トヨタ自動車のTCシャシー設計部で試行したBacklog AIアシスタントによる現場変革 — Backlog×AI融合がもたらす「作業単位まで引き出せる現場ナレッジ」とは

トヨタ自動車 Backlog AIアシスタント導入事例

Backlog導入前の課題

・Backlog内の過去タスク探しに時間がかかっていた
・業務振り返りや、類似業務の担当者を探すのに手間がかかっていた
・自部門固有の業務ナレッジを扱えるAIが限られていた

Backlog導入後の効果

・あいまいな表現でも関連業務を横断的に検索でき、ナレッジにアクセスしやすくなった
・業務の振り返りをAIが支援し、面談準備の負担が軽減された
・Backlogに蓄積した情報がデータベースとなり、業務マニュアル化への道筋が見え始めた

車両部品の設計・開発管理にBacklogを活用してきたトヨタ自動車 TCシャシー設計部は、2025年8月からBacklog AIアシスタント(β版)の活用を始めました。

本記事では、一般リリースに先がけてβ版を利用した同社に対し、実際の使用感や活用方法を伺います。日々の業務で書き込まれる"設計現場視点のデータ"とAIの組み合わせは、現場にどのような変化をもたらしているのでしょうか?

より自部門の業務知識を活かせるAIを求めて

── こちらの記事でも紹介しておりますが、トヨタ自動車 TCシャシー設計部でのBacklog活用について、改めて概要を教えてください。

TCシャシー設計部では、ブレーキ、サスペンション、ステアリングといった車両部品の設計・開発業務にBacklogを使っています。もともとはExcelで個人ごとに業務を管理していたのですが、それでは情報が個人持ちになってしまいます。情報を共有していくためにサーバー管理型のツールを探した結果、最も私たちの開発業務に向いていると判断して、Backlogを導入しました。

現在は、担当部品ごとの開発スケジュール管理や事務職への業務依頼、承認回覧物の管理など、幅広い用途で活用しています。

トヨタ自動車株式会社 TCシャシー設計部 傍島氏

トヨタ自動車株式会社 TCシャシー設計部
第3シャシー設計室 室長
傍嶋 幸之助 氏

── Backlogが業務基盤としてしっかり根付いているのですね! そうした活用をされている中で、今回、「Backlog AIアシスタント」に関心を持たれたきっかけはどこにありましたか?

トヨタ自動車では既に複数の汎用AIツールを使ってきました。これらは「一般的な知識」を扱う際に強みがあるツールだという認識です。こういった用途としては今後も使い続けていく前提ですが、Backlogに蓄積された「自部門ならではの業務レベルの細かいナレッジ」を扱うAIがあれば、より容易にかつ素早く社内特有の情報を探すことができ、業務効率向上に貢献できると考えておりました。

そんな折、「Backlog AIアシスタント」のβ版無償モニター募集のお知らせを聞き、応募させていただきました。

トヨタ自動車 TCシャシー設計部 中嶋氏

トヨタ自動車株式会社 TCシャシー設計部
第1シャシー設計室 主任
中嶋 輝彰 氏

── 導入にあたって、セキュリティ面などの懸念はありましたか?

私たちにとって機密情報の管理は生成AIツール採否の重要なポイントです。

Backlog AIアシスタントの現行の利用規約には入力データをAIモデルの機械学習や再学習に利用しない旨、また入出力結果は秘密情報として厳格に取り扱う旨が記載されております。

現時点で運用上の懸念は解消されており、引き続き情報の適切な取り扱いを意識しながら利用しております。

業務振り返りも、ナレッジ検索も、有識者探しも。Backlogの蓄積情報がAIとの融合で更なる価値を発揮する

── それでは、Backlog AIアシスタントを実際にどのように使っているのか、具体的に教えてください。

いくつかの活用パターンが定着してきています。まずは「個人の業務成果の振り返り」です。

私たちは年数回、上司と面談をするのですが、日々多忙な中で業務を詳細に記憶することは難しいため、成果の振り返りに苦労します。そこでBacklog AIアシスタントへ下記の質問をしました。

AI

AI

私の業務の成果について振り返ってください。期間は○○。箇条書き形式で書いてください。1000文字以内にまとめてください

すると、Backlog内の記録をもとに、業務内容を整理する形で自分の成果をまとめてくれます。

── 出力の精度はいかがですか?

出力結果は非常に興味深く、単に「○○を設計しました」「書類を発行しました」という事実を正確に振り返ってくれる事はもちろん、更に向上した能力について追加質問をすると、「この業務を通じて~の知識が高まった」「~に対する思考力が向上した」といった、能力面についても、一般的な観点から整理したコメントを出力してくれました。

「なるほど。一般的には、こういう能力を鍛えたと言えるんだ」と、自分では気づいていなかった成果を認識できます。第三者からアドバイスをもらえるような感覚ですね。それを参考にしながら、自分の考えをまとめることで上司に抜け漏れのない情報を伝えやすくなったと感じています。

── 第三者の視点が加わることによって、仕事の価値を再発見することができたのですね。

また、「過去の類似業務の検索」にも活用しております。従来のキーワード検索では同じ意味でも表現方法が異なる言葉の揺らぎのため、欲しい情報を探すには試行錯誤が必要でした。

