日本とベトナムの共同開発プロジェクトを成功に導いたBacklog活用法
Backlog導入前の課題
・Excelで開発のタスクを管理しており、バージョン管理や共同編集に課題があった
・オフショア開発における言語や文化の違いから生じるコミュニケーションの齟齬
Backlog導入後の効果
・ベトナムを含む3社でのオフショア開発プロジェクトを円滑に進行
・Backlog上での文字のコミュニケーションにより、言語の違いから生じる「認識の齟齬」を削減
静岡県西部地域を中心に、鉄道・バスの運輸事業をはじめとして幅広い事業を展開する遠鉄グループの一角である、遠鉄システムサービス株式会社。同社では日本とベトナムの共同開発プロジェクトにBacklog、Cacoo、Nulab Passを活用し、円滑なプロジェクト推進と連携強化を実現しています。
異なる言語や文化を持つメンバー同士で開発を進めるオフショア開発で、どのようにツールを活用していったのでしょうか? グループ情報システム部の大庭 俊氏、木村 凌氏、兼子 直記氏に詳しくお話を伺いました。
目次
情報共有と操作のしやすさがBacklog導入の決め手
―― 御社の事業概要と、皆さまが所属する部署について教えてください。
当社は、遠鉄グループ全体の業務システム開発を担うほか、地域の教育現場、行政サービスなどのシステム構築やサポートなど、ワンストップのICTソリューションを提供しています。
私たちが所属するグループ情報システム部では、グループ全体のシステム開発および保守を担当しています。先日表彰していただいた「Good Project Award 2023」のオフショア開発プロジェクトには、メンバー全員が携わりました。
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backlog.com―― Backlog導入前は、どのようにプロジェクト管理を行っていましたか?
もともとはExcelを使用して開発のタスク管理を行っていたのですが、改善の必要性を感じることがありました。たとえば担当者間でやり取りを重ねるうちに、異なるフォーマットのファイルが複数作られてしまうといった、バージョン管理のしづらさは課題の一つでした。そもそも、社内のOffice製品がクラウド版ではないため、同時編集ができない点も大きなネックだったのです。
他社のプロジェクト管理ツールを導入検討してみたこともあったのですが、仕様が複雑でメンバーがうまく使いこなせず、金銭面や学習コストの観点で導入を見送っていました。
これらの経緯から、よりシンプルに使えるツールを探していたところ、出会ったのがBacklogです。
―― Backlog、Cacoo、Nulab Pass導入の経緯について教えてください。
以前より、社内の一部ではクラウド作図ツールとしてCacooが使われていて、Backlogの存在も認識はしていました。その後、担当プロジェクトでお客様のBacklogスペースにゲストユーザーとして参加する機会があり、その使いやすさを実感し、導入を決めました。
開発部門全体でツールを活用するとなると、コスト面も気になるところです。その点、Backlogはユーザー課金制ではないため*、今後ユーザー数が増えた際にも対応しやすい点は大きなポイントでした。
*スタンダードプラン以上がユーザー数無制限の対象です
想定した通り社内ユーザーが増加したため、社内の公式ツールとして採択し、2022年4月にプラチナプランの利用を開始しました。外部ユーザーも招待するようになり、ログ管理などセキュリティ強化のためにNulab Passも契約することにしました。
オフショア開発プロジェクトにBacklogとCacooを活用
―― オフショア開発プロジェクトについて詳しく教えてください。
2021年7月に、遠鉄グループの第二のシステム開発拠点として「遠鉄ベトナム有限会社」が設立され、本格的なオフショア開発に取り組み始めました。その中で、大きく2つの業務課題が見えてきたのです。
一つは翻訳者を介した会話や文化の違いから生じるコミュニケーションの齟齬、もう一つは、アジャイル開発やWeb系システムに対する知見や技術的なノウハウが不足していることでした。
そこで、2022年度より日本側で社内プロジェクトチームの発足やアジャイル開発の実践など、開発スキル向上への取り組みを開始。また、ベトナムとの共同開発における開発フロー・プロセスを改めて策定し、開発ルールを標準化することで品質の担保も目指しました。
そして、いよいよ親会社である遠鉄鉄道と、遠鉄ベトナム、当社の3社による共同開発プロジェクトがスタートします。遠州鉄道からプロジェクトオーナー、当社からアプリ開発およびインフラ開発のメンバーが計5名、遠鉄ベトナムからアプリ開発のメンバーが6名という体制です。ベトナムとのやり取りは、引き続き翻訳者を介して行いました。
―― どのようにプロジェクトを進めていったのでしょうか?
