日本経済新聞社のBacklogの大規模活用の秘訣とは?–600名の日経電子版プロジェクトを円滑な情報共有で支える!
Backlog導入前の課題
表計算ソフトでの情報共有は大規模なプロジェクトには不向き。視認性や共有性が課題
Backlog導入後の効果
業務の引き継ぎや仕様書などをWikiで共有。業務の属人化を解消しプロジェクトの進行スピードを改善
『 日経電子版 』や『 日本経済新聞 』を運営・発行する、日本経済新聞社のデジタル事業では150ものプロジェクト管理にBacklogが活用されています。約600アカウントという規模でBacklogを活用している同事業では、業務を属人化させないための円滑な情報共有が課題でした。Backlogの導入を進めた鈴木氏と西馬氏に、大規模なプロジェクトにBacklogをお勧めする理由をお伺いしました。
―――貴社の事業概要について教えてください。
株式会社日本経済新聞社は、新聞社として『日本経済新聞』などの新聞発行の他、デジタル媒体『日経電子版』の運営、出版、放送、文化事業・イベントの主催等も手がけています。
―――Backlogを使っている部門について教えてください。
デジタル事業 BtoCユニット 鈴木陽介(すずき・ようすけ)氏:Backlogは、主にデジタル事業で活用しています。デジタル事業の組織はBtoCユニット、BtoBユニット、広告・IDユニットに分かれています。BtoCユニットでは日経電子版の企画開発を、BtoBユニットでは日経テレコンや日経バリューサーチなどを企画開発しています。広告・IDユニットでは、主にデジタル広告の営業を行なっています。
私と西馬が所属するのは日経電子版を運営するBtoCユニットです。今日のユーザーインタビューでは、同部署での活用例をお話しさせていただきます。
―――鈴木さんが所属するデジタル事業BtoCユニットでは、具体的にどのような業務を担当していますか?
鈴木:主に、日経電子版の機能改善が多いですね。日経電子版はデスクトップブラウザー向けやスマートフォン向けアプリ等でサービスを提供しており、そうした単位でチームを分けています。
Backlogは現在150プロジェクト以上ありますが、チームやプロダクトの単位で分けています。デスクトップとモバイルを横断して実装される機能やBtoBユニットとも連携して作業する場合は、両方を横断して管理できるプロジェクトも立てています。他にも、インフラ作業のプロジェクトも立てていますね。
目次
Backlogの更新内容やコメントをSlackに自動通知!日経電子版をつくるデジタル事業全体のコミュニケーションをWebhookで効率化
―――実際にそれらの業務の進捗をBacklogでどのように管理していますか?
鈴木:例えば、新しい機能を実装するプロジェクトの場合は、その機能の実装に必要な要件定義や開発などの作業を、マイルストーンで区切って消化するような使い方で、進捗管理をしています。新聞社という立場上、時には新しい機能を実装する際に、デザイナーなどの制作部メンバーだけでなく、編集局などにも要件定義や仕様決めの相談や確認をすることもあります。こうした確認のために発生する文書ファイルや仕様書などの資料をWiki管理していることもあります。
デジタル事業 BtoCユニット 西馬一郎(にしうま・いちろう)氏:私はBtoCユニットで電子版のインフラ開発を担当しているのですが、インフラでは障害報告などの課題管理として使うこともあります。
―――インフラチームではBacklogをどのように活用していますか?
西馬:インフラチームでBacklogを活用している例として、電子版サービスに関わる障害の事象をBacklogに登録して管理しています。どのような対応をしたのかや原因などは時間が経過すると忘れてしまいがちです。登録することで、後で見返した時に頻度や傾向を知ることができ、抜本的な対策を考える時に役立ちます。従来は社内のメールやファイル、Slackなどに資料や情報が散在していましたが、現在はBacklogで情報の集約ができています。
ほかにも、APIを使って定時バッチ処理の内容を課題として自動で起票する取り組みをしています。定型的なものはAPIが叩かれて自動で課題が登録され、通知に気づいた担当者が都度対応するというような流れです。
鈴木:デジタル事業全体のコミュニケーションの効率化として、BacklogのWebhookを活用しています。具体的には、Slackと連携してBacklogの課題やコメント、Wikiの更新通知をしています。
上記の図のように、Backlogのプロジェクトを更新すると、特定のURLに更新情報を飛ばします。そのWebhookの受け先として、Amazon上のAPIゲートウェイを作り、そこでデータを取得して、指定されたSlackのチャネルに通知する仕組みです。汎用的に使えるようにパラメータを使って自社で作りました。見え方の設定や通知先などもカスタマイズできます。
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業務の引き継ぎ書からシステム構成図まで情報共有にWikiをフル活用。業務の属人化を解消しプロジェクトのスピードアップ
―――社内の情報共有の効率化にBacklogが一役買っているような状況ですね。
西馬:そうですね。個人的にWikiは一番のお気に入りで、インフラチームのノウハウを共有する場所として活用しています。システム構成やAWS構成の図や詳細をWikiにまとめることも多いです。Wikiにまとめておくと、新しいチームメンバーに業務の引き継ぎをする際にWikiの内容を説明すれば簡単に終わるという利点があるからです。
他にも、打ち合わせの議事録や1週間のインフラ作業予定などもWikiで共有しています。例えばアプリチームとの打ち合わせの中でインフラチームのタスクになったものはすぐBacklogに登録することが多いです。期日や優先度などもセットし、その場ですぐに課題なりタスクをメンバーと共有できるので非常に助かっています。
―――BacklogのWikiを使う前は、どのようにチーム内での情報共有をされていましたか?
