「Backlog同盟」を、社内でいかに増やすか。活用定着を実現した“利他的”アプローチ

Backlog導入前の課題
・メールやチャット、口頭でタスクの受け渡しや進捗確認に限界を感じていた
・商品であるワインを保管する倉庫の移転プロジェクトが発足。社内外の関係者と膨大なタスクを円滑に進める必要があった
Backlog導入後の効果
・タスクが可視化され、問い合わせ対応における情報の埋没や対応漏れを防止
・クレーム発生頻度が減少し顧客対応の品質が向上
・倉庫移転プロジェクトを円滑に進行。外部パートナー企業との良好かつ生産的なコミュニケーションが生まれた
誰もが気軽にワインを楽しめる文化の醸成に取り組む、ワインインポーターの株式会社フィラディス。
同社でBacklogの全社導入を推進したのが、情報システム部の高木氏です。導入から定着に至るまでの鍵は「自分だけが楽になるのではなく、みんなの課題を解決する“利他的”なアプローチにある」と語ります。
現場の課題に寄り添い、Backlogによる業務改善の成功体験を積み重ね、組織全体へと展開していった経緯から、現在の活用方法や効果実感までを伺いました。
目次
「ITで課題解決を」をモットーに、Backlogの全社展開を推進
── 御社の事業について教えてください。
フィラディスは「日本に成熟したワイン文化を根付かせる」ことを目指す、ワインの専門商社です。ワインを難しいものと捉えず、誰もが自分の感性で選び、特別な時だけでなく日常の一部として自然体で楽しんでいただくことを目指しています。
世界各地のワインを国内で販売するほか、「Because,(ビコーズ)」という自社ワインブランドも展開中です。2025年1月には、この「Because, ワインシリーズ」の累計出荷数が100万本を突破し、記念のポップアップイベントも開催しました。今後はより多くの方に弊社のワインを楽しんでいただくため、現在のラインナップを13種類から約20種類まで拡充することを目標に、さらなる展開に注力しています。

「Because, ワインシリーズ」のビジュアルイメージ
── 高木さんはどのような業務を担当されているのでしょうか?
私は情報システム部に所属しており、ITツールの導入や運用、サポートを担当しています。フィラディスには、2021年の冬に入社しました。
前職でも情報システム部に所属していたこともあり、ITの力を使って課題を解決することに仕事のやりがいや楽しさを感じています。現場への地道なサポートを行う際もこうした思いが私のモチベーションになっており、2024年から活用しているBacklogの導入もリードしました。現在は、各部署でのBacklogの活用を促進していく立場でもあります。

株式会社フィラディス
情報システム部
高木俊輔 氏
倉庫移転プロジェクトをきっかけに導入を検討。根底には、社内のタスク管理の一元化への欲求も
── Backlog導入の背景を教えてください。
根底には、社内のあらゆるタスク管理を一元化したいという思いがありました。これまではメールやチャット、場合によっては口頭でタスクの受け渡しや進捗確認を行っていたのですが、管理に限界を感じていたんです。
そんな中、弊社が仕入れたワインを保管している倉庫の移転プロジェクトが立ち上がり、社内外の関係者と膨大なタスクを進める必要が出てきました。そこで、これを絶好の機会だと考えて、タスク管理ツールの導入を検討し始めました。
── 数あるツールの中から、なぜBacklogを選んだのでしょうか?
まず、「そのツールで課題を解決できることが想像できるか」が選定基準にありました。社内はもちろん、社外とも連携しながら期日やスケジュール、進捗の可視化が容易に実現できるかが重視なポイントだったのです。
また、UI/UXやユーザビリティの観点で優れていることも挙げられます。この点については、前職でBacklogを使っていたため自信を持っていました。当時社内で利用していたツールを拡大利用するという選択肢もあったのですが、これは開発者向けの仕様でした。その点Backlogは社内の誰もが簡単に活用できると感じたため、導入を進めようと考えたのです。
── そこからBacklogの正式導入までの経緯を教えてください。
実のところ、正式導入までは紆余曲折ありました。最初にBacklog導入について社内で打診した際には、上長から「君だけが楽になるんだよね」と、軽く受け流されてしまったことも(笑)。
すんなり導入が決まらず落胆しかけたものの、ピンチはチャンス。ならば全社にとってBacklogが有用なツールだと示そうと考えました。そこで、自分が楽になるという「利己的」なアプローチではなく、みんなの仕事を楽にする「利他的」なアプローチへと切り替えることにしたのです。
「利己的」ではなく「利他的に」。各部署の課題を解決して回る、地道かつ戦略的な社内定着アプローチ
── その「利他的」なアプローチはどのようなものだったのでしょうか?
まずは各部署を回り、業務課題のヒアリングから始めました。中でも、優先的に話を聞いたのは「大人数の部署に所属している人」もしくは「夜遅くまで稼働している人」たちでした。
部内の人数が多ければ多いほど業務が混在し、課題が生まれやすいと考えたためです。また、夜遅くまで残っているということは、何かしら仕事がうまく回っていない要因があるはずです。
課題を抱えやすい人や組織で改善が実現すれば、定着へのインパクトも大きいはずだと考えたんです。
── 現場の負荷や改善インパクトをふまえてアプローチしていったんですね。
はい。そしていわば社内コンサルのように、Backlogを使った業務改善方法を提案していきました。トライアル環境でプロジェクトを作成し、どのように活用できるかを一緒に試していったのです。
そして、実際に「業務が楽になった」という成功体験を味わってもらい、現場から「Backlogを引き続き使いたい」「もう過去のメールやチャットに戻りたくない」という声を引き出していきました。

