point 0がBacklogで実現した企業間のイノベーション促進と共有ドキュメント(Wiki)を活用した「良質なナレッジ共有の仕組み」とは?
Backlog導入前の課題
■ 半年間で成立した企業間のコラボレーションプロジェクトはわずか2件。プロジェクトの企画立案を促進するために各社の情報やナレッジを可視化する仕組みが必要
■ 各社のセキュリティ規定により、point 0に参画するメンバー各自に権限を設けてファイルを共有したり、管理ができない
■ 日々やり取りするファイルの量が多く、Google Drive内の階層管理や検索が煩雑になっている
Backlog導入後の効果
■ BacklogのWikiや課題に各社の実証実験の過程や結果などのナレッジを共有できるようになったことで情報を可視化する仕組みができた
■ Backlogはアカウント単位で権限を変更できるので、一定のセキュリティレベルを保ちながらドキュメントやファイルを安全に共有・管理できる
■ Backlogは課題に紐づけてファイルを共有できるため後から検索がしやすい。階層なども考える必要がない
ダイキン工業、オカムラ、ライオン、パナソニックなどの大企業が「働くを再定義する」というコンセプトのもと集まり創業した株式会社point0のプロジェクトでは、オープンイノベーションの企画立案・実験のためのドキュメント管理とナレッジの共有にBacklog、オンラインコミュニケーションにTypetalkが活用されています。
本記事では、ダイキン工業、オカムラ、ライオン、パナソニックなどの大企業が連携するために構築した「ドキュメント管理」「ナレッジや情報の共有」「コラボレーションを促進する仕組み」をBacklogの活用事例と共にお届けします。
目次
DX推進室・イノベーションラボ・流通営業部など所属部門が異なるメンバーが集い実証実験をする、point 0のイノベーションプロジェクト
ーpoint 0の事業内容についてお伺いしてよろしいでしょうか?
遅野井宏(以下、遅野井):point 0は、ダイキン工業、オカムラ、ライオン、パナソニックなど業界を超えて企業が集い、働き方や働く場所のあり方を再定義しよう、という意気込みのもと発足された法人団体です。「point 0」という名前は、「Society5.0」「Fintech2.0」などの「.0」に由来していて、「○○を再定義する、アップデートする」という意味合いが込められています。
発端はダイキン工業が空調ソリューションをベースとしたオフィス内のデータプラットフォーム構築を宣言し、そこに、オカムラ、ライオン、パナソニックなど各業界のトップ企業が順々に参画しました。そして、協創型プラットフォーム「CRESNECT(クレスネクト)」が立ち上がり、そのプロジェクトの一環として、2019年7月にコワーキングスペースとして「point 0 marunouch」が誕生しました。
ーpoint 0のオープンイノベーションプロジェクトについて教えてください。
豊澄幸太郎(以下、豊澄):point 0が行っているオープンイノベーションのためのプロジェクトは大きく2つあります。1つ目は、point 0の「空間の価値をつくりだす」というミッションに関連したクライアントワークです。
2つ目は、point 0に参画している企業でコラボレーションをして、新規事業を企画立案・実行する実証実験型プロジェクトです。point 0は「健康・効率・創造」の3つのテーマのもとワーキンググループを構成しています。各ワーキンググループに所属する企業でワークショップを企画したり、実験を重ねて与えられたテーマの定義づけをしたりしています。そして、最終的に定義を統合して複数社が共創するプロジェクトとして世の中にローンチしていきます。
ーオープンイノベーションに参画しているメンバーは、各企業ではどのような部署に所属しているのでしょうか?
遅野井:私はオカムラのDX推進室に所属しており、室長を担当しながらpoint 0の取締役を兼任しています。point 0に参画しているオカムラのメンバーはDX推進室に所属しています。オカムラ社内であがった「新規事業として実験してみたい」という声をすいあげて、point 0 marunouchiで実証実験しています。
宇野大介(以下、宇野):私はライオンのイノベーションラボに所属しており、所長を務めながらpoint 0では取締役を兼任しています。イノベーションラボのメンバーの中から、このような座組でのコラボレーションに参加する希望者を募って、point 0 marunouchiで新規事業の開発を進めています。
豊澄:私はパナソニックの対顧客窓口の流通営業部所属です。point 0で新規事業開発を進めている背景として、「前線で動いているメンバーにマーケットインでものづくりを担ってほしい」と従来の製品開発の進め方を変革する方針があります。そこで、point 0では自分のような前線メンバーがプロトタイプを企画して、社内のものづくりや新規事業開発のメンバーと実際に商品化するようなことをしています。
遅野井:プロジェクトに参画しているメンバーは、部門やミッションは異なりますが、point 0のアセットを最大限活用した実験や自社の新規事業を開発するという共通点はありますね。
プロジェクト発足から半年がたって見えてきた「課題」を解決するためにプロジェクト管理ツールBacklogを導入
ー各社異なるミッションを持ちながら、新規事業を共創していくのはある種の難しさがあると思いますが、いかがでしょうか。
豊澄:point 0に参画するメンバーは新規事業開発が得意なひとたち、という共通点があるので「集まる場所をつくれば、勝手にコラボレーションが起こるのでは?」と考えていた節がありました。
しかしpoint 0 marunouchiの開設から半年後にカンファレンスを実施したところ、コラボレーションプロジェクトが2件しか生まれなかったんです。その事実を受けて、プロジェクトの企画立案を促進する土壌を運営で作らないといけない、とわかりました。
コラボレーションはだれでもできる、という訳ではなく、人によってできる・できない、があるんですよね。パナソニックとオカムラで企業間コラボレーションをする、といっても動かす人がたくさんいないと前に進まない、というのがよくわかりました。
ー新規プロジェクトについてのアイデアを出すための会議がただの雑談で終わってしまう、というような。
豊澄:雑談は雑談で新しいアイデアを発見するのにとても大切です。ただし、そこから行動に変える力が必要だと思っていて、そこができるひとが意外と少ない。そこで、雑談を行動に変えてコラボレーションプロジェクトを前進させる具体的なプロセスが必要だと考えたんです。
ー2019年10月にプロジェクト管理ツールのBacklogを導入されましたが、まさに「point 0がコラボレーションをするための課題が見えたタイミング」だったのですね。
遅野井:そうですね。課題がみえてそれを解決しようとしたところに、プロジェクト管理ツールのBacklogとチャットツールのTypetalkを導入しました。
解決策として考えたのは、コラボレーションを促すための「仕組み」づくりでした。まず、冒頭でお伝えした、point 0の「働くを再定義する」というメインテーマを実現するために3つのコンセプト「健康・効率・創造」をつくりました。そして、各コンセプトごとにpoint 0に所属する企業を振り分けて、ワーキンググループを編成しました。各ワーキンググループには2〜3社が所属しており、企業同士でコンセプトに関連するワークショップを企画して実証実験してもらうようにしたんです。
現在は、実証実験の進め方や結果をBacklogのWikiに明文化したり、実験の経過をTypetalkで全体に共有してもらったり、各社のナレッジや情報を可視化する仕組みができました。
議論と実験を繰り返してやっと見えてきた「実証実験の定義」をBacklogのWikiでドキュメント化する
ー実証実験の結果などをBacklogのWikiで明文化されているとお伺いしましたが、具体的にどのように情報を管理されているのでしょうか?