設計など上流工程の部分は日本側でしっかりと固め、開発フェーズではベトナム側と柔軟に進行していく、ウォーターフォール開発とアジャイル開発のハイブリッドで進行しました。
まずは、対面によるキックオフと懇親会を実施しました。システムの要件や機能についてディスカッションし、お互いの人となりを知ることで「共にプロジェクトを成功させよう」と結束が生まれたように思います。
ツールはヌーラボのサービスを大いに活用しました。プロジェクトのタスク管理や情報共有にはBacklogを、構成図の作成や2週間のスプリントごとのふりかえりにはCacooを使用することに。Web会議ツールとチャットツールも併用しながら、日々コミュニケーションを取っていきました。
異なる言語間の会話では、文字のコミュニケーションが誤解を防ぐ
―― オフショア開発のプロジェクトにBacklogを活用して、どのような効果を感じましたか?
プロジェクトを進める中で欠かせない情報共有が円滑になり、タスクの抜け漏れやコミュニケーションの行き違いなども起こらずに済みました。海外とのやり取りは言語や文化の違いもあり、口頭での会話のみだと意図がしっかり伝わらないことがどうしても起こります。しかし、Backlog上での文字のコミュニケーションは比較的、誤解が生まれにくいと感じました。
また、課題の中に「決まったこと」だけでなく「この仕様に決まった背景」を記載しておくことで、後から細かな経緯も確認しやすかったです。
Backlogの課題にきちんと情報を登録できていると、ガントチャート機能やボード機能でプロジェクトの全体像をしっかりと把握できます。課題を起票する際には、担当者の割り当てと期日の入力を必須にするなどBacklogの運用ルールを決め、プロジェクト管理の基本を徹底しました。その結果、ベトナム側の進捗状況もリアルタイムに可視化され、安心してプロジェクトを進められました。
―― ベトナム側のメンバーからは、どのような反応がありましたか?
最初から操作に関する質問はほとんどなく、UI/UXが直感的で使いやすかったのではないかと思います。ベトナム側のリーダーからは「メンバーのアサインや期日の管理がしやすかった」と、ポジティブな感想もありました。
言葉で伝わりにくいときは絵や図解で説明するのが有効
―― Cacooはどのように活用していただいたのでしょうか。
各スプリント終了後にCacooを活用してKPT法*を用いたふりかえりを3社で実施しました。こちらも操作性がシンプルで非常に使いやすかったです。継続的なふりかえりによって、お互いの考えを知ることができましたし、結果、コミュニケーションが円滑になっていったように思います。
*KPT法とは:行動や結果を「Keep(継続したいこと)」「Problem(改善すべき課題)」「Try(新しくやってみたいこと)」の3つの観点から整理して、プロジェクトや活動を振り返るフレームワーク
―― Cacooも日本とベトナムの双方で使っていただいたのですね。
ふりかえりの場以外でも、複雑な仕様に関して補足やディスカッションが必要なケースにはCacooが活躍しています。やはり言語が違うため、言葉で伝えるのが難しい内容は、絵や図解を交えてやり取りすると共通の認識を持ちやすいですよね。
たとえば、ただ丸で囲むだけでそこを強調していることが視覚的に伝わりますし、矢印を書き加えれば、業務の流れや方向性がひと目でわかりやすい。Cacooは、リアルの会議室にあるホワイトボードのような役割を果たしてくれています。
ほかのオフショア開発プロジェクトでもBacklogやCacooを活用していきたい
―― 今後の展望をお聞かせください。
今回の経験を活かして、ほかのオフショア開発プロジェクトでもBacklogとCacooを活用していきたいですね。現在もまったく問題なく使えていますが、今後は併用しているチャットツールへの細かな通知設定や、Backlogの管理者が手作業で行っているユーザー登録の自動化などができるとさらに便利になると思います。その辺りは、Backlog APIなど、インテグレーション機能の拡充にも期待しています。
これからも、日本とベトナムとで力を合わせ、さらなる技術力向上と価値提供を目指します。双方をつなぐ架け橋として、Backlogをはじめヌーラボのサービスを大いに活用していきたいと思います。
——貴重なお話をありがとうございました!
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backlog.com※掲載内容は取材当時のものです。