でも、Backlog AIアシスタントなら、あいまいな表現でも、類似の課題を横断的に抽出してくれます。

トヨタ自動車 TCシャシー設計部 久保氏

トヨタ自動車株式会社 TCシャシー設計部
第3シャシー設計室 主任
久保 敦 氏

AI

AI

○○プロジェクトの○○○(業務名)に関係する課題を挙げてください

この検索では過去に誰がどのように対処したかまで把握することができます。

したがって当事者へ詳細を尋ねたい場合、従来は周囲の人々へ聞いて当事者を探す必要がありましたが、Backlog AIアシスタントによって、より容易に有識者へたどり着けるようになりました。

「知見を残す人」を見つけて表彰。ナレッジ蓄積の好循環をつくっていく

── 事前ヒアリングでは、「表彰」にBacklog AIアシスタントを使われているとお伺いしております。ぜひ詳しくお聞かせください。

Backlogを活用していく中で、「とても有益な書き込みをしてくれた」「知見を共有した」といったアクションに対して表彰したいと考えました。

AI

AI

Backlogに知見を残す意識が高い人を3人挙げてください

こう聞くと、Backlog内の記録をもとに、理由付きで候補者をリストアップしてくれます。何度か言い回しを変えて試しても一定の傾向が見えたため、貴重な参考情報としました。

Backlogの課題の詳細欄に「仕事でのトラブル対処方法」「仕事を行う上での注意点」など、ナレッジを丁寧に残してくれている人を、評価につなげていく。そうすれば、「自分も知見を残そう」というモチベーションに繋がりますよね。今後は、もっとBacklogにナレッジを蓄積していきたいと考えています。

── 貢献を見える化すれば、さらにナレッジが集まる好循環が生まれますね! その他の活用はいかがでしょうか?

最後に紹介する活用方法として、業務に着手する前に、「注意点を洗い出す」ような使い方を試しています。

AI

AI

○○○(業務名)をする際に気を付けるポイントを5つ挙げてください

Backlogにナレッジを貯めていけば、いずれ精度の高い「業務マニュアル」の材料になることを期待しており、以前から業務を実施する際の注意点をまとめたものが欲しいと考えておりました。汎用AIでは社内特有の情報を反映しきれない場合があり、その結果、情報の補正をする場面もありますが、業務知識に特化したBacklogをデータベースにすれば、そのリスクを相対的に抑えられます

今のところ、現場で使う範囲では、「業務に活用できる」と感じる回答が得られています。まったく知らない人が、これだけで業務をこなせるかどうかはまだ検証が必要ですが、方向性としては手応えを感じています。

日々の記録が、そのまま“AI用のデータベース”に

── Backlog AIアシスタントの導入を通じて、どのような効果を実感されていますか?

定量的な測定はこれからですが、現場の感覚としては効果を実感しています。なんといっても検索面ですね。過去の課題を調べるだけでも、Backlog AIアシスタントによって、1回あたり数分~数十分は短縮できている実感があります。

あとは、現場に馴染む使い方として感じているのは、「業務知識のキャッチアップ」です。入ったばかりの人は、「すみません教えてください」と聞いて回るしかなかったのが、あらかじめAIに聞いて前提となる情報を整理しておくことで、「TCシャシー設計部における前提知識」を踏まえた上で、仕事をしたり、議論に参加できるようになります。

現時点ではまだ、業務プロセスが体系的に出てくるような精度の回答は出て来ておらず、関連する課題を紹介してくれているだけですが、今後、データを蓄積しておけば、価値の高い情報を出してくれるポテンシャルを感じています。在宅勤務が増えている中で、教わるハードルを下げてくれるのは非常にありがたいです。

── 今後の展望についてお聞かせください。

弊社ではTPS(トヨタ生産方式)の考え方を大事にしています。このツールによりムダの削減(検索時間の削減)や標準化(Backlogに蓄積されたナレッジを活用した業務マニュアルの作成)を進めていきたいと考えています。

BacklogにはTPSの現地現物の考え方に寄り沿った細かい作業レベルの記録が残っていますから、担当者目線の実践的なマニュアルが作れるのではないかと期待しています。

── 最後に、これからBacklog AIアシスタントを使う方にメッセージをお願いします。

Backlog AIアシスタントの最大の強みは、普段は業務管理に活用している情報が、同時にAI活用のためのデータベース(=知的資産)構築に繋がる一石二鳥になっており、それは「現場の担当者が作業レベルで書き込んだ情報」だという点です。

Backlog上に日常的に記録される“現場の知見”を、AIが検索・整理して、再び現場へ素早く還元することで、改善(カイゼン)のサイクルをより速く回せる可能性がある素晴らしいツールだと考えています。

一般的なRAG*を構築しようとすると、まず「データベースをどうやってつくる?」という話になりますよね。でも、Backlogなら、日々の業務に使っているだけで、結果として「AI用のデータベース」が育っていきます。これは本当に大きな強みだと思いますし、お薦めしたいポイントです。

*RAG(Retrieval-Augmented Generation):外部データベースから関連情報を検索し、その情報をもとにAIが回答を生成する仕組み

── 本日は、貴重なお話をありがとうございました!

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※掲載内容は取材当時のものです。

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