宇野:point 0では週に1回、2〜3時間をかけて役員会議を行っています。会議では実験の結果、実験の定義の見直し、point 0の方針などを主な議題として、6人の役員で意見交換しています。会議で話しきれなかったことはチャットツールのTypetalkで議論を続けることもありますが、確定事項はすべてBacklogのWikiに明文化しています。
遅野井:BacklogのWikiの運用方法として「確定事項をWikiに明記する」するという使い方をしています。管理している情報は、役員会議の確定事項、実証実験の進め方、会社のルール、point 0に参画する企業内のルール、Backlogの運用ルールなどです。未確定なワードやパワーポイントはBacklogのファイルに保管して、確定したらBacklogのWikiに転載しています。
ー実証実験の定義やルールを明文化するまでの過程について教えてください。
豊澄:BacklogのWikiにまとめている実証実験の定義は現在のバージョンになるまで2、3回書き直しました。一旦ベースとなる定義を決めて、そこから全員が賛同する内容になるまでに結構な時間を要しましたね。実証実験のルールについては、現在は3つのチェック項目を設けて、そのチェック項目を1つでも満たすのであれば実証実験と判断しています。ルールについてもBacklogのWikiに記載しているので、実証実験をはじめるときは、まずWikiを確認してもらっています。
コミュニケーションはTypetalk、情報整理はBacklogと使い分けてから社内のナレッジや情報共有の質がグッと上がった
ーBacklogを実証実験の定義やルールの明文化に活用した効果をどのように感じていますか?
遅野井:これは取材だから、という訳ではなくドキュメント、ファイル管理にBacklog、コミュニケーションツールにTypetalkを導入してから共有される情報やナレッジの質がグッとあがりました。
Backlogを導入する前はGoogle Driveなどを使ってドキュメント管理やファイル管理していたのですが、各社のセキュリティの都合でpoint 0の全メンバーにアカウントを付与できず、ファイル管理や運用のフローが煩雑でした。Backlogを導入してからドキュメント管理やファイル周りの運用やアカウント管理は格段に楽になりました。
宇野:Backlogは課題に紐づけてファイルを管理できるので「あのファイルどこにいったかな」というのが少ないんですよね。タスクのやり取りの流れで自然にファイル共有ができるので、コミュニケーションも円滑です。Google Driveは事前に格納先を決めて、階層のことなども考えないといけないので、その点は結構煩雑でした。Backlogは直感的にファイルを保存できて、後から探すのも楽ですね。
ーコミュニケーションにはTypetalk、情報整理にはBacklogと運用がしっかりできていそうですね。
宇野:そうですね。私はpoint 0の広報担当なのでプレスリリースのチェックをメンバーに依頼することが多いのですが、修正が入る前提のドキュメントはTypetalkで確認依頼をしてスピーディにやり取りできています。原稿の内容が確定したら、Backlogのファイルにドキュメントをアップロードするという運用をしています。
今後10年の働き方を考えたときにBacklogやTypetalkのようなオンラインツールは欠かせない
ー最後に、point 0が掲げる今後10年の働きかたとオンラインツールの活用について教えてください。
遅野井:先日ステートメントを出したのですが、今後point 0がより注力しようとしていることに「① ウェルネスに配慮したワークスタイル」「② コミュニケーションが生み出す価値」「③ オフィスの存在意義」があります。
新型コロナウイルスの影響で私たちのライフスタイルが大きく変化し、テレワークなど働き方の選択肢が増えたことで「個人が『働く』ことを主体的に考える」重要性がよりいっそう増しています。言い換えると、コロナ禍が収束したからと、これまで通り週5日会社に行って働くのではなく、私たち一人ひとりが自らの働き方に向き合い、主体的にワークスタイルそのものを変えていかなければなりません。
感染リスクをおさえて健康を第一にしながら、できることを模索していく。TypetalkやBacklog、ビデオ会議ツールなどのオンラインツールを活用して、バーチャル環境でもリアル空間と同じ質のコミュニケーションを実現できるように工夫する。そして、オフィスの新しい存在意義をpoint 0が世の中に率先して提案していきたいです。
※掲載内容は取材当時のものです。