ひとりに「このドキュメントを読む」という課題を割り当て、読んだら完了にしてもらうんです。
※bラボ:Backlogユーザー向けの活用支援サイト。Backlogユーザー同士で質問や相談ができる機能に加え、操作方法を学べる動画や資料なども公開している。

ユーザー一人ひとりに対してオンボーディング用の課題を立て、
ドキュメントを読んだら「完了」にするように依頼
── Backlogの使い方を、Backlogの課題として覚えてもらうわけですね。なぜこの方法を選ばれましたか?
Backlogの仕組みを体感してもらえるからです。課題の詳細を入力して、状態を「処理済み」や「完了」に変える。実際の操作を通じて覚えるのが、一番早いと考えました。
── まさに「使えば身につく」オンボーディングですね。メンバーの方々の反応はいかがですか?
ほとんど混乱はありません。たまに問い合わせはありますが、それもBacklogで送ってもらっています。問い合わせの履歴が蓄積されていれば、同じような問い合わせにも対応しやすくなりますし、将来ほかの部門に広げる際にも役立つと考えています。
── 課題の立て方には、どのような工夫をされていますか?
親課題を案件、子課題を工程、孫課題をタスクとして分解し、マイルストーンとカテゴリーを組み合わせています。最近のアップデートで孫課題が作れるようになり、子課題を任されたメンバーが自分でタスクを細かく切れるようになったのも大きいですね。
いま意識しているのは、「後から探せる形で作ること」です。件名が「稟議」だけでは、何の稟議かわかりませんよね。プロジェクト横断の課題検索で見つけやすい件名にしておくことが、大切だと思います。メンバーの課題でそうなっていないものを見つけたら、メンションを付けて「ここは直したほうがいいよ」と伝えるようにしています。
まだ手探りの部分もありますが、土台にしたのは公式ガイドブックの『ゼロからはじめるBacklog活用大全』です。読んだうえで、自分たちの運用に合わせて変えてきました。
── 公式ガイドブックまで読み込んでいただいていたとは、光栄です!
仕事の経緯が、組織の「資産」に変わるとき
── 導入からわずか3か月ほどで、課題の階層やマイルストーン、カテゴリーの有機的な組み合わせまで設計されているとは驚きです。そうしたBacklogの活用によって、どのような効果を感じていますか?
「誰が・何を・どこまで進めているのか」が見えるようになってきたことが、現状の大きな成果です。以前はチャットで仕事をお願いすることが多く、進捗状況を確認するには個別にやり取りする必要がありました。今は「あなたに仕事を依頼しました」という記録がBacklogに残ります。課題検索で担当者や期限日で絞り込めば、「この人の作業がまだ残っているな」とすぐに確認もできます。

「高度な検索」機能を使って、進捗状況を把握
導入の狙いだった「ツールを使うこと自体が、プロジェクト管理の実践になる」という点でも、手応えを感じ始めています。課題を渡し、相手が処理済みにして戻し、確認して完了にする。Backlogを使っているうちに、この流れが浸透しつつあります。もちろん、課題の立て方などはこれから身につけてもらう部分もありますが、まずは形ができてきました。

── 今後は、社外パートナーともBacklogで連携していくと伺いました。
従来は、エクセルの課題管理表を共有し、更新のたびにファイルをやり取りしていました。最新版の確認や、それまでの対応経緯を調べるのに手間がかかっていたんです。Backlogなら、課題ごとに対応状況や経緯を一か所に集約できます。まずは日常的に連携している協力会社の方から、使い始めるところです。
── 社外の方を招待するにあたって、ルールづくりはどうされていますか?
社外の方にも安心して利用していただけるように、専用の「Backlog利用同意プロジェクト」を用意しています。利用にあたってのルールをまとめ、内容を確認していただくようにしています。
具体的には、利用ルールを事前に確認していただいたうえで、Backlog上でも内容を確認する課題を登録しています。ルールの確認とあわせて、Backlogの基本的な操作も覚えていただく形です。
こうすることで、ユーザーにルールを理解していただきつつ、「課題を完了にする」という基本的な使い方も同時に体験してもらえます。初めての方でも操作のイメージが湧きやすいんですよね。この最初のオンボーディング課題が完了して初めて、本来の業務プロジェクトに招待する仕組みです。

利用ルールや目的、条件などを詳しく解説したドキュメント
── 利用前に一時的に経由するプロジェクトを立てるんですね!これは斬新です。
ちなみに、ルールは定期的に見直しているので、ユーザーごとに確認したルールの版数も記録し、後から確認できるようにしています。

ユーザーごとに、確認したルールの版数を記録
── 最後に、これからの展望をお聞かせください。
まずはデジタル推進グループ内で活用を定着させ、それから、タスクのやり取りが多いほかのスタッフ部門にも広げていきたいですね。
もう一つは、Backlogに蓄積した知見を「組織の資産」にすることです。課題ごとに判断の経緯を残していけば、2回目、3回目の仕事は定型業務としてマニュアル化したり、ほかの人や外部に依頼したりしやすくなります。一人で抱える仕事を減らし、属人化を防げるはずです。
今後は、Backlogで管理できる仕事を少しずつ増やしていきたいですね。
──「使えば身につく」仕組みの上に、経緯と知見が積み上がっていく。DXを進める建設業界の皆さまにとっても、大きなヒントになるお話だと思います。本日はありがとうございました!
※掲載内容は取材当時のものです。