全社展開までのロードマップ(高木氏提供の資料より引用)
── 非常に戦略的ですね…!その際、気をつけたポイントはありますか?
工夫したポイントは3つあります。
1つは、Backlogを用いた業務改善を、各部署で実務を担当する現場のメンバーと共に実行したことです。私が1から10までやるのではなく、あくまでも「一緒に改善する」というスタンスで向き合いました。
2つ目は、現場の業務を大きく変更しないことです。業務内容は従来と変わらず、あくまで使うツールだけが変わるという範囲に留めました。なぜなら、社内の過半数は新しいチャレンジに意欲的だったものの、一部にはそれまでの業務を変えることに抵抗感を抱くメンバーもいたためです。そんな中、大胆に業務を変えてしまうと、現場に混乱を招いてしまう可能性があったのです。
そして3つ目が、どんなに大変でも、Backlogが一定浸透し成功体験が醸成されるまでは現場に伴走することです。というのも、実務担当者と一緒にその部署の上長にBacklogの導入を提案する際、実務担当者から成功体験を話してもらえば、上層部から承認を得やすくなるためです。
実際にこうしたプロセスを経て、弊社で最も所属人数の多い営業部でBacklogの導入メリットを感じてもらえた時は、全社展開が実現できると確信しました。「自分だけではなく、全員が楽になる」を実証し、いわば「Backlog同盟」を作っていくアプローチは、大変でしたがやはり効果が絶大でしたね。
タスクを可視化することで、社外対応の品質向上やコラボレーション促進が実現
── 現在、社内でのBacklogの活用方法を教えてください。
社内外におけるコミュニケーションやタスク管理など、幅広い用途でBacklogを活用中です。例としては、問い合わせがあった際の社内対応業務が挙げられます。電話代行サービスからの対応情報、FAX受信情報、ウェブサイト経由の問い合わせ内容をメールで受け取り、それを自動的に課題登録する機能を活用しました。
── Backlogの活用を通じて、どのような変化を感じていますか?
大きく3つの効果が出ています。
1つ目はタスクが可視化され、問い合わせ対応における情報の埋没や対応漏れを防止できるようになった点です。以前は電話代行サービスからのメールを受け、エスカレーションや折り返しが必要な場合は、社内の各メンバーが内容を確認し対応するというフローでした。当時は、そのメールが埋もれてしまい、対応の遅れや漏れが発生してしまうケースがあったのです。また、その後の対応は完了しているか、タスクはどれくらい進捗しているかも不透明な状態でした。
そこでまずは、Backlogのメールによる課題登録機能を用いて、問い合わせがあった際にその内容がBacklogに自動起票される仕組みを採用しました。これにより、メールを遡って未対応タスクを確認しにいくといった手間がなくなりました。
また、当時はメールで問い合わせが来た際、各メンバーが内容を確認し自ら担当を宣言するメールを送っていたのですが、Backlogなら自動起票されたタスクに対して簡単に対応者の割り振りができるので、このプロセスを廃止。担当者宣言メールを送る手間もなくなったほか、タスクの進捗やリソース配分を可視化することができました。

問い合わせ対応のBefore After(高木氏提供の資料より参照)
── その他の効果はどのようなものでしょうか?
2つ目は、顧客対応の品質向上です。肌感ではありますが、問い合わせの対応漏れや確認ミスが減少したことで、クレーム発生頻度の減少にもつながっていると思います。
3つ目は、導入のきっかけだった倉庫移転プロジェクトの円滑な進行です。プロジェクトに関わる多数のパートナー企業とのタスク管理やコミュニケーションを、Backlogのおかげで円滑に進めることができました。
その際、私はパートナー企業に対して確認したいことや「こういった形で進めたい」という要望もふまえ、タスクの粒度を細かくして課題登録を行いました。そうすると、可視化されたタスクを通じて、弊社がプロジェクトを進める上で何に気をつけているか、自然と共有されるようになったのです。
さらに、そうしているうちにタスクを見たパートナー企業の方が「これもタスクとして課題に登録したほうがいいですか?」と提案してくれるようにもなりました。良いコラボレーションにつながっていると感じています。
目指すは「Backlogを中心に全社の業務が回る」状態
── 今後、どのようにBacklogを活用していきたいとお考えですか?
ゆくゆくは、Backlogを中心に全社の業務を運用していく状態を目指したいですね。現在も効果は実感していますが、社内にはまだアナログかつ非効率な業務が存在しているため、改善の余地があると考えています。
加えて、社内にBacklogの活用が定着してきたので、今後はAIツールとの連携可能性を探り、さらなる業務改善を図りたいですね。
また、タスク管理やプロジェクト管理だけにとどまらず、Backlog上での情報共有の仕組みも整えたいと考えています。1つのツールにタスクや情報を集約すれば、さまざまな業務効率が向上するはず。そうすれば、現場メンバーもより効率的に業務を進められるようになりますし、全社の生産性向上にも貢献できます。
── まさに「利他」の精神ですね!貴重なお話をありがとうございました!
※掲載内容は取材当時のものです。