西馬:先ほどお話しした業務の引き継ぎの例でいうと、以前はファイルシステムのなかに、表計算ソフトで作った一覧表や構成図のファイルを保管して、それをもとに説明するということをしていました。ファイル量が多く最新版が本人以外分からなくなることが頻繁に起きていたので、使いたいファイルをすぐに探せない、後から見返せないという事態が頻発していました。それを改善しようとして、チーム内にBacklogのWikiを導入しました。
Wikiは目次を作ってその下にどんどん情報を追加できます。以前のやり方と比較して、情報整理がしやすく、検索性と視認性という部分で、だいぶ使い勝手が良くなったと感じますし、業務の属人性も解消されました。
―――それは良かったです!Wikiでの情報共有以外でも業務改善につながったと実感したことはありますか?
西馬:プロジェクトの進捗報告や共有という面でも業務が進めやすくなったと感じます。以前は表計算ソフトでプロジェクトの進捗管理をしており、その内容を週に一度の定例会で報告していました。その際に、書き方のルールが統一されておらず各々で書き方が違うため「視認性が悪い」「全員分の情報をひとつのファイルで管理していたためファイルが重くなってしまい開けない」という声があがっていました。今思えばプロジェクトの進行も遅かったと思います。
Backlogに切り替えたことで、視認性の問題やファイルの重さなどが改善できました。誰がどの業務を進めているのかリアルタイムでわかるようになったので、管理が圧倒的に楽になりました。その結果、インフラ開発の効率化、スピードアップにも繋がったと思います。
徹底した運用ルールで、チームの情報共有をより円滑にする
―――チームの情報共有を円滑にするために、日々すばらしい努力をされていると思いますが、Backlogをメンバー全員が円滑に使えるようにするために、気をつけていることはありますか?
鈴木:プロジェクトを管理する共通の基盤ツールとして全員が使えるようにするために、運用ルールを決めて打ち合わせで周知しています。例えば、完了ルールや、ステータスを完了にする担当者など、バグ対応時に、開発者が勝手に閉じてしまうのではなくて、確認を再度するひとに戻して、そのひとが完了するという流れを徹底しています。
他にも、漏れがない情報共有の仕組みづくりとして、外部サービスとBacklogを積極的に連携して通知を自動化する取り組みも行っています。
―――最後に、デジタル事業では開発職の採用を強化しているとお伺いしました。今後の展望についてお伺いしてもよろしいでしょうか?
鈴木:弊社はセキュリティーの都合上、クラウドサービスの導入が難しいという過去がありましたが、現在はBacklogをはじめとして、AWSやSlackなどを積極的に導入しています。こうしたITサービスに対する向き合い方の変化と並行して、 日経電子版ではサービス開発の内製化も強化しています。
サービス作りに興味がある方や、システムだけでなくメディア作りにも興味がある方などを積極的に採用しています。メディアが好きな方、作りたい方はぜひ来ていただきたいですし、そういう人たちが能力を発揮できる場所を用意しています。
西馬:弊社は、「コンピューターで新聞製作をする」という挑戦の歴史があります。活版で作られていた新聞をコンピューター化した時代の話です。当時から技術力を売りにしており、「技術の日経」とも呼ばれています。それはウェブの時代になっても変わりません。今の部署は私のようなインフラエンジニアからサーバサイド、フロントエンドのエンジニアまでいろんな技術を持つメンバーがいます。技術に対して理解がある会社だと思うので、技術力のあるなしではなく、意欲がある方はぜひご応募いただければと思います。
—— ありがとうございました!
※掲載内容は取材当時のものです。